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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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"Thank you" Day
本日UPの新作です
ACEさんとエース長官の御誕生日&御発生日記念で。

拍手[5回]


◇◆◇

 毎年…この時期になると、少しだけ憂鬱になる。
「…で、幾つになるの?」
 そう聞かれることに、ここ数年は笑って誤魔化せるようになった。節目の年までは、出来ることなら回避したい。そう思っていたこともあったのだが…まぁ、生きている以上そんなことが出来るはずもなく。
 だが不思議なことに、節目を越えたら少し気が楽になった。だが面と向かって、馬鹿正直に年齢を公開する意味もわからず。言わなくて良いのなら、黙っているに越したことはない。そう思ってみたり。
 毎年そうして年を重ねて来た。今年もそんなものだと思っていた。
 そして、またその日がやって来る。

◇◆◇

 3月目前のその日。幾つかのライブの準備に勤しんでいた、そんな中…電話がかかって来た。
 スマートフォンの画面には…数字の羅列。
「もしもし?」
 電話に出ると、相手の声が届く。
『元気か?』
「まぁね。あんたは?」
『頗る元気』
 そう返した声は、確かに元気そうで安心する。
「どうした?何かあった?」
 最後に会ったのは…去年の秋。それ以来。そう思いながら問いかけると、相手は小さく笑った。
『8日の夜、空いてる?』
「8日?空いてるけど…」
 カレンダーを捲り、そこに書き込んだ予定に視線を向けながら答える。すると。
『そっち行くから。そのまま空けといて』
「……は?行くから、って…?俺、次の日ライブだから、出歩くのはちょっと…」
 思いがけない言葉に慌ててそう言葉を返すと、笑い声が返って来る。
『大丈夫、出歩かないから。夜にでも御前の部屋に行くから。ちょっと寄るだけだから、何にも用意しなくても良いし。部屋にいてくれればそれで』
 じゃあな。
 一方的にそう言われ、電話が切れる。
「…何なんだ、一体…」
 唐突なのは今に始まったことではない。それは仕方がないとして…何故その日なのか。
「…何考えてるんだか…」
 取り敢えず…来ると言うのだから、待つしかない。何も用意しなくても…と言われても少しぐらいは…と思わなくもないが…。
「…まぁ、いっか…」
 全く何もない、と言う状況でなければ、何とかなる。酒も食べ物も何かしらは必ずあるから。そう思えば良い。
 そう考えながら、再び準備へと戻って行った。

 約束の日。
 翌日のライブの準備をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
「そうだ、約束…」
 手を止め、壁の時計を見上げる。そして玄関へと行き、ドアを開ける。
『不用心だな。確認してからドア開けろよ』
 ドアを開けるなりそう声が届く。
「下のオートロックすっ飛ばして来るヤツなんか、あんたぐらいだから。それに、インターフォンのモニターに映らないクセに」
 笑いながらそう返すと、改めて入って来た相手へと視線を向ける。
 人間界での実体がないので(向かい合ってここにいるので)、薄っすらと透けた、悪魔の意識体。モニターに映るかと思いきや、やはり意識体だけでは映らない。そう考えると、心霊写真なんかは思念が強い所為だろうか、目に見えなくても映る者もいるのだから、不思議なものだ。
 それはさて置き。
「で、どうしたの?」
 リビングへと向かい、ソファーに座りながら問いかけると、相手はくすっと笑いを零した。
『明日、発生日…じゃなかった、誕生日だろう?ライブがあるのは聞いてたから、前祝いで』
「…エース…」
 今まで、訪ねて来たことなどなかったのだが…何故このタイミングで、と勘繰ってしまう。勿論、そんな考えは直ぐに読み取られてしまうが。
『ほら、去年…久し振りに戻って来ただろう?御陰で敷居が低くなったと言うか、何と言うか…一緒に御祝いをして貰ったことも、御前と俺と、二名で祝ったこともなかったな~と思ってな。誕生日当日は相棒や仲間たちに祝って貰うだろうから、前日なら良いかとな』
「…そうだな。二名で…って言うのは、今までなかったな…」
 今更ながらに…昔は一つの身体を共有していたこともあり、二名揃って何かをすることは殆どなかった。そして解散後も関わることは敢えて控えていた。
 勿論、それは御互いの為に。
『別に、俺たちの結論が間違っていたと思っている訳じゃない。ただ…こう言う関りは、あっても良かったのかなと思っただけだから』
 そう言いながら、悪魔はその手の中に洋酒の瓶を呼び出す。そしてもう片方の手には小さな箱。それをテーブルの上に置くと、にっこり笑った。
『一杯だけ乾杯したら帰るから。ほら、グラス出して』
「あぁ…うん…」
 言われるがままにグラスを取りに行く。そしてグラスを二つ持って戻って来ると、悪魔は瓶の蓋を開けていた。そしてグラスに注いだのは、綺麗な琥珀色の酒。それは、悪魔の瞳と同じ色。
『…一日早いけど…誕生日、おめでとう』
「有難う。あんたも…発生日、おめでとう」
 御互いににっこりと笑い、グラスを合わせる。
『…で?幾つになるんだっけ…?』
 グラスに口を付けながら問いかけられた言葉に、思わずぶっと吹き出す。
「…あんたが聞くか…っ」
 咽て咳き込む姿を笑って眺めている悪魔は、実に楽しそうで。
『俺に比べたら、まだまだ赤ん坊みたいなもんだから。幾つだろうが、御前が生きて来た年輪なんだから。そんなに気にするなよ』
「そりゃあ、十万年生きて来た悪魔に比べりゃ赤ん坊だろうけど…」
 そう、十万年。その時間の長さは想像つかないものの…きっと、色々と大変なことも沢山あっただろう。その中で出逢えたことは…選ばれたのは、ある意味、奇跡。
 そんなことを考えていると、悪魔は小箱を差し出した。
『そう、これ』
「…何?」
 差し出されるまま受け取り、箱を開ける。そこに入っていたのは、十センチほどの丸いケーキ…?ぱっと見、レンガのような艶のある茶色のモノが敷き詰められている。そして匂いは甘酸っぱい。
「えっと…?」
 首を傾げると、悪魔はくすくすと笑った。
『悪いな。味見して欲しい、って頼まれたんだ。魔界のデーモンの屋敷の使用魔…アイラが作ったタルトタタン?なんか、そんな名前の林檎のケーキだって』
「あぁ。あのアップルパイ作るのが得意なヒト?」
『そうそう。どうやら、毎年デーモンの発生日にアップルパイ焼くのが楽しみらしいんだけどな。たまには違うものをってチャレンジしたらしい。材料は魔界のモノだけど、食べても何の影響もないから』
 そう言われたら、断れない。
 自ら席を立ち、フォークを手に戻って来た悪魔。そしてそれを差し出す。
『一口で良いから』
 にっこりと微笑まれてしまっては…食べるしかない。控え目に一口分掬うと、口の中へと運んだ。
「……んまい」
『…良かった』
 ホッとしたような悪魔の顔に…くすっと笑いが零れた。
「アイラ…って言ったっけ?アップルパイのヒト」
『…あぁ、そう』
「じゃあ、伝えといて。流石教え上手、って」
『…清水?』
「作ったの、あんただろう?」
『………』
 図星、と言う感情が顔に出ている。そんな顔は、久々に見た気がする。
『…何でわかった?』
 ちょっと気拙そうに口を開いた悪魔に、思わず笑いが零れる。
「あからさまにホッとした表情してたらわかるって。それに、デーモンの発生日にしかアップルパイ焼かないヒトが、俺の誕生日に試作とは言えリンゴのケーキ焼く訳がない。で、名前を出したってことは、教わって作ったんだろう…と言う推測。どう?」
『御名答…』
 そう言われてみれば、確かにそう。そこに辿り着かないと思っていた悪魔の負け。
「でも、美味いのは本当。有難うな」
 わざわざ作ってくれた気持ちが嬉しい。そして本当に美味しい。
「…って言うか、何で林檎?」
 林檎が好きだなんて、言った記憶はない。
『あぁ、デーモンの屋敷にあったから。それに、"悪魔の果実"だし?』
「…はいはい。"悪魔の果実"ね」
 笑うその顔を見るに…どうやら、深い意味はなさそうだ。たまたま習いに行ったらあった。そんなところだろう。
『…俺も食べて良い?』
 身を乗り出すと、あ~んと口を開ける悪魔に、苦笑しながらフォークで一口食べさせる。
『うん、美味い。我ながら良く出来た』
 そう言って、笑う悪魔。その笑顔に、満面の笑み。
 二名で祝うことも、悪魔の手作りケーキを貰ったことも初めて。そんな初めてだらけの前夜祭。良い年をして…と思われても、幾つになっても嬉しいものは嬉しいのだ。それは仕方がない。
『明日のライブ、頑張れよ』
「大丈夫。いつも通り、頑張るから」
 そう言って、穏やかに笑い合う。そんな時間が、とても嬉しかった。
 毎年のことだが、決して毎年同じではない。過ごして来た時間の積み重ねが、新しい時間となる。それを改めて感じた。
----来年もまた…一緒に祝えると良いな。
 これからの一年が、どんな年になるかはまだわからない。けれど、きっと…頑張れる。
 少し照れたように笑うその姿は、とても楽しそうで。
 未来を楽しみにしよう。
「有難う」
 その一言が、何よりの言葉だった。

◇◆◇

 3月9日。語呂合わせで"サンキュー"の日。
 生を受けたことに。出逢えたことに。巡り合えたことに。
 そして、共に過ごせる時間に。
 "Thank you so much!"
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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