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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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愛と虐殺の日々 後編
こちらは、以前のHPで2001年7月01日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。(基本DxAです…/笑)

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◇◆◇

 数日の後。デーモンの執務室のドアがノックされる。
「誰だ?」
「アザディスですが…宜しいですか?」
「…あぁ」
 デーモンが返事をすると、開かれたドアからアザディスが姿を現した。
「何の用だ」
 書類に目を落としたままそう言ったデーモンにアザディスは歩み寄り、机越しに立つと一礼をした。
「最近、任務に出たまま戻って来ない者が多いのですが…閣下に御心当りはございませんでしょうか…」
「…帰らないとな?」
「はい。今日の一名でもう三十名になるのです」
「三十名?もうそんなになったのか」
「…閣下…?」
 不審そうなアザディスの声に、デーモンは顔を上げた。
「はっきりと言ったらどうだ?吾輩の所に来た者が全ていなくなったので吾輩を疑っていると…そうであろう?」
 デーモンの視線は、アザディスの眼差しを捕えて離さない。今までの取り巻きは、何の疑いも持たずにデーモンの口車に乗って来たが、アザディスに関しては一筋縄ではいかないと言うことは、デーモンも良くわかっているつもりだった。だから、敢えてその口を開いた。
「やはり貴方様でしたか。そんな気はしていたのですけれどね」
 そうつぶやきを零し、アザディスはデーモンの眼差しを受け止めた。
「訳を…聞かせていただけますか?彼等を消した訳を」
「聞かずともわかるのではないか?御前ほどの頭脳の持ち主ならば、吾輩が何の為に蟲の駆除をしたのか」
 デーモンはアザディスから視線を外し、そう言った。
「…害虫(むし)…ですか…我々は」
 アザディスの声に、デーモンは小さく笑みを零した。
「そうだ、蟲だ。吾輩に付き纏う、うっとおしい蟲だ。取り巻きなど、吾輩には必要ないんでな」
「エース殿との関係を続ける為にですか?」
「…御前には関係なかろう」
 デーモンは睨み付けるかのようにアザディスを見た。アザディスはデーモンから視線を逸らせることなく、何かを秘めた視線を向けていた。
「閣下とエース殿の関係が何処まで進んでいらっしゃるのかはわかり兼ねます。ですが、閣下を御慕いする我等にしてみれば、エース殿こそ…閣下に纏わり付く蟲、です」
「…何だと?」
「貴方様のおっしゃる通り、害虫の駆除をしませんと…」
「…どう言うことだ…」
 デーモンはきつくアザディスを睨み付ける。だが、そんな眼差しに負けるはずもなく、アザディスは小さくほくそ笑んだ。
「エース殿に…刺客を付けさせていただきました。今頃は任務先の天界で、消えてしまっているかも知れませんね」
 アザディスの言葉に、デーモンは怒りを露にした視線を浴びせた。
「貴様が主犯か。皇太子からの勅書にあった、天使と癒着していると言う悪魔は。エースもそいつを追っていたのだが…これ程近くにいて気付かなかったのは、吾輩の失態だな。だが…エースは実戦では負け知らずの腕の持ち主だ。例え相手が天使だろうと、あっさり殺られるはずはない」
「それはかなり買い被り過ぎではありませんか?天界ではエース殿の魔力とて、満足には働きません。しかも…私が通じている天使たちも、かなり腕の立つ者たちばかりですから」
 アザディスの声に、デーモンは大きな溜め息を一つ。
 アザディスは、既に狂っている。
「貴様…吾輩にそんなことを言って己の身が心配ではないのか?吾輩とて、エース程ではないが腕は立つ。しかも貴様よりも魔力も上だ。この場で貴様を他の取り巻きのように始末することも訳はないんだぞ?」
「貴方様にそれが出来ますか?今ここで私が消えたと言うことが私が通じている天使たちに知れたら…エース殿はその生命が消えたと確認されるまで、天使に狙われることになるのですよ。そして…貴方様も…」
「…貴様…」
 ふと過った、ルークの言葉。侮っている訳ではなかったが、これ程までに先を読まれるとは思ってもみなかった。
「要は…貴方様がエース殿のことを忘れて下されば、それに越したことはないのです。そうすれば、貴方様の身の安全は保証致します」
 己の方が有利であると言わんばかりの表情を浮かべ、アザディスはデーモンに言葉を放った。
「…貴様…そんなことをしてまで、何故吾輩に付き纏う。何が目的だ」
 デーモンはアザディスを睨み付けたまま、そう言った。
 しかし、アザディスの方はその言葉に小さく笑いを零した。
「目的?そんなことは、聞かなくてもわかっていらっしゃるでしょう?私が求めるのはただ一つ。貴方様御自身です」
 そのアザディスの声に、デーモンは更に不機嫌をあからさまにした表情を見せた。
「吾輩自身だと!?馬鹿も休み休み言うんだな。吾輩は、大魔王陛下に仕える身だ。そんな考えは早々に捨てるんだな」
「では、エース殿はどうなのです?エース殿は、大魔王陛下より格が上だとでも?」
 アザディスは勤めて冷静にそう言った。その冷めた口調は、完全に小馬鹿にした感じで。デーモンが苛々するのも無理はない。
「貴様等蟲共とエースは、根本から違う」
「何処がどのように違うと?貴方様に執着しているのは、変わらないではないですか。寧ろ、独占しようと言うのだから、我々よりも性質が悪い」
 くすっと、アザディスが笑いを零す。当然、デーモンの機嫌は更に悪くなる。
「独占も何も、エースは、吾輩の片腕だ」
「ならば、次は私が貴方様の片腕になりましょう。エース様の代わりに…ね」
「…貴様には無理、だ。技術も能力も、エースに適うはずはない。何があろうと、エースは吾輩の片腕だ。エースを護る為なら…吾輩は虐殺の道さえ躊躇わんぞ」
「たった一名を護る為に、虐殺の道を選ぶと?事と次第によっては、貴方様が罪を問われるかも知れませんよ?」
「貴様が言う害虫の駆除とて、要は同じことだろう?邪魔立てする奴は、その存在自体を消すまで追い続けるではないか。エースを殺せば、大きな罪を背負うことになる。それを諸ともしないのであろう?」
 デーモンはそう言うと、引き出しから硝子玉を取り出し、再びアザディスの方を向いた。
「御前が捜していた奴等は、全てこの中にいる。吾輩は、御前の出方次第ではこいつ等を助けてやっても良いと思っていたが…どうやら、甘かったようだな。御前は、確実に危険因子だ。我等を欺き、天使に癒着するような輩は、許しては置けない。それが、吾輩の管轄なら…吾輩が、始末してやる」
 そう言ってデーモンは、硝子玉をアザディスへと向けた。
 しかし…硝子玉は光を発せず、デーモンはギクッとしたように目を見張った。それと正反対に笑みを浮かべたのはアザディスであった。
「念の為…この部屋の周りに結界を張らせていただきました。全ては貴方様を天使から御護りする為…」
 アザディスはそう言うと、ゆっくりとデーモンに近寄った。
「貴方様の魔力は完全に封じてあります。この部屋には、護身用の剣を常備してないことも、わかり切っております。勿論、魔力で剣を呼び出すことも出来ませんので…もう完全に籠の中の鳥、ですよ。閣下」
「……」
 大きく、息を吐き出したデーモン。力の抜けた手から、硝子玉は滑り落ちて、乾いた音を立てて崩れる。
 それを、諦めの態度と受け取ったのだろう。アザディスは満足そうに顔を綻ばせた。
「貴方様は…私のモノ、です」
 アザディスはそう言うと最早無抵抗のデーモンを抱き寄せる。デーモンは目を開いたまま、微動だにしない。
 その瞬間。
『デーモン!!いるんだろ!答えろ、デーモン!!』
「…エース…」
 ドアの向こうから聞こえた声に、デーモンは小さくつぶやきを零す。
「生きてらっしゃったようですね、エース殿は。全く、往生際の悪い御方だ」
 アザディスがつぶやいたその刹那、結界を破る小さな爆発が起こり、執務室のドアが吹き飛んだ。その向こうに見えたのは、血に塗れた、傷だらけのエース。
「エース…っ」
 自分の所為で…エースを傷付けた。エースの姿を見た瞬間、デーモンの胸が、酷く軋んだ気がした。
 けれど、そんな思いをいつまでも抱いている場合ではない。
 アザディスの腕の中にいるデーモンを見たエースは、さっと顔色を変える。
「デーモン…!!貴様、デーモンを離せ!!」
 エースはデーモンを抱き締めているアザディスを睨み付けるとそう叫んだ。アザディスはそのエースの姿を一瞥して、小さく笑った。
「残念でしたね、エース殿。閣下は、私のモノになるのですよ」
「貴様…」
 エースは目を息を飲んでデーモンへと視線を向ける。しかし…デーモンは声を上げることもなく、真っ直ぐにエースを見つめていた。その眼差しに、強い力を称えて。
 デーモンは、何かをするつもりだ。
 咄嗟にそれを感じ取ったエースは、大きく息を吐いて、一歩、歩みを下げる。それが合図であったかのように、瞬間的にデーモンの魔力が弾け、辺りは小さな嵐が巻き起こる。
「な…っ!?」
 訳がわからないまま、魔力で弾き飛ばされたアザディスは、壁へと叩きつけられる。そして、床へと崩れ落ちた身体を、デーモンが無常にも踏みつけた。
「うぐっ!」
 デーモンが掌に呼び出したのは、一振りの剣。その剣先をアザディスへと向ける。
「エースがこの部屋に来た時点で、結界は崩れた。護身用の剣がなくとも…貴様一名ぐらい、吾輩の能力で十分倒せる。吾輩を、甘く見るな」
「…閣…下…」
 エースの目の前で、勝利を確信したと思ったことが、アザディスの敗因。それを、まざまざと思い知らされたが…それは既に手遅れだった。
「…本来なら、幽閉して置くところだが…貴様だけは許せん。魔界を裏切り天使と癒着した罪。吾輩を侮辱した罪。そしてエースを傷付けた罪…全て己の死で償うがいい。この愚か者が」
 次の瞬間、デーモンはその剣をアザディスの胸へと突き立てていた。
 返り血にも、目を背けない。魔力の力で塵へと変わっていくアザディスを、ただ真っ直ぐに見つめていた。
 そして、最早、自分の身体を支えるので精一杯のエースも…そんなデーモンの姿を、ただ真っ直ぐに見つめていた。
 全てが消えると、エースは床に座り込み、大きく溜め息を一つ。
「…だから、護身用の剣は置いとけって言ったのに…」
「…まさか、こんなことになるとは思わなかったんでな。以後、気をつける…」
 デーモンも大きく息を吐き出すと、返り血を浴びた頬を、袖で拭う。
「それ、ルークのだろう?」
 デーモンが剣をしまう姿を眺めながら、エースが問いかける。
「あぁ。念の為にって、ルークが置いていったんだ。おかげで彼奴にとどめを刺せた」
「…ったく…呑気なことを…俺が間に合わなかったら、どうなっていたことか…」
「あんな奴の言いなりになんかなる訳はなかろう。さて、どうやって彼奴を倒そうかと思っていたところに、御前が来たんだ。結界を破って貰ったのは感謝してる」
 そう言ったデーモンは、改めてエースに視線を向ける。
「済まん、エース。御前を危険な目に合わせてしまって…合わせる顔などないな…」
「……」
 一瞬、口を噤んだエース。しかし、目の前にあるデーモンの表情が、余りにも悲痛過ぎて…己を責めているのが明確だったので、ゆっくりと口を開き、その想いを告げた。
「…何故、俺に言ってくれなかった?取り巻き共の駆除なら、御前が手を汚すまでもなく…この俺が…」
「いや、これは吾輩の問題だったからな。御前に、余計な心配をかけたくなかったんだ。御前も忙しいしな」
「デーモン…」
 全てを背負い込んだデーモン。だがそれは、一つのけじめでもあったのだ。
「…馬鹿、だな。御前は…」
 エースはつぶやいた。
「馬鹿で結構。吾輩は御前を護る為なら、馬鹿で構わんさ」
 くすりと小さく笑ったデーモンを、エースは僅かに微笑んだ表情で見つめた。そしてデーモンはエースの前に跪くと、そっと抱き寄せた。
「生きていてくれて…ホントに良かった」
 それは、確かな温もり。ずっと…護っていたいと思う、愛しい姿。
「…愛してる。御前だけを…」
「…エース…」
 エースの言葉に、デーモンは腕の力を緩め、その顔を覗き込んだ。
「御前を信じてさえいれば…間違いはない。御前がそれで良いと思ってやったことだから…俺は何も言わない。ただ…愛してるって…それだけだ」
 エースはそう言うと、デーモンの手を握り締めた。
「傷は、痛むか?」
 デーモンは開いている方の手で、エースの顔に出来た真新しい傷に触れる。一瞬痛みに顔を歪めたエースであったが、デーモンの手の温もりに…そんなこともいつしか忘れていた。
「…吾輩が…全てを許すのは御前だけだ…他の誰も…本当の吾輩は知らない」
 デーモンは片手でエースの首を引き寄せると、斜めに傾けた顔を寄せて唇を合わせた。

◇◆◇

 エースの傷は思ったよりも深く、暫くの間、絶対安静に近い状態を告げられた。
「…全く…エースは手加減ってモノを知らないんだから。怪我悪魔の分際で結界を破ろうだなんて…相変わらずの無理、無茶、無策、無謀」
「…るさい」
 ベッドの上に上半身を起こしたエースは、傍の椅子に腰を降ろして文句をたれているゼノンにそう言った。
「うるさくないよ。ゼノンはエースのことを心配して言ってるんだからね」
 エースに言葉を返すように、ゼノンにくっついてやって来たライデンがそう口を挟む。
「…ま、とにかく暫くはゆっくり休んでることだね。デーモンもルークも、暇が出来たら顔を出しに来るって言ってたから」
 軽く微笑んでそう言うゼノンに、エースは不機嫌そうな表情を浮かべ、言葉を発した。
「ったく…デーモンはともかく、ルークは薄情だな。相棒を見捨てて、何やってんだか…」
「…誰があんたを見捨てたって?折角、見舞いに来てやったってのにっ」
「…あ…」
 不意に聞こえた声に、エースはギクッとしたようにその方向を見た。そこには開けたばかりのドアに寄りかかるように立っているルークと…そしてデーモンの姿があった。
「どうだ?具合は」
 ぶつぶつと文句を言っているルークを宥め、デーモンはエースに尋ねた。
「あぁ、大丈夫」
 エースはデーモンの登場ににっこりと微笑み、そう言った。しかし、それに突っ込みを入れるかのように、ゼノンはつぶやいた。
「…これの何処が大丈夫だって?」
「って!!」
 包帯の上から傷を叩かれ、エースは顔をしかめた。
「ホント、調子良いんだから。デーさんが来た途端、すぐこれだもん。ま、それがエースらしいけどね」
 くすっと笑ってそう言うライデンの声に、不機嫌そのものだったルークも微笑んだ。
 流石に…この四悪魔の前では、人間界にいた時のようにごく自然に仮面が外せるエースであった。

 暫くの後…気を利かせてくれたのか…それともただ単に帰らなければならない時間だったのか…デーモンを除いた三悪魔はエースの屋敷から姿を消していた。
 ベッドに上半身を起こしたままのエースは、窓際に立って外を見つめているデーモンに尋ねた。
「…帰らないのか?」
 その声にデーモンはエースを振り返り、小さく笑った。
「帰って欲しいのか?」
「…そう言う訳じゃないんだが…」
 今までの習慣か、自分の傍にいつまでもいて大丈夫だろうか…?と、心配してしまう自分に、エースは苦笑いを浮かべる。
 そんなエースの姿を小さく笑い、デーモンはエースの傍へとやって来る。
「まだ大丈夫だ。心配する取り巻き共もいなくなったし、気が楽だ」
「…無理…してないか?」
「何故だ?」
「…何となく…」
「御前は余計な心配はするな」
 デーモンはそう言うと、エースの髪を掻きあげる。そして軽く微笑むと、頬を寄せる。
「…早く…傷を治せよ」
「あぁ…わかってる」
 やっと訪れた平穏。
 穏やかな雰囲気の中、二名は干渉されない倖せな時間を過ごしていた。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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