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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

壇香 伽羅~causality 3

第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")

こちらは本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話完結 act.3


◇◆◇

 エースに連れられてやって来たデーモンの寝室。ベッドに横たわりつつも、上体を起こした状態でエルを迎えたデーモン。思っていたよりも顔色も良いデーモンに安堵の吐息が零れた。
「…あぁ、エル」
「…父上、大丈夫…?」
 デーモンへと声をかけたエル。エースは、開けてあった窓を閉めてからデーモンの傍へとやって来る。
「心配いらないよ。今のところ、大丈夫。体力も魔力も安定しているから。エースとエルのおかげだと思うよ」
 傍についていたゼノンが小さく笑う。
「ダミアン様たちが早くデーモンに合わせろって待ち構えてるんだ。それから"あの子"も、な」
 エースがゼノンにそう声をかけると、ゼノンは小さく頷く。
「わかった。じゃあ俺は下に声をかけて来るから」
 そう言って、ゼノンは寝室から出て行く。エースは傍にいるエルの肩を軽く叩いた。
「俺は"あの子"のところに行って来る。ダミアン様たちは、多分デーモンの顔を見て安心したら、直ぐに帰ると思う。だから、御前はそのままここにいて良いから。デーモンを頼むな」
「…父様…」
「デーモンと一緒に、少し眠ると良い。疲れてるだろう?」
 エースはそう言って笑うと、踵を返して寝室を出て行った。
 残されたのは、デーモンとエル。
「おいで、エル」
 デーモンに呼ばれ、エルはデーモンの傍へと歩み寄る。そして、その手をしっかりと握った。
「御免な、今まで放っておいてしまって」
 そう零したデーモンの言葉。その表情も、申し訳ない、と言った色が見える。
「…私は、大丈夫…ゼフィーさんも、天狼さん…じゃなかった、シリウス殿下も…いてくれたから…」
 やはり、オトナの中に一名では心細いが、士官学校で共に過ごした仲魔がいるのは心強い。その思いはあった。
 仲魔の有難さを、実感する。一匹狼だったエルにしてみれば、それは大いなる成長。それを実感したデーモンも、笑いを零していた。
 そんな話をしている間に、階下から仲魔たちがやって来た。
「おめでとう、デーモン」
 代表してダミアンがそう声をかける。
「御協力頂いたおかげです。有難うございます。皆も、有難うな」
 にっこりと笑ってそう答えたデーモンに、後ろの方で様子を窺っていた子供たちも小さく頭を下げる。
 そんな穏やかで物静かな雰囲気の中。一名だけ、落ち着かない表情を浮かべていた。
「デーさん!ホントに大丈夫?」
 心配そうに声を上げたのは、ずっと心配そうに落ち着かないルーク。
「あぁ、大丈夫だ。そんなに心配しなくても大丈夫だぞ?」
「心配するに決まってるでしょうよ!俺はあんたの参謀なんだし。前回の時だって、何にも出来なかったし…」
 エルとは反対側の枕元へと駆け寄ったルーク。未だにデーモンを敬愛するルークの姿はゼノンやダミアンには見慣れた光景だったが…シリウス、ゼフィー、エルの三名は初めて見るルークの"素"に、唖然としていた。
 まぁ…ルークはそんなことを気にしてはいなかったが。
「…って言うかデーさん、元気じゃん…エースと何してたのさ…」
「何、って……」
 デーモンの傍に着いて…ふと何かに気が付いたように、思わず零した言葉。途端にデーモンが少しだけ赤くなっていたりするのだが…そんな姿に苦笑しつつ、ダミアンが口を挟む。
「ルーク、落ち着け。子供たちが驚いてるよ」
「……っ」
 ハッとしたように居住まいを糺し、咳払いを一つ…だが、その一部始終は見られている訳で…。
「…ルーク、御前二重魔格かよ…」
 唖然としたまま言葉を零したシリウス。教育係として、礼儀正しく、非常に厳しく接していた姿とは雲泥の差。そんな姿に、当然眉を顰めている。勿論、ゼフィーやエルも、ここまでフレンドリーなルークの姿は見たことがなかったので、未だに唖然としているが。
「今のがルークの"素"、だからね…」
 くすくすと笑うゼノンに、ダミアンも笑いを零す。
「そうだね。我々の知っているルークだね」
「…もぉ…余計なことを言わないでください…」
 別に、気取っていた訳ではないが…一応、軍事局を背負って立つ身として、そして皇太子の御目付け役として、威厳は持っていたいと気を張っていたのだが…つい、気が緩んだ。真っ赤になった顔を両手で覆い、大きな溜め息を吐き出すルーク。
 だがしかし。
「仲魔、だからね。勿論、そこには御互いの立場も上位関係も尊敬もあるけれど、昔から、腹を割って何でも話せる仲だからこそ、の関係性だと思うよ。俺たちは、"素"のルークも好きだしね」
「あぁ、吾輩も好きだぞ。だから、今更心配するな?」
 普段と余り態度も口調も変わりないゼノンとデーモンに笑いながら宥められ、ルークは改めて溜め息を吐き出す。
「…もぉ…他悪魔事だと思って…」
「まぁ…他悪魔事だけれどな」
「デーさんったら…酷い」
 くすくすと笑うデーモン。けれど、そんないつもと変わらない姿に、安堵の苦笑いが零れる。
「…でも、ホントに…冗談抜きで、元気そうで良かった。でも、もし何かあったら必ず連絡してよ。みんな、心配してるからね」
 柔らかくそう零すルークに、デーモンは再び笑いを零す。
「あぁ、わかっているから」
 既に、エースやゼノンから何度も言われているのだろう。けれど、それだけ大事に想われていることは身に染みてわかっている。だからこそ、素直にそう返せる。
 それが何より、倖せだと思う。
「さて。それでは、デーモンの顔も見たことだし、そろそろ帰ろうか。子供の顔は見られるのかい?」
 ゼノンに向け、そう問いかけたダミアン。
「えぇ、落ち着いていると思うので。今、エースが見ているはずですから…」
「そう。じゃあ、少しだけ顔を見て来ようか。ではデーモン、ゆっくり休むんだよ」
「はい。有難うございました」
 にっこりと笑うダミアンに、にっこりと笑って返すデーモン。勿論、ルークもゼノンも、同様に穏やかに笑う。
「またな、デーモン。エルも…ゆっくり休めよ」
 シリウスもそう声をかけると、ゼフィーと共に先に部屋を出て行く。
「じゃあ、我々も…」
 そう言って、手を振って出て行く背中を見送り、漸くデーモンとエルの二名になると、デーモンは思わず苦笑する。
「賑やかだったな」
「…ルーク様のあんな姿…初めて見た…」
 ルークの様子が何よりも鮮烈だったのだろう。未だ茫然としているエルに、デーモンは笑いを零す。
「ルークは、昔から"素"はあぁなんだ。まぁ、御前たち…特にシリウス殿下の前ではな、オトナとしてもそうだが、指導者としての態度だからな。だが…吾輩たちは、何度もルークの前向きさに救われて来たんだ。だから、"素"のルークが見られるとホッとするんだな」
 そう言って笑う姿。
 エルも、その気持ちは何となく理解出来る。久し振りに会ったシリウスは、外見はすっかり"皇太子"だった。けれど、その口調も態度も、エルの知っているシリウス…否、"天狼"だった。だからこそ、何処かホッとしたのだ。その想いと同じなのだろう、と。
 そんなことを思っていると、デーモンは握っていたエルの手を離し、今度は頭の上にその手をそっと置いた。
「…怒って、いないか?」
 不意にそう問いかけられ…エースから言われた言葉が蘇る。
「…怒っていない、から。ただちょっと…心配だっただけ」
 何をどう伝えたら良いのか…と迷った末に、それだけを伝える。するとデーモンは小さな吐息を吐き出した。
「まぁ…色々とな、心配をかけたのは悪かった。だが…吾輩は、御前がいるから頑張れるんだ。それは、変わらないから」
「…それなら、"あの子"は…?"あの子"は、父上の支えにならないの?それなら、何の為に産んだの…?」
 ずっと、引っかかっていた想いを問いかけると、デーモンはエルの頭に乗せた手を下ろし、少しだけエルから視線を外す。
「…そのことなんだが…」
 デーモンもまた、どうエルに伝えたら良いかと迷っている。
 全てを伝えることが、エルの為になるかどうかはわからない。そして、全てを伝えたとして…エルがどう思うか。本心から嫌われてしまったら…と思うと、迷いしかない。
 口を噤んだデーモン。エルは、真っ直ぐにそんなデーモンを見つめていた。
 エルもまた…自分の疑問で、デーモンを困らせてしまった、と言うことは感じていた。だが、聞いてしまった以上、戻れない訳で…デーモンがどんな答えを出すか、待つしかなかった。
 そうして、暫し。
 漸く、デーモンが口を開いた。
「吾輩はな…ちゃんと"親"に、なりたかったんだ」
「…"親"?今だって、"親"じゃないの…?」
 言葉の意味合いが良くわからず、首を傾げたエル。そんな姿に、デーモンは苦笑する。
「まぁ…形式上は、な。だが…吾輩は、御前をこの手で…ちゃんと育ててやれなかった。エースも御前と過ごす時間が少なかったことは後悔している。吾輩も体調が思わしくなく、使用魔たちの手を頼り、"親"としては…御互いに情けない限りだ。本当はもっと、御前の為にしてやれたことがあったはず。それはずっと、吾輩の後悔だった。勿論、御前が傍にいてくれることが嬉しいことには変わりない。吾輩は御前が大事だし、吾輩が御前に言って来た言葉は全部嘘ではない。ただ…出来ることなら…きちんと産んでやりたかった。この手で、ちゃんと育ててやりたかった。御前が士官学校に入って、離れてしまってから…その想いが甦って来てな…御前に恥ずかしくない生き方が出来るように、エースに頼らずに生きられるようにまず自分の体調を整えて、その上で、可能であればもう一度…ちゃんと子供を産みたいと願った。エースは、吾輩が何も言わなくてもその想いを汲んでくれて…ゼノンとも喧嘩もしたが、ちゃんと吾輩の想いをわかってくれて…その結果が、"あの子"、なんだ」
 エルにとってその言葉はどのくらいの重みだろう?
 デーモンはそう思いつつ、それでもエルにちゃんと真実を伝えたくて。そんな想いで紡いだ言葉だった。
「"あの子"を産んだ以上、吾輩もエースも"あの子の親"、だ。理想だけを語る訳にはいかない。現実、"あの子"の生命は、我々が護らなければならない。"あの子"を護る為には、精一杯のことはする。これから先のことはまだわからないし、御前がどう思うかもわからない。御前に、我々の想いを押し付けることは出来ない。だが…吾輩の支えは、やっぱり御前だから。それだけは、変わらないから」
 真っ直ぐに向けられた眼差しに、エルは小さく息を吐き出す。
「…父上の想いはわかりました。色々驚いたけど…」
「まぁ…そうだよな。急に呼び戻された挙句、きょうだいが増えるとか…想像もしなかっただろうな」
 デーモンも、自分がやったことながら苦笑する。
「"あの子"と…支え合って生きてくれれば、それに越したことはない。けれど、御前にとっては不可抗力な結果だ。だから、御前が"あの子"に関して、不安や心配なことがあれば、きちんと伝えて欲しい。その不安や心配をきちんと受け止めることが、我々が御前にしてやれることだと思っているから。それは、吾輩だけではない。エースもまた、同じ気持ちでいるから」
「…父上…」
 自分が不安に思うように…親たるデーモンにも、同じように不安がある。けれど、背中を向ける訳にはいかない。それが、デーモンの想いでもあった。
 言葉の端々にそんな想いを感じ、エルは小さく吐息を吐き出すと、腕を伸ばしてデーモンの首へと回す。そして、ぎゅっと、その身体に抱きついた。
「…有難う、父上」
「エル…」
 デーモンもまた、エルの身体をそっと抱き寄せる。
 その温もりに安堵したのか…小さな欠伸が、エルから零れた。
「…少し休むか?」
 昨夜は緊張続きで眠っていない。それを思い出したデーモンが、エルにそう声をかける。すると…少し遠慮気味に、エルが口を開いた。
「…一緒に…寝ても良いって、父様が…」
「…あぁ、そうだな。ロクに寝ていないだろう?一緒に、一休みするか」
 くすっと笑うデーモンに、エルも表情を和らげる。
 デーモンに促され、その隣へと身体を横たえる。
 随分大きくなったとは言え、まだ子供。寄り添うその身体の小ささを実感する。
 けれど、年だとか身体の大きさだとか、そんなことは関係ない。幾つになっても、愛しい娘。そして離れているからこそ、尚更。
 昔のように、自然に顔を摺り寄せて来るエル。だが、ふと何かを感じた。
「…このベッド…父様の匂いもする…」
「…あぁ……まぁ、エースも寝るしな…」
 流石に娘の前。正直に言うには憚られる…と、苦笑いを零すデーモン。だが、エルは最早聞いていない様子。目を閉じ、穏やかに繰り返される呼吸は、既に眠りに落ちたことを物語っている。
「まぁ…そんなものか」
 くすくすと笑いながら、デーモンもエルに寄り添い、目を閉じる。
 束の間の休息は、嬉しい気持ちで一杯だった。

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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
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