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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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かがやきのつぼみ found you 4

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
完結未定 act.4

拍手[2回]


◇◆◇

 ゼフィーが瀞瀾と連れ立ってやって来たのは、落ち着いた雰囲気の小さな店、だった。
「ここは馴染みの店だから、話も漏れないから安心して良いから」
「…はい…」
 そう言われても、瀞瀾と二名きりで会うことなど殆どなかったのだから、当然緊張はする。そんなゼフィーの心を知ってか知らずか…自分も席について落ち着くと、やっとゼフィーと向き合った。
「まぁ、そんなに緊張するな」
 そう言うと、改めて言葉を続けた。
「噂には聞いていたんだが…御前、リンが士官学校辞めてから…笑わなくなったんだって…?」
「………」
 まさかゼフィーの口から、はいそうです、などと言えるはずもない。と言うか…ゼフィー自身が、笑えなくなった明確な理由をわかっていない。
 確かにきっかけは、リンが黙って辞めてしまったことだったかも知れない。ゼフィーにとってかなりショックな出来事だったことは間違いない。だが…それだけが全てではなかった。
 周りの仲魔たちが成体になった為、自分の能力の低さを否応なしに体感する。そしてそれは、努力しても限界がある。それが今後の自分にも当然影響する。成体にならなければ、折角受かった軍事局さえ、去らなければならないのだ。そうなることがわかっていても…未だ、妥協するべきなのか迷っている自分がいる。到底、無邪気に笑っている場合ではない。
 だがその感情の正体は、俗に言う思春期特有の不安定さ。誰にも訪れるものだが…ゼフィーが理解出来ない"儀式"も、実はその不安定さを解決する方法の一つであることを知らずにいたのだ。
 魔族が強大な能力を維持する為に、肉体の成長と精神の成長を結びつける。その為に必要な"壁"を乗り越えること。自分一名では乗り越えられない壁も、誰かが一緒なら無理なことではない。だがゼフィーは、今のところ全否定している訳で…それでは、解決策も見出せない。
 勿論、今目の前にいる瀞瀾は、医師としての知識としては知っていた。ただ、ゼフィーの心の奥深くまでは察することが出来ない。そこまでゼフィーを理解するには…瀞瀾にはまだまだ距離があった。だからこそ、こうして距離を縮めようと思い立ったのだった。
 口を噤み、困ったように視線を伏せたゼフィー。その姿に、瀞瀾は小さな溜め息を吐き出した。
「いや…無理に聞き出そうって言うことじゃないんだが…リンに軍医を勧めたのは、他でもない、この俺だったから…もし御前が笑えなくなった原因がリンの退職なら、御前に悪いことをしたと思ってな…」
 そう言うと、一旦言葉を切る。そして、徐ろに頭を下げる。
「…御免」
「…瀞瀾先生…」
 頭を下げられると、寧ろ申し訳ない。例え瀞瀾がその全てのきっかけだったとしても、その責任を押し付けるつもりは毛頭なかった。
「僕は…誰の所為だとも思っていません。これは僕が未熟だからであって…瀞瀾先生の所為でもリン先生の所為でもないです…だから…もう謝らないでください…」
----御免なさい…
 まるで項垂れるかのように…頭を下げる。その姿が余りにも痛々しくて…瀞瀾も大きく息を吐き出す。
「俺に謝んな。御前は誰の所為でもないって言ったところで、御前の心は現に大きなダメージを受けているだろう…?だから、責任は傷つけたこちら側にある」
「でも…」
 尚も食い下がらないゼフィーに、瀞瀾はぐいっと頭を寄せた。
「良いか、ゼゼ。俺もリンも、御前よりずっと長く生きてるんだ。年長者の話は、黙って聞いとけよ。そのことで、誰も、御前を咎めやしないんだから」
「………」
 そう言ったところで…目の前のゼフィーの表情は変わらない。ならば…と、瀞瀾はちらっと時計に目を向けると、再び口を開いた。
「まぁ…俺に対してなら、別に時間がかかっても良いんだ。ただ、リンに対しては…もう少し柔らかく、な。彼奴も忙しいから、なかなか時間がな…」
「…リン先生…?」
 不意に名前を出され、思わず顔を上げる。
「あぁ。彼奴も心配はしてるんだ。ただ…誤解のないように、これだけは言っておく。彼奴は士官学校を辞めてからのことは何も知らない。入局して直ぐに遠征に参加して、この間やっと帰って来たんだ。御前が抱えている問題も何も知らない。だから…彼奴を咎めないでやってくれ」
「だから僕はそんなつもりは……」
 そう言いかけたその時。
「遅くなりました」
「おぉ、こっちこっち」
 ゼフィーの背後から聞こえた声に、ドキッとする。そして小さく息を飲んだ。
 それは相手も同じこと。見覚えのある背中に、驚きの声を零す。
「…ゼフィー…?」
「……はい…」
 顔を見ることも出来ず、思わず俯いてしまったが…瀞瀾はその姿に小さく笑いを零した。
「やっぱりさ…ほら、直接話す方が良いだろう?強引だとは思ったんだが、たまには御節介焼かせてくれ」
 そう言ってリンの方へと歩み寄る。そしてその耳に口を寄せる。
「…邪魔者は先に帰るから。ゼゼを頼むな」
「瀞瀾…」
 小さくリンの肩を叩くと、瀞瀾は少しだけゼフィーを振り返った。
「悪いな、ゼゼ。文句なら後で幾らでも聞くから」
 そう言い残し、瀞瀾はその場を立ち去った。その背中を見送った二名は、揃って溜め息を吐き出す。
「…御免なさいね…強引に連れて来られたんじゃありませんか…?」
「…いえ、そんなことは…」
 そうは言ったものの…正直良くわからない。
 リンのことを話したいと思ったのは確か。勿論、本魔登場とは想像しなかったので…それを考えれば強引だったのかも知れないが。
 ゼフィーのその表情でそんな状況は察したのだろう。申し訳なさそうに眉根を寄せたリン。
「わたしも詳しいことは何も伝えられていないまま呼び出されたので、そうかと思ったのですが…迷惑でしたよね…?」
「いいえ…っ!迷惑なんてことは……っ」
 慌ててそう口にしたゼフィーに、一瞬きょとんとした表情を浮かべたリン。だが、見る見るうちに顔を赤らめるその姿に、リンは小さく微笑んだ。
「そうですか?では…御一緒しても…?」
「……はい…」
 ゼフィーの様子を微笑んだまま眺めていたリンは、そのままゼフィーの正面へと腰を下ろす。そして暫し、その顔を眺めた。
 軍事局の制服のおかげで大人びて見えるが、その姿は昔と殆ど変わりない。だが…何処か虚無感を感じる。その原因の一端は…。
「色々…聞きました。貴方の同級生たちから。わたしが辞めてから、貴方が変わったと」
 そう切り出され、ゼフィーの表情がすっと変わった。
「少し前に瀞瀾に会った時は、わたしも暫く遠征続きだったので何も知らなかったのですが…それでも貴方の現況を問いかけたら、もう学生ではないのだから、自分からは踏み込むなと釘を刺されました。貴方が変わったと聞いたのはその後です。もっと早く知っていれば……」
「一緒…ですよね?どっちにしたって」
「…ゼフィー…」
 すっと感情を失ったような色を浮かべた、ゼフィーの瞳。
「…例え…リン先生がもっと早いウチから僕の状況を知っていたとしても…何も変わらない。だって…そうでしょう?リン先生は士官学校を辞めたんだし…僕はもう…士官学校の生徒じゃない。いつまでも…リン先生が傍にいてくれる訳じゃない。僕は…もう、リン先生を頼りにしちゃいけないから…」
 震える声。
 懸命に感情を抑えているような姿に、罪悪感さえ覚える。
 けれど…罪悪感だけでは済まされない。事に、リンにとっては。
「…ゼフィー…覚えていますか…?貴方が長期療養から戻って来た日のこと」
「………」
 忘れるはずはない。ゼフィーとて、その日のことをずっと忘れずにいたのだから。
 ただ、ゼフィーとリンの記憶も同じとは限らない。同じ記憶を共有出来ていたら、どれだけ良いだろう。そう思っていると、リンが言葉を続けた。
「わたし…その時に貴方と約束したはずです。貴方がきちんと士官学校を卒業していけるよう、見守っていきたいと。一緒に頑張りましょう、と。でも、わたしはその約束を守れなかった…一名で、そこから離れて行ってしまった。貴方を傷つけて…貴方からのSOSにも、気付けなかった。医師として…最低です…本当に御免なさい」
「リン先生…」
 ちゃんと、覚えていてくれた。それだけで胸が熱くなる。
 ゼフィーにしてみれば、約束は必ず護ってくれなくても然程問題はなかった。ただ、覚えていてくれることが重要だった。
 だから……。
「もう…良いです…」
「ゼフィー…」
 一瞬、リンがとても寂しそうな眼差しを浮かべた。けれどゼフィーは視線を伏せ、小さく首を横に振った。
「もう…良いです。本当に、もう…蒸し返さないでください」
「………」
 そう言った瞬間、ゼフィーはハッとしたように顔を上げた。
「…あっ…そう言う意味ではなくて…っ!」
「では…どう言う意味で…?」
「…えっと…」
 問い返されるとは思っていなかったのか…一瞬、戸惑ったような表情を浮かべたゼフィー。けれど少し考えて…それからゆっくりと言葉を紡いだ。
「…僕は、ただ…リン先生が僕との約束を…あんな、他愛もない、ただの会話の中の約束を、覚えていてくれたから…それだけで満足と言うか……勿論、黙っていなくなった時はショックでしたし、僕が毎日医務室に押しかけて行っていたから、嫌われたのかもって…」
「そんなこと、ある訳ないじゃないですか…貴方が医務室に来てくれることが、何よりも癒しになっていたんです。だからこそ、本当は直ぐに話をしたかったのですが…まさかわたしも、入局後何カ月も家に帰れないと思っていなかったので、そこで誤解が生じてしまったのかと…貴方の卒業も入局も、蔑ろにするつもりはなかったんです」
「…そうだったんですか……嫌われてなくて良かった…」
 それは、本心からの安堵の吐息。
「本当は…もっと早く会うべきでした。わたしが士官学校の医師を辞めた理由も、ただ単に瀞瀾に誘われたからではなくて…もっと前から、考えていたんです。それを深追いしたばっかりにこんなことになってしまったのですが…」
「…え?瀞瀾先生に誘われたからじゃなかったんですか?」
 思いがけない言葉に、キョトンとするゼフィー。
「えぇ。士官学校の医務室にいたら…貴方が卒業してしまったらそれで終わりです。もっと長いスパンで見守るには、ここにいては駄目だと。そう考えていた時に、瀞瀾が軍医の話を持って来たので、そのまま…。局は違いますが、士官学校にいるよりも貴方に会える可能性がありますから。ただ…それはわたしの想いであって、貴方の許可を得てはいません。ですから、気持ちが悪いと思ったらそう言ってくれれば近づきません。約束します」
 そう言われ…ゼフィーも少し考える。
 リンのことは良く知っている。ただ何もかも理解しているかと言えば…そんなこともない。今回のように、自分の予想もしないことが起こることも有り得る訳で。
 だが…リンに関して言えば…見守りたい、と言われたことは、寧ろ嬉しいと感じる自分がいる。それもまた、ゼフィーには不思議な感覚でしかなかった。
「僕は、リン先生は嫌じゃないです。だから…また会えますか…?」
 素直にそう言ったゼフィーに、リンは微笑みを浮かべた。
「貴方がそう思ってくれるなら。また会えますよ」
 その言葉に…自然と、笑みが零れた。
 久し振りの無邪気な笑顔。それが、何よりもホッとする。
「何かあったら、いつでも言ってくださいね。尤も…遠征に出てしまったらなかなか会えないかも知れませんが…」
「大丈夫です。リン先生に会うことが出来るって言うことが勇気になりますから」
 すっかり機嫌の良くなったゼフィー。
 心の奥にあった不安が一つ、解消された。だがまだ一番大事なことが残っている。
 けれど今は…一時の安らぎが救いだった。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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