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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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こころおぼえ 後編
本日UPの新作です。
こちらは、今年の『夏恒例アンケート』の際に、
つめえり様よりリクエストいただいたものです。
今回もちょい長めだったので、前後編です。
リクエスト内容は、最終UPで。

拍手[5回]


◇◆◇

 普段は誰もいないはずの執務室。そこに明かりが灯っているだけで懐かしい気持ちになる。
 そう思いながらドアをノックすると、直ぐに中からドアが開かれた。
「あぁ、エース。早かったね」
 ドアを開けたダミアンが、何処かホッとしたような表情でそう零す。
「大至急、って言ったのはダミアン様じゃないですか…それで一体…」
「まぁ入ってくれ」
 促され、執務室の中に入る。その途端…そこが魔界ではないと感じた。そして…ソファーに座る姿を見た。
「…エース…」
「え…何で"清水"が…?」
 そこにいたのは、エースの媒体たる"清水"。エースを見上げ、混乱した表情を浮かべている。
「どう言うことですか…?」
 思わずダミアンを振り返ったエースに、ダミアンは執務椅子に腰を下ろしながら、大きな溜め息を吐き出す。
「いや、わたしにもどうして清水が魔界にいるのかわからないんだが…御前に連絡を入れる少し前に奇妙な気配を感じてね。様子を見に来たら、この下の…桜の木の下に清水がギターを抱えて茫然と座っていてね。魔界の気の中に清水を置いておけないだろう?だから、近くの"ここ"に結界を張ったんだが…清水も何故ここにいるのかわからないと言うしね…御前に心当たりは?」
 エースもダミアンに問いかけられるが…清水を呼んだ覚えもない。だから当然、首を傾げる。
「…俺も心当たりは何も……御前は?」
 清水の正面へと腰を下ろしつつ、問いかけてみる。だが、清水も首を横に振った。
「何も。自分の家でギター弾いてただけで…気がついたら木の下にいて…ダミアン陛下が来てくれなかったら、どうなっていたか…」
 ダミアンと清水本人が言っていた通り、清水の横には愛用のギターが置いてある。そして足元は裸足。本当に家でギターを弾いていただけなのだろう。
 困惑の表情を浮かべる三名。すると突然、執務室に通信の呼び出し音が響いた。
「…俺が出ます」
 エースが席を立ち、通信画面を繋ぐ。するとそこに映ったのは…人間界にいるはずの副大魔王、デーモンだった。
「デーモン?」
『エース?どうして吾輩の執務室にいるんだ?』
 御互いに首を傾げる。だが、デーモンこそ、使っていない自分の執務室に連絡を入れて来る理由がわからない。
「俺はダミアン様に呼ばれて。御前は何で?」
『いや…ダミアン様に連絡を入れても繋がらなかったから、取り敢えず心当たりを手当たり次第に…最後が吾輩の執務室だったんだが…ダミアン様はそこにいるのか?』
「あぁ…ここに」
 共通点はダミアン。エースはダミアンを振り返る。
 ダミアンも首を傾げつつ、傍へとやって来る。
「わたしはここにいるよ。留守の執務室に立ち入って悪かったね。で、わたしに連絡とは…何かあったのかい?」
 問いかけた声に、画面の向こうのデーモンは後ろを振り返る。どうやら、他の構成員が後ろに控えているようだった。
『実は…先ほどまでミサだったんですが…演奏中に奇妙な衝撃があって…』
「衝撃?」
『えぇ。直接感じたのはルークとジェイルですが…構成員は全員、気がついたんですが、周りは特に何もなかったので、魔界で何かあったのかと…』
「…衝撃…」
 その言葉に、清水が顔を上げる。
「ルークとジェイル…か。話は聞けるかい?」
『はい』
 デーモンが画面の前から消え、代わりにルークとジェイルが顔を覗かせる。
「演奏中に衝撃があったって?」
 問いかけたダミアンの言葉に、ルークとジェイルは少し顔を見合わせる。
『はい。一瞬ですけど、静電気みたいな。でも機材には何の影響もなかったし、俺とジェイルと同じタイミングでって言うのも変だと…それに、俺たちだけじゃなくて、構成員はみんな感じたみたいで…でも侍従たちも信者たちも何ともないみたいだし…だから魔界関連かと…』
 ルークがそう説明する。その言葉を聞きながら、ソファーに座っていた清水が席を立つ。
「何の曲弾いてた?」
 思わず声を上げると、ダミアンもエースも清水を振り返る。そして画面の向こうにいたルークとジェイルも、目を丸くする。
『清水さん?!何で魔界にいるの?』
 驚きの声を上げるジェイルだったが、清水はそのまま通信画面の前までやって来る。
「何の曲弾いてる時に衝撃があったんだよ…っ」
 もう一度問いかけた声に圧倒されるように、悪魔たちの方が困惑している。
『えっと…"蠟人形"、だったよね…?』
『そう。昼間話してて…だったから、妙に頭から離れなくて…』
 顔を見合わせながらそう話す声に、神妙な顔の清水。そして…エースもまた、奇妙な顔をしている。
「曲が…何かあるのかい?」
 唯一心当たりのないダミアンが清水に問いかけると、小さな溜め息が零れる。
「…俺も、ここに来る直前まで…"蠟人形"弾いてた…それで、同じように静電気みたいな衝撃があって…気がついたらここに…」
 その言葉に、エースも口を開く。
「…実は俺も"蠟人形"弾いてて…」
「御前もかい?」
 首を傾げるダミアン。
「はい。でも俺は衝撃はなくて…奇妙な感覚はあったんですけど…多分、清水がここに飛ばされたことを知らせるモノだったんじゃないかと…」
「成程ね…」
 ダミアンは神経質そうにその指先で口元をなぞる。そして思い立ったように口を開く。
「ルーク、ジェイル。ミサで疲れているだろう?状況は何となく把握したからね、今日はこれでおしまいにしよう。清水はわたしがちゃんと送り届けるから、心配いらないよ」
『…御意に…』
 ダミアンに言われてしまっては、これ以上どうにもならない。ただ、清水に関してはダミアンもエースもついているのだから、きっと大丈夫。そう思うしかなかった。
 人間界との回線を切ると、ダミアンは小さく笑った。
「さて、それでは解明に行こうか。エースも清水も、ついておいで」
 そう言って踵を返すダミアン。エースと清水は顔を見合わせ…それから、ダミアンに着いて行った。

 枢密院の建物の裏手の小道。副大魔王の執務室の窓から見下ろせるその場所にある、大きな桜の木。その木の前へと、彼らはやって来ていた。
 宵闇の中…ぼんやりと光を纏う桜の木。それはまるで、ライトアップされているかのように美しかった。
「…何で、光って…?」
 桜の木を見上げ、エースが首を傾げる。
「…俺が来た時もこうだったけど…」
 エースの隣で、清水がそう言葉を零す。
 ダミアンが執務室に張った結界を外まで広げたおかげで、清水も問題なく移動は出来た。そして肩を並べる二名より更に前へと歩み出たダミアンは、そっとその輝く幹に手を触れた。
「今回の件は…多分、この桜の木が道になったんじゃないかと思う」
 桜の木を見上げ、言葉を続ける。
「わたしは前年から引き続きであるが、人間界へと向かう機会が増えた。そして今年はエースが十六年振りに人間界へと出かけただろう?デーモンを始め、ルーク、ジェイル、ゼノン、ライデン…皆が人間界に集まったのは、本当に久し振りだったね。この桜は元々人間界から持ち込んだものだ。そして…我々の想いと、繋がっている。同じタイミングで、同じ思いを抱いて、同じ曲を弾いて…多分その全てが繋がった所為で、魔界への道が一瞬開いたんだろう。ルークもジェイルも言っていただろう?ミサの準備中に話をした、と。それもきっと同じだ。御前たちも、それぞれに思い当たる節があるんじゃないのかい?」
 ダミアンにそう言われ…エースも清水も、昼間のことを思い出す。
「昼間、ダミアン様の執務室に行く前に…ここに立ち寄りました。人間界に行ったことを懐かしく思い出して…この木にも話しかけました。それから執務室へ報告書を出しに行った時も…ダミアン様と人間界の話をしましたよね?トークタイムの話。あの時話した曲も…確か"蠟人形"でした。あの後屋敷に戻って…しまえなかったギターを弾いて…それも"蠟人形"で…今日はずっと、あの曲を思い出していたんだと、今更ながらに思いました」
 エースはそう言うと、ダミアンと同じように桜の木を見上げた。
 昼間は気付かなかったが…きっとその時から、同じ状態だったのかも知れない。改めて、そう思っていた。
 そして清水もまた…自分の行動を思い出す。
「そう言えば俺も…昼間、自分のライブの準備に譜面を揃えていたら、今回のミサツアーの選曲リストが出て来て…何となくずっと、"蠟人形"が頭の中に残っていて…夜になって、ギターの練習していた時にふと弾きたくなって…その時に、何かの匂いを感じた。昼間と夜と二回。あの時はわからなかったけど…多分あれは、桜の花の匂い……でもどうして、俺をここに…?」
 それは、ずっと引っかかっていた疑問。自分がここに呼ばれた理由は何だったのか。それが、未だにわからない。
 そんな疑問を口にした清水に、ダミアンはくすっと笑う。
「聞きたかったんじゃないのかい?そんな、想いの深い曲をね。だから、道を繋いだ。些か強引だったが…清水を…ここに、連れて来る為に。そして、自分の姿を知って貰う為に」
 そう言って、くすっと笑うダミアン。
 確かに、魔界にあるのだから皆この木の存在は知っていた。そしてエースは、この木がデーモンと繋がっているような気がして…頻繁にここを訪れていた。だから引き寄せられるまではいかなかったが…当たり前だが、清水は初対面。だからこそ…会いたかったのではないかと。
 あくまでもそれはダミアンの推測だが…エースもそんな気がした。
「…弾こうか。"蠟人形"」
 くすっと笑ったエースは、そのまま背中に翼を広げ、デーモンの執務室に窓から戻る。そして清水が抱えて来たギターを持って戻って来る。
「ほら、御前のギター。それで……俺のも」
 清水へとギターを手渡すと、小さく呪を唱え…その手に自分のギターも呼び出した。
「ダミアン様はどうします?何なら一緒に…」
 エースの問いかけに、ダミアンも笑いを零す。
「良いね、わたしも折角だから参加しよう。ただ、弾けるかどうかは微妙だぞ?」
 そう言いながら、ダミアンもまた、その手にギターを呼び出した。
「…ギター三本しかない上に、ヴォーカルもギタリストしかいないが…まぁ、良いだろう?」
 くすくすと笑いながらギターを背負うダミアンに倣い、エースも清水もギターを背負う。
 闇夜に流れる、ギターの音色。ギターしかないので、決して大きな音ではない。けれど、三名集まればそれなりに。桜の木に聞かせるだけなら、十分。
 実に楽しく、笑いが零れる。そんな時間を誰もが待っていたのかも知れない。
 そして曲が終わる頃…再び、清水に静電気のような一瞬の衝撃。それは、エースもダミアンも感じ取れた。
 息を飲んだ次の瞬間…清水の姿は、そこにはなかった。
「…ちゃんと、送ってくれたんだね。有難うね」
 ダミアンの声に、エースも笑みを零す。
 いつの間にか、桜の木のほのかな光も消えていた。
 それが、満足出来た証であるように。

◇◆◇

 気がつくと、そこは自分の部屋だった。
「…戻って来たのか…?」
 時計を見ると…多分、一時間ぐらいしか経っていない。
 だが、その足の裏は…明らかに外を出歩いたように、薄汚れている…。
 慌てて抱えていたギターを置いて足を洗いに行き、戻って来たそのタイミングで…スマートフォンに着信があった。
 それは、人間界の悪魔の総帥から。
「…もしもし?」
『あぁ清水か?御前、今何処に…』
「大丈夫。戻って来れた」
『そうか…良かった…』
 心配そうな総帥の声に、彼は笑いを零す。
『一体…どう言うことだったんだ?何があった…?』
 魔界にいた三名は、状況の推察は出来た。だが人間界にいた悪魔たちには、まだその状況はわからないまま。必然的に、説明せざるを得ない。
「…まぁ…"蠟人形"の呪縛…?」
『…は?』
 怪訝そうな声に、再び笑いを零す。
 それは多分、彼らだから。その曲を背負ってデビューしたのだから、やはりそこに戻る意味はあったのだろう。今更ながらにそう感じる。
「まぁ…ゆっくり説明するから」
 慌てなくても大丈夫。
 そこには、今でも昔と変わらない絆がちゃんとあるから。
 きっと、その想いが通じているから。
 それは、仲魔だけではなく…裏方を支えるスタッフや侍従たち、信者たちも含めた、全員に対して。
 その想いを呼び起こしてくれた、ギターヒーローは…やはり、伝説に値する存在、だった。

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※リクエスト内容は「以前、「長官が人間界にきてしまう」というのをお願いしたので今回は逆の「エースさんが魔界に行ってしまう」をお願いします。
「ミサで蝋人形の館が始まった時、構成員全員が(長官のギター、こうだったなあ)と思い、ちょうど同じとき、エースさんが、蝋人形の館のイントロをつまびきつつ、悪魔だったころを思い出し、魔界でも同じときに、長官も蝋人形の館のイントロをつまびきながらエースさんのことを考え信者たちも(長官のギター、懐かしいなあ)と思いすべてのタイミングがあってしまい、人間界から魔界へエースさんが行ってしまったと。」とのことでした。
リクエストを頂いた時はまだ長官のヴィデオ黒ミサ参加は発表されていませんでしたが、話を練っている間に諸々状況が変わり(苦笑)、当初から予定していた"桜の木"に頑張って貰って(笑)、何とか完成しました。
楽しんでいただければ幸いですemoji
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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