聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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最後の晩餐 5
エースの執務室を飛び出したゼノンは、そのまま王都の上を旋回すると、郊外へと飛んで来た。
そこに集まっているのは、最早数え切れないくらいの謀反魔たち。全て、王都からゼノンを追って来た謀反魔だった。
「…良くもまぁ…主を裏切れるモンだ…」
それは、愚痴なのだろうか。けれど、そう零したゼノンの顔は、笑っている。
鬼面を被った"鬼"は、既に理性など完全に捨てていた。
両の掌に力を集めると、前置きなど一切もなく、謀反魔たちに投げつける。
それは、一発ではなく、立て続けに何発も。当然、立ち向かう間もなく、塵と化して行く。
それでも、数え切れない程の人数がいるのだから、一筋縄ではいかないのが現状だった。
次第に荒くなる呼吸。ゼノンの額にも、汗が浮かんで来た。
疲れが見え始めたゼノンの姿に、部隊長なのだろうか。彼等の中では一際強い気を持つ兵士が声を上げる。
「貴様一名で何が出来る!我等に適う筈はあるまい!」
まるで、ゼノンを嘲笑うかのような姿。それは…枢密院で以前も見たことのある顔、だった。
「…良い度胸だ。謀反がどう言う事か…良く思い知れば良い」
ゼノンは、最後まで残っていたピアスを引き千切る。もう…自分でも、どうなるかはわからなかった。
「…本物の"鬼"を、嘗めるなよ」
その声は、兵士たちに聞こえただろうか。
一瞬見えたのは…剣を構えた、自分の部下の姿。見覚えのあるその眼差しに、嘲笑を返す。
「俺も甘く見られたものだね。まぁ…後悔する暇なんか、与えないけどね」
次の瞬間、高めた魔力が弾ける。
一際大きな爆発と共に…大勢の姿が消えていく。
その光景は…最早、直視出来ない程酷いモノだった。
その中で…笑っているのは、ゼノン一名。
止められる者など、存在はしていなかった。
最後の一名を叩き潰したゼノンは、周りをぐるっと見回すと大きく息を吐き出す。
沢山の返り血を浴び、精も根も尽き果てた。けれど…まだ、終わってはいない。
「…さて、見届けに行かないと…」
肩で大きく息を吐きながら、ゼノンは再び背中に翼を構える。そして、デーモンが捕らえられている岩牢へと飛び立って行った。
岩牢には、相変わらず冷たい風が吹き抜けている。この岩牢に閉じ込められているのは、前副大魔王。
何処か遠くで…大きな魔力がぶつかっている。戦いは…もう、始まっているのだ。
けれど、ここには他の気配は一つもない。それが何を意味するか、彼にはわかっていた。自分は、仲魔をおびき出す為の罠に過ぎない。
だが、敢えてその罠に飛び込んだ者がいた。いつの間に現れたのか、黒を纏う悪魔が牢の前に立っている。
「だいぶ…窶れたな」
牢の鉄格子にかかっている鍵をこじ開けた悪魔…エースは、そのままデーモンに歩み寄ると、膝を折って視線を合わせる。
「助けに来た。御前を」
そうつぶやくと頬を寄せ、唇を合わせる。
『罠、ダゾ。御前ヲ捕エル為ノ…』
「わかってる。だが、御前をその罠の中に一名だけ置いておく訳にもいかないだろう?」
唇を離したエースは、デーモンにそう問いかける。
御前の為なら、生命を賭けても良い。そんなエースの強い想いを感じたデーモンは、思わず目を伏せる。
「…そんな顔、するな。俺は、死ぬ為に来たんじゃない。御前と共に生き延びる為に、御前を助けに来たのだから」
エースは、デーモンの両手を捕えている械を魔力を以って壊すと、手を貸してデーモンを立ち上がらせた。
「しっかり掴まってろ」
その時。
「飛んで火に入る夏の虫とは、誠に良く言った言葉のようだな」
「…っ!?」
息を飲んだデーモンとエースの視界に、ニヤリとほくそ笑んでいるターディルの姿が写った。きつい眼差しをターディルに向けたエースは、さりげなくデーモンを自分の背後に匿う。
「御前がここにいると言うことは、どうやらルークは自身を犠牲にしたようだな」
「許せねぇな、貴様だけは。俺の生命が欲しいのなら自分で狙いに来いよ。それとも、俺が御前に恐れをなして逃げるとでも思っているのか?」
睨みを利かせて言葉を発するエースを前に、ターディルはその不適な笑いを止めようとはしなかった。
「幾ら粋がったところで、御前たちの生命はわたしの掌中にあると言うことを忘れて貰っては困るな」
嫌らしく笑うターディルに、エースは更にきつい眼差しをターディルに向ける。背中のデーモンは、そっと息を潜め事の成り行きを黙って見つめているようだった。
いつまでもこんなことをしているのでは埒が開かないと踏んだエースは、大きく息を吐く。
「あんたの目的…叶うとでも思っているのか?天界だって満更馬鹿じゃない。あんたが厄介者である以上、何らかの手段を打って来るはずだ。そう上手くいくと思っているのか?」
「いかせてみせるさ。その為に、入念に準備をして来たのだからな」
そうつぶやいたターディルは腰の剣を抜き、その剣先をエースに向ける。
「剣を抜け、エース。一度、貴様と剣を交わしたいと思っていたところだったからな」
「望むところだ」
自らも剣を抜きターディルに向けてみたものの、この牢の中ではデーモンに危害を与えないように闘うのは無理であるようだ。
「…場所を変えよう。俺は、逃げも隠れもしない」
「良いだろう」
ターディルはエースを促し、牢を後にする。
「…良いか、デーモン。隙を見て逃げるんだ」
エースは周囲に知れないよう、デーモンに小さく言葉を放つ。
『吾輩ダケ、逃ゲロト言ウノカ?』
「そうだ。御前だけでも、逃げ伸びろ」
『…冗談ジャナイ』
「デーモン」
僅かにデーモンに顔を向けたエースは、眉間に皴を寄せたデーモンの、とてつもなく真剣な表情を見つけた。
『吾輩モ、一緒ダ。御前ダケヲ行カセラレナイ』
「…勝手にしろ。その代わり…護り切る自信はないぞ」
呆れたように小さくつぶやき、エースはターディルの後を追って行く。
今のエースには、闘うことしか頭にないのだ。
その後ろ姿に必死に着いて行くデーモンの姿が、そこにはあった。
場所を牢の外の平地に変えた二名は、向かい合ってその剣先を軽く合わせる。直後、激しい攻防線となった。彼等を止める命知らずは、いるはずもない。
デーモンも、息を飲んでその攻防を見つめていた。
だが、その背後に突如大きな気を纏った姿が舞い降りる。
「……っ?!」
感じ慣れない、得体の知れない気配。咄嗟に身の危険を感じて振り返ると…そこには、見慣れたゼノンの顔があった。
「…御免、驚かして」
正体がわかって、安堵の吐息を吐き出す。けれど、その身に纏っている尋常ではないその気は、不安で一杯だった。
ふと、指先を伸ばしてその身体に触れようとしたデーモンだったが、ゼノンは首を振ってその行為を拒否した。
「…俺に触らないで。鬼面は外したけど…何にも制御してないから…」
肩で大きく呼吸をしながら、そう言葉を零す。確かにその耳に、制御ピアスは一つも見当たらなかった。
「…王都にいた雑魚は、ほぼ一掃して来た。後は、この付近にいる雑魚と…ターディルだけ。俺は…ちょっと疲れちゃったから、少し休ませて…」
ゼノンはそう言うと、その場に座り込んでしまった。意識は留めているものの…体力も気力も限界ギリギリ。ただ、解放された膨大な魔力だけは、まだ尽きることはない。
その不釣合いな能力は…このままでは、ゼノンを喰らってしまうかも知れない。そんな恐怖が、デーモンの中にはあった。
しかし、今のデーモンにはゼノンを護るべき魔力は残っていない。
迷った結果…デーモンは自分の指先に噛み付く。血が出るまで指先を噛み締めると、その溢れ出た自らの血を以って、ゼノンの魔力を抑える為に結界を張った。
「…駄目、だよ…そんな、無茶しちゃ…」
けれど、デーモンは首を横に振る。そして、唇を動かして、声にならない言葉を伝えた。
----死ぬな。
その言葉を理解したゼノンは、くすっと笑いを零す。
「…大丈夫。運動不足が祟っただけだから。俺は、死にはしないよ。それより……エースの方が心配…あの剣は…駄目、だ…危ない…」
そうつぶやいたゼノンの声に、デーモンはハッとしたようにエースへと視線を向けた。
エースがターディルに向けているのは、ルークが持ち帰って来た剣。それに呪縛がかけられているなどエースもデーモンも知る由もない。
百戦錬磨のエースと剣を交わしながらも、ターディルは一向に体制を崩すことはない。天使を相手にするよりも厄介だと思いながらも、エースも一歩も引くことはない。
思ったよりも長引きそうだとエースが思った瞬間、ターディルはニヤリとほくそ笑む。
何かをつぶやいたかと思った瞬間、エースの持っていた剣が黒い光を放ち、エースの動きが止まる。
「…っ!?」
瞬間に目を見張ったのはエースだけでなく、それを見ていたデーモンもゼノンもまた驚いて息を飲んだ。その一瞬の隙を突き、ターディルはその剣を振り降ろす。その剣先は、エースの額を確実に狙っていた。
刹那、鮮血が飛び散る。
「エース…っ!!」
思わず、ゼノンが声を上げる。その横で、デーモンも声にならない悲鳴を上げていた。
----デー…モン……
今、意識を失う訳にはいかない。デーモンを、護らなければ…エースのそんな思いが、辛うじてその意識を繋ぎ止めた。
額が、熱を持ったように熱い。溢れ出る血に体温を奪われていくような錯覚がエースを捕らえ、それに耐えるかのようにきつく目を閉じる。ターディルの剣は、確実にエースの邪眼を捕えたのだろう。思うように力の入らない身体が、その証明でもある。
邪眼さえ潰せば、エースとて適わぬ相手ではないのだ。だがその瞬間。
一つ、異様な魔力が弾けた。
それと同時に、異常なまでに緊張した、デーモンの意識が流れ込んで来た。それを感じ取ったエースは懸命に目を開け、デーモンに視線を向ける。
ギリギリの気力と体力だったはずのゼノンが、大きな呼吸を繰り返しながらも再び立ち上がっている。その背中に、デーモンを護るかのように。
その前には…塵と化した、兵士の残骸。デーモンが張った血の結界も、既にそこには存在していない。
気が付けば、周りをぐるっと剣を構えた兵士たちに囲まれている。
瞬間、エースの中で何かが弾けた。
「……くな…」
「なっ…」
「そいつらに近付くな…っ!!」
エースの身体から沸き上がって来る気迫は、尋常ではない。そしてたった今潰したはずの邪眼が、血に塗れたエースの額にしっかりと開かれていた。
「近付くなって言ってるのが、聞こえねぇのかっ!!」
その気迫は刃を向けていた兵士たちの一部を一瞬にして灰にするだけの魔力をも放っていて。
エースは掌に己の剣を呼び出し、しっかりとその手に握り締める。単なる戦いでは開かれるはずもない邪眼を目の当りにしたターディルであったが、それでも己の勝利を信じて疑わなかった。
ターディルは切れ長の冷たい眼差しをエースに向けていた。それは獣が獲物を追い詰めた時のそれと寸分の違いがない。しかしエースもまた、冷たい三白眼をターディルに向けている。それも追い詰められた獣のそれではなく、ターディルと同様に獲物を追い詰めた獣の眼差しだった。
「…死ぬ訳には、いかねぇんだよ!!!」
自身に気合いを入れるかのようなエースの低い声。既に制御ピアスは外されている。その上で邪眼と言うもう一つの能力を目覚めさせエースに、最早いつもの彼を見付けることは出来ない。
邪眼を開いたエースはエースであって、エースではなくなる。だから、デーモンは極力その能力を使うなと言い続けて来たのである。
まさに真剣勝負と言う気迫が漂う中、それに横槍を入れる者がやって来た。
「あんたばっかり、良いカッコしないでよねっ」
エースの横にすっと現れた姿。僅かに目をやったエースの視界に、ウエーブのかかった漆黒の髪と蒼黒の翼が見えた。
「…その翼は…」
一瞬、怪訝そうな表情を見せたエースに、ルークは嬉々として言葉を発する。
「訳は後で説明する。それよりも…無茶、すんなよ。血塗れじゃない」
「これぐらい、どうってことない。それより、御前こそ怪我魔の分際で…何しに来た」
「何しにって…あんたばっかりターディルに恨み持ってると思ってる訳?この俺を差し置いて…冗談じゃない。それに、怪我は治して貰ったから、心配御無用」
「…勝手にしろ」
ここは、同じ恨みを共感してやろう。エースの言葉に、軽く微笑む姿。
「サンキュー。んじゃ、いっちょ…」
ルークがそう言い終わるか否かのうちに、エースは体制を立て直すと、ルークに小さくつぶやいた。
「雑魚は、御前にやる」
「ちょっ…エース!?」
エースはルークの声を聞かず、ターディルに向かっていた。
「ったく…結局俺は、雑魚の掃除って訳!?」
ルークの出現により、ターディルの兵士たちも緊張が漂う。その剣先をルークに、そして気力を振り絞ってデーモンを護っているゼノンに向けている。
「…ま、いっか。欝憤晴らしにゃ丁度良い」
諦めたように溜め息を吐き、ルークも己の剣をその掌に呼び出す。軽く一振りしてその実感を確かめると、兵士たちにその視線を向けた。誰もが主を裏切った謀反魔である。
「裏切り者に残されるモノは、死のみだ」
そうつぶやいたルークの声は聞こえたのだろうか。どの兵士たちもルークの剣の餌食となり、闇に還って行く。
再び、ゼノンとデーモンを狙い始めた兵士たちの姿が視界の端に入り、ルークは小さく舌打ちをすると、目の前の兵士を切り捨ててから二名へと駆け寄る。
「無茶しない!あんたたちはじっとしてて!」
そう短く叫ぶと、二名に結界を張る。
「あんたたちに何かあったら、俺がエースとライデンに殺されるんだからね!わかってる?!」
一言そう叫び、ルークは再び戦いの中へと駆け戻る。その姿を見て、誰が先程まで重傷を負っていたと信じるだろう。
ルークでさえ、あれだけ戦えるのに。一瞬そんな表情を浮かべたデーモンであったが、結界を破って戦いに参加出来ないことをわかっているが故、言われた通りにじっとしている他に手段はなかった。
「…ルークには適わないね…」
やっと御役御免、と言わんばかりに、ゼノンは小さく笑うと地面に座り込む。
そんなゼノンを心配しつつも、ご丁寧に別々に結界を張られてしまった為、近寄ることも出来ない。尤も、近寄れた所で触れることは出来ないのだから、何も出来ないことには変わりない。
デーモンの視線は、自然と離れた所で戦っているエースに注がれていた。額の傷は塞がることはなく、邪眼が開かれても尚、鮮血は溢れ出している。それでもエースの気迫は衰えるどころか、益々上昇しているようだ。
既に、ターディルの顔から笑いは消えていた。邪眼の能力により元の魔格を失いつつあるエースの底知れない気迫と、それに伴う恐怖。
刺すような気に包まれたターディルの唇は渇き、剣を持つ手も僅かに震えている。やっとリエラの言っていた言葉の意味がわかった。全ての能力を解放し、邪眼の能力を目覚めさせたエースに、適う者などいないのだと言うことを。
否。エースだけではない。長いこと戦線から退いていたゼノンにも…新たに翼を手に入れたルークにも。誰も、彼らの本気を見たことがないのは…見たものは、既に生きてはいないから。
最強を自負した魔界防衛軍を以ってしても、そのたった三名にすら、敵わないのだと。
そんなターディルの後悔をよそに、エースの気迫に伴いその剣が赤き炎を纏い始める。
「貴様だけは許せねぇっ!!」
邪眼の能力が最大まで引き出されると、赤き炎は自ら意識を宿し、剣を離れて敵に喰らい付く。
「ぎゃあああぁぁっ!!」
赤き炎に包まれたターディルに、それを払い退けるだけの気力は残されていなかった。
「デーモンの声を奪った代償は、貴様の永遠に彷徨うだけの魂でも許せねぇがな」
エースの放った炎に喰われ、ターディルは瞬く間に塵と化す。それを目の当たりにした残された彼の兵士たちに、最早戦意は存在しない。主をなくした軍はその存在の意味さえなくしていた。
残された者たちがルークの剣の餌食になるのは、時間の問題であるようだった。
辺りは静まり、今の今まで壮絶な闘いをしていたなどと言うことがまるで嘘のように、穏やかな気が戻っていた。
額からだらだらと血を流しながら戦っていたエースは当然と言えば当然。地に座り込んだら最後、そのまま大の字に倒れ込み、もう動けない。
『エース…大丈夫カ?』
エースを案ずるように、デーモンが問いかける。
「…デーモン、大丈夫だよ。頭って言うのは、必要以上に沢山血が出るようになってるんだから…」
ほんの少しだけ回復したゼノンが、デーモンに向けてそう言葉を放つ。
「馬鹿。必要以上に出たら、死んじまうだろうがっ」
「なぁに、それだけ減らず口叩けるなら大丈夫。死にゃしないってば」
くすくすと笑って、そう言葉を続けたルークであったが、その直後パッとその頬を赤らめて後ろを向く。
全く、時と場所を選んでくれよなっ。ルークはそう言いたげな表情である。その状況とは如何に。
デーモンは倒れたままのエースの横に跪いて両手でエースの頬を押さえると、額にその唇を寄せた。
「こっ…デーモンっ」
『ジットシテロ。ソレカラ、邪眼ハ閉ジテクレヨ。邪魔ニナル』
デーモンに押さえ込まれ、大人しく邪眼を閉じたその額に柔らかい舌の感触。暫しの沈黙。
やがてエースから離れたデーモンは、頬に着いた血を手で拭いながら未だ茫然としているエースに小さく微笑む。
『有リ難ウ、エース』
「…デーモン…」
すっかり傷の塞がったエースの額。本来なら、礼を言うべきはエースであるようだが、今の彼にそんな知恵は回らない。
『御前ガ生キテイテクレテ、良カッタ』
ふと零れた意識に、エースはデーモンを抱き寄せる。
「…共に生きると約束しただろう?唯一…その声だけは護れなかったが…御前の生命の方が大切だ」
『エース…』
「ちょっとっ。いつまでそうしてる気なのさっ」
痺れを切らしたルークの声。
「もう少し待ってろ」
「嫌だねっ」
こうなったら完璧に妨害してやろうと、ルークは心に決めたらしい。そんなルークに小さな笑いを零したエースだったが、まだ色々処理しなければならないことが残っていた。
「…で、だ。御前のそれは、どうするつもりだ…?」
視線を向けた先にいるのは、ゼノン。実はまだ、結界に閉じ込められていたりする…。
「そうだね…取りあえず…ライデンとピアスがいるかな」
少しだけ落ち着いて穏やかになったとは言え…その気は未だ猛烈な能力を放っている。
「あんたの鬼化はライデンも心配してたけど…ホント、凄い気だね。それに体力と気力が全開だったら、とんでもないよね…」
「…そうだな。俺も…ホントに久し振りに見たな。まぁ、俺が見た時も、全開ではなかったんだが…」
遠い記憶を思い出すように、エースもそうつぶやく。
"鬼"であるゼノンを初めて見たのはルークだけではなく、デーモンも同じこと。既に限界の状態の今で、この状態である。数的には、ゼノンが一番働いていたであろう。もし、その場にルークがいたら、どんな言葉が返って来ていたのだろうか。それは、誰にもわからないことであるが。
「まぁ、あんたとエースは敵に回さないのが懸命だ、ってことはわかったよ」
「…それはどうも。光栄だね」
ゼノン自身、もう"鬼"に戻るのは御免だ…とでも言っているような表情であったが、その能力のおかげで、何とか生き延びることが出来た、と言う安堵感もそこにはあった。
「そう言えば…さっき御前の背中に蒼黒の翼が見えたが…あれは一体どう言うことだ?後で説明するとか何とか言っていたが…」
「あぁ、翼のことね」
エースの質問に、ルークはしまってあった背中の翼を広げて見せる。艶やかな蒼黒の翼は、ルークにとても良く似合っている。
その姿は、彼の父親たる"あの悪魔"と、良く似ていた。
「…ミカエルが、引き出してくれたんだ」
にっこりと微笑んだルークに反し、エースは声を荒立てた。
「…ミカエルって…御前、この状況で天界に行ったのか!?」
「カオス、だよ。ライデンに頼んで、呼び出したんだ。切られた翼を返さなきゃいけないと思って。そしたら…俺の中で眠っていた可能性を、ミカエルが呼び出してくれた。今までは、母様が護ってくれていたけど、今度は…父様が、護ってくれる、って」
ルークは殊の外、上機嫌である。そんなルークの表情を前にやや不機嫌そうなエースと、それに対称的に小さな微笑みを浮かべるデーモンとゼノン。
『良ク似合ッテルゾ。ルーク』
「うん、似合ってるよ。良いんじゃない?」
「有難うっ」
エースに対しての嫌みなのか、ルークはそう言ってデーモンを抱き締める。
「貴様、俺に喧嘩売ってんのか!?」
「冗談だってばっ」
真剣に怒るエース。上機嫌のまま微笑むルーク。その二名のやりとりに、思わず笑いを零すデーモンとゼノン。
こんなに無邪気に笑ったのは、どれくらい振りだっただろうか。
それは、誰もが思っていたこと。
一見何事もなかったかのような、穏和な一面を覗かせつつ…魔界の革命とも言える反乱は、彼等のおかげで終止符が打たれた。
有り得ないと思っていた奇跡は、彼等の前に起こったのだ。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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