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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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希求~side α 後編
こちらは本日UPの新作です。

拍手[5回]


◇◆◇

 徐ろにドアを開ける。
 そこには、まだ人間の姿だが…中身はちゃんと悪魔の"エース"が、きょとんとした顔で立っていた。
「…御前なぁ…姿が見えないと思ったら、ここにいたのかよ…」
 思わずそう零したエースに、ライデンはにっこりと笑う。
「だって俺、もう変身終わってるし?あんたはまだ世仮じゃん」
「あぁ…取り敢えず挨拶して回って…」
「待ってるよ、デーさん」
 そう言うと、身体をずらして自分は廊下へと出る。
「ほら、時間ないよ?入った入った」
「ちょっ…ライデンっ」
 背中を押されるように支度部屋へと押し込まれる。その背中に笑うライデンの声。そしてそのまま、ドアが閉じられる。
「…何だよ、彼奴…」
 小さな溜め息を吐き出しながら、エースは改めてデーモンへと視線を向けた。
 そこには…複雑な表情を浮かべているデーモンがいる。
「……御前も何だよ、その顔は…久し振りだって言うのに…」
「…いや…」
 中身はエースだとは言え、世仮のままでいられると何処となく気拙い…そう思うのは、多分前回の清水との会話の所為。
 軽く視線を伏せ…小さな溜め息を一つ吐き出すデーモンに、エースは傍へと歩み寄って来る。
「…この前は…"清水"が悪かったな。ちょっと…嫌な思い、しただろう…?」
「…エース…」
 傍に腰を下ろしたエースも、小さく息を吐き出し…そして言葉を続ける。
「"清水"から、話は聞いてる。多分、御前が嫌な思いをしたんじゃないか、って。でも…悪気があった訳じゃないんだ。彼奴は彼奴なりに色々考えての言葉だと…俺は思っているんだが…」
 デーモンの様子を窺うように言葉を放つと、デーモンも頷きを返した。
「あぁ、それはわかっているから。彼奴にとって、吾輩は一番ではない。だから、一番に報告はしなかった、と。考えてみれば…まぁ、今回誘ったのは侍従らしいしな。我々よりも、侍従たちに先に言わないと準備も出来ないしな。一度吾輩に断っている手前、真っ先に…とはいかないのはわかっているから。それは大丈夫」
「なら…?」
 デーモンの複雑な表情の意味がそれでないのなら、一体何なのか。エースもそれがわからなかった。
 首を傾げるエースに、デーモンは意を決したように、やっと視線を向けた。
「吾輩が知りたかったのは…彼奴の本心、だ。参加を決めた理由は、何度も聞いている。でも、他にもっと理由があるんじゃないのか…?それは清水だけじゃない。御前も…だ」
「……デーモン…」
 すんなりと受け入れられない。そんな想いをその眼差しから感じ取ったエースは…溜め息を、一つ。
「…そうだよな。やっぱり御前は納得しないよな…清水から様子を聞いて、そうじゃないかと思ったんだが…」
「当たり前だろう?あれだけ復帰を否定して来て…幾ら世の中が大変だから…と、あっさり復帰するだなんて。それは御前も同じだ。二度と同じステージには立たないと、何度も言われたんだ。こんな状況だしな、参加してくれることに異論はない。有難いと思う。だが、吾輩は…」
「わかった、わかった。話すから…落ち着けよ」
 興奮して声が大きくなるデーモンに、再び、溜め息が零れる。
「…彼奴には…清水には、表向きの理由だけを伝えるようにと言われたんだが…こんな世の中になってしまったから、元気を出して欲しい。それが活力になるのなら、悪魔に戻っても良い。でもそれは、単なる大義名分で…本当は自分が、俺がステージに上がる姿を見たいからだ、と言ったんだ」
「…清水がそう言ったのか?」
「そう。彼奴が、俺がギターを弾く姿を見たい、って。満面の笑みでそんなこと言われたら…断れないだろう?俺だって…彼奴の笑う顔が見たいんだから」
 既にそれは、主たる悪魔と媒体の性。ある意味相思相愛なのだから、媒体の達ての願いを断れるはずもなく。事、エースと清水なら尚更。
「でも…彼奴に参加の意を伝えた後…よくよく考えた。多分…彼奴の言う"大義名分"は、ただの表向きの理由じゃない。きっと本心だったんだろう、と」
「どう言うことだ?」
 首を傾げるデーモンに、エースは目を伏せる。
「今回のこの状況は、彼奴と相棒から、活動の全てを奪った。勿論、彼奴らだけじゃない。多くの人たちが同じ思いをしているはずだ。そんな状況の中で、ミュージシャンにとって演奏出来ないことが何よりもしんどいだろう?彼奴も相棒も、予定を延期や中止にせざるを得なくなって…かなりの心労だったと思う。例え配信が出来たとしても、それは悩んだ末の選択であって、生音で勝負するライブとは訳が違う。当然、本意ではなかったはずだ。その中で、御前たちも活動を延長していること、そこに参加してみるつもりはないかと声をかけられて…俺の姿が過ぎったのかも知れない。彼奴が一番…元気になりたかったから。それに、相棒も清水を大好きなのは勿論なんだが、"悪魔のエース"も大好きみたいだしな。だから彼奴が悪魔に戻ることを決断した本当の理由は…まず自分が元気になること。そして、相棒を元気づけること。そうすればそれが、自分たちも次の活動への活力になる。そこから彼奴らのファンも元気になるだろうし…勿論、信者も元気になる。彼奴の大義名分も、あながち間違ってないだろう?だから、本心だと思ったんだ」
「…成程な…腑に落ちた」
「だろう?」
 感心するデーモンに、エースは笑いを零す。
「実際問題…俺が、どれだけの力になるのかはわからない。でも、少なくとも…清水は元気になってくれると思う。そこから連鎖して、少しずつ広がってくれるのなら…参加して良かったと思えるんじゃないかな」
 その言葉に、デーモンも小さく笑いを零した。
「我々にとっても活力だぞ?ジェイルやルークを見ればわかるだろう?ゼノンやライデンだって、そんなに態度には出ないが、楽しそうだしな。何より吾輩も…な」
「さっきは変な顔してたクセに…」
 そう言われて、思わず苦笑する。
「しょうがないだろう?御前たちの本心がどうしても見えなかったんだ。他の奴らが気にならなかったことが、吾輩だけ引っかかっていたから、吾輩がどうかしてしまったのかと思っていたんだぞ?」
「まぁ…結局のところ、あの言葉が全部本心だった、ってことだ。彼奴が、俺がギターを弾くところが見たい、って言うことも、俺が彼奴が笑う顔が見たい、と思ったことも含めて…全部本心だから。疑ったって、何も出て来やしないんだから」
 そう。疑ったところで、何も出ては来ない。ただし、心の裏側を見なければならなかったが。
「…ったく、余計な心配させやがって…」
 大きな溜め息を吐き出したデーモン。だが、その姿に苦笑するエースの姿を前に、改めて口を開く。
「…吾輩だって…見たかったんだ。御前が、吾輩の隣でギターを弾く姿を。何年待ったと思ってる…?」
 その言葉に、エースは笑うのを止める。だが、デーモンに向けられている眼差しは、とても穏やかだった。
「わかってるって。だから、今日はたっぷり見せてやるよ。俺は、ツアーには同行出来ないけど…最後まで頑張れるように、しっかり見てろよ」
「…あぁ。楽しみにしてるから」
 何年経っても、エースはエース。そんな姿に、デーモンは笑いを零す。
「さ、いい加減そろそろ準備しないと。みんなに迷惑かける訳にいかないからな」
 そう言って、エースは腰を上げた。
「じゃあ、また後でな」
 エースはそう言い残し、準備に戻って行った。
 その背中は…いつか見た背中とほぼ変わらない。けれど今は、寂しさはない。
 "彼"は、ここにいるから。
「…吾輩も、情けない姿は見せられないな…」
 折角戻って来てくれたエースに、情けない姿は見せられない。だから、気合を入れねば。
 笑いを零すその顔は、色々吹っ切れたようだった。


 ギターを背負ったその姿は、昔と寸分も変わらない。ずっとそこにいたかのように、違和感の一つも感じなかった。
 ただ…共にステージに立つ仲魔たちから感じられる"喜び"だけは、溢れていたが。
 限られた時間に仕事を目一杯詰め込み、誰もがその一つ一つに懐かしさを感じつつ。共にいられることが、何よりも楽しい。
 そうして…当初の予定通り、エースは仕事を終えたのだった。

◇◆◇

 エースが魔界に戻った数日後。
 打ち合わせを終えて帰宅したデーモンだったが、荷物を置いた途端にスマートフォンが鳴った。
 着信画面を確認すると、その名前に思わず息を飲む。
「…清水…」
 その名前の可能性として、本当に清水であると言う可能性が一つ。そしてもう一つは、魔界から清水のスマートフォンを経由してエースがかけている可能性が一つ。どちらにしても…早く出るに越したことはない。
「…もしもし?」
 様子を窺いつつ電話を繋ぐと、小さな笑い声が届いた。
『どっちだろう、って長考してたのか?』
「…清水、か…」
『着信画面の通りだろう?』
 そう返した声は、とても機嫌が良い。その声に、大きく息を吐き出す。
「…どうした?」
 問いかけると、一つ間を置いて返事が返って来た。
『エース…楽しそうだったよ。有難う、な』
「…そう、か。なら良かった。みんな喜んでいたし…吾輩も、楽しかった。だから…礼を言うのはこちらだ。有難うな」
 何処かしんみりとしてしまうのは…多分、エースが魔界に戻ってしまったから。時間が経つにつれ、現実が戻って来たから。
 けれど、そんなデーモンを、清水は笑った。
『エースの出番が終わっただけで、ツアーはまだ始まってないんだから。ツアーが終わるまで見護っているからって言ってたぞ?』
「あぁ、そうだな」
 清水の言う通り。エースは魔界に戻ってしまったが、ツアーはまだ始まってもいない。ただ、ヴィデオミサ用の映像を撮り終えただけ。だから、まだまだこれからが本番。
 それよりも気になるのは、清水の機嫌が良いこと。最後に会った時の様子があんな様子だったので、デーモン自身は気拙さもあったのだが…。
「なぁ、清水…御前、馬鹿に機嫌が良いようだが…?」
 つい、そう口を突いて出た言葉。
『あぁ…こっちも少し、見通しがついたんだ。RISEの予定は決まっていたけど、その前に何とか本田と二人でライブが出来そうだから。こっちはまだ配信だけどな。ただ、心配もかけたみたいだから、一応連絡を…と思ってな』
「そうか。良かったな…と言って良いのかは微妙だが…前に進めたことは良かったな」
 一応気を遣ったのだろう。やっと、自分たちのフィールドで動き出せる。そう言うことなら、機嫌が良いのもわかる。
----彼奴が一番、元気になりたかったから。
 ふと思い出した言葉。確かに元気そうな声。そう考えると、エースが言ったことは尤もだったのだろうと。
『…色々、迷わせたみたいで…悪かったな』
 エースが何を何処まで話したのかはわからない。ただ、何かは察したのだろう。清水にそんなしおらしいことを言われたら、笑うしかない。
「いや…吾輩はもう大丈夫だから。余計な心配はしなくて良い。エースも出来る限りのことはやってくれた。だから次は御前が、頑張れよ」
『御前もな。まぁ、俺はまだ先だが…御前はもう直ぐだからな。景気づけに…』
「呑みにでも行くのか?」
 苦笑しながらそう返すと、清水も電話の向こう側で笑った。
『ば~か。こんな状況で呑みに行くかよ。子守唄だよ、子守唄。今日は俺が歌ってやるから』
「御前が?」
『そう。疲れてるだろう?だから今日は特別』
 歌わされるのかと思いきや、清水が歌ってくれるとは。これは…上機嫌のうちに、言ってしまった方が良い。そう思ったデーモンは、咄嗟に口を開いた。
「子守唄も嬉しいんだが…だったら、御前の曲で聞きたい歌があるんだが…」
『……俺の曲?』
 一瞬の沈黙。その後、問いかけられた声に、デーモンも一つ呼吸を置いて言葉を続けた。
「…あぁ。前に一度、何かで聞いたことがあったんだが…」
 そう言いながら、曲のタイトルを告げる。
 力強いサビのメロディーと、ズドンと胸の奥に残る歌詞。それがとても心に響いた。それが生で聞けるのなら…しかも自分一名の為に歌ってくれるのなら…きっと、ツアーも乗り越えられる。
 だが、穏やかな子守唄とは真逆なので、疲れるから嫌だと言われたらそれまで。
 清水の返事を、ドキドキしながら待っていると…小さな溜め息が聞こえた。
『…アレ、疲れるんだけど……まぁ、今回だけな。ちょっと待ってろ』
 そう言い残し、暫しの沈黙…と言うか、何やら物音が聞こえて来た。
 そして聞こえて来たのは…ギターの音。そして、柔らかい歌声。
 その歌声に、メロディーに、歌詞に、深く引き込まれる。
 まるで…今までの記憶が重なるようで。胸の奥が、熱くなる。
『…デーモン?』
 いつの間にか、曲は終わっていた。いつまでも無言のデーモンに、見兼ねた清水が声をかけたのだが…デーモンは大きな吐息を吐き出した。
「…聞いてた。余りに感動が大きくてな…有難うな。吾輩の我儘を聞いてくれて。これで、精一杯頑張れる」
『そう、か。なら、歌った甲斐があった』
 くすっと笑う声。
『じゃあ、もう遅いから切るぞ?』
「あぁ、有難う。御前も頑張れよ」
 御互いにそう言って、笑い合って通話を切る。
 胸の奥に残るのは、忘れられない歌声。
「まるで御褒美の前払いだな」
 再び、笑いが零れる。
 前払いで貰ってしまったのなら、頑張るしかない。それは当然。その為の糧なのだから。
 せめて…途中で力尽きて、情けない姿をさらさないように。それは信者たちに対してもそうだが…何よりも、エースと…それから清水に対しても。
「…よし、やるしかないな」
 この先、まだ情勢がどうなっているかはわからない。けれど、自分たちの与えられた任務は、精一杯熟さなければ。
 自身に気合を入れる。そして腹を据えた。
 ツアーは、目前だった。

◇◆◇

 結成三十五周年+。幸いにも、ツアーは予定通り全て執り行うことが出来た。
 そして、エースの存在感は相変わらず健在。大いに話題にもなった。
 けれど…やはり、消化不良感は否めない。
「…やるしかないよな…?」
 そう問いかけた声に、誰もが笑みを零す。その顔で、答えは一目瞭然。ここまで来たら、ケリをつけるまで戻れない。それは、誰もが同じ想い。
 そして彼らは、三十七年目…"三十五周年++"へと足を踏み出したのだった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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