聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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熾烈なる戦い 3
リビングのソファーで眠っていたルークは、昼過ぎになって漸く目を覚ました。
自分の向かいには、ソファーに凭れたまま転寝をしているライデンの姿。
「…ちょっと。風邪ひくよ?」
肩を叩いて呼びかけたルーク。
一応毛布をかけていた自分とは違い、座ったその姿勢のまま眠っているライデンは無用心極まりない。
「…あぁ、御免…寝ちゃった…」
ライデンは大きく伸びをしながら欠伸を零す。
「デーさんとエースの様子、見て来ないと…」
再び大きな欠伸を零しながらそう言う姿に、ルークは苦笑する。
「あんただって、ロクに寝てなかったんでしょ?ベッド行ってゆっくり寝たら?俺が様子見に行くから」
「大丈夫。ちょっと行って来るよ」
「じゃあ、俺は何か食べるもの作っとくよ。お腹空いたでしょ?」
ルークにそう言われ、朝も昼も何も食べていたいことをすっかり忘れていたことに気づいた。流石のライデンも、そこまで食欲よりも睡魔の方が勝ってたようだった。
「有難う。じゃあ、お願い~」
「OK」
くすくすと笑いながら、ルークはキッチンへと向かう。その姿は怪我魔とは思えない。傷の様子はだいぶ良いみたいだった。
ライデンはリビングに近いルークの部屋を覗く。そこには、数時間前と微動だにしないデーモンが、未だ眠り続けているようだった。
傍へ行き、顔を覗き込む。顔色も悪くない。呼吸も規則正しい。額にそっと触れたが、熱もない。思いの外その状態が安定しているのを感じて、ほっと一息吐き出す。
それからエースが眠っているゼノンの部屋を覗く。
「…ライデン…?」
「あぁ、気が付いてた?」
ライデンの視線の先には、横たわったままこちらに視線を向けるエースの姿。
「悪い…水を一杯、くれないか…?」
「わかった。今持って来るね」
ライデンは、キッチンに戻るとグラスに水を注ぐ。
「エース、気が付いたよ。デーさんはまだ眠ってる。でも、顔色も良いし、熱も出てないから、そのまま様子見かな」
手を進めながらルークにそう声をかける。
「そう、良かった」
ルークも、ほっとした表情を浮かべる。
「でもまぁ…エースのことだから、じっとしてないんだろうね。取り合えずスープぐらいならエースも食べられるかな」
「聞いてみるよ」
ライデンはエースから頼まれた水の入ったグラスを手に、ゼノンの部屋へと戻る。
「お待たせ」
「サンキュー」
ライデンの手を借りて上体を起こすと、受け取ったグラスの水を一気に煽った。
「どう?調子は」
問いかけた声に、エースは溜め息を一つ。
「力がロクに入りゃしない。起き上がるのも、御前に手伝って貰ってやっとだったしな」
グラスをサイドボードの上に戻すと、ライデンは溜め息を一つ。
「無茶、するからだよ。あんたの左手、潰されかけてたって。デーさんが間に合わなかったら、生命だって危なかったんだよ?」
そう言いながら、ライデンは傍にあった椅子を引き摺り寄せる。そこに腰を降ろした時、不意にエースが問いかける。
「…デーモンは?」
「…いるよ。心配いらないよ」
デーモンの怪我を隠すように、ライデンは言葉を選んで答えた。しかし、エースはそのことについて全て知っているかのように、顔を伏せる。
「彼奴の怪我…酷いのか?」
「…何で?」
思わず息を飲んだライデンに、エースはうつむいたまま答えを返す。
「ここに連れられて来た時から、微かに意識はあったんだ。だから、デーモンがやられたことは知ってる」
「…そう」
そのエースの言葉に、ライデンは溜め息を一つ、吐き出す。
「…みんな、あんたの仇討ちの力になろうと、必死になってる。でもあんたは…また独りで突っ走るんでしょ?残される俺たちの気持ちに背中向けて」
その想いを吐き出すかのようなライデンの言葉に、エースは溜め息を一つ。
「…関わらない方が良い事もあるだろうが。何でもかんでも、他悪魔のことに首を突っ込むなよ」
「突っ込ませてるのはあんたでしょ?ちゃんと言ってくれれば、俺たちだって分は弁えるよ。だけどあんたは黙って一悪魔で行っちゃうから…っ!だから、俺たちみんな、心配するんじゃない…っ」
それは、思わず口を突いて出た言葉。
「みんな、あんたを心配してる。あんたが一悪魔で無茶するんじゃないかって。勝手なことしておいて、心配するなとか、首を突っ込むなとか、そんなことばっかり言って!自分の行動がどれだけみんなに心配かけてると思ってるのさ…っ!」
更に声を荒立てたライデンだったが、エースはそんな声には動じない。
「俺は、己を護る為に、誰かを犠牲にするつもりは毛頭ない。傷付くのは、俺一名で良いんだ」
その答えに、思わずライデンの掌がエースの頬を叩く。
「あんたの生命は、あんただけのモノじゃないでしょ?!もし、あんたが死んだら、デーさんはどうなると思ってるのさ…っ?!俺たちの気持ちはどうなるのさ…っ?!どうして、素直に手を貸してくれって言えない訳?どうして…一悪魔で突っ走る訳……?」
堪え切れずに零れた涙を袖口で拭い、ライデンはエースの首に腕を回して抱き締めた。
「…俺たちの気持ちを…置いていかないでよ…みんな、あんたが大好きなんだから…失いたくないんだから……」
「…ライデン…」
叩かれた頬の痛みよりも、ライデンを泣かせてしまった事が、何よりもエースの胸を締め付けた。
誰にも言わなければ、誰も傷つかない。関わらなければ、傷を負うこともない。そう、思っていたはずなのに…現実はそうじゃない。
別に、エースとて自ら死にに行くつもりではないのだが…こうして、自力で起き上がれないくらいの怪我を負ったことは事実。動かない左腕も、現実。ここまで来たら、自分独りで…などと、いつまでも言ってはいられないのだろう。
大きな溜め息を吐き出し、エースは動く右手で、嗚咽で揺れるライデンの背中をポンポンと叩いた。
「…悪かった。俺は…ただ、巻き込みたくはなかっただけで…」
どう足掻いても、言い訳しか聞こえないだろう。そして確かに、口を突いて出るのは言い訳、なのだ。
再び、エースは大きな溜め息を吐き出す。
と、その時。
「…何してんの、あんたたち…」
その声にドアの方を向いたエースは、呆れた表情で部屋を覗き込んでいるルークと目が合う。
「ほら、ライデン。エースが困ってるよ」
スープのカップを手に入って来たルークに背中を叩かれ、ライデンは再び袖口で涙を拭うと、エースから離れて大きく息を吐き出す。
「…御免…顔洗って来る…」
そう言って、エースの顔も見ずに部屋から出て行ったライデン。その背中を見送り、ルークは小さく笑う。
「まぁ、少し何か食べないと回復しないからね。これでも飲んで、身体あっためて」
ルークはそう言うと、作って来たスープを載せたトレーをエースの膝の上に置く。そして、先ほどまでライデンが座っていた椅子に腰を下ろす。
「夕べさ、俺らが怪我して帰って来てから…随分悩んでたみたいよ。俺もちょっと愚痴られたけど…何より、何にも教えて貰えなかった事が一番堪えてるみたい。誰も、ライデンだけ仲魔外れにしようと思ってる訳じゃないし…寧ろその反対で、俺らに何かあっても、雷神界のこともあるから、ライデンだけは…って過保護になることが多いからね。それも気に入らない訳だよ」
「当たり前だろう?ライデンに何かあったら、全面戦争だ。巻き込む訳にはいかないだろうが」
スープのカップに少しだけ口をつけたエースは、ルークの言葉に思わず反論する。
「そりゃあね。でも、ライデンだって覚悟の上でここに来てる訳だから、やっぱり同等に考えなきゃ駄目なんだな、って思ったよ。だから戦え、って言うんじゃなくて…納得して貰った上で、無謀にならない程度に手を貸して貰う。それで良いんじゃないかな、ってね」
「…それで納得するなら、それが一番だが…」
困った表情を浮かべるエースだが、ルークはくすくすと笑うだけ。
「もう、そう割り切るしかないのよ。ライデンだって、子供じゃない。寧ろ、今回みたいな時は俺らよりもしっかりしてるからね。まぁ、ゼノンが甘やかすから、俺らも切り替えるのは大変だけどね」
「…そんなモンか…」
「そんなモンよ。甘やかされることに甘んじてるライデンだったら、きっと…ここまで腹を割れないと思うよ」
確かに、ルークの言う通りかも知れなかった。
「まぁ、ゼノンが帰って来るまではゆっくり休んでな。どうせ、動けないでしょ?」
スープのおかげで空っぽだった胃が満たされ、少し顔色も良くなったエース。その姿に、ルークはにっこりと笑うと、エースが飲んだスープのカップと水のグラスをトレーに乗せて、椅子から立ち上がった。
「ゼノン、何処か行ったのか?」
問いかけたエースの声に、ルークは踵を返した足を止めた。
「ん?何か、"忘れ物"を取りに行く、って魔界に行ったよ。戦うつもりはない、って言ってたから、そのまま行かせたんだけど。夕方までには帰って来るって言ってたよ」
「…そうか。わかった。じゃあ…少し休んでるか」
今回ばかりはもうどうしようもない。大人しく休むことを選んだエース。
「デーさんは俺たちがちゃんと診てるから、大丈夫だよ。心配しないで、ゆっくり休んでな」
ルークはそう良い残し、部屋を出て行く。
その背中を見送ったエースは…ドアが閉まった後、ふと"それ"を思い出した。
「…ここ、ゼノンの部屋じゃん……落ち着かねぇ…」
小さく吐き出した溜め息は、誰にも届かなかった…。
キッチンに戻って来たルークは、ダイニングテーブルに突っ伏すように座っているライデンの姿を見つけた。
「…何してんの?」
思わず問いかけたルークの声に、ライデンはちょっと顔を上げた。
「…反省してんの。エース引っ叩いちゃったから…」
溜め息と共に吐き出された言葉に、ルークは小さく笑う。
「エースは気にしてないよ。あれだけ怪我してんだから、顔の一発や二発叩かれたって、どうってことないさ」
そう言いながら、ライデンの前にスープのカップを置く。
「ま、飲みなよ。あったまるよ」
「…有難う…」
そう言ったものの、ライデンはなかなか手をつけない。ただ黙って、スープから立ち上る湯気を見つめていた。
そうして、湯気がすっかり消えた頃…小さく言葉を紡ぐ。
「…これから…どうなると思う?」
「…どうなるって?」
問い返したルークの言葉に、ライデンは顔を上げる。
「ゼノンが戻って来たら…どうなるんだろう?エースの怪我を治して、また仇討ちに行かせるのかな…?そしたら…今度はどうなる?今度はちゃんと、仇討ち出来るの?それともまた…大怪我するの…?いつになったら終わるの…?」
「ライデン…」
「…エースの気持ちはわかるよ。大事な…悪魔だったんでしょ?だから、一悪魔で背負い込もうとしたんでしょ?でも…ちゃんと帰って来る、って保障は、何処にもなかったんだよね…?次に行ったら…今度こそ、倒せるって保障もない。帰ってこられる保障もない。もしも…エースが欠けたら…?それでも俺たちは、このまま活動を続けるの?誰かで足りない穴を埋めて、何事もなかったかのように…またステージに立つの?俺は…そんなのは嫌だ…勝って帰ることだけを考えれば良い訳じゃない。もし、駄目だった時の事を考えたら…もう、エースを…行かせたくない」
時間が経つにつれ、どんどんネガティブになっていくライデン。その気持ちもわからなくはない。けれど…話を聞いているルークは、戦地に立つ戦士であり、勝つことを考える作戦参謀である。負けることを想定することは出来ない。
それでも…ライデンは、敢えてそれを口にする。二度、大怪我を負って帰って来た以上…必ず勝てると言う保障は、何処にもないのだから。
「まぁ…考え方は色々あると思うんだけどさ…」
大きく溜め息を吐き出したルークは、そう言葉を切り出す。
「今回のことは…俺たちには、口出し出来ないんだよ。エース自身…踏ん切りをつけたい訳だしさ…それが、生命を懸けるべきことなのかどうかは、俺にもわからない。でも、エースにとっては大事なことなんだったら、幾ら俺らが反対したって、突っ込んでいくのがエースだもの。それは、エースの性格だからさ、今更どうにもならないんだよ。その踏ん切りがつかない限り…多分、エースは前に進めないんじゃないかな?見つからなかったのなら、また話は変わったかも知れないけど」
そう。今までは、ただ単に捜していた相手が見つからなかったから。だから…エースもゼノンも目を瞑って、自分の心の中にその思いを閉じ込めた。けれど今は…見つけてしまった以上、見ぬ振りはもう出来ないのだ。
「だけど…っ」
まだ何か言いたげなライデンの言葉を遮ったのは。
「俺は、止めないけど…?」
「…ゼノン…」
不意に帰って来た言葉に、ルークもライデンもその視線を廊下へと向ける。
そこには、魔界から戻って来たゼノンの姿。そして、いつから話を聞いていたのかはわからないが…エースの後押しをする、と言う意思表示をしたのだから、当然ライデンは目を丸くする。
「何でっ?!また、大怪我するかも知れないのにっ?!帰って来られないかも知れないのに…っ?!それなのに、止めないって言うの?!」
興奮して声を上げるライデンに歩み寄ると、ゼノンはその隣に腰を下ろす。
「止めたところで…エースは引かないよ。寧ろ、俺たちの知らないところで勝手にやり兼ねない。だったら、今回ちゃんと送り出した方が、俺たちにとっても安心だし、エースにとっても心苦しいところが少ないと思う。無茶をさせたくないのなら、ちゃんと納得して送り出すべきだと思うよ」
「…成程ね…」
ゼノンの言葉に、ルークは小さく唸った。
「確かに、最初と二回目共、エースの暴走だもんね」
「まぁね。それなりに準備してからなら…エースなら、勝てない相手ではないと思う。だって…デーモンが、待ってるんだもの」
「デーさんだけじゃない、俺たちみんな…ね」
付け加えたルークの言葉に、ゼノンはくすっと笑う。
「そうだね。俺たちみんな、だね」
ただ一悪魔…ライデンだけは、未だ納得出来ない表情を浮かべている。けれど、ゼノンはライデンの背中をポンポンと叩くと、言葉を続けた。
「大丈夫。ちゃんと、切り札を準備して来たから」
「…切り札って…?」
怪訝そうに眉を寄せるライデンに、ゼノンは小さく笑ってみせる。
「まぁ…それは後で、ね」
未だに、不服そうな表情ではあるが…ゼノンがそう言うのなら、少し様子を見るしかないのだろうか。ライデンの表情から察するに、心情はそんなところだろう。
「デーモンとエースの様子はどう?」
問いかけたゼノンに、ルークが答える。
「エースは目が覚めた。で、ライデンがキレてこんな感じ。デーさんはまだ眠ってるみたい」
「そう。じゃあ、ちょっとデーモンの様子を見てから、エースのところに行って来るよ。もうちょっと、ライデンをお願いね」
不貞腐れるライデンの肩をポンポンと叩き、くすくすと笑いながら席を立ったゼノン。そして、それを見送ったルークも、笑いながら手を振っていた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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