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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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HEART
こちらは、以前のHPでNo28000get記念でリクエストいただき、
2004年06月12日にUPしたものです。リクエスト内容は、本文最終で。
(コメントは当時のままですが、リクエストいただいた方の名前は念の為伏せてあります)

拍手[3回]


◇◆◇

 その日は、何かがいつもと違っていた。

 前日から情報局の執務室に篭もりきりだったエースは、徹夜が一息ついた明け方から、僅かな喉の痛みと僅かなだるさを感じていた。
「…徹夜の所為か…?」
 コーヒーを淹れながら、いつにない体調の変化に首を傾げていた。
 本来なら、今日は休日のはず。けれど、どうしても今日中に仕上げなければならない仕事が残っていた為、エースは屋敷に戻ることが出来ずに職務を続けていた。
 仕事を始めれば、気にもならないだろう。
 そう思いつつコーヒーで潤しても、喉の痛みを忘れることが出来ない。その痛みは、時間を増すごとに酷くなって来るような気がして。
 だが、仕事はまだ終わらない。
 溜め息を吐き出しつつ、エースは職務を続けていた。
 だが、昼になっても喉の痛みは治まらない。治まるどころか、背中の辺りに奇妙な感覚がある。
----まずいな…
 その奇妙な感覚は、熱の出る前兆。つまり、悪寒なのだ。そして、次第に頭も重くなって来る。
----あと一息…
 悪寒と頭痛、喉の痛みに耐えながら、エースは夕方まで職務を続けた。
 そしてやっと解放されて屋敷に戻ったのだった。

 その日の屋敷は、奇妙な程静かだった。
「…あれ?」
 屋敷の門扉の鍵は開いていたものの、玄関は封呪の鍵がかかっている。
 常に使用魔がいるはずの屋敷で、主を締め出すようなことをするはずがない。だが現にドアは開くことなく、声をかけても誰が出て来る気配も無い。
 体調が思わしくない上に、その奇妙な静けさ。当然怪訝そうに眉を潜めるエース。
 だがしかし。
「………あ…」
 あることを思い出し、エースは大きな溜め息を吐き出す。
 そして落胆の表情を浮かべたまま、解除の呪を口にして自らドアを開ける。
 出迎えの使用魔の姿は、一名もない。静まり返った屋敷の中は、エースただ一名、であった。
「…やれやれ。全くついてないな…」
 門扉と玄関に鍵をかけることも忘れ、重たい足を引き摺るように、そのまま二階の寝室へと向う。
 そして、ベッドに倒れこむように横になると、そのまま吸い込まれるように眠りに落ちていった。

◇◆◇

 どのくらい眠っていたのだろう。
 微かな物音を聞いたと思った瞬間、エースの意識は急激に引き戻された。
 辺りは既に闇が落ちて暗くなっている。
 屋敷に帰りついてそのままベッドで眠ってしまった為、未だ軍服に身を包み、外套まで羽織ったまま。それを思い出して身体を起こしたものの、身体はだるく、頭は割れるように痛い。そして朝から痛みを訴えていた喉も、顎の付け根から首にかけて酷く腫れている。当然、唾を呑みこむことさえ困難なくらい、喉が痛い。
 溜め息を吐き出しつつ、外套と軍服を脱ぎ、夜着へと着替える。
「…こんな日に誰もいないなんてな…」
 小さく呟いた瞬間、エースはあることを思い出した。
 それは、眠りから覚醒するきっかけになった、微かな物音。
 この屋敷の中には、エースしかいないはず。だが、夢とは思えない程リアルな音だった記憶があるのだ。
 怪訝に思ったエースは、夜着の上にガウンを羽織ると、そっと寝室のドアを開ける。
 廊下には、誰の気配も無い。
 だが、再び小さな物音が階下から聞こえた。
 ゆっくりと音のする方へと足を向けたエース。しかし気配を殺していたにも関わらず、この日の体調は酷く意地悪だった。
 階段の途中でエースは急激な咳に襲われ、その存在を明らかにしてしまったのだ。気配を殺していたことも、全くの水の泡、である。
 全てが上手く行かない脱力感に、階段に座り込んだエース。すると、物音の正体が駆け足で階段へと近寄って来たのだった。
「…エース…?いたのか?」
 聞き慣れた声。そして薄暗い階段に顔を見せたのは、見間違えるはずのない、恋悪魔…デーモンの姿。
「この屋敷はどうなっているんだ?門もドアも鍵は開いているのに、使用魔たちは何処に行ったんだ?お前も自室にいたにしては、声をかけても出て来ないし…無用心にも程があるぞ…?」
 そう言いながら階段を昇って来るデーモンを、エースはぼんやりと見つめていた。
「…エース?」
 エースの表情が見えるところまで来た時、デーモンはエースの様子がいつもと違うことに気がついた。
「…具合、悪いのか…?」
 夜はまだ遅くない。だが、エースは夜着を着ている。おまけに、階段に座り込んだまま、口も開かず、動く気配もない。そして何より…熱っぽい顔をしている。
「…腹、減った…」
「……は?」
 不意に口を開いたエース。その言葉に、デーモンは思わず奇妙な声を上げた。
 その途端、ぐ~…っとお腹のなる音。
「…何も食べていないのか?使用魔たちは?」
 エースに手を貸して立ち上がらせながら、デーモンはそう問いかける。
「…事情は後で話す。取り敢えず…何か作ってくれないか…?徹夜で夕方まで仕事をしていたから、昨日の昼から何も喰ってないんだ」
「…それは良いが……とにかく、部屋に戻ろう」
「いや、大丈夫だ。このままダイニングに行く」
 そう言い張るエースに、デーモンは溜め息を一つ。
 握ったエースの手はいつもよりも熱い。多分、多少の熱はあるのだろう。具合が悪いのに無茶をして…と思いつつ、デーモンはダイニングまでエースを連れて行く。そして、椅子にエースを座らせると、開口一番問いかける。
「具合が悪いんだろう?ゼノンに連絡しようか?」
 だが、エースは首を横に振る。
「ゼノンは留守、だ。今日は雷神界に行くって言っていた。わざわざ呼び戻す必要はない」
「だが…」
「何か、ボリュームのあるモノが食べたいんだが…」
 心配そうなデーモンの言葉を遮り、エースはそう口にする。途端にデーモンの表情は呆れ顔、だ。
「…病魔だろう?おかゆにしておいたらどうだ?」
「食欲はある。喉は痛いが、現に腹が減っているんだ。おかゆじゃ満たされない」
「…それなら、何か作ってやるが…文句言うなよ?」
「わかってる」
「じゃあ、ちょっと待ってろ」
 そう言ってデーモンはキッチンへと姿を消す。
 その背中を見送りながら、エースは実に良いタイミングでやって来てくれたデーモンに対して、誰にも見られていないことを確信しながら、満足としか言いようのない表情を浮かべていたのだった。
 だがしかし。キッチンのデーモンはと言うと…実に、不満そうな表情である。
「…ったく…ムードないな…」
 誰にも聞かれていないことを確信しながら、デーモンの口から零れたそれは…明らかに愚痴、だった。

 暫しの後、ダイニングテーブルの上に並べられた料理を前に、エースは満面の笑み、である。
「…熱は測ったんだろうな?」
 機嫌良く食事をするエースを眺めながら、デーモンは呆れた表情で問いかける。
「あぁ。お前が料理している間にな。37.3℃。多少平熱よりはあるが、悪寒がしていた割に熱はたいしたことはない。頭は痛いし、喉も痛いけれどな」
「…その割には、良く食べるよな…」
「言っただろう?食欲はある、って」
 確かにその通り。喉が痛いという割に、エースの食欲はいつも通り。
「薬はあるのか?」
 次々と平らげていくエースを眺めながら、再び問いかける。
「あぁ。前にゼノンが置いて行った解熱剤はある。消炎剤も入っているから、痛み止めの効果もあるらしい。喉の痛みにも効くだろう」
「…呑気なんだから…」
 当事者エースは、完全にいつもの調子に戻っている。どう見ても病魔とは思えないくらいに。
「お前は食べないのか?」
 エースはふと、食べているのが自分だけであることに気が付いたようだ。顔を上げ、デーモンに問いかける。
「あぁ、吾輩は食べて来た。この時間ならお前もいるだろうと思って、一杯やりに来たんだが…そう言えば、使用魔たちはどうしたんだ?後で話すと言っていただろう?」
「あぁ…そのことか…」
 あらかた食べ終えたエースは、やっと一息着いたらしい。小さく溜め息を吐き出すと、ぽつりと呟いた。
「…慰安旅行」
「……は?」
「だから、慰安旅行に出かけたんだよ。今朝から」
 思いがけない答えに、唖然とするデーモン。
 何をどうしたら、主を残して使用魔全員で慰安旅行に出かける、と言うことになったのだろう。
 主が羽根を伸ばしたかったのか、本気で普段の使用魔たちを労うつもりだったのか…その辺りは謎であるが。
「…で、いつ帰って来るんだ?」
 気を取り直して、デーモンは問いかける。
「予定では一週間」
「…病魔の主を置いて?」
「俺の具合が悪くなることまで予定になかったからな。それに、徹夜だったから局に泊り込んでいたんだ。知るはずはないだろう?」
「…連絡ぐらい入れれば、誰かしらいてくれただろうに…」
「朝はたいしたことはなかったしな。喉が少し痛いのと、少しだるいぐらいだったからな。それに、具合が悪いだなんて連絡を入れてみろ。全員キャンセルになるのは目に見えているだろうが。折角の慰安旅行なんだから、行かせてやるのが主だろう?」
「…ったく…吾輩が来なかったら、どうなっていたことやら…」
 この、使用魔思いなんだか、単なるお馬鹿さんなんだかわからない男が、名だたる情報局の長官だなんて。間が悪いにも程がある。そう思いながら、デーモンは溜め息を吐き出す。
「とにかく、今夜は吾輩も泊るから。酷くないとは言ったって、微熱はあるし、頭も喉も痛いんだろう?安静にしているんだぞ」
「あぁ、わかってるよ」
 食事の終わったエースは、大人しく薬を飲み、後片付けをするデーモンをぼんやり眺めていたりする。
「早く寝た方が良いんじゃないのか?」
 いつまでもダイニングの椅子に座っているエースに向け、デーモンは片付けの合間に声をかける。
「いや、お前が来るまで寝ていたからな。眠くはないんだ」
 そう言いつつも、エースの眼差しは具合の悪さを物語るようにいつもよりもとろんとしている。薬が効いてくれば、直に睡魔が襲って来るだろう。
「無理はしない。早く寝よう」
 片づけを終えて門扉と玄関のドアの施錠をすると、デーモンはエースの手を引いて主の寝室へと連れて行く。そしてベッドへと押し込むと、部屋の明かりを落とし、エースの隣へと潜り込む。
「…うつるぞ?」
 心配そうにつぶやいたエースの言葉に、デーモンはくすっと笑う。
「夜中に急に具合が悪くなっても、よその部屋にいたらわからないだろう?使用魔もいないんだ。こうするのが一番良いだろう?」
「…ったく…知らないからな」
 そう言いつつも、エースも満更悪い表情ではない。
「ほら、早く寝よう」
 身体を寄せてそうつぶやくと、エースは腕を伸ばしてデーモンの身体を抱き寄せた。
「安静、だぞ?」
 釘を刺すように改めてそう口にするデーモン。しかしエースは平然としている。
「他悪魔の体温と心臓の音は、尤も有効な安眠効果が得られるんだぞ」
 尤もらしいことを言いながらも、その行動はエースの常と何ら変わりはない。
「吾輩は抱き枕じゃないんだがな…」
 そうは言いつつも、デーモンもエースの体温が心地良い。
 そして、デーモンの耳元に、小さく呟くエースの声が届く。
「…お前が来てくれて良かった」
「…エース?」
「夕飯、美味かったよ。有り難う」
 その言葉に、デーモンは笑みを零す。
 満更、悪い気はしない。恋悪魔に手料理を誉めて貰えること程、嬉しいことはないのだ。だから、どんな状況であれ、それは当たり前のこと。
「…明日の朝飯は、オムレツが良いな…」
「…はいはい」
 くすくすと笑いを零すデーモン。だが、隣のエースは既に大人しくなっている。
「…エース?」
 呼びかけても、返事は返って来ない。規則正しい呼吸が、既に眠りに落ちたことを物語っていた。
「…ったく…しょうがないな~…」
 一名でくすくすと笑ったままのデーモン。そして、満面の笑みのまま目を閉じる。
 エースの体温と心臓の音で、安眠が得られそうだ。そう思いながら眠りに着いたデーモンであったが…その思いは簡単に裏切られるのであった。
 薬が効いて来たことと、程良い保温効果に、エースは酷く汗をかいたのである。
 その汗を拭いてやったり、無意識に蹴られる上掛けを直したり…と、明け方までデーモンの安眠は得られなかった。
 だがしかし、それもまた一興。看病をしていれば、たまにはそんなこともある。
 夕べのエースの言葉を思い出しながらにやにやと笑いを零すデーモンには、それは苦ではなかった。

 翌朝。
 散々寝汗をかいたエースの熱は、すっかり下がっていた。
 喉の腫れはまだかなり残っていたものの、相変わらず食欲旺盛である。リクエスト通りデーモンが拵えてくれたオムレツを上機嫌で平らげたのは言うまでもない。
 そして、その姿に満面の笑みを零すデーモンがいたことも、また言うまでもない。

◇◆◇

 その翌日から、エースは平常通りの職務を熟していた。
 暫くの間、喉の腫れと痛みは残っていたものの、それを上回るだけの気力に満たされていた。
 その理由はただ一つ。
 本気ではない文句を言いつつも、きちんと食事を用意してくれたデーモンのおかげ。

 愛しいヒトが喜んで食べてくれる手料理には、沢山のハートが込められているのだから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※リクエスト内容は「長官の為に料理をする閣下」
と言うことでした。
多くは語りません…(笑)
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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