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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

檀香 伽羅~眩耀(後半) 2

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
4話(後半) act.2


◇◆◇

 その夜。仕事を終えたエースがデーモンの屋敷を訪れると、そこで出迎えたのはアイラとティム。
「…ティム?」
 自分の屋敷の使用魔長が、なぜこの時間にデーモンの屋敷にいるのか。そんな疑問が表情に出ていたのだろう。くすっと笑ったティム。
「エル様の御供で参りました。今夜はこちらに泊まられるそうですよ」
「…エルが来てるのか?泊まるって?デーモンの体調は?」
 立て続けに問いかける声に、アイラが慌てて口を挟む。
「体調は宜しいようですよ。閣下から、エル様に御会いしたいと御呼びになったのですから。やはり、エル様がいらっしゃると嬉しそうですよ」
「…そう、か…まぁ…デーモンが呼んだのなら…」
 このベテラン二名が揃ってしまうと、エースも敵わない。多分…デーモンも同じだろうが。
「では、わたくしはこれで。エース様も、今日は御世話になったら如何ですか?」
 にっこりと笑ったティムが屋敷へと戻って行く。その背中を苦虫を噛みつぶしたような顔で見送るエースに、アイラが小さく笑いを零す。
「どうぞ、御泊り下さい。閣下も、御待ちですよ」
「……あぁ…」
 小さな溜め息を吐き出し、エースはデーモンの寝室へと向かう。そしてそのドアを軽くノックすると、中から返事が返って来た。
『どうぞ』
 心持ち、張りのある声。どうやら、機嫌は良いようだった。
 ドアを開け、顔を覗かせる。そこには、想像通り機嫌の良さそうなデーモンの姿。
「御疲れ」
「…あぁ。エルが…来てるんだって?」
 部屋の中に、エルの姿はない。
「あぁ、さっき寝かしつけて来た。吾輩の子守歌は、まだエルには有効みたいだ」
 小さい頃から、ここに来るとデーモンの子守歌で眠っていたエル。デーモンにとっては、その時間もまだ大事な親子の繋がりの時間なのだ。
 軍服の上着を脱いでかけながら、エースはベッドの傍へと歩み寄る。
「体調は?もう大丈夫なのか?」
 問いかけた声に、にっこりと笑顔が返って来る。
「あぁ。エルが来てくれたからな。もう大丈夫。悪かったな、心配かけて」
「…いや…」
 元気になってくれることが、嫌な訳ではない。ただ…エースにしてみれば、腑に落ちないところもある。それがあからさまに顔に出たのだろうか…デーモンが首を傾げる。
「何だ、その顔は。吾輩が体調悪い方が良いとでも?」
「…そう言う事じゃない。勿論、元気でいてくれた方が嬉しいんだが…エルが来ただけで元気になるとか言われるとな…毎日顔を見に来る俺の立場は…?」
「御前は特別だろう?御前がいなかったら、吾輩は生きてないかも知れないしな」
「…またそう言うことを…冗談でもそんなこと言うな」
「…悪い…」
 表情の変わったエースに、デーモンも流石に言い過ぎたかと反省する。そして、枕元へと腰を下ろしたエースの手を取る。
「…感謝しているんだ。だが冗談ではなく…御前がいるからこそ、吾輩が生きていられる。それは事実だから。そして…エルがいるからこそ、先の未来へ希望を繋げられる。それも、事実だから」
「…デーモン…」
 重ねられた手。その温もりがあるからこそ…今を生きていると、実感する。
「御前もエルも…吾輩の生命の源、だ。大事なことには変わりない。だから…」
「その意を酌んで、士官学校への入学を許してやれ、と?」
「…エース…」
 溜め息を吐き出したエース。勿論…その話をする為に、昨日から来てはいるのだが…デーモンの切り出し方に、溜め息しか出なかった。
「エルに、登録上の話をしたことを、どうして俺に話してくれなかった?士官学校のことだって…いつになったら入れるか、って…唐突過ぎるだろう?もう入ること前提の話じゃないか」
「それは…だな…」
 流石に、黙っていたデーモンの方が分が悪い。エースの機嫌が悪いこともわかる。
 デーモンも一つ、溜め息を吐き出す。そして、言葉を続けた。
「…エルは…ずっと、気にしていたのかも知れない。吾輩の体調が悪いことも…御前がゆっくり休む時間もないことも…全部、自分の所為なのかも知れないと…」
「…そんなこと…」
「ないとは言い切れないだろう?昔から…エルは、我々をずっと見ていた。言葉として伝えられない小さな頃から…ずっと、見ていたんだと思う。吾輩の体調のことも…御前が忙しいことも。御前が遅くならないと帰って来ないことには理由があると…住居もここだったり、御前の屋敷だったり…行ったり来たりしなければならなかったことも…時々、ぽつりぽつりと話すことがあったから…きっと、全部わかっていたんだ。だから…独り立ちしたかったんだと思う。我々に…迷惑をかけないように。心配を、かけないように。そうすることが…自分が出来る精一杯のことなんだと…」
「………」
 エースの脳裏に浮かんだのは…真っ直ぐに向けられた、琥珀色の眼差し。幼い頃から…その目には、何が映っているのだろうと…何を考えているのだろうと、ずっと思っていた。口数が少ないが故に、今までわからなかったその心の中。その答えが…こんなカタチでわかるとは、エースも思っていなかった。
「だから…入学を許してやれと?魔力は十分だからと、自然発生だと偽って…本来なら許可も得られない小さな身体で、これからどんな苦労をするかもわからないのに?安易に許せと言うのか?」
 吐き出したその言葉に、エースの苦悩が感じられた。
 勿論、デーモンもエースの気持ちは良くわかっている。大事に思う気持ちは、同じなのだから。
 だが…だからこそ…
「…だから…吾輩は…賛成したんだ。御前がそう反対するだろうと思って」
「…デーモン…」
 眉根を寄せ、険しい表情。だが、真っ直ぐに自分を見る琥珀の眼差しは…同じ色。
 その眼差しの前、デーモンは小さく笑った。
「御前が言うことは、正論だ。歴とした父親の言葉だ。勿論それはわかっている。だが、エルの気持ちはそんな言葉では抑えられない。吾輩はエルの気持ちを否定はしない。だが、突き放す訳じゃない。ここにいるから…大丈夫だと、伝えたかった。自分の思う通りに生きることがどれだけ大変か…それは、我々が良くわかっているじゃないか。だから、ここにいると約束した。吾輩は…ちゃんと、エルがオトナになることを見届ける。つまり…吾輩は、ちゃんと生きているから…心配するな、とな」
「………」
 笑うその顔は、悲観の色は見えない。先の未来も…生命を繋いでいくことを、約束出来る。それが、エルにとってどれだけ心強いと感じるか。
 勿論それは…エースにとっても。
「親として…出来ることなんか限られている。ゼノンも随分悩んでいたが…ライデンは意外と大丈夫だっただろう?前向きに、笑っていただろう?多分…今、我々も同じ道を歩いているんだと思う。吾輩が前向きなのは、自分も経験した道だから、だ。ライデンも多分同じだ。ライデンはずっと見守られていたが、吾輩は親といたのは士官学校に入るまで。それからの魔生を考えれば、短い間だった。が…それでも、親に育てられたと言う記憶はある。今、親の立場に立って、それを実感している。我が子を大事に思う気持ちに、偽りなんかない。だから吾輩は…精一杯生きて、見守ろうと思う」
 その言葉に…エースは、嘗て聞いた言葉を思い出した。
 エルを宿すまで…親の愛情に枯渇してるように見えたデーモン。どんなに倖せだと口にしても、何処か飢えているように見えていた。それが、エースには酷く不安だった。
 だがしかし。その枯渇した愛情を上書きする為に、親になれば良いと言われた。同じ立場になれば、親の愛が見えて来るのかも知れない、と。
 今まさに、その通り。デーモンは、ちゃんと子を思う"親"なのだ、と。
 そして、我が子の為に…最愛の恋悪魔たるエースの為に、強く生きようとしているのだと。
 大きな溜め息を吐き出したエース。
「…御前の言いたいことはわかった。勿論…いつまでも士官学校の入学を拒む訳じゃない。入学は認める。だが…今直ぐには無理だ。せめて…自分を護る術を、覚えるまで。士官学校に入学すれば覚えることかも知れないが…ゼゼのこともある。せめて少しぐらいは、身に着けさせてくれ…」
 いつ何時、意にそぐわぬ攻撃をされるかわからない。元々の対象が本魔ではなくても、八つ当たりの捌け口として攻撃をされることがあると言うことは、ゼフィー・ゼラルダの時に良くわかったはず。
 だからこそ…の言葉に、デーモンは頷きを返す。
「それは勿論。御前の想いも尊重するさ。吾輩にとっても、エルは大事だからな。だが…御前が教えるのか?ただでさえ、忙しいのに…?」
「…そこだよな…本当は俺が教えてやれれば、それに越したことはないんだが…忙しくなくても、エルは嫌がりそうだよな…」
 苦虫を噛み潰したような表情。嫌われているかどうかは別としても…親から教わると言うことは、御互いに何処か遠慮も生まれる。寄りによって、エースとエルでは…互いに遠慮し過ぎて、恐らく御互いに十分とは言えない結果しか見えない訳で…それを察したデーモンは小さく笑いを零す。そして、腕を伸ばしてエースの身体を抱き締める。
「好き嫌いの問題ではないだろう?御前のことだから、エルに対しては本気で身を護る為の戦い方を教えられないだろう。一番良いのはルークなんだがな…彼奴も、シリウス様のところに行っているから、忙しいだろうし…我々の状況を知っている者が適役なんだがな…」
 流石に…状況を知らない部下に、幼いエルに身を護る為の戦い方を教えろ、と強要する訳にも行かず。現状を知っている者は大魔王たるダミアン以外にはルークとゼノン。そして、情報局の副官たるリエラ。後は各屋敷の使用魔たちのみ。誰もが忙しいことは重々承知。他に頼りになりそうな者の心当たりもなく…溜め息しか出て来ない。
「取り敢えず…その辺りは、明日ゼノンが様子を見に来ると言っていたから、相談しておこう。ルークにも声をかけてみるしな。何か良い案があるかも知れない」
 そう言いながら、デーモンは抱き締めたままのエースの肩口へと額を寄せる。
「…そろそろ……その話は、終わりにしても良いだろうか…?」
「…終わりに、って…」
 その言葉を聞きながら、デーモンの方から頬を寄せる。軽く唇に触れると、思い出したようにエースが声を上げた。
「…そう言えば…」
「…何だよ…」
 折角の雰囲気を胡麻化されたようで、思わず頬を膨らませる。そんな子供染みた姿を横目に、身体の向きを変え、デーモンと向かい合う。そして思い出したことを口にした。
「ティムは…俺が帰らない方が良いのか?アイラと一緒になって、俺もこっちに泊まれ、って…御前は病み上がりだって言うのに。エルはともかく、主を何だと思っているんだ?彼奴は…」
 思わず零した愚痴。普段はそこまで文句を言わないクセに、今日は嫌に引っかかったらしい。ムスッとした表情を浮かべる姿は、こちらも子供染みている。
 そんな表情を前に、デーモンは笑いを零した。
「心配しているんだろう?御前が、疲れた顔しているから。エルのことでも、随分落ち込んでいるし。だから、結託して強行したんだろう?ティムだから、だと思うが?」
 くすくすと笑うデーモン。まさに、その言葉の通り。古株のティムだからこそ、エースにも強引な態度も取れる。主を想うが故、の判断であることは、勿論わかっていた。
「…泊まって、行くんだろう…?」
 一応…そう、問いかけてみる。
「…泊まるけどな…どうせ帰ったところで、締め出されているだろうから…」
 溜め息交じりにそう答えられ、デーモンも苦笑せざるを得ない。
「まぁ、ティムには敵わないんだから、諦めろ。吾輩だって、アイラには敵わない」
「…まぁ…そうでなければ、務まらない、か…」
 御互いに…幾度、古株の使用魔長たちに助けられたことか。まぁ、それが現実。
 溜め息を吐き出しつつ、今度はエースの方からデーモンの身体へと腕を回す。そしてその肩の上に顎を乗せる。
「…疲れた…」
 珍しく零した弱音。色々考え過ぎて、頭の中も疲れ切っているのだろう。その頭を抱えるように腕を回し、デーモンもエースの頭に凭れかかる。
「ゆっくり休めば良いじゃないか。吾輩の隣、空いているぞ?」
「…じゃあ、遠慮なく…」
 そう零すなり、デーモンを抱えたまま、もそもそとベッドの中へと潜り込む。そして横になったまま、改めてデーモンの顔へと視線を向ける。
「…遠慮しない」
「はい?」
 一瞬、何のことか…と言うような表情を見せたデーモンに、エースがくすっと笑う。
「何だよ、さっき散々ヒトのこと誘っておきながら」
「…あぁ…」
 確かに、そう言われれば。
 ふわっと赤くなったデーモンへと口付け、抱き締めた腕を緩める。
 流石に、病み上がり。それを考慮しつつ…久し振りに、二名揃って甘い夜を堪能する。
 一時の安らぎに身を任せ、ぐっすりと眠りに落ちたエース。その隣で、こちらも満たされた表情で眠りについたデーモンであった。

 翌朝は、いつも通り早々に仕事に行ってしまったエースを見送ったデーモン。その足で、エルを起こしに行く。
「…元気?」
 寝起きでぼんやりとしつつも、上機嫌のデーモンにそう問いかける。
 久し振りに部屋の外にいる父親の姿。エースが一晩一緒にいたおかげなのだが、既にエースは仕事に出かけている。昨夜もエルは顔を合わせていないので、デーモンもここは敢えて触れない。
「あぁ、元気だよ」
 くすっと笑いを零し、エルをベッドから抱き上げる。
「取り敢えず、食事にしよう。もう少ししたら、ゼノンが来るから」
「…ゼノン様…」
 エル自身は余り接点はないが、デーモンの様子をこまめに診に来ているのは知っていた。そこで幾度か顔を合わせたことはある。だが、基本的にデーモンの屋敷かエースの屋敷の使用魔としか顔を合わせることのないエル。当然、そこは警戒心剥き出しになる。
「…私は…いなくても良いんでしょう…?」
 思わずそう問いかけた声に、笑ってその頭を撫でるデーモン。
「あぁ。大丈夫だから」
 そう。今はまだ、大丈夫。ただ、この先のことを考えると…この警戒心の強さは、どう転ぶのか。まぁ、エースも昔は警戒心の塊のようなものだったことを考えれば、何れ打ち解けられる仲魔が出来るだろうとは思う。
 先に士官学校に入っているゼフィー・ゼラルダ。彼が、上手くエルの頑なな心を和らげてくれれば良いのだが…。入学してしまえば、外部から手出しは出来ない。ただ、そう願う事しか出来ない。
 今は、その不安を悟られないように。そう思いながらも、真っ直ぐに見つめるエルの眼差しを、笑って見つめ返す。
 束の間の親子の癒しの時間。その安息も、あと少し。そう思うと、尚更貴重な時間だった。

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