忍者ブログ

聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

かがやきのつぼみ found you 3

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
完結未定 act.3

拍手[2回]


◇◆◇

 入局して早四ヶ月。実地研修も三ヶ月目。もう直実地研修も終わり、元の部署へと戻れることになっていた。
 その間、忙しいのは相変わらず。けれど、日々の来訪がないだけでもホッと出来る。
 今まで、主任たるソルジュから何度か連絡は入っていた。最初の何日かは様子を窺いに来ていたが、ソルジュが直接話をしてからは一度も顔を見ていないと。勿論、今の部署は伝えていないし、軍事局に未だ籍を置いているのかも明らかにはしていないことも聞いている。一介の局員(しかもまだ本採用ではない)に対して、異例の対応であることは言うまでもない。
 それは扨置き。
 その日の夕方。そろそろ執務時間終了と言う頃に、ゼフィーの元にやって来た姿。
「御免なさい、こんな時間に仕事を頼んでしまって」
「いえ、大丈夫です」
「有難う。貴方ならきちんと仕上げてくれるから、いつも助かります。もう直ぐ戻ってしまうのが残念です」
 本当に残念そうにそう口にするのは、研修担当のシェリー。
 明るい茶色の癖毛の短い髪と、金色の綺麗な瞳。中性的な顔立ちの、小柄な種族。有翼種ではなく、半精霊らしい。そして何より…一時的にではあるが、ルークの補佐官でもあったと聞いた。尤も、訳ありだったようだが。
「…そう言っていただけると有難いです。周りの方に比べて仕事が遅いので…もっと、迷惑がられるかと思っていましたから…」
 済まなそうにそう口にするゼフィーに、シェリーは小さく笑いを零す。
「わたしも昔はそうでしたから、心配いりませんよ。ルーク総参謀長とラル総長に鍛えられましたから、今はそれなりに大概のことは熟せるようになりましたけれどね。それこそ、入局して一年でルーク総参謀長のところに補佐役として遣わされた時は、剣術と遣い手の知識があっただけで、意識下での会話の仕方もルーク総参謀長に教えていただいたくらいでした。ほぼ何も出来ませんでしたから、直ぐにここに戻って来ましたけれど。でも、一生懸命な悪魔には、きっと真摯に向き合っていただけます」
 にっこりと微笑むシェリー。
 研修担当とは言え、今やシェリーはこの部署…参謀部実行班副主幹でもある。主幹たるラルの、言わば片腕とも称せる存在だった。先程の話が本当であれば(実際事実だが…)、そこまで上がって来るのは相当大変だっただろう。
 だが物腰柔らかで小柄なゼフィーと自然と視線が合い、それが親近感を感じさせる。ソルジュからも話が通っていたようで、ゼフィーのことにかなり親身になってくれていた。
 それは、とても心強い。
「あぁ…御免なさい。長話をしてしまいました…その仕事が終わったら、まとめて医務室のコルト医師に届けてください。届け終わったら、今日はそのまま帰っても大丈夫ですよ」
「…わかりました」
「御願いしますね」
 そう言い残し、シェリーは自席に戻って行く。その背中を目で追いながら、ゼフィーは小さな吐息を吐き出す。
 シェリーの話にもあった通り…ここでの実地研修もあと僅か。研修自体もあと二ヶ月。そうしたら、一般には本採用となり、いよいよスタートラインに立つことになる。だがゼフィーの場合…まだスタートラインすら見えていないのだ。彼に与えられた試練…成体になる、という儀式の"壁"を乗り越えなければ、そのスタートラインにも立てない。それは採用試験をパスした時に言われたことだった。
 正直…全くその余裕はない。日々の職務を熟すだけで精一杯で、相手を探すことも出来ない。これは本当にアルフィードに相手を頼むしかないだろうか…と、真剣に考え始めていた。だが本当にそれで良いのか…との葛藤もある。そして一瞬リディの姿も脳裏を過ぎったが…それは溜め息と共に頭を横に振って、意識の中から追い出す。
 今のゼフィーには、リディの想いも行動も、恐怖でしかない。何故自分がそこまで執着されるのか。恋愛感情が理解出来ないゼフィーには、その想いも理解出来ないのだ。
 そんなことを考えながら仕事をしていれば、自然と手も遅くなる。仕事が遅いのはその所為ではないか…と思わなくもないのだが、ゼフィーはまだそれに気付いていない。まぁ…この状況では無理もないのだが。
 局員がすっかり少なくなった頃。漸くシェリーから回って来た仕事も終わり、未だ残業していたシェリーに声をかけると、言われた通り医務室へと向かった。

◇◆◇

 入局してから、医務室を訪れるのは初めてだった。
 士官学校にいた頃は頻繁に医務室に通っていたことを考えると嘘のようだが…まぁ、後半はほぼほぼ医師たるリンに会いに行っていたようなもの。怪我をして医務室に向かうことは、もう暫く経験はなかった。
 だが…そんなことを考えれば、必然的にリンのことを思い出す。勿論、局が違うのだから、リンがいる訳でもない。それでもリンと同期の瀞瀾がいる。執務終了時間はとっくに過ぎている為、未だ残っているかはわからないが…出来れば会いたくはない。自分が置かれている状況を知られたくはない。知られてしまえば、リンに伝わってしまうようで…不甲斐ない姿を知られたくはない。そんな想いもあった。
 そう思いながらも、医務室に届けるまでが頼まれた仕事。行かない訳にはいかないのだ。
 そうこうしているうちに、医務室に到着する。そしてそのドアをノックすると返事が返って来て、そのまま入室を促される。
「…失礼します。参謀部実行班のシェリー副主幹に頼まれて参りました、ゼフィー・ゼラルダと申しますが…コルト医師はいらっしゃいますでしょうか…」
 ドアを開け、そう声をかける。すると、出迎えてくれたのは、見たことのない医師だった。
「御苦労様です。わたしがコルトです。シェリー副主幹から御話は伺っておりますよ。確認しますので、ちょっと御待ちくださいね」
「…御願い致します…」
 にっこり微笑む医師に圧倒されつつ持って来た書類の束を手渡すと、椅子を勧めたコルトはそのまま奥へと消えていく。大人しく椅子へと腰を下ろしたゼフィーは、医務室の中をぐるっと見回した。
 幸い、瀞瀾の姿は見えない。ほんの少しだけ安心したゼフィーは、改めて視線を巡らせた。
 流石に、士官学校の医務室とは訳が違う。医師の数も違えば、設備も備品の数も違う。巨大な軍事局なのだから当然と言えば当然。実習中も幸い医務室の御世話にはならなかったので、ここへ来るのは初めての経験。自分が如何に狭い世界しか見ていなかったかを改めて感じた。
 そうして色々考えながら待つこと暫し。
 奥から物音がして、誰かがやって来る気配。普通にコルトが戻って来た…と思いきや。その顔は見知った顔、だった。
「…あれ?ゼゼ…?どうした?何処か怪我でもしたのか…?」
「…瀞瀾先生…」
 会いたくないと思っている相手ほど会ってしまうもので…ちょっと気拙い。だが瀞瀾の方はそんな様子は微塵も感じさせず。心配して近寄って来ると、丁度コルトが戻って来た。
「あれ、瀞瀾先生?まだ残ってらしたんですか?」
「あぁ…?」
 些か混乱気味の瀞瀾を横目に、コルトは椅子から立ち上がったゼフィーに向けて、にっこりと微笑んだ。
「御待たせしました。問題ありませんでしたので、御預かりしますね。シェリー副主幹に宜しく御伝えください」
「…はい」
「…で?瀞瀾先生は何を?彼に何か?」
「…いや…何でもない…」
 てっきり怪我でもしたのでは…と心配した瀞瀾だったが…まさか職務出来ていたとは。ゼフィーが医務室に来る理由と言えばまず怪我を思い出す。学生の習慣が抜けきらないのは何処の誰だ…と気拙い思いをする瀞瀾に視線を向けながら、ゼフィーは小さく言葉を放つ。
「瀞瀾先生とは、学生時代何度か御会いしたことがありましたので…懐かしくて声を…」
「そうでしたか。そう言うこともありますよね。瀞瀾先生、士官学校に年中行ってましたものね」
 くすっと笑うコルトに、瀞瀾は溜め息を一つ。
「だから、何度も言ってるだろう…?あの時は俺の同期が医務室にいてだな…」
「はいはい、何度も聞いてますよ。心配性ですものね、瀞瀾先生は。ではゼフィーさん、御疲れ様でした。また御願いしますね」
「おい、ちょっ…!」
 笑いながら手を振り、奥へと消えていくコルト。その姿を溜め息と共に見送ると、唖然としたままのゼフィーを振り返った。
「…彼奴のことは気にするな。あぁ言うヤツだから…医師として、腕は良いんだが…話を最後まで聞かないんだよな…」
「はぁ…」
 そんな愚痴を零す瀞瀾。だが、気を取り直した瀞瀾は大きく息を吐き出すと、ゼフィーへと笑いかけた。
「…そうだ、今日はもう上がりだろう?だったら、食事でもどうだ?奢るぞ?」
「…でも…」
 正直…余り、出歩きたくはない。だが瀞瀾の憶測通り…今日は予定はない。と言うことは…出歩きたくはない、と言うだけでは断る理由としてはかなり弱い。
 揺らいでいる心に追い打ちをかけるように、瀞瀾はちょっと表情を引き締める。
「御前と話したいこともあったんだ。だからちょっとだけでも。良いだろう?」
「話したいこと…」
 何の話だろう…と、勘繰る必要はなかった。多分…話すことは、一つだけ。
 ずっと、消化出来ない想い。その想いの根源がわからないままでは、前に進めない。このところ、ずっとそう思っていたのだ。
 出来ることなら、自分の置かれている現状を知られたくはない。だが、こんな状況になってしまったのなら、少しでも良い状況になるよう最善を尽くした方が良いのではないか。このところ内向的だったゼフィーにしては、それは小さいながらも確実たる一歩、だった。
「…わかりました。じゃあ、少しだけ……でも一つだけ御願いがあります。訳あって…あの部署にいることを内緒にしているヒトがいるので…余りヒトの多いところはちょっと…」
 そう言うゼフィーの表情は、とても不安げで。尋常ではないと察した瀞瀾は、小さく頷いた。
「わかった。なら、目立たないところにしようか。直ぐ出られるか?」
「…はい。シェリー副主幹からは、そのまま帰っても良いと言われているので…」
「そうか。じゃあこのまま行こうか」
 瀞瀾はゼフィーを促して医務室を出る。ゼフィーはやや緊張した面持ちで、瀞瀾の後から付いて行く。
 その姿を、リディに見られていないことを願いながら。
PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
  
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
バーコード
ブログ内検索
Copyright ©  -- A's ROOM --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]