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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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堕罪 3
こちらは、本日UPの番外編です
 ※番外編のメインは天界側です。本編の遠い伏線と言う感じです(苦笑)
4話完結 act.3

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◇◆◇

 それは…どれくらい前の話なのか、正確な時間はわからなかった。けれど…少なくとも、自分が存在していたかどうかが微妙ないくらいの、過去ではあると思う。
 独りの駆け出しの戦士が、とある悪魔と出逢い、生命を助けられたことと引き換えに身体の関係を結んだところからその話は始まった。
 そこから…背負うべき罪は、一つずつ増えて行く。
 自分の上司と、身体の関係を結んだこと。再び現れた悪魔に…今度は、心まで奪われたこと。
 一度は、魔界へ降りる覚悟を決めたこと。そして…その夜、その悪魔が殺されたこと…。
 そして、上司に全てを打ち明けられ…大罪を、背負ったこと。
 その全てが…想像もつかないところにあるようで…とても、現実だとは思えなかった。
 けれど、それを語るその表情はとても苦しそうで…それが、"あのヒト"にとっての現実だったのだと…改めて、思い知らされた。
 軽々しく、一緒に罪を背負うと口にした自分を咎めた姿は…"あのヒト"の、精一杯の救済だったのだと。

 大きな、溜め息が零れる。それは…語っていた"あのヒト"と…そして、レイの唇から。
 上司から明かされた、と言う大罪については、未だ口を噤んでいる。
「…その、大罪とは…」
 意を決したレイは、ルシフェルの肖像画を見つめたままの姿に、そう問いかけた。
 暫しの、沈黙。やがて…そのヴァイオレッドの眼差しが、ゆっくりとレイに向けられた。
「…貴方は…熾天使が、どのような役割をしていたのか…知っていますか?」
 不意に、そう問いかけられた。
「熾天使は…神に一番近い場所にいて…その御心を、皆に伝える役割であると…教わりました…」
 教わった通りにそう答えると、小さな笑いが帰って来た。
「そうですね。わたしも、そう教わりました。熾天使は、天界で最も高貴な聖域であり…その身位を継ぐ者は…天界で最も権力を持つ者だと。では…どうして"彼"は、魔界へ降りる時に、その身位を引き継いで行かなかったのでしょうか…?ミカエルは、当時からその資質は十分にありました。それでも"彼"は…故意にそれをしなかった。それは、どうしてだと思いますか…?」
「…わかりません…」
 そうとしか、答えようがなかった。
「…そうですよね。普通は、わからないんです。そんなこと…誰も、想像しませんから…」
 その眼差しが、再び肖像画へと注がれる。
 そして。
「この天界は…もうずっと前に、神に見放された地、です。わたしが生まれるよりも、ずっと前から」
「……まさか…」
 思わぬ告白に、レイは息を飲んだ。
 けれど、その告白はそれだけに留まらない。
「ここに並んでいる肖像画の熾天使たちは…皆、それを知っていたと言います。そして、天界に住む者たちを欺き続けた。あたかも神がいるように振る舞い、神がいるかのように信じさせて来たと。歴代の熾天使が皆…堕天使だったんですよ…」
「…そんな…」
 想像を絶した告白に、レイは自分の身体が細かく震えているのを感じていた。
 神は…もう天界にはいないのだと言う、現実。それは…未だ信じられない。
「…"彼"は…言っていました。熾天使が、堕天使であると言う現実。そして…この礼拝堂の祭壇に崇められている、本当のモノのことを。熾天使が堕天使であるが故の…もう一つの械(かせ)を」
「…械…?」
 問い返したレイの声に、"あのヒト"は目を伏せた。
「…ある意味…"悪魔"…ですよ。ここにいるのは」
「……っ」
「一つの"嫉妬"が"罪"を生み、"死"を望んだ、それを生み出したのは…他の誰でもなく、この天界を支えて来た、熾天使たち。ルシフェルは…"嫉妬"の挙句、わたしの恋悪魔を殺した。わたしは…今でも、あの時の光景を忘れることが出来ない。ルシフェルに打ち明けられた言葉を…一語一句、忘れることも出来ない。それは…紛れもない事実なんです」
 胸が、痛い。体中の力が抜けてしまうような感覚を覚え、レイは、必死で踏ん張っていた。
「熾天使の身位は…罪を背負う為の身位です。まるでそれが儀式であるかのように、次期熾天使にその罪を背負わせ続けた。そして…その罪に絶え得る者だけが、熾天使として生きて行けたのです」
「…ならば、何故貴方がそれを…」
「わたしは、熾天使には相応しくはなかった。絶対的な能力が足りないのですよ。それに相応しいミカエルは…罪を背負うには、純粋過ぎた。ルシフェルは、そう言いました。ミカエルを穢してしまったら…もう、天界に未来はない、と。だから…ルシフェルは、堕天使でありながら自分自身で見て見ぬ振りをして…彼らを欺き続けていたわたしに、その罪を背負わせたのです。彼の相棒として、傍にいるわたしを。ミカエルが光なら、わたしは…天界の闇を、知る者として」
「…そんな…だって貴方は…元々、ルシフェル様の恋人だったのでは…」
 たった、それだけのことで。どうにもならない大罪を恋人に背負わせるだなんて。
 その思考がわからず、問いかけたレイの言葉。
 その言葉に、再びヴァイオレッドの眼差しが開かれる。
「多分…恋人ではなかったと思いますよ。身体の関係はありましたけど…わたしは、ルシフェルに心を開けなかった。"堕天使"であると言う械が、そこにはあったんだと思います。だからこそ…ルシフェルは、"嫉妬"と言う "悪魔"に…取り付かれたのかも知れません。そして何より…わたしが愛した悪魔は…ルシフェルが熾天使になる為に切り捨てた、自分の半身だった、と言うこと。切り捨てたはずの半身に、わたしを奪われた。だから、殺したのだと…ルシフェルに言われましたよ」
「………」
 眩暈がする。
 そんな感覚に、レイはきつく目を閉じた。
「…全て…わたしがいたことが、引き金です。わたしなど…いない方が良かったのかも知れない。幾度もそう思いましたよ。でも…わたしは、魔界へ降りることも、自ら死ぬことも許されない。それが…わたしが背負った罪への械なんです。わたしは一生、この罪を背負って行くのです。それは、自ら招いたのですから仕方のないこと。でも…その罪は、わたし自身を壊したのも事実です。誰にも、全てを告白することが出来ない。誰にも…本心を、明かすことが出来ない。例えそれが、長年の友人たるミカエルであったとしても。寧ろ、ミカエルの顔を見る度に…胸が痛みます。わたしは…ミカエルすら、欺いているのだと。その罪の意識を埋める為に…ここで、誰とも知らない相手に抱かれることを選んだんです。そうすれば…ルシフェルを、忘れられるかも知れない、とね」
 それは…何処か、遠くから聞こえているような感覚だった。
 けれど…現実は、ここにある。
 ゆっくりと目を開けたレイは、自分を見つめる眼差しに気が付く。
「…幻滅、でしょう?聞かなければ良かったと、正直思っているでしょう…?でも、それがわたしなんです。そして、神の不在。悪魔を崇めた祭壇。それが…この礼拝堂の真の姿ですよ。勿論…今の礼拝堂にも、神はいません。でも、少なくとも…ミカエルが責任を持って管理している以上、あの場に悪魔はいない。それだけが救いです。だから、わたしは…あの礼拝堂には立ち入れない。でも、わたしはそれで良いんです。自業自得だとわかっていますから。でも貴方は…全く、関わりはなかった。わたしを抱いた訳でもないし、真実を知っている訳でもなかった。貴方に押し通されて全て話してしまいましたが…貴方を巻き込んだことは…また一つ、重ねた罪なのかも知れません」
----御免なさい。
 小さくつぶやいた声に、レイはハッとした。
 全てを話させたのは、他ならぬ自分。なのにそれは…"あのヒト"に、自分を巻き込んだ、と言う罪を更に背負わせたのだと。
「…違う」
 紡ぎ出す声は、掠れていた。その声は…ちゃんと、届いただろうか。
「俺が…貴方に問いかけたんだ。だから…俺は、巻き込まれたんじゃない。貴方と同じ罪を背負う為に…自ら、飛び込んだんだ。だから…それは、貴方の罪じゃない」
 レイは腕を伸ばして、その姿を抱き締める。冷たい身体は…それが現実であると思い知らされた。
 ならば。その罪に、堕ちよう。
「…幻滅は、しない。聞かなければ良かっただなんて思わない。俺はただ…貴方を、これ以上傷付けたくないだけ、だ。神がいようがいまいが…そんなことはどうでも良い。ここにいるのが悪魔だって、構わない。ただ…貴方がいてくれれば。その為なら…俺は今ここで貴方を抱いて…同じ罪に堕ちる」
 そう言うなり、レイはその首筋へと、唇を落とす。
 前に…同僚が言っていた言葉が、ふと脳裏を過ぎった。
 長い髪。柔らかくて、良い匂いのする細い身体。
 今まで、何人に抱かれて来たのかはわからない。でも…もう、誰にも触れさせる訳にはいかない。
 もう…誰にも、渡さない。
 レイはそのままその身体を床へと押し倒す。そして、身体を重ねる。
 熱い吐息は、交わることはない。けれど…その想いが辿り着く場所は同じだった。
 救われたい。
 ただ…その、一心で。

 大きく、息を吐き出す。
 組み敷いた身体が未だにひんやりと感じるのは…自分だけが、必死になっていたからだろうか?
 身体を起こし、その顔を覗き込む。
 ヴァイオレッドの眼差しは…いつもと同じように、真っ直ぐ自分を見つめている。
 その、醒めた色を浮かべて。
 それは…他の誰かに抱かれていた時と、同じ色。
「……愛して…います……ラファエル様…」
 初めて、名を呼んだ。その途端…その眼差しが、揺らめいた。
「…ラファエル様……ラファエル…」
 耳元で名を囁き、再びその首筋に吐息を落とす。すると…今まで温もりを感じなかった身体が、熱を帯びていくのを感じた。
「…やめ…っ」
 途端に、その腕で顔を隠し、身体を捩ってその腕の中から抜け出そうとする。勿論、レイにそれを見逃すつもりは毛頭ない。
「愛しています…」
 自分の身体で相手の身体を押さえつけ、耳元でそう囁く。そして、その耳に口付ける。
「やぁ…っ…!」
 切なげに零れる声。その身体は途端に熱を帯び、高まっていく。そして、熱い吐息が零れる。その吐息を拾うように、レイはその唇に、そっと口付けた。
 それは…同じ罪を背負う覚悟。
 そして……誰にも渡さないと言う…"嫉妬"と言う、"悪魔の囁き"だったのかも知れない。

◇◆◇

 気が付くと、雨はやんでいた。
 閉ざされたカーテンを少しだけ開けると、遠くの空が薄っすらと色を帯び始めていた。
 直に、夜が明ける。
 大きく息を吐き出して踵を返すと、その視線の先に身体を小さく丸めて眠っている姿が映る。
「…いつまでも、ここにいる訳にはいかないな…」
 日が昇れば、幾ら人通りが少ないとは言え、この礼拝堂への出入りが誰かの目に止まるだろう。そうすれば、不法侵入を咎められる。
「…起きられますか…?」
 眠っている姿に近付き、小さく問いかけてみる。だが、目覚める気配はまるでない。
 無理をさせたのは、重々承知。だから…最後まで、責任を取らなければ。
 執務室の扉を開けると、自分の上着で眠っている相手の身体を包み、抱き上げる。
 それでもまだ起きない。
 残念ながら、相手の家は知らない。最悪…自分の家に連れて行くしかないだろうか。
 そんなことを考えながら、ふと視線を上げる。
 そこには…熾天使の、肖像画。
「…"このヒト"は…もう…貴方の所有物(もの)じゃない…」
 "嫉妬"と言う悪魔は…自分の中にいる。それは…つい先程まで感じていた感覚。
「でも俺は死なないし、このヒトを…殺しはしない。俺はずっと、"このヒト"を護ってみせる。俺は…あんたの誘惑には、負けない…」
 それは、誰に向けた言葉だろうか。
 大きな溜め息を吐き出すと、歩みを進めた。

 礼拝堂を通り、外へ出る扉を開ける。
 その時。
「…入り口の扉は、わたしが閉めよう」
「…っ!」
 不意に声をかけられ、レイはドキッとして足を止める。そして、声の主を確認する。
 扉の真横の壁に寄りかかり、外套のフードを目深に被ったまま空を見上げるその姿。
 顔は良く見えない。勿論、相手も見せるつもりはない、と言うことだろう。
「そいつの家なら、わたしが知っている。案内しよう」
「……はい…」
 言われるがまま、思わず返事を返してしまう。
 外で待っていた相手は旧礼拝堂の扉を閉めると、その扉に封印をする。そして、振り返らずに歩みを進めた。
 慌ててその背中を追いかける。
「…変わろうか?」
 そう声をかけられ…それが、レイが抱き上げている相手のことであると理解したレイは、慌てて首を横に振った。
「…大丈夫です…」
「冗談だ」
 真っ直ぐに前を向いたままそう口にする姿を見つめながら、レイは黙って後ろをついて歩く。
 この人は…何処まで、知っているのだろうか…?
 そんなことを考えながら、ただ足を進める。
 どれくらい歩いたのかは覚えていないが、空がだいぶ明るくなって来た頃…前を歩いていた姿が、ふと足を止めた。
「…御前、戦士じゃ…ないな?」
「…はい。わたしは…ただの事務員ですが…」
 そう零した言葉に、小さな溜め息が零れる。そして再び歩き出しながら、言葉を続けた。
「…御前が、そいつを護りたいと言うのなら…まず、身を護る術を覚えろ。そいつに関しては…これから先、何が起こるかわからない。剣も握れない事務職じゃ、話にならない。戦地に立てるようになれとは言わないが…せめて、戦えるだけの技術はつけるべきだ」
「…勉強します…」
 確かに…尤もなこと。
 いつまでも、事務員でのほほんと働いているのは…流石に、身位の差が大き過ぎる。それでは、傍にいることも難しいのだから。
 けれど…ふと、疑問に思ったこと。
「…あの…聞いても、宜しいですか…?」
 問いかけた声に、僅かにこちらを向いた。
「…貴方様は…"このヒト"の、一番近くにいたはず。それなのに…どうして、貴方様自身が、助けなかったのですか…?わたしに指図して強くなるのを待つよりも…貴方様ご自身が動く方が、ずっと早く…"このヒト"を、救うことが出来たのでは…?」
 そう。誰よりも強いこの相手なら…雑作もなかったはず。けれど、それをしなかったのは…どうしてなのだろう、と。
 すると、一瞬だけ、フードの中からその視線がレイを見つめた。
 それは…とても、寂しそうで。
「わたしが誰かなどと言うことは、御前の想像だろうが…例え、一番近くにいる相手だったとしても…だからこそ、一番知られたくはない相手ではないのか?少なくともこいつは、そう思うはずだ。だからこそ、今まで誰にも言わず…独りで抱え込んで来たのではないのか?」
 確かに…それならば、納得は行く。
 御互いが、御互いを想う気持ち。それでも、どうすることも出来なかった。そのことに触れることすら、出来なかった。それは、どれだけ辛い思いだったのだろう。
 今…自分がこうして抱き締めていられることが…どれだけ幸せなことだっただろう。そう思うと、もう…手放してはいけないのだと、改めて感じた。
「…わたしが、こうして御前と話したことは…決して、こいつには話すな。一生、御前の胸の中にしまっておけ。良いな?」
 そう、念を押される。
「…わかりました。それが…貴方様の、意向なら」
 それに、逆らうことは出来ない。
 そうこうしているうちに、一軒の屋敷の前で足が止まる。
「…ここだ。今まで、ゆっくり眠れていなかったんだろう。思う存分…眠らせてやってくれ」
----じゃあな。
 そう言い残すと、去って行く背中。レイは、その背中に向け、黙って頭を下げる。
 顔を上げた時には…もう、その背中は見えなかった。

◇◆◇

 朝早い時間にもかかわらず、その屋敷の使用人は突然の来客にも丁寧だった。
 抱えていた身体をベッドへと寝かしつけると、御茶が出される。
「この度は、当家の主が御迷惑を御掛けした様で…申し訳ありませんでした」
「いえ…」
 レイにしてみれば、使用人など普段接し慣れないものだから…どう返事をして良いのかわからなかったのだが…取り敢えず、それを口にした。
「…あの…」
「はい?」
「…御迷惑かも知れませんが…この方が目覚めるまで…傍にいても良いでしょうか…?」
 迷惑は、承知の上。そうわかった上で問いかけた。
 使用人にしてみれば…迷惑極まりない、だろう。たかが、主を運んで来たくらいで、何を言い出すのだろうと、きっと思っているだろうとレイは思っていたのだが…予想外に、使用人はにっこりと微笑んだ。
「構いませんよ。傍にいていただけると、我々も助かります。勝手に追い返したとあらば…我々が叱られます故」
「…はぁ…」
 では、ごゆっくり。
 そう良い残すと、レイをその場に残し、使用人は部屋から出て行く。
 彼は…いつ目覚めるともわからない"あのヒト"を…ただ、じっと見つめていた。
 そして…"あのヒト"が目覚めたのは、日が落ちてからだった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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