聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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御伽草子
昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
----と言うと、何だかとっても長閑な昔話だけれど……大体、"おじいさん"と"おばあさん"なんて、抽象的過ぎると思いません?
"昔々っていつ頃!?"あるところ"って何処!?
それに、"おじいさん"と"おばあさん"だって、ちゃんと名前ってモンがあるんですから。
まぁ、注釈を入れるならば、"昔々"なんて、どれくらい前のことかなんて覚えていないくらい前。多分、あなた(今これを読んでいる"あなた"ね)が、まだ影もカタチも微塵もないくらい、ずっとずっと前。"あるところ"とは、一応日本の何処か。秘密の場所。取り敢えずそう言うことにしておきましょう。それが、昔話の定義と言うものです。
さて、本題…と言うか、本編に戻りましょう。
そうです。だから、おじいさんとおばあさんが住んでいたんです。でも、見ず知らずの人に、いきなり"おじいさん"と"おばあさん"なんて、抽象的に言われたくない訳で……。
本人(?)たちの希望通り、ここは"おじいさん"と"おばあさん"はやめにして、彼らの申すところの"本名"で、話を続けることにしましょうか。
"おじいさん"ならぬ"エース"と"おばあさん"ならぬ"デーモン"。それが、彼らの申すところの"本名"である訳で…。
ここから先、多少(…?)の無理は承知で、物語は進む訳です。
時代が幾ら昔で、生活が今程ぎすぎすしていなくて大変ではないとは言っても、やはり何かしらで生計を立てていかなければならない訳です。
"おじいさん"…もとい。"エース"は、山の竹林から竹を切って竹細工を作り、それを売って生計を立てておりました。
その日もエースは"おばあさん"…もとい、"デーモン"の手作り愛妻弁当を手に、竹林へ竹を切りに山へと入って行ったのであります。
「…毎日毎日、竹を切りに来るのは良いが…俺らは良く竹細工だけの稼ぎで生活が出来るモンだな…」
それを疑問に思ってはイケナイ…と、思わず突っ込みたくなるような台詞を宣いながら、いつもの通り竹を切っていたエース。
そして、何本目かの竹を切り終え、溜め息を一つ吐き出す。
「ちょっと休憩するか。ま、一服、一服」
(昔話の定義を早々と打ち破り…!?)エースは懐から一包みの煙草を取り出してその一本を口に銜えると、火を付け、ゆっくりと紫煙を吐き出す。
と、その時。エースの視界に、竹の一節が光り輝いているのが見えた。
「…何だ!?」
煙草を口に銜えたまま、エースは怪訝そうに眉を潜め、光り輝く竹へと歩み寄る。
「何かあるのか…?」
首を傾げつつも、エースは鉈を握る手の力を僅かに強め、光る竹に向け、勢い良く振り下ろした。
流石に毎日竹を切り続けていただけあって、光る一節はスパッと見事に切り落とされた。
その刹那。
「あ……ぶないじゃないのっ!?あともう少しずれてたら、俺の首がぶっ飛んでたじゃない…っ!!」
「な…っ!?」
エースは驚いて目を見開く。ぽかんと開いた口元から、彼が銜えていた煙草が落ちかけたが、ふと我に返ったエースは慌ててそれを銜え直す。そして改めて視線を向けた先には、すっぱりと切られた竹の中に、ちょこんと収まっている小さな姿。
「御前…何者だ?」
エースがそう問いかけたくなる気持ちも、わからないではない。
「俺?竹の中から出て来たんだもの。"かぐや姫"って相場は決まってるでしょうに」
「…"かぐや姫"?姫ってことは、女、だよな?」
その姿を用心深く眺めながら問いかけた声に、"かぐや姫"は平然と答える。
「いや?男だけど。文句ある?」
「………」
納得のいかない、と言う表情を浮かべたエース。
「御前はそれで良いのか?」
思わず問いかけた声に、"かぐや姫"は僅かに眉を潜めた。
「まぁ、納得はしてないけどね。何で俺が"かぐや姫"だかなぁ…姫って呼ばれても、嬉しかないね」
小さな溜め息を吐き出す"かぐや姫"。
「じゃあ、御前の本名は?」
改めてそう問いかけたエースに、"かぐや姫"は暫く考えた後、それを口にした。
「"ルーク"、ね。あんたは?」
「俺は"エース"。ところで、俺に何か用でもあったのか?」
問いかけるエースの声に、"かぐや姫"…もとい、"ルーク"は首を傾げた。
「何で?」
「だって、呼んだだろう?ほら、竹光らせて…」
「あぁ、あれ。別に意味はないよ?ほら、竹林の中って薄暗いじゃん?だから、ちょっと明るくしただけだよ。暗いところにいると、目が悪くなってイケナイよね。全く…」
「………」
「でもまぁ、あんたが俺の"ウチ"を壊しちまったんだから、養って貰わないとな」
「…おい…」
「責任、取ってよね」
「………」
まんまとルークに一杯喰わされたエース…。だが、確かに"かぐや姫"の家であった竹を切ってしまったのはエースなのだから、仕方がないと言えばそれまで…。
「まぁ…身体も小さいしな、食費もそんなにかからないだろう。いざとなったら、御前を見せ物にでもして、金を稼ぐか」
「悪どいなぁ~。でも、カラダは売らないからね~」
「…ったく…」
溜め息を吐き出しつつ、エースは渋々、ルークを連れてデーモンの待つ家へと戻った訳である…。
さて、こちらはデーモン。
エースが竹林へと仕事に出かけると、家の中を掃除してから、定例通り川へと洗濯に出かけた。
「…そろそろ洗濯機を買って貰わないとなぁ。手洗いは思った以上に手が荒れるんだぞ?せめて、ゴム手ぐらい欲しいよな~。エースの今の稼ぎじゃ、洗濯機なんて夢のまた夢、だしなぁ…」
ブツブツと文句を言いながらも、選択を始めるデーモン。
だが、文句を言っているわりには、暫くすると鼻歌が混じり、洗濯にも精を出し始めていたりする…。
ふと洗濯の手を休め、顔を上げたその時。
川上の方から、何かが流れて来るのが見えた。
「…何だ?」
流れて来る物体をよくよく見ると、それはどうやら、巨大な桃のようだった。
「お~、でっかい桃だなぁ。良い色に熟れてるじゃないか。これは今夜のデザートに持って帰るか。エースと二名でも、食べごたえがあるぞ~」
思いがけずに得た大きな桃に、既に洗濯どころではない。デーモンも、異様に上機嫌である。
だが、所詮、川を流れる巨大な桃である。そう簡単に拾えるはずもなく…。川の中に身体半分浸かることになりながらも、一抱えもある大きな桃を何とか手に入れ、意気揚々と帰路に着いた。
デーモンが巨大な桃と共に家に帰って来たが、今日は仕事がはかどっているのか、エースはまだ帰って来ていないようだった。
「よいしょっ…と!」
大きな桃を床へと降ろし、とりあえず洗って来た洗濯物を干さねばならない為、デーモンはそのまま庭へと出る。
洗濯物を干している間にも、巨大な桃からは甘い芳香が漂って来る。
「…腹、減ったなぁ…」
思わずそうつぶやくと、途端にそれに応えるかのように、ぎゅるるる~っとお腹がなる。
「…一口ぐらい、良いよな?」
桃の甘い芳香に耐え切れなくなったデーモンは、口に溜まった涎を飲み込むと、そそくさと台所へと消えて行く。そして、包丁と俎板を手にして、いそいそと戻って来た。
巨大な桃を俎板の上に乗せ、さて包丁を入れようか…と思ったその時。
「……ん?」
じゅるじゅるじゅる…と、何かを啜るような音が、すぐ近くから聞こえた。
何かと思って耳を澄ますと……その音の根源は、どうやら目の前の巨大な桃の"中"から聞こえているようだった。
「…何だ?この桃は…??」
首を傾げたその時。
デーモンが包丁を入れる前に、なんと、その桃がぱかっと割れたのだ。
「お……っ!?」
「…ぷは~っ!やっぱり旨いな~、この桃。丁度喰い時だった~」
「………」
呆然としながらデーモンが見つめている先……割れた桃の中から、予想もせずに、一つの姿が現れたのだ。
どうやら、内側から桃を喰っていたようである。ポコンと膨れた腹が、その証拠。
「…御前…」
やっとで口を開いたデーモンの声に、"桃の中の姿"は、デーモンに気付いて視線を向けた。
「よぉ!」
「…いや、"よぉ!"ではなくて…」
「じゃあ…おすっ!」
「あのなぁ…」
呆れ顔に変わったデーモン。吐き出された溜め息の意味を、多分"桃の中の姿"は気が付いていない。
「…流石に、吾輩も目のやり場に困るんだが…取り敢えず、何か着てくれ。今、持って来るから…」
一応、上から下まで視線を巡らせたデーモン。裸で飛び出して来たのだから、当然、"男"であることは確認したようである。
「気になる?俺はあんまり気にならないんだけど…」
「吾輩は気になるんだ…っ」
そう言いながら、持って来た手拭いを投げつける。
くすくすと笑いながら、"彼"は手拭いに包まりながら、桃の中から出て来た。
デーモンの腕に一抱えの桃の中にいたのだから、当然その大きさは一尺(今風に言うならば、約三十センチ)程の小人である。しかも、出て来たのが"桃の中"、なのだから、その謎は尚更深まる訳で…。
「御前、何者だ?」
折角、エースと一緒に食べようと思って持ち帰って来た桃を、先に喰われてしまったのであるから、多少不機嫌であるのは仕方のないことである。
だが、そんな雰囲気も、桃の中から出て来た"彼"には伝わらないらしい。
「さぁ…?俺にも良くわかんないんだけどさぁ。気が付いたら桃の中にいてさぁ、あんまり腹が減ったから、つい喰っちまって。そしたら、外に出て来たって訳よ。だから、俺って何者なんだろう…?」
「…あのなぁ…」
デーモンはその答えに、心底呆れているのだろう。既に不機嫌どころの問題ではないようだった。
「じゃあ、桃から生まれたのだから、御前は"桃太郎"だ」
(半ば投げやりな言い方だが…)デーモンは、その謎の"彼"にそう命名した。
すると"彼"…"桃太郎"は、眉を潜める。
「え~…なんかさぁ…その名前、ダッサー…」
流石にその言葉にはカチンと来たデーモン。
「じゃかしいっ!名前がないと呼べんだろうがっ!」
「名前ならあるもんっ!」
「自分が誰だかわからないと言ったじゃないかっ!」
「誰だかわかんない、なんて言ってないよぉ。"何者だ?"って聞かれたから、"わからない"って言っただけじゃんよぉ。俺には"ライデン"って名前があるの~っ!」
「わーかったから、静かにしろっ!」
「…自分だってうるさいじゃんよぉ…」
こちらも呆れたように溜め息を吐き出した"桃太郎"…もとい、"ライデン"。
「…それよりもさぁ、あんたは?」
反対にライデンから問いかけられ、デーモンは小さく溜め息を吐き出すと、口を開いた。
「吾輩はデーモン。ここで、エースと一緒に暮らしているんだ。言っておくが、ここは吾輩たちの"スゥイート・ホーム"なんだからな。邪魔するなよ」
そう答えたデーモンに、ライデンはにやりと小さく笑いを零す。
「でもさ、桃を拾ったのはあんただよな?…ってことは、俺はあんたに拾われた、ってことだ。じゃあ、ここに置いてくれるよね?」
「…うっ…」
確かに、ライデンの言い分は合っている。川に流れていた桃を拾ったのは、他でもないデーモン、なのだから。
「…食費がかさみそうだが…仕方がない、か」
これは、諦めだったのだろうか…。小さな溜め息を吐き出したデーモン。
「…吾輩もパートに出ないと、生活していけないかもな…」
こんな不本意なカタチで扶養家族が増えたことを、エースにどう説明したらいいだろう…?と、真剣に考え始めたデーモン。
だがこの時のデーモンは、エースも"かぐや姫"ルークを連れて帰って来る破目になっていることを、知る由もなかった…。
さて、何も知らずに帰宅したエースは、迎えに出て来たデーモンに向け、いきなり溜め息を吐き出した。
「…どうした?」
「いやぁ…とんだ拾い物をしてな…」
そう言うと、エースは徐ろに懐から"あるモノ"を取り出した。
「おすっ」
「…おい、エース…?」
デーモンに向け、にっこりと微笑んでそう挨拶したのは、"かぐや姫"ルーク。
「…今日、いつものように竹を切っていたら、中から出て来たんだ。"ルーク"って名前の"かぐや姫"だ」
「…"かぐや姫"…?」
怪訝そうに眉を潜めたデーモンに、エースは再び溜め息を吐き出していた。
「こいつの"家"を俺が切っちまったからな。しょうがなく連れ帰って来たって訳だ」
「まぁ…御前の言わんとしていることはわかるんだが……実は…」
デーモンも溜め息を吐き出すと一旦部屋の奥へ行き、"それ"を連れて来た。
「よぉ!」
「…おい、デーモン…?」
エースも、目を丸くする。
「川で洗濯をしていたらなぁ、大きな桃が流れて来たんだ。で、エースと一緒に食べようと思って拾って来たら、こいつが中から桃を喰い破って出て来たって訳だ。"ライデン"って名前の"桃太郎"」
「だ~からぁ、俺は"桃太郎"って名前じゃないってばっ!」
「わかった、わかった」
溜め息を吐き出すデーモン。
「…とんだ扶養家族が、一気に二名も増えた、ってことになる訳か…?」
エースの手の中のルークと、デーモンの手の中のライデンを見比べ、想い溜め息を吐き出すエース。
「生活、していけるんだろうか…吾輩たち…」
こちらも、切実な溜め息を吐き出すデーモン。だが、この二名の溜め息の理由など、扶養家族たちは気にも留めない。
そして極めつけ、ライデンの一言。
「デーさぁ~んっ!俺、腹減ったよぉ~っ!」
「あ~、俺も~」
ライデンに同意を示すルーク。
お互いを拾って来たお互いは顔を合わせると、思わず大きな溜め息を吐き出していた。
「…俺たちの、スゥイート・ホームが…」
「…桃なんかに欲を出さなければ良かった…」
今更何を言っても仕方がない訳で…。とにかく、扶養家族二名は、あっさりと家族の一員になってしまった訳である。
さて、それから数ヶ月が経ったある日のこと。
エースとデーモンに拾われた"かぐや姫"ルークと、"桃太郎"ライデンは、エースとデーモンの財を喰い潰す勢いですくすくと成長し、大きくはならないと高を括った養い親の意に反して、彼らと変わらぬ大きさにまで成長していた。
「…なぁ~んか御前ら…異様に成長が早くないか…?」
二名を拾ったのは、まだ数ヶ月前のことである。
あの当時、"かぐや姫"ルークは五寸(約十五センチ程度)であり、"桃太郎"ライデンは一尺だったはず。それが今や、二名とも軽くデーモンを上回る身長である。ルークに至っては、エースと然程背丈も変わらないと来た。デーモンが疑問に思う通り、異様に成長が早かったのだ。
「しょうがないじゃん。俺たち、人間じゃないし。なぁ、ライデン?」
首を傾げたデーモンに、そう答えたルーク。そして、同意を求められたライデンも、うんうんと頷く。
「そうそう。普通の人間は、竹からも桃からも生まれないしね。でもそれを言ったらさぁ、デーさんとエースだって、年幾つなのさぁ~?」
「…悪かったな、人間じゃなくて…」
「お互い様でしょうよ」
くすくすと笑う二名に、デーモンは呆れ顔である。
因みに、姿の見えないエースは…と言うと、彼は今日も竹を切りに出かけていたりなんかする…。
「…それはそうと、御前たちも大きくなったことだし、厄介になってるんだから、少しは働こうとか言う気は起こらない訳か?」
呑気にお茶を啜りながらお茶菓子に手を伸ばす両名に、デーモンはそう問いかける。
するとルークは、にんまりと笑いを零した。
「俺はほら、"かぐや姫"だから、玉の輿にでも乗ろうかな~ってさ」
「ほぉ~。カラダは売らないんじゃなかったのか?」
「あのねぇ、デーさん。"玉の輿"ってのは商売じゃないでしょうに。まぁ、最終的には、"実家"に帰らなきゃイケナイんだけどね」
その意味深な言葉を、デーモンが聞き逃すはずもなく。
「…"実家"?御前、また竹の中に戻るのか?」
真面目な顔でそう問いかけるデーモンに、ルークはくすっと笑いを零した。
「やだなぁ、デーさんったら。俺の実家は、竹の中じゃないって」
「じゃあ、何処だ?初耳だぞ?御前に実家があるだなんて」
首を傾げるデーモンに、ルークは空を指さす。
「俺の実家は"月"、だよ。"かぐや姫"ったら、月の女神じゃないの」
「男なのに女神、ねぇ…。まぁ、良いがな。だったらさっさと実家に戻れば良いじゃないか」
「お迎えが来ないと帰れないんだよね~。それに、まだ帰る気もないしね。居心地良いんだよね、ここ。だからもう少しお世話になるよ」
「…ったく…」
溜め息を吐き出したデーモン。やがてその視線は、自然にライデンへと向く。
「…で、御前は?」
「俺?俺はねぇ、どうしようかなぁ~。一応、"鬼が島"で"鬼"が待ってるみたいだけどさぁ。遠いし、家来見つけるのも面倒だしね。それに、また戻って来るんでしょ?まぁ俺は、もう少しゆっくり考えるわ」
「…呑気者だなぁ、御前も…。どうしてこう、呑気者に育ったんだろうなぁ、御前らは…」
溜め息を吐き出すことが既に習慣になりつつあるデーモン。
この日、エースが戻って来た時、更に大きな溜め息を吐き出すことになるとは、この時はまだ知らないデーモンであった----
その日の夕方、仕事から帰って来たエース。
「只今」
「アァ、お帰り。晩飯、出来てるぞ」
エースを出迎えたデーモン。だが、エースは奇妙な顔をしている。
「…どした?」
「あぁ…ライデンにお客だ。すぐそこで迷っているところに、偶然遭遇したんだが…」
「…お客…?」
当然、デーモンも怪訝そうに眉を潜める。
「おい」
エースが自分の背後に声をかけると、エースの後ろからその姿が現れた。
「……?」
そこにいたのは、紛れもない"鬼"、だった。
「えっと……?」
思わず首を傾げたデーモンに、"鬼"はゆっくりとその口を開いた。
「どうも。俺は"鬼が島"から来た"ゼノン"と言うんだけど…"桃太郎"…いや、"ライデン"はこちらに…?」
「え…?あぁ、ライデンならいるが…。だがどうして、"鬼が島"の"鬼"が、わざわざ…?」
「いや、暇だったから」
「………」
「…呆れるだろう?」
ぽつりとつぶやいたエースの声に、デーモンは大きな溜め息を吐き出して頷いた。
「"桃太郎"を訪ねて来る"鬼"だなんて、聞いたことないな…」
「まぁ、たまにはいいでしょ?別に、危害を加えるつもりはないし。俺だってずっと"鬼が島"にいるのは、結構暇なんだよね。待てど暮らせどライデンは来ないし。それに何より、何にもしてないのに、いきなり襲撃されて、やっつけられるのも癪だしね」
「…成程な。それが御前の言い分か。まぁ、それはわかるが…今、ライデン呼ぶから待ってろ」
確かに、"鬼が島"の"鬼"…"ゼノン"の言い分も一理ある。"鬼が島"の"鬼"だって、ただ"桃太郎"とその家来たちに倒される為に、呑気に"鬼が島"で暮らしている訳ではないのだから。
だがしかし…本当にこれで物語が成立するのだろうか…?と、僅かな不安を抱きつつ(本当は、登場人物はそんなことは考えなくても良いのだが…)、デーモンはライデンを呼びに行った。
そこに残されたのは、エースとゼノン」
「…御前さぁ…何か、矛盾を感じたりしない訳…?」
思わず問いかけたエースに、ゼノンは首を傾げる。
「どうして?」
「どうして?って…普通"鬼が島"の"鬼"が、わざわざ"桃太郎"に逢いに来るか!?」
「あ~、それは偏見だなぁ。"鬼が島"に住んでる"鬼"は、自由に出歩いちゃイケナイって規則はないでしょ?俺は結構、やりたいことやらせて貰ってるからねぇ。別に矛盾は感じないよ。ストーリーに流される御前たちは矛盾だらけだろうけれどね」
「…御前なぁ…」
飄々とそう宣うゼノンに、返す言葉もない。
確かに、一番やりたい放題なのは、ストーリー性を全く無視して勝手に出歩いているこの"鬼"なのだから、それに関して今更何を取り繕う必要もない訳である。
(だからって、冷静にストーリーの批評をしている登場人物にも問題があるのだが……と言う突っ込みを、作者が入れてはイケナイ………)
エースが溜め息を吐き出した時、デーモンがライデンを連れてやって来た。
「よぉ。あんたが"鬼が島"の"鬼"だって?」
「やぁ。御前が"桃太郎"…いや、"ライデン"ね」
お互いに、にっこりと笑顔を見せるこの二名……本来ならば、敵同士であるはずのこの二名なのだが…最早、そんな正当なストーリーに戻れるはずもなく…。
「まぁ、立ち話も何だし、中に入ったら?丁度、晩飯時だし」
「そう?じゃあ、ご相伴に預かろうかな」
「…おい、御前ら……」
この家の主たちの許可も得ず、ゼノンはライデンに誘われるまま、すたすたと一緒に家の奥へと消えて行く…。
「…どうなるんだ?この後…」
眉を潜めるエース。デーモンは、ただただ、溜め息を吐き出すだけである。
「も…知らん…。勝手にやってくれ…」
呆れ顔の両名。当然、"鬼"はすんなり"鬼が島"へ帰る気など毛頭ない訳で…。
彼らの大切な"スゥイート・ホーム"は、今や扶養家族が三名になり、物語のストーリー性を全く無視した展開のまま、非常にも唐突に終わる訳である。
----めでたし、めでたし。
「…んな訳、ねぇだろうがーっ!!」
おしまい。(笑)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※リクエスト…と言うか、2001年の頭に、某仲魔から頼まれて悪魔本のゲストで書いた話です。
多分、その年の5月には本になっていた…はず。貰いそびれて手元にないので何とも言えませんが…(苦笑)
因みに、その本は全員『清水(きよみず)』と言う苗字で書いてね、と言われたので、作者は『清水ありす』となっておりますが、間違いなく藍砂です。(拡大してみると原稿のタイトルと名前が手書きで残ってる/笑)
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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