聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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音のない森 2
こちらはエースの執務室。
ルークのところから戻って来て直ぐに書類を漁り出したエースを、副官であるリエラは首を傾げて見つめていた。
「何か、御探しですか…?」
「あぁ……前に、ゼノンから受け取った書類を捜しているんだ。例のウイルスの…"盗難届け"な」
「…"盗難届け"…ですか?でしたら、多分こちらに…」
リエラも手伝って、目的の書類を無事に探し出した。そして改めて、その書類に目を通す。
「…やっぱり…」
小さな溜め息を吐き出したエース。そして椅子に深く凭れかかると、再び大きな溜め息を吐き出した。
「リエラ。ちょっと頼みたいんだが…」
「はい、何なりと…」
リエラを手招きしたエースは、傍へ来たリエラの耳元で何かをそっと囁く。それを黙って聞いていたリエラは…やがて小さく頷くと、一礼をして執務室を後にした。
再び一名になったエース。するとそこに、デーモンから通信が届いた。
「…どうした?」
ダミアンのところに報告書を出しに言った時に、顔は見て来たはずだからこそ、そう問いかける。
『あぁ、さっきダミアン様のところに翠雨が来てな……』
そう、話を始めたデーモン。その話を黙って聞いていたエースだったが、話が終わる頃にはその口元に小さな笑みが浮かんでいた。
「…わかった。こっちも今何となく道筋が見えた段階だ。これからルークが来るから、あとはこっちに任せろ」
『わかった。無理するなよ』
デーモンはそう返事をすると、小さく笑って通信を切った。
「…さて。それじゃ…報告書でも作るか…」
エースは小さくそう零すと、そのままコンピューターに向かう。
そうして…勤務時間は、終了した。
勤務時間終了後、ルークは約束通りエースの執務室へ向かおうと、自分の執務室を出た。すると廊下の向こうに、丁度レプリカとテオ=ホリィの姿が見えた。
「…ルーク様っ!」
ルークの姿を見て、駆け寄って来たのはレプリカ。
「御帰りですか?」
「あぁ、これからエースのところに行くんだけど…どうした?」
その表情で、何かを察したのか…ルークはレプリカに問いかける。
「実は…先日の件で、御話が…」
「…先日の件、って言うと……例の話?」
一応言葉を濁してみたものの、話は通じたようだ。小さく頷いたレプリカ。そして、悠然と歩いて来たテオがそこに合流する。
「御時間、頂きたいのですが」
以前と違って、とても真剣な表情。その二名の姿に、ルークは一つ息を吐き出した。
「わかった。じゃあ、一緒にエースのところに行こうか。エースも何か引っかかってるみたいだから」
「…わかりました」
一瞬顔を見合わせた二名だったが、直ぐに頷いて返事を返す。
そして三名は揃ってエースの執務室へと向かった。
勤務時間が終了して一時間ほど経っただろうか。エースの執務室のドアをノックする音に、エースは向かっていたコンピューターから顔をあげた。
「どうぞ」
声をかけると直ぐにドアが開き、ルークと…そしてレプリカとテオ=ホリィが入って来た。
「…どうした?そいつ等まで…」
思いがけない人数に、エースは一瞬眉を寄せる。
「執務室を出たところで丁度会ってね。話があるって言うから連れて来たんだ。例の話で、ね」
ルークの言葉に、レプリカは小さく頷く。テオの方は…表情も変えず、真っ直ぐにエースを見据えていたが。
「じゃあ…まぁ座ってくれ。あぁ、ルーク、コーヒー淹れて」
「ちょっとぉ、何で俺なのさ。主の仕事でしょうよ…」
「今ちょっと手が離せない。俺に淹れて貰いたいならもうちょっと待ってろ」
名指しでそう言われ、ルークが顔を顰めるのも無理はない。だがエースは未だコンピューターの前から動かない。
「…ルーク様、わたくしが…」
見兼ねたレプリカがルークにそう声をかけ、自らコーヒーを淹れに立つ。
「あぁ、悪いね…有難う」
ルークもテオもソファーに腰を下ろし、レプリカが人数分のコーヒーを淹れ終えた頃。やっとエースが戻って来た。
その手には、今作り終えたばかりの報告書を携えて。
「…さて、それじゃ…そっちの話から聞こうか?」
レプリカとテオに視線を向けたエースは、そう口を開く。二名は僅かに顔を見合わせると、口を開いたのはテオの方だった。
「ちょっと疑われているみたいなので、弁明をしに」
「…疑う?誰が、何の為に御前を?」
先日のダミアンの執務室での話を知らないエースは、小さく首を傾げる。けれどテオは構わず話を続けた。
「ゼノンの後任を選ぶ話が出ている、と言う件です。俺が誰からその話を聞いたのかと、ちょっと疑われているみたいなのでね」
「あぁ…そう言う事か。で、何を弁明に?」
エースの声に、テオは一つ間を置く。そして。
「ゼノンの後任を選ぶ件に関しては…俺は、研究室で聞きました。研究員に聞いた話ですが…言い出したのはどうやら、ロイドと言う研究員のようです。別に、翠雨副官に不満がある訳ではないようですが…不在なのにいつまでも席を残しておくのはどうか、と言うことがきっかけだったようです。帰って来る意思がないのなら、後任を選ぶべきだと」
「…なるほどね。ロイド、ね…」
その名前を聞いて、エースだけではなくルークの表情も変わった。
「…因みに、さっきデーモンから連絡があって、翠雨がダミアン様のところに行ったそうだ。後任の話を切り出したのは…やはりロイドらしい、とな」
「……誰に聞いても答えは一緒、ってことね。じゃあ…何の目的で…?」
問いかけたルークの声に、エースは小さな溜め息を吐き出すと、机の上の書類束の中から数枚の紙を持って来た。
「何処までが当初の目論見だったかはわからないが…ゼノンがいなくなってからの計画じゃないかも知れない。多分、もっと前から計画していたはずだ」
そう言ってテーブルの上に広げた書類は、以前ゼノンがエースへと出した数年前のあのウイルスの盗難届けとその前日の不審者の報告書。
「文化局から出された不審者の報告書と、結局出されなかったウイルスの盗難届け。どちらも報告者はロイド、だ。ルークから名前を聞いて、何かに引っかかったような気がしていたんだが、これだった」
「……どう言う事ですか?」
不安そうな顔でエースを見つめたレプリカ。するとその隣で、小さく息を吐き出したテオ。
「…全て、ロイドの仕業だとでも…?」
「なくもない。確証はないからな」
エースはそう言うと、内ポケットから煙草を取り出し、その口に銜えて火をつけた。
「どうして、盗難届けが出されなかったのか。幾ら慌しくても、ゼノンにしては可笑しいと思っていたんだ。だが…もしもそれが、故意的に隠されたのだとしたら…?」
「……隠された?」
怪訝そうに眉を潜める三名を前に、エースは言葉を続けた。
「そう。大体、可笑しいだろう?幾ら慌しかったとは言え、未確認のウイルスが盗難にあったこと自体が。未確認だぞ?誰が、何の為に?そして、ウイルスの資料も、盗難届けも、他の資料の間に紛れ込んでいたとゼノンは言っていた。どうして紛れ込むんだ?幾ら何でも、二つも三つも同じテーブルに資料をぶちまけて置くほど彼奴はずぼらじゃない。それに、盗難がわかっていたのなら、どうして誰もその後のことをゼノンに問いかけなかった?犯魔が見つからないことを、どうして誰も心配しなかったんだ?」
「…確かにね」
ルークも、大きく息を吐き出す。その表情は…とても険しい。
「ロイドは、ゼノンの研究の補佐をしていたんだよな?もしかしたら、ウイルスを手がけていた時も傍にいたんじゃないのか?もしそうだとしたら…話は一番しっくり来るんだ。どさくさに紛れてロイドがウイルスを盗んで、誰かに横流しをした。そして、資料と盗難届けを隠した。もしばれても忙しかったからと理由を付けられるように、他の資料に紛れ込ませてな。そして、不審者がいたと報告すれば…」
「…自分がやったと、ばれないってことか…」
「確証は何もない。ただの、俺の想像だ。だが、そこまで道筋を作れるだけの、ロイドの署名の入った報告書が残っている。恐らく…ゼノンが填められたのは間違いないだろうな。ただ、引っかかるのは…どうして今更、こんな風に追跡される足跡を残したのか、だ」
エースはそう言うと、大きく紫煙を吐き出した。
その言葉は、確かに皆引っかかった。
確かに、今更…なのだ。どうして、自ら口火を切ったのか。
「…ロイドは今どうしてる?」
問いかけた声に、テオが答えた。
「今日は変わらず研究室にいた。ただ、俺たちがこうして動き出したことにもし気付いていたら…明日はもういないかも知れない」
「じゃあ、捕まえるなら早い方が良い、ってことか」
ルークの声に、エースは煙草を灰皿へと押し付けて火を消す。
「慌てなくても大丈夫だ。取り敢えず、手筈は整えてある」
「どう言う事?」
「リエラが行ってる。何かあれば連絡が入る」
既に手回し済み。それは流石エース、と言わざるを得ない。
そんなやり取りを黙って聞いていたレプリカ。膝の上で固く握り締められたその手が、押し殺そうとしている感情を表しているようで。
「…では…ゼノン様に、罪はなかった……そう言う事ですよね…?」
視線を伏せたまま、小さくつぶやいた言葉。けれどその言葉に、エースは溜め息を吐き出す。
「…確かに、填められたのは間違いないだろう。だが…ゼノンに罪がないか、と言われれば…そうだ、と言い切ることは出来ない」
「…どうしてですか?填められたんですよね?全て…ロイドの差し金だったんですよね…?」
「落ち着け、レプリカ」
エースは再び溜め息を吐き出すと、カップのコーヒーに口をつけた。
「填められたけど…結局、盗難を見過ごしたのはゼノン、だから…か」
ルークも小さな溜め息を吐き出す。
「でもそれは…」
口を挟みかけたレプリカだったが、隣のテオがそれを制した。
「御前がゼノンを思う気持ちはわかる。だけど、責任者のゼノンが盗難を見過ごしたのは事実なんだ。もしその時気付いていれば、こんなことにはならなかった。今更言うことじゃないが…ゼノンに非がないとは言えないんだ」
「…テオ…」
無情にも聞こえる、テオの言葉。けれどそれは事実であり…今更どうすることも出来ないのはわかり切っていた。
当然、レプリカの表情が酷く落ち込む。一時でも無罪を期待してしまったその心は、呆気なく叩き潰されてしまったのだから。
だが…エースは唇を噛み締めて俯くレプリカの頭にそっと手を置いた。
「確かにな。罪がないとは言えない。ただ、上手くすればゼノンの名誉を護ることは出来るかも知れない。少なくとも、彼奴はウイルスを撲滅させた功労者だ。だから、諦めるな」
「…エース様…」
不安そうな、苦しそうな…そんな表情を浮かべていたレプリカに、エースは小さく笑ってみせた。
「御前の大事な主だもんな。大丈夫だから、そのままちゃんと信じていろ」
せめて、護れるものだけでも護ってやらなければ。今出来ることが、それだけならば尚更。
そんな想いを込めたエースの微笑みに、レプリカも少しだけ表情を和らげた。
「…はい」
小さく零したその言葉は、決して揺るがない思いが込められていた。
レプリカとテオを先に帰し、残ったルークは先ほどエースが作った報告書に目を通していた。
「…まぁ…あんたことだから、不備ってことはないんだけどさ…」
そう言いながらコーヒーのカップに口を付ける。
「この報告書の捏造は如何なものかと思うけど…?」
小さな溜め息を吐き出し、報告書をエースへと返す。
その内容に関して、ルークは苦渋の表情を浮かべているのだ。
今回の騒動に関しての報告書…と言う名の、半分以上が仮説状態の文書。
ロイドは、第三者の指示の元、ウイルスを盗んで横流しをした。そして今回、ウイルスを広める手伝いをした。そして…ゼノンを失脚させるべく、後任を選んだ方が良いと口火を切った。全て、第三者の指示の元に。
勿論、それが絵空事だと一笑されてしまえばそれまでのモノ。
けれど、わざわざそんなものを作った理由が、エースにはちゃんとあった。
「…ロイドの行動が誰かの指示で、って…そう判明した訳じゃないでしょ?報告書なのに捏造じゃん。そうまでして、ロイドを護るつもり?何の為に?」
「そう言う事じゃない。別に俺はロイドがどうなろうと関係ないからな。ただ、判明した訳じゃないが、そうとしか思えないだろう?誰かの指示以外、何の利益がある?今回のことだって、彼奴がゼノンの解任の声を上げたんだとしても、どう考えても彼奴がゼノンの後釜に座れる訳じゃない。翠雨と通じている訳でもなさそうだし、声を上げたことで、直ぐに名前が出て来ただろう?そこから過去のことが判明するのも時間の問題だ。そうなると、当然ウイルスの盗難も一番疑われるのはロイド自身だ。自らの罪を自ら暴く理由はないんだ。そうなるとゼノンの失脚を狙った誰かに操られたと考えるのが一番無難だ。あくまでもその見込みがある、と言うだけで、捏造してる訳じゃないからな」
窓辺で煙草の紫煙を燻らせるエースの言葉。確かにそう言われればそうなのだが…。
「…ゼノンの失脚…それを望んだ奴がいる、ってことか…」
ルークは溜め息を一つ。
勿論、自分も含め、全員から支持されているとは思ってはいない。けれど、故意的に失脚を目論まれるようなことを、ゼノンがしていたはずもない。何の目的があって、それを望むのか。それすらわからない状況なのだ。
「…そう言えば…御前、軍事局の名簿持ってるよな?」
不意にエースがそう問いかけて来た。
「…持ってるけど?でも見せないよ?名前が知りたいだけなら、図書館行きな」
そこには当然守秘義務がある訳で…情報局が管理する資料室(一般に開放されている場所は通称図書館と呼ばれている)には配任名簿はあるものの、エースが言っているのは恐らくルークが管理している、個悪魔の情報満載の名簿。当然誰にでも見せられるモノでもない。
「ば~か。名前だけ知ってどうするんだよ」
「…何が知りたいのさ…」
エースの言葉が唐突過ぎて、何を考えているのか未だに掴み取れていないルーク。
エースは煙草の火を消すと、窓を閉めてルークの傍へとやって来た。そして、小さな声で耳打ちする。
----革命で謀反魔と確認された奴を調べてくれ。
その言葉を聞いた瞬間…ドキッとしてルークの表情が変わる。
酷く真剣で…険しい表情に。
「デーモンには御前が来る前に連絡を入れてあるから、枢密院周辺は確保出来るはずだ。ウチももう揃えてある。後は御前のところと、文化局だけだ。文化局の方は…一応、翠雨に頼むしかないんだがな。まだ話は通してない」
「…革命って…今更そんなこと知ってどうする訳?」
問いかけるルークに、エースは大きく息を吐き出す。
「引っかかるんだ。色んなことがな。結局、今回のことはウイルスは撲滅され、被害は最小限で済んだ。そしてゼノンがいなくなっただけで終わった。だが…最悪、どうなっていたかわかるだろう?」
「…まぁね。ゼノンが抗体を見つけられていなければ…魔界は、滅んでいたかも知れない」
「そう。何処までが最初の目論見だったのかはわからないが…もしも、抗体が見つからなければ、魔界には《赤の種族》と《紋様のない種族》の半分しか残らない。もしかしたら御前はそれでも運良く生き延びていたかも知れないが、それは相手には想定外だと思う。そしてそこには…ダミアン様も、デーモンもいない。統率者のいない国を滅ぼすことは簡単なことだ。そう考えれば…もしかしたらと深読みせざるを得ないだろう?」
「…それはそうだけど…でも、彼奴は…ターディルは、あんたが…」
「そうだ。だが…彼奴の意思を受け継いだ奴が残っているのなら…」
「………」
ルークも大きな溜め息を吐き出すと、その唇を噛み締める。
以前…王都を揺るがした革命の首謀者。ターディル=ラヴォイ。その名前を聞くだけでも、腹が立つ。
ダミアンとデーモンを捕らえ、身位を剥奪して幽閉した。更にデーモンの声を潰し、残されたエース、ルーク、ゼノンも身分を剥奪された。ルークは更に母の形見であり、堕天使の証だった真白き翼を失った。
幸い、全員の身位も元に戻り、デーモンも声を取り戻した。ルークも新たなる蒼黒の翼を手に入れた。だが、何処の局にもターディルの息のかかった大勢の謀反魔が存在したことが明らかになったのだ。
勿論、歯向かった謀反魔は彼等によって一悪魔残らず消されたはずであるが…表には出ず、密かに生き延びていた者がいたとすれば。
「彼奴は…俺に言ったんだ。全ての世界を支配する為に、"入念に準備をして来た"ってな。それが…ずっと引っかかっていたんだ。あの時は彼奴を討つことで精一杯だったが…彼奴を倒した後、あんまりにもあっさりし過ぎているんじゃないか、って言うことが。もしかしたら…俺たちが見逃しているだけで、残党はまだ何処かにいるんじゃないか。それも…魔界だけじゃない。もしかしたら、もう雷神界にも天界にも踏み込んでいるのかも知れない…」
「……だから、ゼノンを失脚を目論んだの?ライデンを…追い詰める為に…?」
「…有り得なくはないんだ。デーモンを徹底的に潰す為に、俺を殺そうとしたくらいだからな。ライデンとゼノンの関係を知っていれば、どうすればライデンを徹底的に潰すことが出来るかは、必然的にわかることだ。ライデンは次期雷帝だ。当然、雷神界は揺らぐだろう。その隙を狙って攻め込むつもりだったのかも知れない。だから俺は、この報告書を作った。仮説だろうが捏造だろうが、そんなことは関係ない。俺たちがまだ見つけていない"真実"を、見つける為の報告書であり…警告書だ」
「…エース…」
エースの眼差しは真剣そのものだった。
これ以上、犠牲者を出さない為に。
その想いを受け、ルークは大きく息を吐き出した。
「…わかった。あんたの希望通りの名簿は用意する。でも…残党を全員見つけ出すのは難しいと思うよ。今まで息を潜めていたんだもの。余程のことがない限り、尻尾を出す訳がない。今回はゼノンのことがあったから文化局の中で動きがあっただけ。しかも、ほんの一部だ」
「それはわかってる。残党を根こそぎどうにか出来る訳ではないことは重々承知だ。ただ、そこから繋がりのある者を見つけることが出来るかも知れない。ウイルスが蔓延した時に確認された不審者も割り出せるかも知れない。犯魔を捕らえることは難しいかも知れないが、手がかりぐらいは見つかるかも知れないだろう?」
「…それで、ゼノンの名誉を護ることが出来るかも知れない、って言う訳?」
それは、先ほどエースがレプリカに送った言葉。
「俺たちは、ゼノンのことには手を出すなと言われているから、直接どうすることも出来ない。だが、帰って来る場所と、仕事と、名誉を護ることは出来るんだ」
思わず小さな溜め息を吐き出したルーク。
確かに、エースの言うことは尤もであると納得せざるを得ない。けれどルークには、どうにも腑に落ちないところも残っている。
「…不満そうだな」
ルークの表情を見て、エースがそう零した。
「…不満と言うか、何と言うか…俺も上手く説明出来ないし、水を差すようで悪いんだけどさ…」
溜め息を吐き出しつつ、ルークはそう前置きすると、続けて言葉を紡ぐ。
「ロイドがゼノンの解任を言い出した意図は?誰かの指示だったと仮定してさ、こんなに直ぐに足が付くようなやり方をして、明らかに捨て駒だよね?それは多分、ロイドだってわかってるだろうよ。自分が罪に問われようとしているこの状況で、それに従った意図がわからない。そこまで絶対的な相手だ、って言うだけなのかな…?どれだけの見返りがそこにあったんだろう…」
「…見返り?」
ルークの言葉に、エースは眉を潜めた。
「そう、見返り。あんたは、自分が不利な状況になることがわかっていても、デーさんからの指示なら無償でそれに従う?」
「……事と次第によるけどな…」
「そうでしょ?あんたでさえそうなんだよ?そこに余程の見返りがない限りは、普通は従えないはずだよ。だから引っかかってるの」
再び溜め息を吐き出すルーク。
「もしも…だよ?例えロイドが捕まったとしても、必ず解放してやるとか、逃してやるとか、罪を問われない方向の約束をしているのなら、審議を覆せるだけの証拠も必要になるし、それなりの身位もないとそんな発言なんて受け入れて貰えないよね…?」
「確かにな。この前のウイルス騒ぎの時に、枢密院でも不審者が確認されている。と言うことは、確実に枢密院にも残党がいるってことだ。だから、ダミアン様が最初に犠牲になった。ダミアン様の近いところにいなければそうそうピンポイントでダミアン様を狙えるはずはない。最悪の状態を考えると…残党は、ダミアン様かデーモンの周りにいる…と言うことか…確かにそこからの指示なら、それなりの見返りはあるのかも知れない…」
眉を潜めたまま、エースも椅子に深く凭れ、腕を組んで想いを巡らせる。
「…枢密院と文化局の間で繋がっているヤツ、か…」
「直接繋がっている必要はないかもよ。そこにワンクッションあるのかも知れない。だから、革命の謀反魔やその線で探るのはかなり難しいって言ってるんだよ」
ルークは冷たくなったコーヒーに口を付ける。
「…ちょっとさ…一名、巻き込みたいヤツがいるんだけど…」
「…は?」
「……明日また来るね。だから、その報告書はちょっと待ってて」
カップをテーブルにおいてそう言うと、ルークはソファーから立ち上がった。
「と言うことで、俺はちょっと野暮用ね」
「おい、ルーク…」
踵を返してさっさと帰り支度を始めたその姿に、エースは怪訝そうな表情のまま。
その顔ににっこりと笑い返したルーク。
「ま、明日ね」
じゃあね。
その言葉を残し、執務室を出て行ったその背中を見送りながら…エースは大きな溜め息を吐き出していた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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