聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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絶愛 1
平和な時間は…突如、奪われた。
その連絡は、予想だにしていなかったところから入って来た。
そして…平和は、乱された。
その日、ラファエルの執務室に連絡が入った。
「…はい?」
留守にしていたラファエルの代わりにその連絡を受けたのは、側近たるレイ。
通信画面を開くと…そこには、一名の悪魔の姿。
「…あの…」
何かの間違いなのかと思ったが…相手は、真っ直ぐに自分を見つめていた。
『…ラファエル殿の執務室…ですよね?』
「…そうですが…ラファエルは今、席を外しておりますが…貴方は…?」
その声に警戒の色を乗せながら問い返すと、相手は小さく吐息を吐き出した。
『…わたしは、軍事局の参謀長補佐をしております、マラフィアと申します』
「…軍事局の参謀長補佐…?」
魔界の軍事局の参謀長補佐が、何の用件だろう…と思いを巡らせながら、相手の出方を見る。
相手は、言わば敵である。何の為に連絡を入れて来たのかもわからないが…嫌な予感しかしない。
すると、マラフィアと名乗った悪魔は、ゆっくりと口を開いた。
『…ラファエル殿が御戻り頂いたら…折り返し、連絡を頂きたいのですが…』
「…いつ戻られるかはわかりません。わたしは、ラファエルの側近をしております、レイと申します。差し支えなければ、わたしが話を聞きますが…」
困惑した表情のマラフィア。
その表情を見つめていたレイは、ふと今の参謀長を思い出した。そして、思わず小さく息を飲む。
相手が口を濁す理由は…そこにしか、ないだろうと。
「確か、今の参謀長は…ルシフェル参謀、ですよね?もしかして…ルシフェル参謀に何か……?」
『………』
小さく、溜め息を吐き出したマラフィア。
『…申し訳ありません。やはり、直接ラファエル殿と御話致しませんと…ですので、折り返し連絡を…』
「…わかりました。では、いつになるかわかりませんが…御伝えしておきます」
『宜しく御願い致します』
そう言って頭を下げると、通信は切れた。
口を濁したところを見ると、やはりそこにはルシフェルが関わっているのだろう。だからこそ、ラファエルを名指しで連絡を入れて来たのだろう。
レイがラファエルと出会って、まだ数年。この頃は落ち着いて過ごせているが…ここでまだルシフェルと関わったら、どうなってしまうか…。それが不安の要因でもある。だからこそ、自分を通して貰って、ワンクッション置こうと思ったのだが…相手に拒絶されてしまったら仕方がない。
レイは、大きな溜め息を吐き出していた。
ラファエルが執務室に戻って来たのは、執務終了時間をかなり過ぎてから、だった。
待っていたレイの姿に、小さく笑いを零す。
「終了時間を過ぎたのですから、先に帰っていても良かったんですよ?」
律儀に自分の帰りを待っているレイに、そう声をかけると、レイは浮かない表情で首を横に振る。
「…魔界から、連絡が入っています」
「…魔界から…?」
「はい。軍事局の参謀長補佐のマラフィア殿と言う方から…折り返し、連絡が欲しいと」
「……そうですか…」
ラファエルは溜め息を一つ。
ラファエルも…知っているのだろう。今の参謀長が誰であるのか。だからこそ…の溜め息なのだ。
「…どう…しますか…?」
小さく問いかけた声に、ラファエルは暫し、思いを巡らせる。
一つ引っかかっていることは…それが、ルシフェル本魔ではなく、補佐を通して連絡して来た、と言うこと。
ルシフェルが魔界へ降りてから…戦地で見かけたことはあったけれど、直接連絡を入れて来たことなど一度もなかった。そう考えると…今更、ラファエルと接触を取ろうとする必要性がわからないのだ。
だとすれば…補佐の独断で連絡を入れて来た理由は…?
「…まぁ…連絡をしてみましょう。そうすればわかることですから」
溜め息と共に吐き出した言葉。そして、コンピューターの前に座ると、早速折り返し返事を入れる。
「もう終了時間は過ぎていますからね。繋がらないかも知れませんけど…」
そう言っている間に、回線は繋がった。
『はい。軍事局参謀部です』
画面に映ったのは、レイが昼間見た、その悪魔。
「…彼です」
ラファエルの背後から画面を見ていたレイは、ラファエルに声をかける。
その声に小さく頷くと、ラファエルは再び画面に視線を向ける。
「貴方が、マラフィア殿ですか?」
そう声をかけると、相手の表情が一瞬変わった気がした。
『…ちょっとお待ち下さい。部屋を変えます…』
暫し、保留状態に変わる。それから改めて画面が繋がる。
『御待たせ致しました。わたしがマラフィアです。貴方は…ラファエル殿、ですね?』
恐らく、誰もいない場所へと移動して来たのだろう。ラファエルの名を口にした、と言うことは、心置きなく話が出来る状況であるようだ。
「そうです。昼間は失礼致しました。何か、わたしに話があるとか…。わたしの側近のレイには話せない、とのことでしたが、レイも一緒に話を聞く、と言うことが可能であれば、話を伺いますが」
ラファエルは、レイには何も言わなかった。けれど、共に話を聞くことを条件にするくらいなのだから…その心の何処かには、奇妙な不安もあったのだろう。
マラフィアは暫く考えているようだった。けれど、話さずに終わることと、同席者がいても話をすることを秤にかければ、選ぶべきは一つしかなかった。
『…わかりました。ですが、決して口外はなさらないで下さい』
「それは約束します。彼は、口が堅いですからご心配なく」
にっこりと微笑んでそう言ったラファエル。その姿に、マラフィアは小さな溜め息を吐き出した。
そして…ゆっくりと、口を開く。
『…あの方を…助けていただきたいのです』
「…あの方?わたしに、助けを請う必要がある相手なのですか…?」
そう言われれば、多分答えは一つしかない。そう思いながら、問いかけた声。
『…はい。わたしではどうにも出来ず…恥を忍んで、連絡致しました。あの方を…ルシフェル様を、助けて下さい…』
「……ルシフェル…」
やはり、と言う思いはそこにあった。
「…ルシフェルを助けて欲しいとは…何があったと言うのです?彼は、わたしに助けを請うほど柔ではないはずですが?」
そう問い返すと、マラフィアは小さく息を吐き出した。
『先日…任務先の戦地で、重症を負いました。ですが…魔界では、彼の傷の回復が芳しくなく…元々、堕天使と言うことで、医師からも良くは思われていなかったようで…辛うじて応急処置はして頂けましたが、回復は難しいと、匙を投げられた次第です…ですから、彼の回復が見込める場所となると…魔界では難しいのかと…』
「…それで、わたしにどうにかして欲しいと?」
『…はい。本来ならば、頼るべき相手ではないことは、重々承知です。ですが…今の魔界にとって、ルシフェル様は必要な存在です。今、あの方を失う訳にはいかないのです。ですから…』
「…話は、わかりました」
ラファエルは小さく息を吐き出す。
まさか…ここでまた関わることになるとは。
「…わたしに連絡を入れたのは…貴方の、独断ですか?それとも、大魔王陛下の許可を得てのことですか?」
まず、そこからだ。
すると、マラフィアは首を横に振る。
『いえ…わたしの独断です。大魔王陛下には、まだ話はしてはおりません…』
「ならば、せめて大魔王陛下の許可は取って下さい。そうでなければ、我々が手を出すことは…彼の、魔界への、謀反行為とみなされますよ。ただでさえ、堕天使として良く思われていないのなら尚更。気持ちが焦っているのはわかりますが、既に誰か一名でも敵に回している以上、何があっても大魔王陛下の許可があるだけで対応は違いますから」
『…そうですね、手際が悪くて申し訳ありません…』
暗く、沈んだ表情を浮かべたマラフィア。
多分、彼にはまだ色々と経験が足りないのだろう。だからこそ、焦ってしまっているのだ。
「…心配しなくても大丈夫ですよ。大魔王陛下の許可さえ取れば、あとはこちらに任せて下さい。ただ、わたしも…後ろにいるレイも、医師ではありませんから…後数名、こちらは関わる者が必要になることを承知していて下さい。勿論、悪いようにはしませんから」
『ラファエル殿…』
マラフィアを安心させるように、ラファエルは小さく微笑む。
本来なら、敵同士であるはずなのだが…相手がルシフェルだけに…天界に頼らざるを得ない状況を察することが出来るだけに、無碍にすることも出来ず。
『…明日…大魔王陛下の許可を頂きましたら、また改めて連絡を致します…』
そう言って頭を下げたマラフィア。
「わかりました。では明日。御待ちしております」
ラファエルがそう言うと、再びマラフィアは頭を下げ、回線は切れた。
「…大魔王陛下の許可は、そんなに簡単に貰えるものですか?天界の力を借りなければ回復出来ないような相手を、大魔王陛下が何処まで護ってくれると…?」
話を聞いていたレイが、ラファエルに問いかける。
レイは、ルシフェルとは接したことはない。けれど、自分がラファエルと出会った事情が事情なだけに…ルシフェルに対して、良くは思っていない、と言うのが実情なのだ。
ラファエルは、大きな溜め息を一つ。
「多分…大魔王陛下の性格を考えれば、許可は簡単に出ると思いますよ。マラフィア殿も言っていた通り、今の魔界でルシフェルを失うことは大きな損失でしょうし…確か、もう直世継ぎも産まれるはず。代々、参謀長が世継ぎの教育係を担っていたはずですから、そう考えれば、天界のことも良く知り、実戦経験も豊富なルシフェルは適任かと思われますしね。堕天使とは言え…貴方が思っている以上に、魔界のルシフェルに対しての評価は高いはずです。曲りなりにも…天界の最高位である元熾天使、ですからね」
「…そうですか…」
レイは、溜め息を一つ。
その口から、恋敵の高評価を聞かされること程、屈辱的なことはない訳で…。
どう足掻いたところで、実力的には敵うはずはない。だからこそ、レイは居心地が悪い。
けれど、その溜め息でレイの心情を察したのだろう。ラファエルは笑いを零した。
「そんな顔をするものじゃありませんよ。わたしは、話は聞きましたが…わたしがルシフェルの面倒を見る訳ではありませんから。なるべく接点を持たないようにするつもりですし…だからこそ、後数名関わると前以て話をしたでしょう?」
接点を持たないようにするつもりだ、と言う言葉には、多少安心したものの、実際にその状況になってみなければわからないことある。安易に安心は出来ないが…信じるしかない。
「…では、どなたが…」
問いかけた声に、ラファエルはちょっと考えてから、口を開く。
「ミカエルに、話を通した方が良さそうですね。それこそ、総帥ですから。もし何かあったら、知らなかった、では済みませんからね。誰か、看病出来る方も見繕って貰いましょう」
「…それで…本当に良いのですか…?」
思わず問いかけたレイの言葉に、ラファエルは真っ直ぐにレイを見つめた。
「…良いも悪いも…わたしは最初から、ルシフェルに関わるつもりはありませんよ。どうしてわたしを名指ししたのかはわかりませんけど、それは向こう側の理由であって、わたしの理由ではありません。わたしは…貴方がいれば、それで良いのですから」
「…ラファエル…」
それでも、レイの不安は拭えない。勿論、ラファエルもそれは承知の上。それでも、にっこりと笑って見せた。
「さ、帰りましょう。ミカエルには、明日の朝一で連絡を入れます。今日は…もう、おしまいにしましょう」
「…御意に…」
ラファエルは浮かない表情のままのレイの手を、その両手でそっと包み込む。
「…大丈夫。何も…心配いりませんよ…」
そうつぶやいたラファエル。その手は…とても、冷たい。
気丈に振舞って見せていたものの、その心の不安は、その手の冷たさで明らかだった。
そんな時こそ…しっかり、支えていなければならなかったのに。
そんな小さな後悔が、レイの胸を過ぎった。
レイはもう片方の手をラファエルの手の上に重ねる。そして、気持ちを落ち着かせるように、大きく息を吐き出した。
「…御免なさい。わたしは、貴方を信じていますから。だから…もう、大丈夫です」
その言葉に、ラファエルはにっこりと微笑む。
その微笑みが、何よりも確かな想いだった。
翌日、ラファエルは朝一番にミカエルの執務室を訪れ、昨日の話をした。
当然、ミカエルは苦虫を噛み潰したような顔をしている。
ミカエルとて、今更ルシフェルに関わることになるとは思いも寄らなかったのだろう。しかも、それをラファエルの口から聞くことになるとは。
「まだ、正式に連絡が来た訳ではありませんが…恐らくは許可が下りて、連絡が来るでしょう。一応、レイが待機していますから、連絡が入ればわかります。それで…です。わたしは…ルシフェルには、会うつもりはありません。だから…全てを、貴方にお願いしたい。その為に、朝一番に、貴方に会いに来たんです」
「…ラファエル…」
「わたしのところに来た話を、貴方に丸投げするのですから、マラフィア殿に申し訳ないと思う気持ちはあります。でも…」
「…わかってる」
「…ミカエル…」
ミカエルは、大きな溜め息を一つ吐き出す。
「わたしだって、御前に関わらせたいとは思わない。御前が、もうルシフェルのことを思い出しているのは知っているが…だからと言って、御前が相手をする必要はない。手配は、わたしが全部やろう。だから御前は、マラフィア殿との窓口になってくれればそれで良い」
出来ることなら…あの時の想いを、繰り返したくはない。それは、ミカエルもラファエルも同じこと。
抉り取られるような胸の痛みは、二度も経験する必要はないのだから。
どちらからともなく、溜め息が零れる。と、その時。
ミカエルの元に、通信が届く。それは、ラファエルの執務室から。
「はい」
画面を切り替えると、そこにはレイの姿。
『おはようございます、ミカエル様』
「あぁ、おはよう。今、ラファエルから話を聞いたところだ。連絡が来たのか?」
問いかける声に、レイは小さく頷いた。
『はい、先ほど。大魔王陛下の許可は下りたそうです。ですから、こちらで手配をお願いしたいと』
「わかった。では、手配が済み次第連絡する」
『わかりました』
そう言うと、レイは頭を下げて通信を切る。
「流石、大魔王陛下だな。判断が早い。ルシフェルの価値を良くわかっている」
苦笑いをするミカエルに、ラファエルも小さく笑いを零した。
「そうですね」
確かに、今後のことを考えると、魔界にとってはまだまだ利用する価値はある。勿論、ルシフェル自身も、そのつもりであるのだろうし。
「では、細かい手配が終わったら、御前に連絡するから。また、マラフィア殿に伝えてやってくれ」
「わかりました」
ラファエルはそう返すと、ミカエルの執務室を後にした。
数日後、朝一でミカエルから準備が整ったとの連絡が入った。
届いたばかりの書類に目を通しながら、ラファエルは小さな溜め息を一つ。
「どう致しました?」
問いかけたレイの声に、ラファエルはその書類をレイへと渡す。
「別に、どうと言う訳ではないのですけれどね…」
「…療養場所は、別荘…ですか…?」
それは、ミカエルとラファエルの共用の持ち物として所有している別荘のこと。レイも幾度か行ったことはあるが、そこは天界の外れにあり、王都からは大きな山を越えた更に先にある為、立ち入る者は他にいない。
しかも、山全体が王都を守る為の大きな結界であり、その上を翼で飛ぶことも出来なければ、転移も出来ない。山越えなので乗り物にも乗ることが出来ない。自力で山を越えるしかないのだ。そんな、非常に厄介な場所にある山奥の一軒家である。
ただ、山を越えれば一面の草原。そして、湖と森がある。豊かな自然の残る、それは美しい場所である。
王都に呼ぶことが出来ないことはわかっていたが…まさか、あの山奥に連れて行こうとするなど。
「魔界側から、直接向かうことは難しいでしょうね。誰かが魔界へと道を開き、誘導する必要があります。まぁ…人知れず療養するには合ってるかも知れませんが…本当に何もありませんから、必要なものは全て持っていかなければいけませんし、全て丸投げには出来ませんね…それに…看護要員もね…」
「…ミカエル軍の…若い見習い医師、ですか…」
年齢から考えて、多分、ルシフェルのことは知らない。だからこそ、選んだのだろうが…
「幾ら、使用人が数名いるとは言え…若い女性を、付きっ切りにさせると言うのもね…」
まぁ、ミカエルのことであるから、考えはあるのだろうが…不安は拭えない訳で…。
「ですが…ミカエル様に御任せしたのですから、こちらから否定することはどうかと…」
「…わかっていますよ。ミカエルに丸投げしたのはわたしですから、否定はしません。ですが…何があっても、わたしには責任は取れません、と言うことぐらいですね」
大きな溜め息を吐き出したラファエルは、意外と冷静な表情のままのレイに視線を向けると、小さな笑いを零した。
「…何か…」
ラファエルの視線の意味がわからず、レイはラファエルに問いかける。
「…今日は冷静ですね?顔色一つ変えない」
「…貴方に、実害がなければ慌てませんし、困りもしません」
「そうですか」
思いがけない返答に、ラファエルは思わず笑いを零す。
たった、それだけのこと。けれど、その笑い顔にレイの心は癒されていた。
全ては、ラファエルが穏やかに過ごせるように。幸せでいられるように。その為に、傍にいるのだから。
「…やるだけ、やってみましょう」
覚悟を決めたラファエルは小さな笑いと共に、そう言葉を零した。
そして、マラフィアへと連絡を入れた。
呼び出し音が暫く続いた後、回線が繋がり見覚えのある顔が映し出された。
『…はい』
「御無沙汰しています。今、宜しいですか?」
『えぇ、大丈夫です』
返事が返って来ると、ラファエルは徐ろに口を開いた。
「手筈が整いました。そちらの都合がつけば、明日にでも迎え入れることは出来ます」
『…そうですか。御迷惑を御掛けして申し訳ありません…感謝致します』
そう言って、相手は深く頭を下げる。
「ただ、場所は王都からかなり離れた山の中の一軒家ですので…我々の移動が済んでからの迎えになります。そちら側からは、場所の特定が出来ませんから…こちら側から、道を開きます。ですから、その覚悟をしていただかないと。病院にいるままでは…流石に拙いかも知れません」
そう声をかけると、マラフィアは小さく息を一つ吐き出した。
『病院など…疾うに追い出されています。今は、あの方の屋敷で、療養中ですが…回復しないどころか、悪くなっているような気がして…』
「…そうですか…」
思っていたよりも…向こうは深刻な事態になっているようだった。
「ルシフェルの屋敷であれば、他に迷惑はかかりませんね。では、ルシフェルの気を追って道を開きます。貴方にも、立ち会っていただきたい。早い方が良いのなら…明日の朝にでも。我々も、これから向かいます。こちらへくれば、見習いの医師ですが、直ぐに診る事は出来ますから。もう一日、御願いしますね」
『…わかりました。宜しく御願い致します』
再び、頭を下げるマラフィア。そんな主思いの姿に、ラファエルは一瞬、昔の記憶が甦った。
自分は…ルシフェルに対して、こんなに忠実な部下だっただろうか…?
恐らく…ここまで、忠実ではなかった。そう思うと…僅かに胸が痛んだ。
天界はルシフェルにとって、居心地の良い場所ではなかったのかも知れない。
勿論、他人には言えない秘密を持っていたのだから、完全に居心地の良い場所であると言うことは難しかっただろう。けれど、一時でもそれを癒す場所さえ、なかったのではないか。
だからこそ…天界を捨て、新たな世界へと、飛び込んで行ったのかも知れない。
今の自分には、常に支えてくれるレイがいる。けれど、あの頃のルシフェルには…誰もいなかった。自分も…その役割を、果たすことが出来なかった。
それが、何よりも…胸を締め付けた。
溜め息を吐き出し、唇を噛み締めたラファエルの姿に、最初に気が付いたのはレイだった。
「…大丈夫ですか…?」
小さく問いかけた声に、ハッとしたように顔を上げる。その視線の先には、怪訝そうに首を傾げたマラフィアの姿もあった。
『…ラファエル殿…?』
「……御免なさい、何でもありません。療養先では、回線を繋ぐことが出来ませんから…時間を、決めておきましょう…」
ラファエルはそう言うと、通常の勤務が始まる時間を指定した。
『わかりました。では、その時間に…御待ちしております』
「えぇ、ではまた明日」
小さく微笑み、ラファエルは回線を切った。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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