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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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絶愛 5
こちらは、本日UPの番外編です
 ※番外編のメインは天界側です。本編の遠い伏線と言う感じです(苦笑)
6話完結 act.5

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◇◆◇

 翌朝。レイは殆ど眠れず、浮かない表情のまま部屋から出て来た。
 夕べは、ラファエルに酷いことを言った。その後悔はずっと胸にあった。けれど…あの時言ってしまわなければ、きっといつまでも言えないままだっただろう。そう思うと、良いきっかけだったのだろう。
 リビングへと降りて行くと、そこにはシーリアがいるだけだった。
「おはようございます」
 にっこりと微笑むシーリアの姿に、レイもほんの少しだけ表情を和らげる。
「…おはようございます。貴女一人ですか?」
 問いかけた声に、シーリアは頷いた。
「ミカエル様もラファエル様も、まだ寝ていらっしゃいます。夕べ、遅かったようで…」
「…そうですか…」
 ラファエルがきちんと戻って来ていることは、ドアが開いた音でわかっていた。主を置き去りにしてしまったことは反省しているのだが…まだ、割り切れない自分がいる。
 暗い表情のまま、ソファーに腰を下ろしたレイの様子を伺うように、シーリアは小さく問いかけた。
「わたしは…ルシフェル様のことを存じ上げなかったのですが…レイ様は御存知でした?」
「…名前は知っていました。顔を合わせたのは…昨日が初めてですが」
 そう答えたレイに、シーリアはその視線を伏せた。
「熾天使でいらっしゃったんですよね?わたしは、軍に入ってからまだ間もないですから、詳しいことは良くわかりません。ですが…熾天使の身位を捨ててまで、魔界へ降りなければならなかった理由は…どんなものだったのでしょうか…魔界にもあの方を受け入れられない方がいらっしゃるようですし…魔界へ降りたことが、本当に…良いことだったのでしょうか…?」
 そう言われ、レイは答えに詰まった。
 天界は、決して居心地の良い場所ではなかった。だから、魔界へ降りて、自由になった。そう…思っていた。けれど現実は…魔界へ降りても、全てに受け入れられている訳ではない。実際、魔界の医師は、ルシフェルの治療を拒否している。
 彼が、堕天使だと言う理由で。
 堕天使は…何処へ行っても、堕天使なのだ。決して、その事実は消えることはない。場所が変わったくらいでは、寧ろ居心地の悪さだけを繰り返すだけなのではないか。
 そう思うと…本当に、何の為に天界を捨てたのか。ただ、現実から逃げる為だけの理由だったのだろうか…?
 考えは纏まらない。それは、レイが当事者ではないから。
「…魔界へ降りた本当の理由は…多分、本魔にしかわからないと思います。憶測であれこれ言うのは簡単ですが…現実は…甘くはない。それは、事実のようですね…」
 小さな溜め息と共に、レイが吐き出した言葉。それは…自分自身に、返って来る言葉のようで。
「でも、ここにはミカエル様もラファエル様もいらっしゃいます。いざとなれば、こうして手を差し伸べて下さいます。それでも…魔界で生きて行く意味があるのでしょうか…?」
 顔をあげ、真っ直ぐにレイを見つめた眼差し。その真っ直ぐな瞳に、レイは再び、小さな溜め息を吐き出した。
「魔界で生きて行く意味と言うよりも…天界にいられない理由が、あったのではないですかね。昔のことは…わたしにも、全てはわかりません。でも…生き方を変えることは大変です。そうしなければならない理由が、ここにあったのなら…本当は、離れたくはなかったとしても…行かなければならなかったのかも知れません…」
 そう。ルシフェルは夕べ、言っていたではないか。ラファエルの手を、離さなければ良かったのか、と。
 彼もまた…後悔しているのかも知れない。
 それを、嘲笑うことは…レイには出来なかった。勿論、同情することも違うとは思う。
 ただ、今言えることは…ルシフェルもまた…苦しかったのだろう。その想いを遂げることも出来ず…置いて行くことしか出来なかった。それでも、それが自分が選んだ道ならばと、精一杯気を張っていたのだろう。
 何も知らない自分が、立ち入っても良い場所ではなかったのかも知れない。けれど、そこには…ラファエルがいる。だからこそ…踏み込んだはず。
 そして…レイの現実もまた、目の前にある。
 不意に、レイは笑いを零した。
「…どうされました…?」
 問いかけられた言葉に、大きく息を吐いて笑いを収める。
「どうも…深く悩み過ぎたようです。悩んだところで…答えなど、何も変わらないのに…目先のことに捕らわれ過ぎました」
「…レイ様…?」
 そう。悩んだところで、答えは変わらない。自分はラファエルの側近であり…これからもずっと、傍にいると…護って行くと、誓ったはず。そして、ラファエルもそれを受け入れてくれたはず。だからこそ、こうしてここにいるのではないか。それを疑う理由など、何処にもない。
 今の自分は…ルシフェルよりも、ラファエルに近いところにいる。それが、何よりの現実。
 そうわかれば、直ぐにでもラファエルに謝らなければ。
「…有難うございます。話をしていたら、気が晴れました」
 正直、シーリアには何のことかわかっていないだろう。だが、レイにとっては良い気分転換になったことは間違いなかった。
「ラファエル様の様子を見て来ます」
 レイはそう言うと、ソファーから立ち上がる。そして、ラファエルの部屋へと向かった。
 残されたシーリアは、訳がわからないと言う表情を浮かべていたものの…レイが元気になったことは良かったと思って、その背中を見送っていた。

 ラファエルの部屋の前へやって来たレイは、そのドアをそっとノックする。だが、返事はなかった。
「…開けますよ」
 小さく声をかけ、そっとドアを押し開ける。そこには、ベッドの上で丸くなって横になるラファエルの姿が見えた。
「…起きてらっしゃいますか…?」
 念の為問いかけてみる。けれど、相変わらず返事はない。そこで傍へ歩み寄り、その顔を覗き込んだ。
「…起きてらっしゃるのなら、返事をして下さい」
 ヴァイオレッドの眼差しとしっかり目が合うと、レイはそう言って小さく笑った。
「…随分、機嫌が良いみたいですね。笑い声が聞こえましたよ。また、シーリアと一緒にいたんですか…?」
 ミカエルがまだ起きていない事はわかっていたようだ。となると、レイとシーリアが二人でいる、と言う確率は高くなるのだから、無理もない。
「シーリアとは、何もありません。ちょっと、話をしただけです。でも…おかげで、気分は晴れましたけれどね」
「………」
 レイの言葉に、ラファエルの表情が明らかに変わる。ムッとした表情は、普段は誰にも見せない素の表情。それが…とても、愛おしかった。
 レイは小さく息を吐き出すと、ラファエルに頭を下げた。
「…夕べは御免なさい。勝手なことを言って…多分、貴方を傷つけた。反省してます…」
 素直にそう謝ると、ラファエルは小さな溜め息を吐き出して上体を起こした。
「わたしも…貴方を立ち合わせたことは悪かったと思っています。それに関しては…ミカエルにも言われました」
「…ミカエル様に…?何を言われたんです?」
 ベッドの端に腰を下ろして視線を合わせると、レイはラファエルに問いかける。
「何をって…あんな話を聞かせたら…貴方が、ルシフェルに嫉妬するんじゃないかと…」
「………」
 ラファエルの声に、レイは小さく溜め息を吐き出す。
 何処までも…ミカエルと言うヒトは侮れない。顔を合わせたのはほんの一瞬なのに…見抜かれていたとは。
「…違いますか…?」
 躊躇いがちに問いかけられた声に、ハッとして顔を上げる。真っ直ぐに自分を見つめる眼差しは、とても不安そうにも見えた。
「…その通りです。余りに図星過ぎて、言葉が出ませんでした…」
 レイはそう言って、小さく笑った。
「流石、ミカエル様ですね。貴方のことを、良く見ているから…纏わり付いているわたしのことも、そこまでわかるのでしょう」
「…そうかも知れませんね。夕べ…ミカエルに言われましたよ。もしも、彼がわたしに恋愛感情を抱けていたら…わたしが、彼に恋愛感情を抱けていたら、何かが変わっていたかも知れないと。でも、現実はそうではない。だから…見守る事しか出来ない、と。わたしは…親友として、ミカエルには心配をかけたくなかった。でも…彼にはそれが不服だったのかも知れません。わたしは…想い入れたこと以外には、本当に目が向かないのだと反省しましたよ。今まで…ミカエルにも、沢山心配をかけて…不安にさせて…それでも、親友以上の一番大切なヒトにはなれない。それでも彼は、それに甘んじていてくれる。わたしは…どれだけ恵まれていたのか…やっと、気が付いたんですよ」
 そう言って、ラファエルも小さく笑った。
 そして。
「御免なさい。貴方が心配していた程…深い意味など、何も考えてはいなかったんです。ルシフェルに対しても…恋悪魔だった悪魔に対しても、もう愛情はありません。言ったつもりでいましたが…言っていなかったことも、気付かなくて」
 そっと手を伸ばし、レイの頬に触れた指先。その手はまだ冷たかったけれど…それでも、冷え切ってはいなかった。
「貴方を…愛しています。だから…傍に、いて下さい」
 甘い、囁き。そして、重ねられた唇。
 それが、ラファエルの精一杯の想い。
 レイはラファエルの身体を抱き寄せ、その耳元で囁いた。
「勿論です。誰に頼まれたって…邪魔されたって、貴方の傍を離れるつもりはありません。だから…傍に、います。ずっと…」
 そして、その視線を合わせる。そのヴァイオレッドの眼差しに魅入られた時から…決して、傍を離れないと…ずっと護って行くと決めたのだから。
「将来の伴侶として…本当に、認めていただけたのですか?」
 ふと、問いかけた言葉に、ラファエルはくすっと笑った。
「他に、誰にそんなことが言えます?一蓮托生なのですから。だったら、そう思うのが一番簡単です。それに…わたしに熱を与えられるのは、貴方だけですよ…?」
 そう言って、まだ冷たい身体を摺り寄せて来るラファエル。
 そんな姿に、レイは小さく笑ってラファエルに口付ける。
「…ラファエル…」
 名を呼びながら、身体を重ねる。
 明るい日差しの差し込む部屋の中、上気していく肌がうっすらとピンク色に染まるのがわかった。
 甘い嬌声も、その吐息の一つさえも、誰にも渡さない。そう言わんばかりに、その身体に印を、熱を、刻み込んで行く。
 そして。身も心も満たされたラファエルが眠りに落ちたその隣で、レイもその身体を抱き締めたまま、初めて共に眠りに落ちていた。

◇◆◇

 レイがラファエルの部屋へと行った頃。ミカエルは、階下へと降りて来ていた。
「…独りか?」
 リビングにいたのは、シーリア一名。声をかけられたシーリアは、ソファーから立ち上がって挨拶をすると、改めてミカエルに言葉を放つ。
「レイ様が先程降りて参りましたが、ラファエル様の様子を見に行かれると言って、上へ。入れ違いだったようですね」
「…そうか。まぁ…長くなる、か…」
 小さな溜め息を吐き出したミカエル。まぁ…半分は自分が焚きつけたようなモノなのだから、その辺りは諦めるしかなかった。
 ラファエルが、元気になるのなら。その想いが全てであった。
「…ルシフェルは?眠っているのか?」
 問いかけたミカエルに、シーリアは言葉を返す。
「下へ降りる前に様子を見ましたが、落ち着いて眠ってらっしゃいました。まだ当分は安静にしていなければいけませんが、安定はしています。付きっ切りで看病する必要はなさそうですので、私もここで何か御手伝いを…」
 そう言いかけたシーリアに、ミカエルは小さく笑った。
「余計なことを気にする必要はない。ここでの仕事は、全て割り振られているから。貴女がやるべきことは、ルシフェルの看病だ。その為に、貴女を連れて来たのだから」
「ですが…」
 ミカエルにそう言われても、やはり気が引けてならない。
「真面目だね、貴女は。まぁ、ルシフェルが動けるようになったら、散歩の付き添いだとか、話し相手だとか、色々やることも出て来るだろうから。それまではゆっくり休むと良い」
 そうは言ったものの、その前にルシフェルには余計なことをしないように釘をさしておかなければ…と、ぼんやり考えていた。
「…ルシフェルの様子を見て来るか…」
 もしかしたら、もう起きたかも知れない。話が出来るようなら、早い方が良い。そう思い立つと、ミカエルは再び階段へと足を向けていた。

 ルシフェルの部屋のドアを軽くノックすると、中から返事が返って来た。
『…はい?』
「…ミカエルです。入ります」
 そう声をかけ、ドアを開ける。すると直ぐに、ベッドに上体を起こしたルシフェルの姿が見えた。
「…おはようございます」
「…あぁ、おはよう」
 ただの挨拶だが、流石のミカエルも僅かながら緊張していた。
 昨日は、何だかんだでルシフェルと話をする時間はなかった。一晩経っているものの、ミカエルにしてみれば数年振りの会話だった。
「…気分は?」
 問いかけたミカエルの声に、ルシフェルは小さく笑った。
「医療結界の中、だ。今更良いも悪いもないだろう」
「…そうですか…」
 ミカエルの緊張は、未だ解けない。以前…ルシフェルが魔界へ降りる直前に感じたような怒りも憎しみも、流石に薄らいではいるものの…全てを許すことは、まだ出来ない証拠だったのかも知れない。
「何の用だ?」
 ミカエルの表情を伺いつつ、ルシフェルはそう問いかける。
「ここへ来た理由は…夕べ、シーリアから聞いていると思います。ラファエルは明日、わたしも一週間の滞在でここを去ります。次にわたしがここへ来るのはいつかはわかりませんが…それまで、シーリアが貴方の看病と面倒を見てくれます。他にも使用人はいますので、馬鹿なことはしないとは思いますが…シーリアには、決して手を出さないで頂きたい。それを、伝えに来ました」
「…手を出すなだと?一体、何の心配をしているんだ、御前は…そんなことをするはずがないだろう」
 思わぬ話に面食らったようなルシフェルであったが、ミカエルの表情は真剣そのものだった。
「そんなことはわからないでしょう?万に一つの可能性であったとしても、早いうちに芽を摘むのがわたしの仕事ですから」
「…そうか。相変わらず真面目だな、御前は」
 先程シーリアに言った言葉と同じ言葉を返され、ミカエルは僅かに顔を顰める。
「彼女に何かあったら困りますから」
 そう言ったミカエルに、ルシフェルは小さく笑った。
「御前の恋人か?それとも、片思いか?」
「…どちらでもありません。彼女はわたしの軍の、まだ見習いの医師です。未来のある医師を、潰したくはないと言うだけのこと」
 ルシフェルの言葉に、ミカエルは平然とそう答える。
 その言葉の通り、今のところミカエルとシーリアには、上司と見習い医師と言う接点しかない。勿論、これから先もそのつもりではあるが…ルシフェルと関わることになった以上、ほんの少しだけ余分に接点が増えるのだが。だからこそ、余計な心配を増やしたくはないのだ。
 そんな思いが、顔に出ていたのだろうか…ルシフェルは、小さな溜め息を一つ。
「まぁ、良いけれどな。余計な心配をし過ぎだ。そんなことよりも、もっと考えなければならないことがあるんじゃないのか?」
「…何のこと、ですか?」
 思わず問い返した声に、ルシフェルはその紺碧の眼差しを真っ直ぐにミカエルに向けた。
「自分のことだろう?わたしに聞くのはどうかと思うぞ?御前の胸の中に燻っている何かがあるはずだ。どうせ、わたしに対する文句の類だろうが?それをまず、はっきりさせたらどうだ?」
 そう言われ…ミカエルは一瞬ドキッとする。
 自分自身でも、判別の付かない何か。それが、胸の奥にあるのは確かだった。けれども、自分でも定かではない状態であるにも関わらず、ルシフェルに見抜かれるなど…
 ミカエルは目を伏せ、小さく溜め息を吐き出す。
「…貴方は…どうしてそう、ヒトの心の奥底まで覗き込むんです…そのうち、嫌がられますよ」
「別に、誰彼構わず覗き込む訳じゃない。御前は特に、顔に出るからな。天界で上位を守って行くつもりがあるのなら、その辺を気をつけるんだな。そんなことでは、熾天使にはなれないぞ?」
 笑いを含んだ声で答えるルシフェルに、ミカエルは更に不快を露にする。
「ほら、また顔に出ているぞ。わたしのことが気に入らない、とな」
「…それが、元熾天使としての貴方の助言ですか?だったら、大きな御世話です。わたしは、熾天使になるつもりはありませんし、その身位も封印するつもりですから」
 ミカエルの言葉に、ルシフェルの表情が僅かに変わった。
「熾天使の身位を封印する?では、神の声はどう聞くつもりだ…?」
 ミカエルは…真実を、知っているのだろうか?
 勿論、ルシフェルはそれを顔には出さないが。
「わたしには…神の声は、聞こえません。多分、相性が悪いのでしょう。嘗ての熾天使たちのように、心のそこから神を崇め、神が全てであれば話は別かも知れませんが…わたしは、神に頼るつもりはない。わたしの手で、天界を守って行きます」
 真っ直ぐにルシフェルに向けた、碧の眼差し。それは、強い意志の表れだった。
「…ラファエルは何と?御前の意思は、伝えているのか…?」
 そう問われ、小さく頷く。
「勿論。ラファエルも、納得してくれています。わたしは、ラファエルが何を背負っていようが、関係ない。ずっと、片腕としていて貰うつもりですから」
「…そう、か。まぁ…御前がそのつもりなら、わたしは何も言わないけれどな。所詮、わたしは天界を捨てた身だ。口出しする権利はない。御前がそれでやって行けると思うのなら、突き進んでみれば良い」
「勿論、そのつもりです。貴方に何を言われようが、変えるつもりもありませんから」
 そう言い放つと、ミカエルは大きく息を吐き出す。
「…話はそれだけです。失礼します」
 その言葉と共に頭を下げ、踵を返す。
 そして振り返らず廊下へと出てドアを閉めると、大きな溜め息を一つ、吐き出した。
 ルシフェルの言う通り…燻っている気持ちがあることは間違いない。けれど、まだそれが何なのか…ミカエルには理解出来ていなかった。だが、今回の話を聞いてから再燃したその燻りは、恐らくルシフェルが原因であろうと言うことだけはわかっていた。
 だったら尚更…ルシフェルがここにいる間に、どうにか解決すれば良いのだが…。
 再び溜め息を吐き出した時。上の階から何かが聞こえた気がした。
 思わず、階段へと視線を向ける。だが、直ぐに視線を逸らせると階下へと向かう。
 僅かに聞こえたのは…いつもより多少高いが…多分、ラファエルの声。それも…嬌声。
 まるで、ラファエルの情事を覗き見しているようで…酷く…居心地が悪い。
 逃げるようにリビングへと戻って来たミカエル。その姿を見るなり、シーリアがソファーから立ち上がった。
「…御顔の色が優れないようですが…大丈夫ですか…?」
 そう問いかけられ、ミカエルは小さな溜め息を吐き出す。
 頭の中が…混乱している。
「…大丈夫だ。ちょっと、散歩に行って来る。食事の時間までには戻って来るから、留守番を頼むな」
「…はい…」
 病魔を含め、まだ三名も屋敷にいるにも関わらず、留守番とは奇妙な感じがしなくもないが…まぁ、誰も降りては来ないのだから、仕方がないのだが。
 別荘の外へ出たミカエルは、そのまま夕べラファエルと一緒にいた湖とは反対側の、森の中へと向かう。
 その、道すがら。
「…ったく…何をやっているんだか…」
 それは…誰に向けた言葉だったか。勿論、聞いている者は誰もいなかった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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