忍者ブログ

聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

熾烈なる戦い 5
こちらは、以前のHPで2000年8月13日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。(基本DxAです…/笑)
5話完結 act.5

拍手[2回]


◇◆◇

 一足先に階下へと戻ったゼノンは、自身の部屋ドアに寄りかかるように座っているライデンを目にする。
「…どうしたの?」
 問いかけた声に顔を上げたライデン。その表情は、相変わらず…だが。
「…シーツの洗濯…」
「あぁ…」
 そうだった。ライデンは今、現実逃避…否、気分転換中、だった…。
「…待ってね、今外すから」
 ライデンを立ち上がらせ、部屋のドアを開ける。そして中に入ると、ライデンも一緒にくっついて来る。そして不意に、その背中に抱きついた。
「…ライ?」
 いつにない姿に、ゼノンは思わず不思議そうに声をかける。
 するとライデンは、背後からゼノンの耳元に小さくつぶやく。
「俺、ね…泣いてなんか、ないから」
「…うん。わかってるよ」
 自分の胸元でしっかりと組まれたライデンの手の上に自分の手を重ね、ゼノンは言葉を続ける。
「…見守ってあげよう。エースのこと。彼奴なら、きっと大丈夫。ちゃんと…帰って来るから」
「…うん。わかってる」
 ついさっき聞いたばかりのゼノンの言葉と同じ言葉を返すライデン。その声は、ほんの少しだが、笑いを含んでいて。
「…で、何してるの?」
 未だ、硬く結ばれた手に、ゼノンは身動きが取れずにそう問いかける。すると、再び耳元で囁かれた言葉。
「…充電中」
「…あ、そう…」
 お互いが、お互いの温もりで癒される。
 ライデンが充電中の間…ゼノンもまた、充電中であった。

◇◆◇

 デーモンの部屋の前へやって来たエースは、小さくノックをする。だが、中からの返事はない。
 ほんの少し迷ったが、そっとドアを開けて部屋の中へと足を踏み入れる。
「…御前に、話さなきゃいけないことがあるんだ…」
 つぶやきながら背中でドアを閉め、そっとベッドに歩み寄ると、その端に腰を降ろす。
 閉ざされたままの、デーモンの瞳。いつもなら、優しく温もりを与えてくれるその唇も開くことがなく、それも不自然さを与えていた。
「俺は…馬鹿だな。一番大事な御前を置いて…過去の清算に行こうだなんてな…」
 大きく息を吐き出し、再びデーモンへと視線を向ける。
「…悪いな。あとほんのちょっとだけ…目を瞑ってくれ。そうしたら、必ず…帰って来るから…」
 言いたいことは、沢山あった。けれど…全てを紡ぐ時間はない。
 エースは再び溜め息を吐き出す。そして立ち上がるとデーモンに背中を向け、歩き出した。
 その瞬間。
「待ってる、からな」
「…っ!?」
 驚いて振り返ったエースの視界に、しっかりと自分を見つめる金色の眼差しがあった。
「眠ってたんじゃ…ないのか?」
 その戸惑った表情に、デーモンは小さな笑いを零した。
「御前の告白が聞けないなんて、勿体無いだろう?」
 くすっと笑って、ゆっくりと身体を起こす。
 気まずい表情を浮かべたエースだったが…デーモンは、くすっと小さく笑いを零した。
「吾輩は、何も言わない。だから、思う存分やってくれば良い。そうしたら…ちゃんと、帰って来いよ」
「デーモン…」
 真っ直ぐに見つめるエースの眼差しに、デーモンはすっと手を差し伸べた。
「共に…生きると約束したんだ。だから、"ここ"へ、ちゃんと帰って来い。わかったな?エース」
「…わかった」
 エースは、差し伸べられた手をしっかりと握った。
 決して、離してはいけない。それは、エースの生命が自分だけのモノではないと、改めて心に刻む為に。
 エースは身を屈めてデーモンに頬を寄せると、そっと口付ける。
「…行って来る」
 踵を返して出て行く背中。残された温もりを忘れない為に、デーモンはしっかりと自分の手を握り締め、唇を噛み締めた。
「…気をつけて」
 今は、祈ることしか出来なかった。

◇◆◇

 エースが階段から降りて来る音を聞きつけ、ゼノンの部屋から飛び出して来たライデン。そして、その後ろからやって来たゼノン。
「エース…っ!」
「ライデン…」
 先程よりも、ずっと機嫌の良いライデンの表情に、それがゼノンのおかげであることを悟った。
 ライデンはエースが降りて来るのを待つと、その正面で一瞬躊躇った後…その首に腕を回し、力強く抱き締める。
「さっきは御免。俺、あんたのこと大好きだから。だから俺からの餞別、受け取って」
 そう言葉を放つとエースから身体を離し、右の掌に魔力を集め始めた。
「何を…?」
 訳がわからないと言った表情を浮かべたエースに、ライデンは魔力を集中させながら言葉を発した。
「今、俺に出来ることって言ったら、これぐらいだから」
 そう言い終わるか否かのうちに、ライデンの掌に集まった魔力の光。
「あんたに、あげる」
「ライデン…」
「貰って損はないよ」
 ライデンの後ろから、ゼノンがそう声をかける。その声に促されるように、ライデンはその手でエースの左腕にそっと触れる。
 光はすっと吸収され、あっと言う間にその"力"となる。
「…即効性だよ」
 くすっと笑ったゼノンは、手を伸ばしてエースの腕を吊っていた三角巾を外す。
 先ほどまで動かなかった腕は、以前と変わらないくらいスムーズに動いた。
「…あのままじゃ戦い辛かったから、助かった。ゼノンの薬じゃ、魔力は戻っても腕まで治らなかったからな」
 エースはそう言いながら、腕の動きを確認するように動かしてみる。思い通りにすんなり動くことに、素直に感謝を伝えた。
「…有難うな。俺の我侭に、妥協してくれて」
「…しょうがないでしょ?みんな、エースを信じて、送り出すんだもん。俺だけ除け者にされるのは心外だしね」
 ライデンがそう言った直後。
「じゃあ、俺も」
 ルークの部屋のドアが開いて、にやにやと笑いを零すルークが顔を出した。
「これは、俺からの餞別」
 そう告げた声に反応するように、ルークの掌に、小さな光の塊が現れる。
「あんたの剣の足しにでもして」
 エースの掌に落とされたのは、ルークの剣となるべき魔力の核。
「俺の剣じゃ、あんたには足りないからね。せめて、あんたの剣に同化させてやってよ。少しは役に立つよ」
「…悪いな。使わせて貰う」
「うん、使ってやって」
 にっこりと微笑むルーク。その想いも受け取ったエースは、改めて大きく息を吐き出す。
「じゃ…行って来る」
「あぁ、気を付けてね」
 三名に見送られ、エースは出発した。

◇◆◇

 白い、汚れのない空間。
 今まで戦って来た一級危険区域から更に聖地に向かって行くと、その神殿はあった。
 既に天界の領域に入っているにも関わらず、この場所の空気は淀んでいる。
「魔界より歪んでるな、ここは…」
 そうつぶやいた時、エースの気を感じたのか、十名余りの天使が剣を構えて現れる。
「雑魚に用はない。失せろ」
 エースは、その手に己の剣を呼び出す。ルークから渡された核が同化した為、そこに宿った能力は軽くいつもの倍以上ある。
 しっかりと剣を握り締め、一振りしてその感覚を確かめると、身体中の血が騒ぎ始める。
「手っ取り早く片づけてやる」
「戯言をっ!!」
 一番手前にいた天使が、剣を振り上げてエース目指して走り寄って来る。その天使を切り捨てたのを合図に、そこにいた天使たち次々とエースに立ち向かい、瞬く間に塵と化して行く。
 濡れた剣を振ってその血を払い、神殿の奥から出て来た姿を目に留めると、エースは眉を潜める。
「やっと御出ましか。これだけの天使を犠牲にして、良い身分だよな」
 目の前にいるのは、真白き翼を背中に構えた武装天使。
 エースの声に、彼…オルウェンはその顔に笑みを浮かべた。それはどう見ても天使の姿とは不釣合いで、どちらかと言えば、天使よりも悪魔の微笑みだった。
「愚かだな、エース。デーモンが御前を連れ戻しに来た時点で、戦いを放棄したと思ったのだが」
 皮肉げな言葉にも、エースは気丈を保っていた。
「もう三度目だしな。いい加減、終わりにしよう。今度こそ、俺を敵に回したことを後悔させてやる」
 エースは微笑みを零す。それは、実に悪魔らしい、美しい微笑み。血を見るのが楽しみで、額の邪眼が開かれる。それと同時に、エースの魔力が放出され始めた。オルウェンはそれを冷静に見つめ、己の手にも剣を構える。
「勝負!!」
 先に行動を起こしたのは、エースだった。だが、エースが繰り出す剣先を、オルウェンは軽く流す。乾いた音が辺りに響き、エースは一旦オルウェンとの距離を取った。
 このままでは、天界と言う場所柄、エースが不利なことはわかり切っている。
「どうした?相変わらず口先は立派だが、身体が着いて来ないようじゃないか。最終兵器の邪眼を出して来た割りに、他愛のないことよ!」
 オルウェンは、笑いを零す。それは、悪魔の微笑み。
「それはどうかな…」
 そうつぶやきを零し、エースは更に魔力を高める。その魔力と剣の能力との相乗作用により、剣は赫い炎を纏い始めていた。
「ほう…面白い」
 ゆらりと笑うオルウェン。その剣は白く輝き出す。
 再び交わった、赫と白。だが、圧倒的な能力の差を見せたのは、白だった。
「くっ…」
 剣を弾かれ、地に膝を着いたエースの胸から、一筋の孤を描くように真紅の血が流れ落ちる。開けたその胸元に、赤く輝く小さな光。
「さて、これからどう料理してやろうか。ん?」
 オルウェンはその剣先をエースの首筋に押し付け、ぐっと力を込める。喰い込んだ剣先に、溢れる鮮血。しかし、エースはその顔色一つ変えない。それどころか、かえって勝利を確信したような表情を浮かべた。
 瞬間的に魔力を放ってオルウェンの目を眩ませると、素早く彼から離れ、己の剣を再び手にする。
「俺を甘く見るな」
 既に体制を立て直したエースは、口の端を上げてニヤリと笑ってみせると、それまで優勢を感じていたオルウェンはぎりっと歯ぎしりをする。
「笑止っ!!今まで劣勢だったクセに、何を今更…っ!」
 カッとなったオルウェンは声を上げ、その剣を大振りに振るう。しかし、そんな剣がエースに当たるはずもなく、エースはすっと身を退いて冷静にそれを交わす。
「調子に乗ってる奴は、自分自身の自惚れに足元を浚われるんだ」
 そう言葉を放ったエースに、オルウェンは更に気を荒立てる。
「その言葉、そっくり貴様に返してやる…っ!!」
 再び、両名は剣を合わせた。が、その刹那。
「…っ!!」
 エースの胸元の小さな輝きが、突如として大きな輝きへと変化した。そしてその輝きはエースの剣に纏わりつき、オルウェンに牙を剥いた。
 一瞬、気を乱したのはオルウェン。思わずその腕で顔を覆い、隙が出来た。
 エースはその隙を見逃さなかった。
 肉を貫く鈍い音と共に、真紅の血が飛び散る。
「…ぁっ…」
 真紅の血が、白の聖衣を濡らす。胸を貫いたエースの剣が、オルウェンの背中に見えていた。滴り落ちる彼の血と共に、その剣の柄が手から滑り落ちる。
「…この私が…御前に……負けるだと……?」
 喘ぐように吐き出す言葉と共に、大量の血を吐き出したオルウェン。
「言ったはずだ。調子に乗ってる奴は、自分自身の自惚れに足元を浚われると。もう、諦めろ」
 エースはオルウェンから剣を引き抜き、大きく息を吐き出した。
 足元に崩れ落ちたオルウェンの身体は、そのまま消えてなくなる。そしてそこに残ったのは…一枚の、黒い羽根。
「…聖衣を隠れ蓑にした堕天使か…最悪なヤローだな…」
 大きく溜め息を吐き出し、その黒い羽根を踏み潰すと、羽根は塵と化して風に飛ばされていった。
 剣の血を振り払ってその実体を消すと、エースは来た道を戻り、一級危険区域の外れに立つ古い巨木の前に立った。
 そこは、レイラ=クーヴェイが息絶えた場所。
 エースは開けた胸元で揺れる、既に輝きを失ったそれを握り締める。
「…御免な、クーヴェイ…すっかり遅くなっちまった…」
 小さくつぶやくと、首からネックレスを外し、跪いてその木の根元に埋める。そして、大きく息を吐き出すと、巨木を見上げた。
「これで…ゆっくり眠れるだろう?」
 その表情は、とても柔らかい。
「俺は…彼奴が好きだよ。だから…もう、心配しなくて良いからな」
 恨んだままではないと言うことを、伝えたくて。その為に決めた、仇討ちだったのだから。
 それを告げたエースは、笑っていた。
 とても、安らかな笑顔で。

◇◆◇

 遠くの空が、白くなり始めていた。
「…遅いね、エース…」
 待ち草臥れたように、ライデンはつぶやきを零した。勿論、待ち草臥れているのはライデンだけではない。他の構成員も、一様に同じ表情である。リビングのソファーに腰を据えてはいるものの、何処か落ち着かない。
「帰って…来るよね?エース」
 不安げに尋ねたライデンに、デーモンは小さく微笑む。
「あぁ、大丈夫だ。彼奴なら、帰って来る」
 確信を持って、そう言える。エースが、帰って来ないはずはないのだから。
 と、その時。
「…来た」
 僅かな気配を感じ取ったルークが、声を上げる。慌てて玄関を目指すと、そこには確かにエースが立っていた。
「…ただいま」
 照れを隠したような表情を浮かべているエース。けれど、何処か清々しく思える。
「馬鹿だな、あんたは…また怪我して…」
 軍服の胸元は破れて固まった血がこびりついている。そしてその首筋にも、血の流れた跡が残っているのを見て、ルークは心配そうに眉を寄せる。
「こんなのは、今までのに比べればたいしたことはない。もう、治りかけてるしな」
 くすっと笑いを零したエースは、一番遠くで、ゼノンに肩を借りて立っているデーモンに視線を向けた。
 デーモンは、目を細めて笑っている。その姿が、何よりも愛しい。
「…有難う」
 それは、誰に…と選んだ言葉ではなかった。ただ、その思いを、伝えたくて。
「もう…黙って、何処にも行くなよ?」
 そう言ったデーモンの声に、エースは笑った。
「…あぁ」
 手を伸ばして、デーモンの手を握り締める。
 確かな温もり。それを、失わない為に選んだ道は…間違いではなかったと、そう思いたい。
「…有難う」
 もう一度、エースの言葉が零れる。
「…んもうっ!エースらしくないっ」
 そう声を上げ、エースに抱きついたライデン。涙を浮かべながらも、笑うライデンの姿に、エースも笑ってその頭をぐりぐりと掻き混ぜる。
「…ホント、良い仲魔を持ったな」
「でしょ?」
 つぶやいたエースの声に、ライデンが笑う。その言葉に、他の仲魔たちも笑いを零す。
 遠い記憶の中で…レイラ=クーヴェイの笑う声が甦る。
 思い出しても、もう胸は痛まなかった。

◇◆◇

 レイラ=クーヴェイは、一級危険区域で今も眠っている。
 思い残すことなど、何もない。
 誰よりも…大切だった悪魔に、弔われたのだから。
PR
COMMENT
NAME
TITLE
MAIL (非公開)
URL
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
COMMENT
PASS (コメント編集に必須です)
SECRET
管理人のみ閲覧できます
 
  
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
バーコード
ブログ内検索
Copyright ©  -- A's ROOM --  All Rights Reserved

Design by CriCri / Material by petit sozai emi / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]