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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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あらしのよるに 2
本日UPの新作です。
こちらは、今年の『夏恒例アンケート』の際に、某様よりリクエストいただいたものです。
とても長くなってしまったので、分割しました…(了承済みです/苦笑)
リクエスト内容は、最終UPで。
3話完結 act.2

拍手[3回]


◇◆◇

 執務室の窓から外へと視線を向けたまま、大きな溜め息を吐き出しているのは…この国の長たるライデン。
 先ほど側近のロシュから、現況報告を受けた。だがその報告は…予想外この上ない。
「…まさか、結界が暴走するとはな…」
 全く想像もしなかった事態。それは、王宮を囲むように張られている防衛結界が、この悪天候で誤作動を起こしたと言うこと。
 外部からの攻撃から王宮を護る為の結界が悪天候を攻撃と捉え、防衛反応により過剰ともいえる強硬な結界を張り巡らせてしまったのだ。それが点検の見落としが原因だったかも知れない、との報告には、溜め息しか出なかった。
 通常の結界ならば、解呪で容易に解くことが出来る。だが、防衛結界は通常の解呪だけでは解けない。外壁の内側に立てられた結界柱を壊さなければ、解くことが出来ない。そして一番厄介なのは…現在誤作動による暴走中、だと言うこと。
 強硬な防衛結界は、攻撃を受ければ同等以上の力で反撃を返す。そう設定されているが故に…安易に壊すことも危険を伴う。ライデンなら出来なくはないだろうが…結界に囲まれている状態で、全力を出せるかどうかは定かではない。
 しかも、ライデンは結界の内側。壊すとなれば、当然内側からとなるが…もしそこで結界柱を壊しきれず、反撃されたら。恐らく…王宮は大ダメージを受ける。そしてライデン自身も、無事でいられると言う保証はない。つまりは、内側から壊すこと自体が無茶なことなのだ。
 ならば、外側から…と言うことになるが、結界で通信も遮断され、魔界、天界とを繋ぐ扉の接点も外れてしまった。外界と連絡が全くつかなくなってしまったこともあり、結界をどうにかしない限り助けを呼ぶことも出来ない。
 後は…嵐が過ぎるのを待つしかない。だが、それが何日先の事か。それまでに、城下町に何かあっても援護に行けない。ただ指を銜えていることしか出来ない事態は…雷帝としては非常に忌々しき問題だった。
「…宮殿の外に、誰か出てたっけ…?」
 ふと問いかけた声に、背後に控えるロシュは少し記憶を辿る。
 唯一、外部との連絡を取れる手段は、結界が暴走する前に王宮の外に出ていた者。尤も…状況を正確に判断し、外部に連絡を取る、と言う手段を選べる者に限るが。
「確か…昼間、町の様子を見に行った警務部隊と、同伴した王宮の官吏が数名、まだ戻って来ていないはずですが…」
「…官吏?何で?」
 通常ならば警務部隊と同伴することのない宮廷官吏。そこに名前が出て来ること自体、有り得ない。だからこそ問いかけた言葉に、ロシュも小さく息を吐き出す。
「食料等の物資の買い出しに出ていたはずです。この嵐で、町からの配達が出来ないとのことで…視察に出る警務部隊に同行したようです」
「買い出しから戻らない、って…もう夜だってのに…?」
 何もこんな時に行かなくても…。きっと、ライデンだけではなく、ロシュも同じ思いだったのだろう。あからさまに溜め息は吐かないが…明らかに表情がそう言っている。
「…外出者の名簿持って来て」
 若しかしたら、臨機応変に動ける者がいるかも知れない。そう思い直し、ロシュにそう声をかける。
「御意に」
 頭を下げ、執務室を後にするロシュ。そして暫くすると、名簿を手に戻って来る。
「外出者ですが……」
 名簿を追いながら、名を告げる。視察部隊の数名と、官吏が数名。そしてその中に、思いがけない名前。
「…"フィード"、って…今言った?」
「…はい。どうやら、間違いはないようで…」
「…マジか…」
 まさか、自分の官吏が外出者のメンバーに入っていたとは。恐らく、輪番での買い出しだったのだろうが…そのタイミングの悪さに、溜め息しか出ない。
 だがしかし。
「…フィードがいるなら…可能性がなくもない…か?」
 思わずそう零すと、今度はロシュが小さな溜め息を吐き出す。
「幾らフィードでも、魔界や天界に行くことは出来ないのでは?彼に、転移術は使えませんよ?昔から陛下の官吏でしたから、臨機応変で頭はそれなりに切れるかも知れませんが…外はもう真っ暗です。暗闇の嵐の中、外に出ているから、と言うだけでは何の役にも立ちませんよ…?」
 ロシュとフィードは、役職は違うものの昔馴染み。それなりに御互いのこともわかっている。だからこそ、の言葉に…ライデンもその通りだと、認めざるを得ない。
「…さて、どうするかな…」
 まだまだ、嵐は収まる気配はない。成す術もなく…ライデンは溜め息を吐き出すしかなかった。

◇◆◇

 雷神界は、暴風雨と言っても過言ではないくらいの天候だった。
 ルークに送って貰ってゼノンが辿り着いたのは、ライデンがいるはずの王宮から少し離れた場所。通常なら十分も歩けば着く程度だが…嵐の中では、そうもいかない。しかももう夜。王宮の明かりも嵐の中では微かにしか見えなかった。
 風に吹き飛ばされそうなレインコートを両手で押さえつつ(それでもずぶ濡れになっているのだが)、倍以上の時間をかけて王宮へと向かう。そして漸く正門へと辿り着いたのだが…その門は、固く閉ざされている。この状況を考えたら、不思議はない。
 正門の横にある通用門の方なら開くだろうか。そう思いながら、その扉に手を触れる。
 その刹那。
「いっ…!」
 バチッと激しい音と共に、弾き返される。掌への衝撃も結構なもので、慌てて手を引っ込める。そしてそのまま、門を上まで見上げた。
「もしかして…これが防衛結界…?」
 通常の結界なら、うっすらとオーラが見えるはず。だが、見た目は何の変りもない。つまり、目視での判別は出来ない。だからこそ、敵に気付かれない防衛結界なのだ。ゼノンも実際に目にしたのは初めてだった。
「…これは、どうやって解くんだろう…」
 試しに解呪を唱えてみたが、全く変わらない。つまりは、呪では解けない、と言うことになる。
 嵐の中、上空を見上げ、暫し途方に暮れる。
 神殿と王宮、皇太子宮をぐるっと囲む外壁。その内側の気配は全く感じない。そして、ほんの少し触れただけでも結構な衝撃を受けたのだから、強引に突破しようとすれば、生命はないかも知れない。
 そんなことを考えつつ、外壁に沿って歩いてみる。確か、皇太子宮の裏にも通用門はあったはず。だがこの状態では、そちらからでも同じ結果だろう。
 直ぐ近くまで辿り着いたのに…その内側は、酷く遠い。そんな想いは久し振りだった。
「…ライ…大丈夫かな…」
 外壁を見上げ、思わずそう零す。
 内部の明かりは見える。なので、何も問題がなければそれで良い。だが、何かどうにもならない事態に陥っていたら…と思うと、ここまで来て何も出来ないことが、尚更もどかしい。
 溜め息を吐き出し、再び正門の方へと歩き出したゼノン。だがその時、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえた気がした。
「…ん?」
 雨と風の音に搔き消され、はっきりとは聞こえない。そして辺りは内部の明かりで辛うじて見える程度。だが、当たりをぐるっと見回してみると…遠くから走って来る姿が数名。
「…あれは…」
 その場で様子を見ていると、漸く顔の判別が出来る距離までやって来た。
「…フィード…?」
 それは、ライデン付きの官吏。ここにいるはずのない姿。だからこそ、思いがけない姿にゼノンは首を傾げる。
 漸く近くまでやって来たフィードは、大きく息を吐きながらゼノンへと声をかけた。
「…やはり、ゼノン様でしたか…この嵐の上、暗闇でしたので確証は持てなかったのですが…」
「回線が切れて、連絡も取れなくなったから様子を見に来たんだけど…防衛結界?その所為で入れなくて…それより、フィードもどうしてここに…?」
 そんな話をしているうちに、他にも数名、傍へと駆け寄って来た。
「ゼノン様、ですね?初めて御目にかかります。今回の視察部隊の責任者のカミュと申します」
「…視察部隊、ですか…?」
「はい。この嵐ですから、町の方の被害の様子を確認に。官吏たちの買い出しも兼ねまして…」
「買い出し…」
 確かに、皆荷物を持っている。この嵐の中、何故わざわざ買い出しに…との疑問は、やはりゼノンも同じこと。首を傾げるゼノンに、フィードが口を開く。
「タイミング的には大変な時になってしまいましたが、天候不良で配達が届かない時には良くあることです。嵐で時間がかかってしまって、すっかり夜になってしまったのですが…」
「…そうなんだ…」
 良くあるとはいえ、ゼノンにしてみれば初めて遭遇したこと。だが、隣で話を聞いていたカミュも頷いていることから、同行は本当に良くあることなのだろう。ただ、タイミングが…とびきり悪かった、と言うだけで。
「じゃあ…これで中に入れるね」
 安堵の溜め息を吐き出すゼノン。だが、カミュの表情は…何とも言えない表情だった。
「…それが…どうも、防衛結界が暴走してるようで…」
「暴走…?でも、入る方法はあるんでしょう?だから、外に出たんじゃないの…?」
 嫌な予感がする…と思いながら問いかけると、カミュは他の隊員を少し振り返る。
「それが…出発する時には、暴走はしていなかったのです。勿論、帰れる手筈でした。ですが、先程戻って参りましたら…我々でも入れない状況でして…他の門へ回ってみたのですが、やはり駄目で…こちらへ戻って来た次第です」
「…はい?入れない、って…じゃあ、どうすれば良いの?内側から解いて貰うの?それとも…壊すしかない、とか…?」
 当然、ゼノンは困惑…である。それに関しては、他の者も皆、困惑している。
「防衛結界は、普段は作動しておりません。我々も何も聞いておりませんので、作動したことは誤作動による暴走と考えるべきだと思います。そして防衛結界作動後は、基本的に外側からは簡単に壊すことは出来ません。衝撃を受ければ、同等以上の攻撃を返すように作られているのです。それは内側からも同様で…ピンポイントで結界柱を壊さなければ、攻撃を返されます。内側には王宮も神殿もありますから…ほぼ不可能かと。攻撃を受ける可能性がないと言う状況になれば、自然と落ち着くと思うのですが、それがいつになるか…」
 曲がりなりにも、軍部に在籍しているだけあって、状況は把握しているらしい。だが、入る手立てがないのはゼノンと同じ。
 このまま、いつ入れるようになるかを待つことも、嵐の中では危険が生じる。しかも、官吏たちは視察部隊の面々よりも、明らかに体力の消耗が激しい。それは、顔を見ればわかった。
「…ゼノン様…どうにかなるでしょうか…」
 不安そうに問いかけるフィードの声に、ゼノンは改めて外壁を見上げる。
 先ほど…少し触れただけでも、その衝撃に驚かされた。そう考えると、受けた攻撃よりも返って来る衝撃の方が大きいのは確か。ならば、生半可な攻撃ではこちらの生命が危うい。だからこそ、誰も手出しが出来ない状況に陥っているのだろう。
 溜め息を吐き出しつつ…取り敢えず、とゼノンは官吏たちの周りに結界を張った。
「雨風に無暗に晒されるよりは、少しはマシだと思うよ。暗い中歩き回るのも危ないから、ちょっとここで待ってて」
「どうされるんですか…?」
 問いかけるカミュに、ゼノンは再び外壁を見上げる。
「…結界柱のある場所は、君はわかる…?」
「…いえ…我々にも、知らされておりませんので…」
 申し訳なさそうに口を開いたカミュだったが、その時結界の中にいたフィードが手を上げた。
「知ってます!」
「フィード?」
 自分でも知らないことを、何故官吏のフィードが…?と言った表情を浮かべたカミュ。けれどフィードはゼノンを真っ直ぐ見つめたまま言葉を続けた。
「若様がまだ魔界へ修行に出られる前ですが…一緒に、あちこち探索したことがあります。その時…一本だけですが、皇太子宮の奥…離れの近くに、結界柱を見たことが…」
「本当?じゃあ…案内してくれる?」
「はい」
 再び結界の外へとフィードが出て来ると、見かねたカミュが声を上げる。
「結界柱の場所を聞いて、どうなさるおつもりですか?」
 その声に、ゼノンは小さく息を吐き出す。
「結界は一つでも角が欠けると効力がなくなる。だから、壊す」
「外からですか?攻撃をすれば、反撃されます!無理です!不可能です!!」
 思いがけない言葉に、反論する。それは当然の結果。けれど、ゼノンの表情は変わらない。
「どうにもならないのなら、壊すしかないでしょ?まぁ…やってやれないことはないんじゃないかと思うよ。ただ、どの程度被害を被るかは…ちょっと想像つかないんだけど…修繕費は、魔界に請求して貰っても良いから」
「ちょっ…修繕費、って…御自分の被害の心配ではないんですか?」
 ゼノンの頭の中には、建物の被害のことしかなかったのだが、言われてみれば自分が反撃を返される事態なのだと、ふと思い出す。けれど、ゼノンには…そんなことは、心配でもなんでもなかった。
「あぁ…俺の身体の事なら、多分大丈夫。まぁ、多少怪我はするかも知れないけど…鬼、だしね。簡単には死なないから。それよりも、防衛結界が暴走したままだと、みんな困るでしょう?ライデンもきっと、困ってると思うから」
 くすっと、笑いが零れる。そんな姿に唖然とするカミュだが…フィードにとっては、何よりも心強い主の伴侶。その認識だった。そこが、ゼノンを良く知っているか否かの差。
「御案内します」
「…わたしも参ります…何かなさるのなら、見届けなければなりませんから…」
 希望の光を見つけたフィードと、未だ信用していない様子のカミュ。その二名を前に、ゼノンは残される官吏たちと、視察部隊の面々を振り返る。
「危ないから、ここから動かないでね。もう少しの辛抱、だから」
 にっこりと笑いを零し、フィードとカミュと一緒に嵐の中再び動き出す。
 これから何が起こるのか。全く想像のつかない彼らは、黙って見送るしかなかった。

 外壁に沿ってぐるっと歩き、正門のほぼ正反対の位置にある皇太子宮の裏門。そこからもう少し離れた場所で、フィードは足を止めた。
「恐らく…この辺りだったはずです。ピンポイントでここです、とは言い難いのですが…外壁のすぐ近くにあったはずです」
 流石に古い記憶。しかも、外壁の内側と外側では正確な場所までは難しい。けれど、ゼノンは小さく笑いを零す。
「大丈夫。それより…皇太子宮にはどれくらい官吏たちがいる?」
「はっきりはわかりませんが…ここは今は使われていない離れですので、少なくともここにはどなたもいらっしゃらないはずです。本館の方も、この嵐ですから、安全な場所に集まっているのではないかと…」
 雷帝たるライデンは、ゼノンと結婚しても暫くは皇太子宮に住んではいたが、今は代替わりをして既にここにはいない。手入れの為に数名いるはずだが、悪天候の時は安全な王宮の方へと避難していることが多い。それは、かつてそこにいたフィードの認識だった。
「…何をされるおつもりですか?正確な場所もわからず、どうやって壊すと…」
 未だ不安視するカミュの声を聞きつつ、ゼノンは真っ直ぐに外壁を見つめていた。
「そうだな…じゃあ、横幅10メートル。その範囲に結界柱があれば問題ない、かな。流石に建物を壊すのは申し訳ないから…加減するか…」
 独り言のようにそう零しながら、外壁からかなりの距離を後ずさる。そして、レインコートの帽子を脱ぐと、左耳のピアスに手をかけながら二名に視線を向けた。
「カミュは、結界張れる?」
「…はい、一応…」
「じゃあ、ここから離れて。フィードと一緒に結界の中にいてね。危ないから」
 そう言いながら、既に二つのピアスを外している。解き放たれ始めた魔力に息を飲んだカミュは、言われた通りゼノンの傍から離れる。そしてフィードも入れて結界を張り、そこから見守ることにした。
 その間に、ゼノンはもう一つピアスを外す。全てのピアスを外してポケットの中に入れると、改めて外壁を見つめた。
「……よし。やるか」
 大きく息を吐き出すと、その手に鬼面を呼び出す。そして徐ろに鬼面を被ると、一気に魔力を高めた。
「…っ!!!」
 離れた場所で、結界の中にいるにも関わらず…フィードとカミュが感じるのは、膨大な魔力。その圧倒的な力で、空気が震える。
 ゼノンが掲げた手の上に、大きな魔力の塊。それは暗闇でも光り輝く、想像をはるかに超える能力。
「…これが…"鬼"…」
 息を飲んでゼノンを凝視するカミュが、そう言葉を零した瞬間。ゼノンはその魔力の塊を、外壁へと投げつけた。そして外壁に当たった途端、更に大きな能力が弾ける。
 その衝撃は、結界一つで防げるはずもなく…カミュとフィードは、暴風に弾かれるのように後方へと弾き飛ばされた。そしてその衝撃は、ほぼ反対側の正門の前にいた者たちも感じ取れた。
 震えた空気が、まるで刃物のように肌に当たる。傷こそつかなかったものの、その衝撃は誰もが息を飲むほど。
 その能力の余りの大きさに…何が起こったのか、誰も理解出来ずにいたのだった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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