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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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希求~side α 前編
こちらは本日UPの新作です。

拍手[6回]


◇◆◇

 結成三十五周年。その記念すべき再集結は…彼らたちには、完全に不完全燃焼。そして当初から考えれば、思いも寄らない延長戦へと突入していた。
 勿論、それは悪魔だけではなく…自分たちの活動もまた、制限がかけられていた。
 現状は…と言えば、誰もが不服。それは当然。けれど先を見据えて、今は我慢の時。
 そんなことを考えていた時…まさに、"魔"が差した。

「…あのさぁ…ちょっとだけ…出て来ても良いかな…?」
 スケジュール表を前に、電話越しにそう問いかける。
『出て来る、って…?』
 意味がわからず、問いかける声。それは相棒に他ならない。
「いや………悪魔に、なって来ようかと…」
『…はい?』
 当然、問い返される。それは想定内。それだけ、想像外のことを始めようとしているのだと…改めて思う。
 胸の内を、一つずつ説明する。相棒はそれを、しっかり聞いてくれている。ただ、それだけで…受け留めて貰えている、と思えるのは…多分、一番信頼している相手だから。
 本当に馬鹿なことを言い出したのなら、きっと怒られる。けれど、真っ当なら…否定は、きっとしない。
『…良いよ』
 相棒から帰って来たのは、その一言。余りにもあっさりと…しかも、笑いながら。
 そして。
『えっと…十六年振り?凄いじゃん?俺も楽しみにしてるね』
 不安ではなく…期待。その気持ちが伝わり、ほっと息を吐き出した。
 まだ、スタートラインに立った訳でもない。これからまだ許可を得なければならない相手が大勢いる。だから、イメージとしては…スタートラインが見える位置に来た、と言う程度。
 それでも、背中を押してくれる声は、有難かった。

◇◆◇

 その連絡は、ある日突然、だった。
「……は?」
『ですから……』
 思わず素っ頓狂な声をあげると、電話の相手は改めて状況を説明し始める。恐らく…電話の相手も、同じように驚いたのだろう。そんな雰囲気が漂う。
『……と言うことなんですが…』
「…あぁ……」
 全くの、理解不能。だが、多分…拒否は出来ない。
『宜しいですか…?』
「…宜しいも何も…折角向こうが言い出したのに、断る必要性はないだろうが…」
 正直…面食らっている。それが一番正しい表現だったかも知れない。
『では、取り急ぎ準備を…』
「あぁ…」
 電話を切った後…奇妙な虚脱感に襲われる。
「…何なんだ、彼奴は…」
 大きな溜め息と共に零したのは、はっきり言って愚痴。
 今まで再三再四、声をかけて来たにも拘らず…こんな思いも寄らないタイミングで連絡が来るとは。しかも…侍従経由で。
「…馬鹿じゃないか、彼奴…」
 再び大きな溜め息を零し…改めて、机に向かう。
 演出案の練り直し。それは、喜びなのか…否、か。

 そんな連絡から数日後。取り急ぎ行われた打ち合わせに、当然彼もやって来る。
 何処か落ち着かず、早めに打ち合わせ場所に向かうと…まだ彼は来ていなかった。
「流石に早かったか…」
 小さな溜め息を吐き出して荷物を下ろす。すると、そのタイミングでスタッフが駆け寄って来る。
「閣下、いらしてて良かった。ちょっと確認、宜しいですか?」
「あぁ…」
 仕事は一つではない。幾つもある確認事項と、打ち合わせ。それを繰り返しながら準備を進めているのだから、のんびりしている場合でもないのだ。
 呼ばれるまま別室へ行き、打ち合わせの確認をする。そして最初の会議室に戻ると…そこには昔と寸分違わず、当たり前のようにそこに馴染んでいる清水の姿。
 その姿を見た途端…何とも言えない想いが、その胸を過ぎる。
「デーモン、久し振り。悪かったな、急に…」
 その姿に気がついた清水が、そう声をかける。
「…ホントにな。三十五周年に向けて声をかけた時は出ないって言い切ったクセに…」
 溜め息と共に吐き出した言葉に、小さな苦笑が返って来る。
「あの時はな。でも状況は変わるから」
「…確かに、な」
 そんな話をしながら、清水の隣へと腰を下ろす。そして他のスタッフも席に着き、打ち合わせが始まった。
  詳しい話は、何一つ聞けていない。ただ、清水が参加を決めた経緯だけは、スタッフたちと一緒に本人の口から説明を受けた。
 状況は、確かに当初声をかけて断られた時から変わっている。その理由を、疑う必要性は何処にもない。
 ただ…何処か、すっきりしない。
 後でもう一度話を聞こうか。そうすれば…何かすっきり出来るだろうか。
 そんな想いを抱いたまま…打ち合わせは終了したのだった。

 結局のところ…打ち合わせの後はデーモンも忙しく、清水を呼び止める暇もなかった。
 デーモンが漸く帰路に着く頃には、清水の姿はとっくに消えてしまっていた。
「まぁ…清水、だしな。長居はしないか…」
 仕事が終われば、極力長居はしない。昔からそうだった。そう思い出し、溜め息を一つ。
 次に会うのは、いつだっただろうか。そう考えながら、建物から外に出ると…正面のガードレールに凭れるように、待ち人がいた。
「…清水?」
「…あぁ、御疲れ。随分遅くまで残ってたんだな」
 腕時計で時間を確認し、銜えていた煙草を携帯灰皿へと放り込む。
「…どうした?」
 思わず問いかけた声に、清水は小さく息を吐き出す。
「いや…何か言いたいことがあるのかと思ったからな」
 その言葉に…思わず、口を噤む。
 確かに、もっとじっくり話を聞こうと思っていた。だがその時間が取れなかったので諦めていたのだが…まさか、清水の方が待っていたとは。
 デーモンもまた、小さく息を吐き出す。
 問いかけるなら…今しかないだろう。そんな想いに背中を押され、デーモンは口を開いた。
「なぁ、清水……どうして、急に今回の参加を決めたんだ…?」
 敢えて、そこから話を切り出した。
「…参加の理由は、話しただろう?侍従から聞いただろうし、今日も話したのに、まだ聞くのか?」
 怪訝そうに眉を寄せた清水。確かにその言葉の通り、参加の理由は何度も伝えていたはず。そこをまた穿り返す理由がわからない。そんな表情を見せる清水に、デーモンは空を振り仰ぐ。
「…どうしてそれを…直接、話してくれなかったのかを聞いているんだ。吾輩に、直接言えない理由は何だったんだ?どうして…一番に、話してくれなかった…?」
 問いかけた声が、酷く固い。それは、デーモン自身も感じていた。
 ならば…問いかけられた清水は、どんな想いでその言葉を聞いたのか。
 暫しの沈黙。そして…大きな、溜め息。
「…悪かったよ。参加してみないかと声をかけられて…俺一人で決めるべきではないと…相談しなければならない相手がいるだろう?ただ…俺は"エース"じゃないから…俺にとって、御前は……一番じゃなかった。それだけの話、だ」
「……そう、か…」
 はっきりそう言われてしまえば…その言葉を、受け入れるしかない。確かに、どう頑張っても相談するのは現相棒であって、デーモンは…清水の一番にはなれないのだから。
「…悪かったな。こんな時間まで待たせた挙句、そんなことを聞いて。吾輩が聞きたかったのは…それだけ、だ」
「…いや。俺が勝手に待ってただけだから。必要な打ち合わせはしたから、多分…次に会うのは俺じゃない。こんな話で終わるのは何だが…御前はもう直ぐ最愛の恋悪魔に会えるんだ。別に、俺はどうでも良いだろうしな。後腐れないように、はっきり言ったつもりだから」
 多分…それは、清水なりの気遣い。デーモンが大事にしなければならないのは、自分ではなく…恋悪魔の方だ、と。
「じゃあ、な。また…いつか」
 そう言って、清水が先に踵を返した。
「あぁ…」
 デーモンが視線を向けた時には、既に背中しか見えなかった。
「…有難うな。参加を決めてくれて」
 その背中に、慌てて声をかける。ほんの少しだけ振り向いた顔は、微かに笑っているように見えた。
 そして残されたデーモンは…再び、溜め息を吐き出す。
 問いかけなければ良かった。そんな後悔が…胸の奥に残っていた。

◇◆◇

 打ち合わせを終えたその日の夜遅く。
 マンションの部屋のドアの鍵を開けようとした瞬間、スマートフォンに着信が来た。
 かけて来た相手は…現相棒。
「…はい?」
 鍵を開けつつ電話に出ると、電話の向こうの相手は小さく笑った。
『様子が知りたくてかけたんだけど…御免ね、忙しかった?』
「…いや、大丈夫。今帰って来たところだから。でも、ちょっと待って…」
 鍵と荷物を置き、急いでうがいと手洗いを終える。そして窓を開けて空気の入れ替えをしつつ、漸くソファーへと腰を下ろし、電話へと戻った。
「御待たせ」
 声をかけると、相棒は早速話を切り出した。
『それで、どうだった?みんないたの?』
「いや、今日はデーモンだけ。次に会うのは俺じゃないから…」
 そう言いかけて、口を噤む。
 相棒は…自分たちのことを、理解してくれている。ただ…線引きをしなければならないところは、必ずある。
 この相棒への線引きは…多分、ここなのだろう。
 自分が、悪魔の媒体に戻る前に。
「…なぁ、本田…」
『…何?』
 色々と考えながら…小さな溜め息を吐き出す。そして。
「…もう直ぐ…"彼奴"が来る。だから…全部終わるまで…御前と、連絡は取らないつもりなんだが…」
 そう切り出した声は、とても重い。
 相棒から…どんな反応が帰って来るだろうか。恐らくは、笑ってOKを出すだろう。でも…そこに、しこりが残らないとも限らない。
 すると、少しの間をおいて、相棒が口を開いた。
『…OK、わかった。じゃあ、終わったら電話してね。愚痴でも惚気でも、何でも聞くよ。それが俺の役目なら…ね』
「…本田…」
『じゃあ、頑張って。あ、悪魔のエースさんに宜しくね』
 笑いながらそう言って電話は切れた。
「…ったく…」
 思わず苦笑する。だが、半ば予想通りのその反応は、何よりもホッとする。
 本当に…良い相棒だ、と。
「…さて、それじゃ頑張るか…」
 自らが切り出したのだから、そこはやるしかない。
 一歩踏み出した足は、もう後戻りは出来ないのだから。

◇◆◇

 幾度目かの打ち合わせ。そして今日からあの悪魔が合流する。そう連絡が入っていた。
 当然、何処か浮足立っている現場。そんな雰囲気を感じながら…デーモンは自分の支度部屋で、準備をしていた。
 けれど…どうにも集中出来ない。
 清水を話をしたのは、もう数日前。そこからずっと、頭の片隅に引っかかっている。
 どうして…参加を決めたのか。
 勿論、何度も説明されていた。勿論、現状を考えればその説明が全てだと言える。けれどデーモンには、どうしても…素直に受け取れなかった。
 清水の本心は、もっと別のところにあるような気がして。
 幾度目かの溜め息を吐き出した時、支度部屋のドアが叩かれた。
 ドアは開いている。なのでそのまま顔を上げると、直ぐに相手が見えた。
「ライデン…どうした?」
「うん、ちょっとね」
 ドアを叩いた張本魔…ライデンは、小さく微笑む。そして支度部屋の中へと入り…念の為、ドアを閉める。
 そして。
「エース、来たよ。今準備してる」
「…そう、か」
 思わず…溜め息が零れた。
 最愛の悪魔が…再び、隣に立ってくれる。幾度も声をかけては断られていた。だから、この現状が嬉しくないはずはない。
 けれど、清水のことがどうにも気になって…。
 表情の冴えないデーモンに、ライデンも心配そうな表情を浮かべた。
「デーさん…大丈夫?」
 そう言いながら、デーモンの傍へと腰を下ろす。
「疲れてる?」
「あぁ…ちょっとだけな。急な変更で、忙しかったからな…」
「…急だったもんね、エースの参加。それが…引っかかってるの…?」
 思わず問いかけた声。
 その言葉に…デーモンは小さく笑いを零した。
「…そうだな。あんまりにも急な話で…まだ、状況の整理が出来ていないのかも知れない」
「状況の整理って?」
「……何で彼奴…参加を決めたんだ?今まで吾輩が何度誘ったって首を縦には振らなかったのに…何で今回は、こんな急に…しかも、直接言わないとか何なんだ…」
 参加の理由は、ライデンも知っていた。だが、そこで悩むことはなかった。
 素直に受け入れられない理由など…一つしかない。
「…もしかして…拗ねてんの?一番に報告されなかったことに」
「…いや…そう言う訳では…」
 図星。そうデーモンの顔に書いてある。
 その顔を前に、ライデンは笑いを零した。
「でもそう言うことじゃん?侍従経由で連絡して来たのが気に入らない、ってことでしょ?だったら、清水さんに聞けば良かったのに。理由もなく、そういうやり方をして来る人じゃないでしょうよ」
「……聞いたさ。そうしたら、はっきり言われた。自分は"エース"じゃないから…自分にとって、吾輩は一番じゃなかった、とな」
「デーさん…」
「別にな…それに関してはもう良いんだ。吾輩は彼奴の一番ではない。それはわかり切っている。だから、百歩譲ってそれは良い。ただ…彼奴はどうして、参加を決めた?それはエースも同じことだ。こんな状況だからか?本当は、他に何か思惑があったんじゃないか、と…それがわからなくてな…」
「思惑…」
 ふと、先程見かけたエースの顔を思い出す。
 ライデンからしてみれば、今まで人間界では接点がなかった。だから本当に久し振りだったのだが…何か、思慮するところがあっただろうか…?
 すこし…考えてみる。だが、当然ライデンにはわからない訳で…
「…じゃあさぁ…本魔に、聞いてみたら…?」
 そう切り出すと、デーモンは溜め息を一つ。
「だから、何度も言っただろうって言われて…」
「デーさんが聞いたのは、"清水"でしょう?俺は、"エース"に聞けば?って言ってるんだけど?エースが参加を決めた、ってことはさ、清水から説得されたからでしょ?納得出来るだけの理由は、エースが一番良くわかってるはずじゃん」
「…ライデン…」
「ほら、噂をすれば…来たんじゃない…?」
 確かに足音が聞こえ…やがて、ドアがノックされた。
『デーモン、俺だけど…』
「はぁ~い。今開けるよ~」
 くすっと笑ったライデンが声を上げ、立ち上がる。
「ちょっ…御前…っ」
 まだ心の準備が出来ていない。そう言わんばかりに慌てるデーモンに、ライデンが一つウインクをする。
「大丈夫。頑張って」
 小さくそう声をかけると、そのままドアを開けたのだった。
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