聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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絶愛 4
ラファエルを抱えて部屋に戻って来たレイは、ぐったりとしたラファエルをベッドに寝かせると、溜め息を吐き出していた。
その手も、その身体も…驚くほど冷たくなっている。呼吸も細く、もしも何も知らない者が触れたら、亡くなっているのではないかと思うくらい。
ちらっとしか見てはいないが…ラファエルから聞いた話を考えると、あのルシフェルの姿は恐らく…ラファエルの恋悪魔だった悪魔と良く似ているのだろう。それが…ラファエルをここまで追い込んだのだろう。
幾ら、今は自分が一番近くにいるとは言え…ラファエルの気持ちが再び、ルシフェルに傾かないと言う確証は何処にもない。
そう思うのは…まだラファエルから、愛している、と言う言葉を聞いたことがなかったからかも知れない。
当然、レイは何度もその言葉を口にしているものの、ラファエルからはその言葉を返して貰ったことがない。ラファエル自身、それに気付いているかすら、わからないが。
もしかしたら…今でも心の奥に踏み込むことを拒まれているのではないか。そんな事まで考えてしまう。
いざ、現実が目の前に来ると…その不安は絶えなかった。
ラファエルが眠ってしまって、一時間程が経っただろうか。その部屋のドアがノックされ、ミカエルが顔を出した。
「ラファエルはどうだ?」
「まだ眠っています。いつ目覚めるかはわからないのですが…」
「そうか…」
小さな溜め息を吐き出したミカエル。心配なのは、彼も同じことなのだ。
「…ルシフェル様は…」
問いかけたレイに、ミカエルは再び溜め息を一つ。
「予定通り、暫くはここで療養だ。わたしもそう長々とはいられないからな、一週間ほど様子を見て、後はシーリアに任せて一旦帰るつもりだが…ラファエルの予定はどうなっているんだ?」
「ラファエル様の休暇は三日間ですから、明後日には王都に戻ります。その後は…こちらに来るかどうかはわかりませんが」
「まぁ、そうだろうな…」
出来ることなら、これ以上は関わって貰いたくはない。それは、ミカエルもレイも、同じ気持ちではあった。
「まぁ…暫く寝かせてやってくれ。どうせ御前はここにいるんだろう?」
「…少なくとも、目覚めるまではそのつもりです」
それがラファエルにとって一番良いことならば、ミカエルもそれ以上は何も言えない訳で。溜め息を飲み込むしかない。
「…マラフィア殿はわたしが送り届けたから、心配はない。御前も、休める時にちゃんと休んでおけよ」
「はい」
ミカエルはそれだけ言うと、部屋から出て行った。
レイはその背中を見送り、溜め息を吐き出していた。
ラファエルが目を開けると、周りはすっかり暗くなっていた。
ゆっくりと身体を起こしてみれば、足元の方に椅子に腰掛けたままレイが眠っている姿が見えた。
時計に目を向ければ、直に夜半になろうかと言う時間だった。
確か…意識が落ちる前は、始業時間からまだそんなに時間も経っていなかったはず。そう考えると、半日以上眠っていたことになる。
小さな溜め息を吐き出しつつ、そっとベッドから降りて部屋を出る。そして向かった先は…ルシフェルがいるはずの部屋、だった。
そのドアをそっと開けると、小さな灯りの元、ベッドにはまだルシフェルが眠っていた。
周りには、医療結界が張られている為、近付くことは出来ない。けれど、その顔を見ることは出来た。
眠っている姿は…昔見た姿と、寸分の違いもない。
懐かしさと共に…その胸に過ぎったのは、罪悪感と、酷い喪失感。それは、昔と何も変わらない。
「…ルシフェル…」
小さくつぶやいた言葉。
時間は過ぎているはずなのに…こうして目の前にすると、あの頃と何も変わらない。何の進歩もない自分が、とても情けない。
思わず、大きな溜め息を吐き出す。と、その瞬間。
「……ラファエル…?」
「……っ」
その声に、思わず息を飲んだ。
ゾクッとするほどの甘い声が、耳の奥に残る。
その視線の先には…真っ直ぐに自分を見つめる、濃紺の眼差しがあった。
一瞬、時間が止まった気がした。けれど、そんな奇妙な感覚を戻したのは…呼びかけられた声、だった。
「ラファエル様…っ!」
その声に、はっと我に返る。そしてドアへと視線を向けると、慌てた表情でドアを開けたレイと、その向こうに見えたシーリアの姿、だった。
「…姿が見えないので、何処へ行ったのかと…っ」
そう言いながら部屋へと飛び込んで来たレイは、ラファエルの腕を掴んだ。
冷たい手。それが、レイが感じた最初の感覚だった。
ラファエルも、飛び込んで来たレイに驚きつつも、まだ冷静さを保っていた。
僅かにルシフェルへと視線を向ける。
「…また、後で来ます」
そう言い残すと、レイよりも先に部屋を出て行く。そしてドアの外で立ち尽くしているシーリアに、視線を向けた。
「意識が戻ったようなので、見てやって下さい」
「…はい…」
唖然とするシーリアをそのままに、ラファエルはレイと一緒に自室へと戻って来た。
そこで一息吐くと、ベッドへと腰掛ける。
「…どうして…あの部屋に…?」
問い質すようなレイの言葉に、ラファエルは溜め息を一つ。
「…自分でも…良くわからないのです。どうして、あの部屋に入ろうと思ったのか。でも…ルシフェルの意識が戻ったのなら…一度、きちんと話をしたいと思っています。そうしなければ…わたしは、前へ進めない」
「…ラファエル…」
そのヴァイオレッドの眼差しは…しっかりとした意思を持っていた。だから、何事もなく終わると思いたい。勿論、それはレイの願望でしかないが。
「貴方も…立ち会ってくれますね?」
その眼差しが、レイを見つめた。
「…はい。貴方を…一人であの部屋に送り出すことは出来ませんから」
そう答えた胸の奥にあるのは、大きな不安。
先程の、冷たい腕の感触がまだ掌に残っている。その身体は温まることなく、半日以上冷え切ったまま。常ならば意識を失っていても可笑しくはない状況で、しっかり意識を保てているのが不思議なくらいだった。それもまた、心配の一つだった。
そして何より…ラファエルの、ルシフェルを見る眼差しが…その不安を募らせる。
ここにいるラファエルは…本当に、自分の知っているラファエルなのだろうか…?
それは、久しく感じていなかった"恐怖"。そんな想いが、胸の中を過ぎっていた。
「…そろそろ、シーリアの診察も終わっているでしょうね。早い方が良いですから、行ってみましょう」
小さな吐息を一つ吐き出したラファエルは、そう言ってベッドから立ち上がる。そして、レイとは視線を合わせず、先に部屋を出て行く。
その背中を見つめながら、レイはラファエルの後ろを着いて行く。
そして、ルシフェルの部屋の前へやって来ると、そこでミカエルと鉢合わせた。
「…ルシフェルの意識が戻ったそうだな」
そのきっかけも、耳に入っているのだろう。渋い表情を浮かべたまま、ラファエルに視線を向けた。
「…どうするつもりだ?」
どうしてこの場に来たのか、とでも問い質したいのだろう。問いかけた声に、ラファエルは小さく溜め息を吐き出した。
「話をしに。きちんと話をしておかないと…と思いましてね。心配いりませんよ。レイが立ち会いますから」
ラファエルの声に、ミカエルの視線がレイへと向けられる。そのレイの表情で、彼の心の複雑な心境も見て取れた。
「…まぁ…御前たちが納得しているのなら良いが…」
ラファエルを留められるはずなどなく。ミカエルも、溜め息と共にその言葉を吐き出した。
「…シーリアはまだ中に…?」
「あぁ、さっき覗いたらもう直に終わると言っていたからな。そろそろ良いんじゃないか?」
ラファエルの声にミカエルはそう答え、そのドアをノックした。
すると間もなく、シーリアがドアの隙間から顔を出した。
「…皆様、御揃いですか…」
「ルシフェルと…話は出来るか?」
ラファエルの代わりに問いかけた声に、シーリアは小さく頷いた。
「意識ははっきりしているようですから、医療結界の中であれば、余り無理をしなければ大丈夫だと思います。一応…ここにいる経緯は、簡単には話しましたが…」
「…あぁ、有難う。じゃあ…わたしは、リビングにいるからな」
ミカエルは、ラファエルを振り返った。
「…行くか?」
「…えぇ」
表情を引き締めたラファエルは、真っ直ぐに前を見つめたまま、ドアを開けて中へと入って行った。その背中を追って、レイも部屋の中へと足を踏み入れる。部屋の明かりは、先程よりも少しだけ明るくなったが、それでもベッドにいるルシフェルの表情が何とか見えるくらいの明るさだった。
シーリアも階下へと降りた。ルシフェルは医療結界の中にいる為触れ合うことはないが、念の為に…と、ドアは全部閉めず、半分開けたまま。レイはドアの直ぐ傍に立ち、ラファエルの姿を見つめていた。
「…先程は…済みませんでした。驚かせてしまって…」
ラファエルはベッドの足元の傍に立つと、上体を起こして横たわるルシフェルを見つめた。
ルシフェルも真っ直ぐにラファエルを見つめたまま、小さく笑った。
「まさか…目覚めて最初に目に入ったのが、御前だとはな」
その言葉に、ラファエルは小さな吐息と共に、僅かに眼差しを伏せた。
「…元気か?」
問いかけられ、小さく頷く。
「わたしのことは…御心配なく」
短く答えた言葉に、ルシフェルは小さな溜め息を吐き出した。
その表情は…既に、笑ってはいなかった。
「わたしがここに来た理由は聞いたが…まさか、御前たちに世話になるとはな。御前たちを傷つけて…裏切ったのだから…本来なら、合わせる顔などないのだがな…」
「…心配しているんですよ、マラフィア殿は。我々とは違って…貴方に、忠実のようですから」
「…そう、か」
そう言って小さく笑うと、ルシフェルの視線がレイへと向けられた。
「…彼は?」
「わたしの側近のレイです。この場に立ち会って貰います」
「…わたしのことを知っているのか?」
「えぇ。話は…しましたよ。わたしの知っていることを、全部」
そう言ってラファエルは、その顔を上げた。
レイからは見えなかったが…とても醒めたその眼差しは…過去の全てを、レイに打ち明けたことを明らかにしていた。
「そうか。彼は…御前の恋人か」
くすっと笑った声に、ラファエルは小さく息を吐き出す。
「いいえ。彼は…側近です。そして…将来の、わたしの伴侶の予定です」
「…恋人ではないのに?」
「えぇ。恋人と言うには…きっと、語弊があると思うので」
「成程な。言葉で全てを理解しろ、と言うものは難しいからな」
そんなやり取りを、レイは黙って見つめている。伴侶だと言われても…胸が高鳴らないのは、どうしてだろう…?その理由も、まだわからなかった。
「…それで?何をしに来たんだ?」
再び、問いかけた言葉。するとラファエルは大きく息を吐き出した。
「貴方に…きちんと、話をしようと思って」
そこで一旦言葉を切り、真っ直ぐにルシフェルを見つめた。
薄明るいだけの部屋で、濃紺の眼差しは黒曜石と殆ど変わらない色に見えた。真っ直ぐにラファエルを見つめているその姿は…完全に、"あの悪魔"の姿と重なっていた。
「わたしは…貴方に…"貴方たち"に出逢えたことは…後悔はしていません。寧ろ…良かったと、思っています」
「…ラファエル…」
ラファエルのその口元に、小さな微笑が浮かんでいた。
「貴方がいなくなってから…正直、色々ありました。でも…今のわたしがいるのは、やっぱり"貴方たち"に出逢えたからです。そうでなければ…今のわたしはいませんでした。そして…彼と、出逢う事もなかった…」
柔らかく微笑むラファエル。けれど、その眼差しだけは…相変わらず、醒めた色を浮かべていた。
「今後…貴方と交わることはありません。貴方との接点は、全て潰します。貴方が戦線に立つのなら、わたしは戦線には立ちません。今回のことが終われば…もう二度と、貴方に逢うつもりはありません。だから…今のうちに、きちんと話をしたかったんです。自分に…未練が残らないように」
「…そう言う事か」
ルシフェルは小さく笑いを零した。
「そこまで頑なにわたしを拒むか。まぁ、そうされるだけのことを、わたしは御前にしたと言うことだな。悪かったとは思っているよ。だが…御前がわたしを思い出したと言う事実も含め…やはり、浅からぬ関係ではあったんだろうな。わたしは…御前の手を、離さなければ良かったのかも知れないな…」
「何を今更。あれから、どれだけの月日が経っていると思っているんです?」
「…そうだな。その時間が…御前を、そこまで強くしたのか」
「それは…わたし一人で出来たことではありませんから。彼がいなければ、わたしは…貴方が思っている以上に、情けない姿だったでしょうね」
小さく、吐息を吐き出したのは…誰だっただろう。
「…貴方には…感謝、しています。だから…もう、会いたくはないんです。これ以上…貴方の記憶を…増やしたくはないんです。わかってください…」
「…ラファエル…」
「…御免なさい…」
大きく息を吐き出したラファエルは、顔を伏せる。そしてそのまま踵を返し、部屋を出て行った。
レイは、その姿を見送った後…僅かにルシフェルに視線を向けた。その眼差しは…とても、柔らかくて。
「…追わなくて良いのか?」
ルシフェルのその声に弾かれるように、レイは部屋を飛び出していた。
「…若いな」
くすっと笑ったルシフェル。その真意は…その胸の中にだけあった。
ラファエルを追いかけて階下へとやって来たレイ。けれど、リビングにラファエルの姿はなかった。
「あの…ラファエル様は…」
ソファーに座っているミカエルに問いかけると、ミカエルは小さな溜め息と共に言葉を零す。
「外へ行ったぞ。何しているんだ、側近のクセに見失うなんて」
「…申し訳ありません…」
レイはミカエルに頭を下げると、外へと追いかけて行く。
そして、ここへ来る時に通った大きな湖の傍で、その姿を見つけた。
「…ラファエル…」
呼びかけた声に、ラファエルは背中を向けたまま笑った。
「遅いですよ」
「…済みません…」
小さくつぶやいた声に、ラファエルはやっと、その顔を向けた。
とても…哀しそうな…苦しそうな表情を。
「…貴方には…言っていませんでしたね。あの別荘を、ミカエルと一緒に所有することになった理由」
「…はい。聞いてはいませんが…」
「あの別荘は…わたしの"逃げ場"、だったんですよ」
そう言って、ラファエルは小さく笑った。そして、草の茂る畔に腰を下ろした。
「わたしが…ルシフェルを失った現実から逃げる為。その為に、ミカエルが見つけて来たんですよ。王都にいれば、色々思い出すこともあるだろうからと…。でも…今は、彼がここにいます。ここに…彼の記憶が、染み付いてしまった。だから…もう、何処にも逃げられない…」
「…ラファエル…」
だから…あそこまで、あからさまにルシフェルとの接点を潰そうとしていたのだろう。
その気持ちは…とてもわかる。けれどそれは…。
「…今でも…好きなんですね…ルシフェル様のこと…」
「…レイ…」
ずっと…頭の何処かに引っかかっていたこと。胸の奥に、引っかかっていたこと。それが…目の前に、見えた気がした。
「あのヒトが…貴方の恋悪魔だった"悪魔"が…今でもずっと、貴方の心の中にいる。だから…苦しいんですね。貴方は…前に、わたしに言いましたよね。貴方が…心の傷の痛みを感じなくなる時は、死ぬ時だと。一生この地に捕らわれ…逃げることも叶わず、その罪に捕らわれて生きて行くのだと。それは…今でも、あのヒトが好きだから。愛して…いるから。だから…胸が痛いんですよね?今でも…忘れられないから…」
「………」
ラファエルは、口を開かなかった。けれど、真っ直ぐにレイを見つめていた。
「ずっと…ここに来る前から…ルシフェル様の話が飛び込んで来た時から…ずっと何かが引っかかっていたんです。幾らわたしが貴方に"愛している"と言っても、貴方から同じ言葉が返って来たことがない。それは、どうしてだろうと。必要とされていることはわかっています。頼りにされていることも。でも…一度も、"愛している"と言われたことはなかった。だから…不安、だったんです。貴方が、何を考えているのか…わからなくて」
そう、言葉を紡ぎながら…レイも、ラファエルから視線を逸らすことはなかった。
真っ直ぐに見つめた眼差しは…その心と同じで真っ直ぐだった。
「でも…先程のラファエルとルシフェル様の話を聞いて…わかりました。貴方は、今でもあのヒトが好きなんだと。愛しているのだと。だから…わたしには言わなかったのだと。貴方が、真っ直ぐなヒトだったから…言えなかったんだとわかりました。だから…それはもう良いんです。でも…御免なさい。少しだけ…一人で、考えさせてください…」
そう言うと、ラファエルの返事を聞かずに、レイは踵を返して別荘へと戻って行った。
ラファエルはその背中を見送り…大きな溜め息と共に、その場に仰向けに寝転んだ。
空には…沢山の星が見える。
ラファエルは…レイの告白を、どんな気持ちで聞いたのだろうか。
真っ直ぐに空を見上げたその眼差しは、とても醒めた色をしていた。
どれくらいの時間が経っただろうか…足音が聞こえたかと思うと、声をかけられた。
「風邪引くぞ、こんな所で…」
「…ミカエル…」
くすっと小さく笑ったミカエルは、ラファエルの隣に横になると、同じように空を見上げた。
「レイが一人で帰って来たからな。心配で見に来てみれば…こんな所で寝転んでいるだろう?放って置けないじゃないか」
「…心配症ですね…」
ラファエルも、小さく笑いを零す。
多分…ミカエルが来なかったら、ずっとここで、夜空を見つめていただろう。
レイだけではなく…ラファエルもまた、ここで、一人で色々と考えていた。
「大丈夫か?」
問いかけたミカエルの声に、ラファエルは笑った。
「大丈夫ですよ。わたしは、そんなに…弱くはないです」
「弱いとか、弱くないとか…そう言う問題じゃない」
「じゃあ…何を問いかけたんですか?」
ふと、ミカエルに視線を向けたラファエル。ミカエルは、真っ直ぐに空を見上げていた。
「レイとのことだ。御前とルシフェルのこと…気にしているんじゃないかと思ってな…」
「…ミカエル…」
思わず、上体を起こしたラファエル。けれどミカエルは、微動だにしない。内容が内容だけに…ラファエルの顔を見ない方が、話しやすいのかも知れなかった。
「御前は大事な親友だが、未だ嘗て、恋愛感情を抱いたことはない。だから、ある意味冷静で見ていられたのかも知れないが…少なくとも、御前とルシフェルが一緒にいるところを見て、良い気はしない。御前の気持ちがどうであれ…御前たちの関係を知っていれば、当然だろうな。だから、彼奴も堪えたんじゃないかと…な」
「…そう、ですか…」
ラファエルは溜め息を一つ。だからレイも、急にあんなことを言い出したのだろうか。
「…そんなつもりはなかったんですよ。わたしはただ…彼が魔界へ降りる時に見送れなかったものですから…その時に言えなかったことを言いたかっただけで…」
「それだけの想いが詰まった言葉だろう?そりゃあ、嫉妬もするだろう」
「………」
口を噤んでしまったラファエル。ミカエルはその時になってやっと、ラファエルへと視線を向けた。
その苦しそうな表情を前に…ミカエルも上体を起こす。そして、俯いているラファエルをじっと見つめた。
「本当はな…わたしが、御前をずっと護ってやりたかったんだ。もしも、御前に恋愛感情を抱けていたら…御前が、わたしに恋愛感情を抱けていたら…何かが違っていたのかも知れない。だが現実は違う。御前もわたしも、御互いに親友ではあれど、恋人には一生なれない。だから、こうして見守ることしか出来ない。それは悔しいが…それはそれで、割り切っている。だが…レイは違うんだろう?御前はともかく…彼奴は、御前に好意を寄せている。だからこそ、御前を護ろうと必死になっているんだろう?そうだとしたら、ルシフェルに嫉妬しても可笑しくはない。割り切るまでには、時間がかかるものだ。御前が、彼奴を信じていると言うのなら…もう少し、待ってやったらどうだ…?」
その言葉に、ラファエルはミカエルへと視線を向けた。
「…待つ…?」
「あぁ、待つんだ。彼奴がどんな答えを出すのか。もし、御前を信じられないと言うのなら仕方がない。だが、それでも御前が良いと言うのなら…御前はどうする?」
「………」
その眼差しが、揺れている。困惑しているのは確かなことだった。けれど、まだ答えは見つからない。
「…ゆっくり、考えれば良いんだ。一人で不安なら…わたしが、傍にいる」
ミカエルはラファエルを見つめたまま、そっとその手を握った。
とても、冷たい手。それは…何を思ってのことか。
いつでも、傍で見守っていてくれる。それは、ずっと感じていた。
大切な親友だからこそ…心配は、かけられない。ずっと、そう思っていた。だから…一度も、ミカエルの前で泣いたことなどなかった。
それが…恋悪魔が殺された、あの時でさえ。
けれど今は…どうしても、気持ちを抑えることが出来なかった。
その手を包み込む暖かさ。それは、ミカエルがずっとラファエルに向けていた想いなのだと。
「…有難う…」
小さく笑ったラファエル。そのヴァイオレッドの瞳から、一筋の涙が零れていた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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筋金入りのオジコンです…(^^;
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