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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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音のない森 4
こちらは、本日UPの新作です
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
7話完結 act.4

拍手[1回]


◇◆◇

 職務終了時間から一時間ほど経った頃、漸くレプリカとテオがルークの執務室へとやって来た。
「済みません、遅くなりまして…」
「いや、大丈夫。俺も仕事してたしね」
 入って来た二名は、既にそこにいたアリスの姿を見ると、一瞬足を止めた。
「…アリス…どうしてここに…」
 思わずそう零したレプリカに、アリスは座っていたソファーから立ち上がると、レプリカに向けて頭を下げた。
「その節はどうも…」
「…ルーク様、これはどう言う…」
 全く訳がわからない、と言う表情を浮かべたレプリカに、ルークは小さく笑いを零した。
「あぁ、これから説明する。まぁ、取り敢えず座って」
 そう言ってコーヒーを淹れに行くと、アリスがすっと先に準備を始めた。
「私がやりますので、どうぞ御話を」
「…あぁ、有難う。じゃあ、頼むよ」
 その場をアリスに任せ、ルークはソファーへと座った。
「じゃあ、ざっと話をするね」
 そう前置きをすると、ルークは昨日二名か帰った後からの話をした。
「…で、ロイドの代わりをアリスにやって貰う為に、あんたたちに軍服と髪の毛を頼んだんだ」
 そう言ってからアリスが淹れたコーヒーに口を付けたルークに、レプリカは怪訝そうに眉を寄せた。
「でしたら、わたくしが…」
「いや、それは駄目だ。あんたは、ゼノンに一番近いところにいたことはみんな知ってるんだ。そのあんたが姿を消したら、警戒するだろう?だから、あんたは通常勤務。その点アリスだったら、ダミ様の隠密使だからね、一般に面は割れてないし、動きやすいだろう?」
「それで…本当に上手く行くのか?」
 今まで黙って話を聞いていたテオが、ルークへと視線を向け、そう問いかける。
「みんなそう言うんだよね。そんなに信頼ない訳?俺の計画」
 小さく溜め息を吐き出したルークは、ソファーに深く凭れる。
「正直、上手く行くかどうかはやってみないことにはわからない。だけど、今はそれしか方法はないんだ。ほら、前にゼノンの"鬼"がいたって言う部屋が、文化局の最下層にあるんでしょ?部屋の中に檻があったってライデンが言ってたし、そこに保護しときゃロイドの身の安全は護れる。ついでにあんたが見張りながら話を聞くことも出来るだろう?最下層の部屋に関しては、あんたとゼノンとライデンしか知らないって言うんだから、この状況ではあんたしかその役目を果たせる奴はいないしね」
「…まぁ…わからなくはないけどな」
 テオは小さく溜め息を吐き出すと、ポケットからハンカチを取り出した。
「…ほら」
「サンキュー」
 ルークはテオが差し出したハンカチを受け取ると、そっと開いて中を確認する。そこには長いブロンドの髪が一本、挟まっていた。
 レプリカも小さな溜め息を一つ。そして、バッグの中から一揃えの軍服を取り出した。
「では、これを」
「あんたも有難うね」
「いえ…」
 レプリカの表情は今一つで…どうも、すんなりと受け入れてはいないようだった。
 だが、ルークがそれを問いかける前に、テオがソファーから立ち上がった。
「で、俺たちの用件はそれだけだろう?もう帰っても良いか?」
「あぁ…構わないけど」
「じゃあ、帰るぞレプリカ」
 テオは隣に座るレプリカの腕を取ると、ソファーから立ち上がらせ、そのまま腕を取ってドアへと向かった。
「ちょっ…テオ!一悪魔で帰れます…っ」
「良いから。送ってく」
 まるでテオに引き摺られるように、レプリカは執務室を後にした。
「……なんだ、あれ…」
 その慌しさに、唖然としているルーク。
「明らかに…敵対視しているんじゃないでしょうかね」
 小さな溜め息を吐き出しつつ、ルークにそう零したのはアリス。
「…何で俺が敵対視されるんだよ…」
 こちらも溜め息を吐き出したルークに、アリスはふっと表情を緩めた。
「いえ、私の方だと思いますよ。まぁ…相手はレイティスですから。彼は、私のことを余り良く思っていないようですしね」
「まぁ…なかなか厳しいかもね」
 以前の様子を思い出し、ルークは小さな溜め息を吐き出す。
 真っ直ぐにゼノンへと向かっていったレプリカには、横槍を入れるようなアリスの行動が気に入らないのだろう。だが、アリスはそんなことには我関せず。常に、マイペースだ。
 にっこりと笑ったアリスは、レプリカから預かった軍服とロイドの髪を挟んだハンカチをしまうと、ルークに一礼した。
「では、私もこれで」
「あぁ、じゃあ、明日頼むね」
「御意に」
 アリスは踵を返し、ルークの執務室を後にした。
 その背中を見送り…ルークは、大きな溜め息を吐き出していた。

 アリスが軍事局の門を出ると、そこに待ち構えていた姿があった。
「…先に帰ったのでは?」
「…話がありまして」
 そう口を開いたのは、先に帰ったはずのレプリカ。その向こうに、テオの姿も見えた。
「ルーク様に…余計な手出しをしないでいただきたい」
「…余計な手出し…ですか?」
 その言葉の意味を察し…アリスは、小さく笑った。
「それこそ、余計な心配では?例え私が傍にいたとしても…あの方は、決してぶれませんよ。貴方が、今までぶれなかったのと同じです。まぁ、だからこそ燃えるんですが…貴方はそうではないようですし。ただそれでは、彼の気持ちにも気付かないでしょう?彼も報われませんよね」
「…何のことですか?」
 怪訝そうに眉を潜め、レプリカはそう言葉を零す。
「御解かりにならないのなら、忘れていただいて結構です」
 そう言ったアリスに、レプリカは眉を寄せたまま溜め息を一つ。
「とにかく、あの方たちの関係を掻き回さないでいただきたい。わたくしが言いたいのはそれだけです。テオ、わたくしは一悪魔で帰れますから、送らなくて結構です」
 そう言い残し、レプリカは踵を返してさっさと帰ってしまった。
 その背中を見送り…テオは、溜め息を一つ。
 そして同じように真っ直ぐ向けたその眼差しで、レプリカを見送ったアリス。
「…彼だけは、諦めた方が無難ですよ。私もそうですが…どうやら、仮面師は筋金入りの頑固者らしいですから。例え報われなくても…直ぐ傍で共に過ごす時間があった以上、貴方に勝ち目はありませんよ」
 その言葉に、テオはほんの少しだけアリスへと視線を向けた。
 アリスは相変わらず、真っ直ぐにレプリカが消えた先を見つめていた。
「…別に、あんたに心配して貰う道理は何もない。俺は…ただ、彼奴の上司として…彼奴が心配なだけだ。それに…俺にも責任の一端はあるしな」
「…一端?」
 僅かに首を傾げ、テオへと視線を向けたアリス。けれど今度はテオの方が視線を落とした為、その視線は交わることはなかった。
「俺が"鬼"の解放を見逃さなければ、少しは事態が変わっていたかも知れない。ゼノンを好きだった奴等は…慕っていた奴等は、多分誰もがそう思うだろう。もしあの時、あぁしていれば。それが叶わぬ願いだとわかっていても、その想いを捨てることが出来ない。彼奴も…その一名だ。もしも自分がゼノンを留める事が出来ていたら、こんなことにはならなかった。多分、ずっとそう思っている。例え、報われない想いでも…彼奴にとっては、ゼノンは一番大事な存在だ。その居場所を護る為に、広い屋敷にたった一名残って待っている。電気もつけず、暖房も入れず…下手をしたら、食事もロクに取らずにぼんやりしているんだ。それじゃ、いつか彼奴の方が精神的に病んじまう。だから…心配なんだ」
「後悔は先に立たず。今後悔したとしても、何も変わりませんよ」
 実に冷静に…そしてある意味冷酷に、言葉を紡いだアリス。けれどその言葉に、テオは顔をあげた。
「あんだたって、ルーク参謀が沈んだ顔をしていれば心配するだろう?例え…あんたがどうにも出来なくても」
 その言葉には、アリスも小さく笑った。
「あぁ、それなら納得です。そうですね、例え何を変えることが出来なくても…どうにかしたいと思うでしょうね」
「まぁ、そう言う事だ。残念ながら、恋愛感情とかそんな高度な話じゃない。どちらかと言えば…みんな、自分の胸の傷を癒す為に…他の奴の心配をするのかも知れないな。御互いの傷を舐めあうと言うよりも、相手の傷の深さが自分とどちらが深いかを比べる為に。どちらが…深く傷付いているかを、確かめる為に」
 テオは小さく笑いを零すと、踵を返した。
「あんたは…せいぜい頑張ってみれば良い。もしかしたら…万に一つの奇跡が起こるかも知れない」
「私はいつでもそのつもりでいるんですけれどね。でも…多分、奇跡は起こりませんよ。私は、決して主を裏切りませんから。それでも、私の気持ちは変わりませんけど」
「…変わってるな、あんたは」
「多分…御互い様、です」
 アリスの言葉にくすっと笑いを零し、テオはそのまま歩き始めた。
「明日、頼むな」
「こちらこそ。宜しく御願い致します」
 小さく頭を下げたアリス。そして、テオとは反対の方向へと歩いて行く。
 勿論…そんな話が繰り広げられていたなど、ルークは知る由もなかった。

◇◆◇

 翌日。始業時間よりもまだ一時間も早い時間だったが、テオは嘗てゼノンがずっと使っていた研究室のドアの前に立っていた。
 鍵は、開いている。そのドアをそっと開けると、研究室の中には既にロイドの姿があった。
 ぼんやりと立ち尽くしたまま…その視線が向いているのは、資料棚。
 エースから聞いたの話では、その資料棚にウイルスの資料と盗難届けが隠されていたと言う。
 その棚を見つめながら…彼は、何を考えているのだろうか。
「…ロイド」
 そう声をかけると、その眼差しが真っ直ぐにテオへと向いた。
「…テオ室長…何か…御用ですか…?」
 余り手入れをしていないのだろう。長く伸びたブロンドの髪を後ろで一つに括ったその顔に戴いた紋様は赤。そして、真っ直ぐに向けられた眼差しは深い青。余り生気を感じない顔をしながらも、その眼差しは強い光を持っていた。
「あぁ、ちょっとね」
 テオはロイドへと歩み寄ると、彼が視線を向けていた資料棚へと目を向ける。
「何を…見ていたんだ?そこに、何かあるのか?」
 取り立てて変わったものは何もない。だからこそ…何を見つめていたのかは、彼にしかわからない。
「…別に、何も…」
 視線を伏せたロイドは、そのまま言葉を続けた。
「それで、御用とは?」
「あぁ…そうだった。ちょっと、付き合って貰おうと思ってな」
「付き合う?何処へです?」
「それは…秘密」
 一瞬小さく笑ったテオは、瞬間的にロイドの身体に魔力を打ち込んだ。
「…っ!!」
 決して、生命を奪うような衝撃ではない。けれど、意識を保つことは難しかった。
 足元へと崩れ落ちたロイド。彼が着ていた白衣のポケットからロイドのIDカードと研究室の鍵を取り出すと、彼を肩へと担ぎ上げた。
「ま、悪く思うな」
 小さく言葉を零し、そのまま研究室を出る。するとそこに丁度現れたのは…長く伸びたブロンドの髪を後ろで一つに括ったその顔には赤い紋様。そして、深い青の眼差しを持った、もう一名の"ロイド"。
「後宜しく」
 テオは小さくそう言うと、手に持っていたIDカードと鍵を"ロイド"の白衣のポケットにそっと入れ、彼が来た方向とは反対方向へと歩き出した。そして廊下の突き当たりにあるドアを開け、中に隠された階段を下りていく。
 "ロイド"はその背中をじっと見つめ、その姿が消えると研究室へと入っていった。

 昼を少し過ぎた頃。副官たる翠雨に呼び出された"ロイド"は、その執務室を訪れていた。
「…御呼びですか…?」
 執務室のドアを開けて中に入るなり、"ロイド"は翠雨にそう問いかける。
「…用があるのはわたしではない。ルーク様、ですよ」
 そう言われて視線を向けたその先に…ソファーに座り、にっこりと笑うルークがいる。
「話は…一通り聞いています。ただ…」
「本当に上手く行くのですか?でしょ?」
「ルーク様…」
 言おうと思っていた言葉を先に言われ、当然困惑顔の翠雨。
「御免ね、みんなにそう言われるからさ」
 くすっと笑ったルークは、翠雨へと視線を向ける。
「不安に思っているのは、あんただけじゃない。俺が計画を持ちかけたみんなが、同じ反応をしたからね。でも、上手く行くか行かないか、じゃなくて…今はそれしか選択肢はない。俺は、そう思ってる」
 そう言い切ったルークに、翠雨は溜め息を一つ吐き出す。
「皆様が同意されているのなら…わたしが反対する理由はありません。ルーク様に御任せ致します」
 翠雨はそう言って、机の引き出しからメモリファイルを取り出すと、席を立ってルークの傍へと歩み寄った。
「御所望の名簿です」
「有難う」
 にっこりと微笑んだままそれを受け取り、ポケットへと入れる。そしてソファーから立ち上がる。
「じゃあ、暫くロイドは借りるから。動きがあればまた連絡する。そっちも何かあったら連絡入れて」
「…御意に」
 頭を下げた翠雨の肩を軽く叩き、ルークは"ロイド"へと視線を向けた。
「じゃ、行こうか」
 声をかけ、"ロイド"を促すと、先に執務室を出て行く。
 翠雨へと頭を下げた"ロイド"も、その後を追って執務室を出る。そしてルークを追いかけ、その隣に立って歩き始めた。
「…これからどちらへ?」
 小さく問いかけた声に、ルークは視線を前に向けたまま答える。
「枢密院。デーさんのところにね」
「…畏まりました」
 答えた声に、ルークは小さく笑いを零した。
「…何か?」
「…いや、ホントに別魔だと思ってね。姿カタチも声も、性別も違うじゃん」
 くすくすと笑う姿に、"ロイド"は溜め息を一つ。
「今更、何を…これが私たちの能力ですから」
「そうだよね。何か改めて実感した」
 周りに聞こえないように、声を潜めてはいるが…その顔と雰囲気までは隠すことも出来ず。図らずも、親しい雰囲気を醸し出していた。

◇◆◇

 ルークと"ロイド"は、そのまま連れ立ってデーモンの執務室の前までやって来ていた。
「デーさん、ルークだけど」
 そのドアをノックすると、中から返事が帰って来る。
『あぁ、どうぞ』
 声に促され、いつものように何の躊躇いもなくドアを開け、そのまま中へと足を踏み入れる。
 だがしかし。そこで目にした姿に、ルークの足が止まる。そして、小さく息を飲んだ。
「…ルーク様?」
 ルークの背中を追っていた"ロイド"は、突然立ち止まったルークに、怪訝そうに声をかける。だが、その声もルークには届いていない。
「…ライデン…」
 その視線の先。デーモンの執務机の端に腰かけていたライデンの姿。
 デーモンと談笑していたのだろう。デーモンの方へと向いていた眼差しが、すっとルークへと向けられる。
 その瞬間。ライデンの目に映ったのは…ルークではなかった。
「……ロイド…?」
 その声に、ルークの背後にいた"ロイド"がふと視線を向ける。そして、二名の視線が交わった瞬間…ライデンは執務机から飛び降りると、真っ直ぐに"ロイド"へと突進して来た。
「ライ…っ!」
 デーモンもルークも止める間もなく、ライデンは"ロイド"の胸元を掴み上げると、今閉まったばかりのドアへとその身体を叩きつけた。
「何でゼノンを見捨てた!!」
 "ロイド"の反論する余地も与えず、悲鳴のような声を上げたライデン。
「何でゼノンを見捨てたんだっ!!何で声を上げてくれなかったんだよっ!!何で…っ!!!」
「落ち着け、ライデン!」
 慌てて背後からライデンを引き離そうとするが、しっかりと握り締められた拳は、"ロイド"の服を掴んだまま離れなかった。
「あんたがもっと早くゼノンに報告していれば、彼奴はいなくならなかったかも知れないじゃないかっ!何で黙ってたんだよっ!何で…ゼノンを見捨てたんだよ…っ!!ゼノンのこと、尊敬してたんじゃないのかよ…っ!!!」
「やめろ、ライデン!」
「離せ…!離してよ…っ!!」
 二名がかりで漸く"ロイド"からライデンを引き離し、ルークが背後から羽交い絞めにする。けれど、その感情はまだ治まる気配はない。
 荒い呼吸を零し、胸元を押さえたまま床へと座り込んだ"ロイド"。その姿に向け、更に声を張り上げる。
「何とか言えよっ!ゼノンを裏切って、それで満足なのかよ…っ!!」
「ライデン!違う!そいつはロイドじゃないっ!だから落ち着けっ!」
 声を張り上げたルークに、一つ、息を飲む音が聞こえた。
 "ロイド"は何とか呼吸を整えて立ち上がると、ライデンに向け、深く頭を下げた。
「申し訳ありません…私は、ダミアン殿下の隠密使でアリス=レイドと申します。訳あってこの格好をしておりますが…ロイドではありません…」
「…アリス…?」
「はい…」
「…御免…」
 やっと力の抜けたライデンをソファーへと座らせ、デーモンはその隣へと座る。
「…大丈夫?」
 未だ、立ち尽くしている"ロイド"へと声をかけると、小さな頷きが返って来た。
「私は大丈夫です。御心配なく…」
「…そう、良かった…」
 小さな吐息を吐き出し、ルークはライデンの正面へと座る。"ロイド"を隣へと促してみたが、それは首を横に振って拒否をした。
「私はここで…」
「…わかった」
 ルークも小さく頷くと、改めてライデンに向かい合った。
「こいつは、レプリカと同じ仮面師なんだ。だから、ロイドと同じ姿だけど"別魔"なんだ。デーさんには今日話そうと思ってたんだけど…まさか、あんたがいるとは思わなくて…御免…」
 頭を下げたルークに、ライデンは首を横に振る。
「…俺も御免…つい、カッとなって…」
 項垂れるように下げた顔を両手で覆い、大きな溜め息を吐き出す。
「まぁ…落ち着いて話をしよう。まず…御前に聞きたいんだが…ロイドを知っているのか?」
 そう問いかけたデーモンの声に、ルークもライデンを見つめた。
「そうだ。ロイドのこともそうだけど…ゼノンを裏切って、って…どう言う事…?あんた…何を知ってるの…?」
 デーモンとルークに問いかけられ、ライデンは顔をあげた。
「…知ってるよ。だって…俺、何度も会ってるし…」
「…会ってる?何処で…?」
 デーモンもルークも、勿論エースも、ロイドの存在は知らなかった。だかが、ライデンが何度も会っているとは思いも寄らなかったのだ。
「ゼノンの研究室。彼奴はいつもそこにいたから」
 ライデンの言葉に、デーモンとルークは息を飲んだ。
「ねぇ…じゃあ、ウイルスのことは…?ロイドも、関わってるってこと…?だから、裏切ったって…そう言う事なの?」
 問いかけたルークに、ライデンは小さく息を吐き出した。
「あのウイルスが盗まれた時…ゼノンは、それに関わってなかった。確かに、ゼノンが手がけたのかも知れない。でも盗まれたあの時は…ロイドが、管理者を任されていたはず…」
「ゼノンが管理者じゃなかったのか?」
 思わず声を上げたデーモンの声に、ライデンは頷いた。
「だって、ゼノンはエースを捜すことに必死で、それどころじゃなかったでしょ?俺もあの時、何度もゼノンの研究室にも執務室にも行ってたから、話は聞いてた。一番近くにいた…一番信用の置けるロイドにウイルスを託したことも。なのに彼奴は、ウイルスが盗まれたことを直ぐにゼノンに報告しなかった。直ぐにそれを伝えていれば、犯魔を捕まえられたかも知れない。でも…彼奴は、口を噤んだままだった。そして今回の騒ぎになった時も、彼奴は…最初から、わかっていたはずだ。彼奴は、俺たちが思っているよりもずっと優秀だよ。自分が管理していたウイルスの特性を忘れるはずがない。例えそれがまだ未確認だったとしても、予測は付いたはずだ。なのに…何もしてくれなかった。ただ黙って、俺たちを観察するかのようにじっと見てるだけで。だから、ウイルスを盗まれたことも、資料も盗難届けも紛失していたことも、全部…ゼノンが背負うことになった。ウイルスの責任者がロイドだったとしても、あの研究室の責任者はゼノンだもん。どうしても、管理責任者が責任を問われる。だから彼奴は自分から……」
 膝の上で握り締めたその手が、とても切ない。
 ライデンは…全部、知っていたのだ。ゼノンが罪を着せられたであろうことも…その所為で、居場所を奪われたことも。
 大きな溜め息を吐き出したのは…その執務室にいた全員。
「…何で、そんな大事なことを今まで黙って……」
 そう言いかけたルークは、そこで口を噤んだ。そして、大きく首を横に振る。
「…御免。違うよな…今のは俺の失言。俺たちが、あんたに何も聞かなかったんだ…知ってると思わなかったこともあるけど…あんたを巻き込んじゃいけない。その思いだけが先走って…あんたに何も説明もしなかった…俺たちの責任だ…」
 項垂れるルークの姿に、ライデンも首を横に振った。
「違うよ、ルーク…ゼノンは…全部わかった上で、自分の責任だって認めて出て行ったんだ。ゼノンに、戻って来て貰いたい気持ちはあるよ。でも…ゼノンがロイドに罪を問いたいのかどうか、俺にはわからなかった。だから俺も、敢えて何も言わなかった。それが良いことなのか、駄目なことだったのかわからないけど…言えなかったのは俺だもん。あんたたちが、俺のことを心配してくれる気持ちは良くわかってる。だから…もうそんな顔しないで…」
「ライデン…」
 ライデンは再び大きく息を吐き出すと、再び口を開く。
「ロイドのことは…ゼノンが知ってても何も言わなかったってことだけはわかって。どうしたら良いのか俺にはわからないから…これ以上、口出しはしない。ただ、俺が知ってることは全部話した。後は…デーさんとこで大人しくしてるから…アリスも御免ね…」
「ライデン殿下…私のことは、御気になさらずに。大丈夫ですから」
 流石の"ロイド"も、浮かべている表情は複雑だった。
「…有難うね」
 そう言って唇を噛み締めると、ソファーから立ち上がって窓を開け、背中に翼を構えて飛び立って行ってしまった。
「ライデン…っ」
 思わずソファーから腰を上げたルークを、デーモンが黙って制した。
「…良いの?ライデン一悪魔にして…」
 心配そうな表情を浮かべるルークに、デーモンは大きく息を吐き出すと小さく笑った。
「彼奴は大丈夫だ。後で吾輩がちゃんとフォローするから」
「…デーさん…」
 再びソファーに腰を下ろしたルークだが、その心配そうな表情はどうにもならない。
 けれどデーモンは、落ち着いた表情を浮かべていた。
「彼奴な…魔界へ来るのが、これで最後になるかも知れないって言っててな…王位継承の現実が段々近付いて来て…彼奴なりに、思うところは沢山あると思う。だが…これは魔界のことだと…自分が関わるべきではないと割り切ることを覚えなければ、雷帝は勤まらない。次期雷帝に、魔界のことまで背負わせることは出来ないだろう?だから…そっとしておいてやろう。後の事は吾輩に任せろ。それが、吾輩の役目だからな」
 デーモンはそう言うと、ソファーから立ち上がり、机の引き出しからメモリファイルを取り出した。
「これは、エースから頼まれていた吾輩の分だ。ゼノンがどう思っていようが…吾輩たちは、今出来ることをきちんとやろう」
 そう言って、ルークの手の中にそれを押し込む。
「御前も、乗り越えろ」
「……デーさん…」
「また夜にでも連絡するな」
 にっこりと笑ったデーモン。その胸の中に、今までどんな想いが渦巻いていたのか…それは、ルークにはわからないことだった。けれど、何かを乗り越えたのだと言うことだけはわかった。
 だから、笑っていられるのだと。
 ルークは、未だ消化出来ない想いを抱えたまま、"ロイド"と共に自分の執務室へと帰って行った。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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