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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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希求~sideβ
こちらは本日UPの新作です。

拍手[3回]


◇◆◇

 思いがけないニュースが届いた9月の上旬。
 突然のニュースに盛り上がる信者たち。当然、ウェブ上や雑誌の紙面を飾るその悪魔の姿を幾度も眺めることになった。
 その姿は、とても十六年振りだとは思えないくらい。多少、年を重ねた感はあるものの、それは誰もが同じこと。それでも昔と見た目は殆ど変わらない。そんな姿をパソコンの画面で眺めていると…胸の中に、モヤモヤとした霧が立ち込めるようで。
 相棒の活躍はとても楽しみだ。昔から好きだったその姿をもう一度見ることが出来るとは、正直思っていなかったものだから、尚更。
 勿論、参加を決めた相棒の想いはきちんと受け留めている。その想いに、反対するつもりもない。
 けれど…心の奥にかかったモヤモヤは、なかなか消えない。
 全てが終わるまで、連絡はしない。その言葉の通り、暫く連絡はない。自分も了承したとは言え…それもモヤモヤに輪をかけていた。
 まるで…自分だけ、置いて行かれたようで。
 相棒が悪魔の媒体であることを受け入れたはずだったが…やはり、悪魔がやってくれば不安が付き纏う。
 十六年振りの再会。そして再開。それは、自分の心の中に秘めた醜い部分を思い出すことになった。

◇◆◇

 何もする気が起きない。と言うより…することもない。
 仕事場の椅子に座ったまま、ぼんやりと時間を過ごす。
 何日、そうやって過ごしたことか。だが今日は…何か違う気がする。
「…何か、あったっけ…?」
 何か予定でも入っていただろうか。ふと、そんなことが過ぎったその時。まるでそれを予感したかのように、放り投げてあったスマートフォンの電話が鳴った。
 その画面に目を向けると、一つ深呼吸をする。そしてスマートフォンを手に取り、電話を繋ぐ。
「…もしもし?」
『本田?久し振り。今、大丈夫か?』
「うん、大丈夫」
 気遣うような相手の声に答えつつ、今まで座っていた椅子からソファーへと場所を変える。
「連絡が来た、ってことは、全部終わったの?」
 そう問いかけた声に、小さな吐息。
『まぁな。それで……見たか?』
 控え目に問い返される。
「見た見た。反応凄いよね~。信者さんたち大騒ぎじゃん。流石、"伝説のギターヒーロー"」
『…茶化すなって…』
 溜め息を吐く相手に、笑いを零す。
「別に良いじゃん。伝説になってて何よりじゃない。見向きもされないよりはずっと嬉しいでしょ?」
『まぁ…でもまだ、"動くエース"は御披露目してない訳だから…そこで幻滅されたらどうするんだよ』
「大丈夫だよ、あんたなら。俺は心配してないし」
 いつになく不安、と言うか不服、と言うか…とにかく、微妙な心境であることには変わりないのだろう。だからこそ、そう言って笑い飛ばすのが多分一番良いと思う。
 自分の為にも。
 最初にその話を聞いたのは、発表よりも前。そして現状と今後の予定も全部加味しても、ツアーには同行しない。参加するのは、映像だけ。最初からそう言っていたのだから、その決断に反対する理由はなかった。
 ただ…ほんの少しだけ、何かが引っかかっている気がする。
『…本田?』
 不意に名を呼ばれ、我に返る。
「…何?」
『何?って…』
「あ、そうだ。写真撮って来た?俺も悪魔のエースさん、見たいんだ~」
『写真なんか、色んな媒体で出てるだろうが…まぁ、一応撮ったけど…御前も彼奴のこと、結構好きだよな…』
「当たり前じゃない。最強にカッコいいじゃないよ。それに俺が最初に声かけられたのは、向こうのエースさんだし?あの時エースさんに声かけて貰わなかったら、俺は今あんたと一緒にはやってないかも知れないじゃん。キューピット的な?」
『キューピットって…悪魔だけどな』
 くすくすと笑う声。その声に、小さく笑いを零す。
 相棒の声を聞き、その笑い声を聞き…自分も笑いを零す。そうすることで、心の中のモヤモヤが少しだけ浄化される。そんな感覚があった。
 そうして暫し、相棒からの報告を聞きながら雑談をする。けれどふと…気が抜けた。
「…良いなぁ…」
 思わず零れたのは…心の声だったはず。けれどそれが口を突いて出てしまった。
 当然、饒舌だった相棒の笑いが止まる。
『本田…?大丈夫か…?』
「…何でもない。御免ね、ちょっと…羨ましくて」
『羨ましい、って…』
「御免ね。折角機嫌が良かったのに。でも…」
 その先を、どう続けよう。そう思いながら、相棒の背中を押したのは他ならぬ自分。もしあの時反対していれば…きっと、相棒は参加しなかっただろう。それを今更…何を言っているんだろう。
『話…聞くぞ?』
 躊躇いがちに…ではあるが、そう呼びかける声は、とても優しい。
 だからこそ、隠すことは止めた。どうせなら、はっきり言ってしまおう。
「…俺…あんたから、悪魔に戻ろうかと思うって言われた時…ホントに、楽しみだったんだ。悪魔のエースさんをまた見られることもそうだし…あんたが、前の仲間たちと一緒に過ごす時間も。でも実際…残されるのが…置いて行かれることが、こんなにしんどいとは思わなくて…」
『…本田…』
「俺は…何も出来ない。あんたが頑張ってる間…俺は、全然前に進めてない。それが何よりも情けなくて…でも、焦ったところでどうにもならない。あんたと違って、一名でステージに立てる訳じゃない。動けないことがもどかしくても…何も出来ない…」
 溜め息と共に吐き出した言葉。
 ずっと、考えていたこと。相棒は一名でステージに立つことが出来るのに、今の自分は相棒がいなければステージに立つことも出来ない。つまりはライブが出来なければ…何の役にも立たないのではないだろうか。いつか、相棒にも…見放されてしまうのではないだろうか…?
 そんな不安を吐き出す言葉を、黙って聞いていた相棒は…大きく息を吐き出す。そして。
『ライブ…出来るぞ』
「…はい?」
 不意にそう言われ、思わず問い返す。すると相棒は小さく笑った。
『色々不安はあるけど…取り敢えず、RISEは予定通りに出来そうだ。でも俺は、それを御前とのライブの再開にはしたくない。その前に、一度で良いから…御前と二人で、ステージに立ちたかったんだ。様子を見ながら色々調整して…漸く出来そうだと判断した。待たせて悪かったな。また一緒に、ステージに立とう』
「エースさん…」
----ヤバイ…泣きそうだ…
 そう思うくらい…その言葉は胸に染み入る。
『今日連絡入れたのは、その報告もあったからなんだ。御前がそこまで思い詰めてるとは思わなくて、聖飢魔Ⅱの活動が一段落するまで連絡しないとは言ったんだが…こんなことなら、もっと早く連絡しておくんだったな。悪かったな、不安にさせて』
 申し訳なさそうにそう言った声に、見えていないことも忘れて大きく首を横に振る。
「それは謝らないでよ。だってそれは、俺だって納得したことだから。だから、悪魔になることが不安だった訳じゃないんだ。ただ…俺だけ置いて行かれたような気がしただけ。活動出来ないストレスをどう発散したら良いかわからなくなって、色々なことを試してみたんだけどさ…ライブが出来ないストレスはライブじゃないと発散出来ない。それに気付いたんだよね。でも、俺だけ何も出来なかったから…色々落ちこんじゃって…そのうち、あんたにも見放されちゃうんじゃないかって…」
 改めてそう口にすると、自分の弱さがそこにあると思い知らされた。
 信用していない訳じゃない。ただ、羨望の気持ちが歪んでしまったのだと。
 それを打ち明けて、呆れられてもしょうがない。それは覚悟の上の告白だった。でも…そんな覚悟を、相棒は一笑した。
『見放す訳ないだろう?前に言っただろう?御前を手放す気はないって。御前の作る音に、俺は惚れたの。どんな状況でも、二人で乗り越えて来ただろう?その気持ちは今でも変わらないから』
「…そうね。あんたはいつもそう言ってくれたもんね」
 事ある毎に、ちゃんと言葉としてその想いを伝えてくれる。億劫がらずに、何度も。だからこそ、その想いを信じられた。
 だから…今回も、信じられる。
「…わかった。楽しみにしてる」
 それは、紛れもなく、未来を見据えた約束。それを察してくれた相棒は、笑いを零した。
『楽しみ以外の何物でもないが…楽しむ為にはそれ相応の準備が必要だからな?』
「…わかってるって…」
 最近の怠惰な生活を見透かされたようで、思わず顔を顰める。まぁ、電話の向こうには見えていないけれど。
『頑張って整えて置けよ』
 そんな笑い声さえ、心地好い。
「…よっしゃー!やりますよっ!」
『楽しみにしてる』
 笑いながらそう言われてしまったら…やるしかない訳で。諸々、立て直さなければ。
 それはそれで、楽しみでもある。
『じゃあ、詳しいことはまた改めて連絡するから』
「うん。有難うね」
 色々な意味を含んだ御礼。その言葉に笑いが返って…そして電話は切れた。
 電話の余韻に浸りつつ…頑張らなければと、自分自身に気合を入れる。
 いつまでも腑抜けてなどいられない。
「…ちゃんとね、頑張るから」
 何処まで出来るかはわからないけれど…せめて、期待に応えたいと思う。
 待っている相手が、その先にいるのなら。

◇◆◇

 まだまだ、目指す先は遠い。けれど、少しずつでも前に進めるのなら…その少しずつをしっかり歩く為に、何が必要なのか。
 少なくとも、それは…一人で背負うモノではない。相棒と二人で、背負って行くモノ。共にステージに立つ仲間たちと一緒に背負うモノ。
 そして…それを待っている人たちに還元していくもの。
 それがわかっただけでも、良い経験をしたと思いたい。
 どんな経験でも、無駄なことではないと。
 隣で笑う相棒の姿に、それを痛感した。
 悪魔でも人間でも。その笑顔は、何よりも心強かった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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