聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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音のない森 5
デーモンの執務室を出てから、真っ直ぐに自分の執務室へと戻って来たルークと、黙ってそこについて来た"ロイド"。
そのドアを閉め、外部と完全に遮断されると、ルークはぐったりとしたように自分の椅子に腰掛けた。
「これから…どうされるおつもりですか…?」
問いかけた声には、僅かに戸惑いの色も伺えた。ライデンの発言は、顔には出さないがそれだけ衝撃的だったのだ。
「…どうするかな…って言うか、取り敢えず…デーさんの言葉じゃないけど、俺たちが出来ることはやらないとね…」
そう言って、思い出したように上着のポケットから二つのメモリファイルを取り出した。
「エースの分は夕べ確認した。俺のも出来てる。後は、デーさんの分と翠雨の分…それで、凡その面子はわかるんだけど…そこから誰と繋がるのかは、想像もつかないな…」
小さな溜め息を吐き出したルークは、椅子から立ち上がるとコーヒーを淹れに行く。
「私が…」
「いや、良いよ。気分転換にね」
立ったままの"ロイド"をソファーへと促し、ルークは二つのカップにコーヒーを淹れる。そして、"ロイド"の前にカップを一つ置いた。
「あんたは…さっきの話聞いてて、どう思った…?」
ふと、問いかけた言葉。それは、どんな答えを望んでいるのだろう。そう思いながら、"ロイド"はルークの顔を見つめた。
「…何が正解なのか…それは、私にもわかりません。ただ…全員が、何処かで選択肢を間違えたのだと思います」
「…そう…だよね、やっぱり…」
"ロイド"の答えは、ルークにとって正解だったのだろうか。小さく溜め息を吐き出し、自分のカップを持ったまま椅子へと戻る。
「ライデンの話を聞いた時…俺も、そんな気がした。ゼノンは、ロイドに罪を問わなかった。俺たちは、ライデンの想いを蔑ろにしてた。ライデンは…俺たちみんなに、遠慮した。みんな…何処かで一歩、踏み間違えたんだ。きっかけが何だ、とか、誰の責任だとか言う問題じゃなくて…みんな、素直に言えない何かが胸の中にあったのかも知れない…」
「そうですね。誰かが誰かに気を使って…相手を思うが故に、必要のない遠慮が生まれたんだと思います。ですが…それがきっと、"仲魔"と言うシガラミなんだと思います」
「…そうかもね…」
言われている意味はわかる。そして、それを実感している。ただ、図星を突かれても腹が立たなかったのは…多分、"ロイド"が遠慮なく、はっきりと言ってくれたから。
「…俺ね…正直、色々迷ってたんだ。ゼノンがいなくなって…ただ、信じて待つだけのライデンとレプリカに、どう接して良いか。はっきり真実を告げるべきなのか…黙ったまま、見守っていれば良いのか。多分…そんな遠慮もあって、何処かで歪みが出たんだろうな。大事に思う気持ちは同じでも…心の奥でどう思っているかは、口にしないと伝わらない。だからみんな、何処かで何かを間違えたんだ。でも今更それに気付いたところで…戻る道は見えない。だから、前に進まなきゃいけない。それも…今はちょっと辛いな…」
それが…ルークの、正直な気持ち。
ゼノンがいなくなったあの夜…ダミアンに吐き出した、正直な思い。半年以上経った今でも自分の中で答えを出せずにいる。
思い切り踏み込めないのは…やっぱり、相手を思うから。けれど、その躊躇いが、何かしらのきっかけだったのだろう。
そんなルークの姿を見つめていた"ロイド"は、暫く思いを巡らせてから小さく吐息を吐き出すと、言葉を紡いだ。
「辛いなら…辛いと正直に言えば良いんです。貴殿が一番信頼する悪魔に…貴殿をきちんと受け止めてくれる悪魔に、全部吐き出せば良いんです。答えを求めるのではなく…ただ、聞いて貰うだけで。多分、貴殿にとってそれが最適な行動だと思いますよ」
「…アリス…」
暫く、"ロイド"の姿を見つめていたルーク。だがやがて、くすっと笑いを零した。
「何か、見慣れないな。今はアリスの声なのに、姿が違うし。変な感じ」
「…一度仮面を外したら、もう同じ悪魔にはなれないので仕方ありません。本来なら…私も、自分の姿で貴殿と向き合いたいのですけれどね」
"ロイド"も小さく笑いを零す。そして、微笑んだまま、小さな吐息を零した。
「やはり…貴殿は笑ってらっしゃる方が似合います。ですが、その為には…貴殿の心を癒せないと駄目ですね。貴殿は安らげる場所があるから…笑えるんですね」
それが、何を指す言葉なのか。改めて突きつけられ…ルークも再び笑いを零した。
「まぁ…倖せ者だと、実感してるよ。でも…それが一名だけ、って訳じゃないしね。俺は、あんたにも随分理解されてるんだって実感したよ。それに、あんただって、前に比べたら随分柔らかくなったじゃん。ちゃんと笑えてるよ?」
「そうですか。少しは成長したんですかね」
本来なら…しつこく纏わり付いて、疎まれても仕方のない立場である。だがルークは、その想いに応えられないと言いつつも、その存在をしっかり受け止めてくれている。拒否されないだけではなく、こうして頼りにされることが、とても心地良い。そう思えることが…とても、嬉しいと思える。それだけで、心も柔らかくなって来ているのだろうと。
「ちょっと元気出たわ。有難うな。もう一度…考えてみるわ」
そう言って笑ったルークの言葉に、"ロイド"も小さく微笑んでいた。
文化局の最下層のとある部屋。そこで、テオは連れて来たロイドが目覚めるのを待っていた。
時間は、もう直夕方になる。まぁ、地下のこの部屋では外の明るさで判断が付かないのだから、時計だけが頼りなのだが。
数時間、柵の向こうのベッドで眠り続けるロイドを、椅子に座ったまま黙って見つめていたテオ。その間、彼なりに色々なことを考えていた。
エースから聞いたこと、ルークから聞いたこと。そして…アリスから言われた言葉も。
自分は…本当は、何の為にこうして動いているのか。そして、誰の心の傷と比べようとしているのか。
大きな溜め息を吐き出した時、ロイドが小さく身動いだ。
「…ここは…何処だ?」
目を開けたロイドは、その見覚えのない場所に、小さくつぶやきを零した。
身体を起こし、周りを見る。地下の一室。ベッドの上にいるが…ドアとの間に鉄柵があり、その中に閉じ込められているらしい。そして、その柵の向こう…ドアの近くの椅子に腰掛け、こちらを見つめるテオを見つけた。
「おはよう」
小さく笑いながらそう言ったテオに、ロイドは眉を寄せた。
「…テオ室長。これは一体どう言うことです?」
慌てることもなく、冷静にそう問いかける声。
「どう言うって言われてもな。俺は上からの指示で、あんたを保護しただけだ。この場所は、数人しか知らない。それに、この鉄柵だ。安全だろう?」
「保護…ですか…」
「そう。それに、あんたに聞きたいこともあるしな」
テオはそう言うと、椅子から立ち上がって傍へと歩み寄る。そして鉄柵の前で足を止め、真っ直ぐにロイドを見つめた。
「あんたにとって…ゼノンは、どう言う存在だった?」
問いかけた声は、とても冷たい。
「どう言う、と言われましても…上司ですよ。御存知でしょう?」
冷静にそう返すロイド。その言葉に、テオは小さく笑った。
「なるほどね、ただの上司か。なら…裏切ったところで、そんなに胸も痛まない、ってことか」
「…何が仰りたいんです?」
テオに向けた眼差しに、鋭い光が宿る。当然、テオもそれを見逃すはずはない。
「言われなくたってわかってるだろう?それとも、はっきり言って欲しいのか?」
その言葉に…ロイドは大きく息を吐き出す。
「まぁ…何となくわかりますよ。このところ、ずっと誰かに見られているような気もしていましたし。ですが…ゼノン様は、自分の意思で出て行かれたんです。それを現実として受け止めるのも部下の務めなのでは?闇雲に帰還を願い、いつまでも局長不在と言うのは、どうかと思う。わたしはそう言っただけのこと。それが謀反になるとでも?わたしが、ゼノン様を裏切ったと言う証拠になるとでも…?」
「確かにな。あんたの言うことは尤もだ。それだけじゃ、あんたが謀反魔だと言う証拠にはならない。ただ…あくまでもそれは、表向きだ」
テオの口元に浮かんでいる嘲笑。明らかに、天邪鬼である彼が見せた顔、だった。
「あんたがここにいる間、あんたに化けた奴が身代わりで動いてる。あんたには想定外だろうが、あんたが厄介者だらけだと思っている魔界の上層部と懇意にしている姿は見られているだろうな。もし、あんたの後ろに本当の黒幕がいるのなら…あんた、消されるよ。そいつ等にとっての謀反魔、としてな」
「………」
その言葉に、ロイドは僅かに息を飲んだ。
勿論、本当に黒幕がいるのかどうか、テオにはわからない。ただ、その可能性は無きにしも非ず。だからそのつもりで回りは動いているはず。
「…正直な、俺はあんたがどうなろうと関係ない。罪を問うつもりもない。全部、もう過ぎたことだしな。あんたに罪を問えばゼノンが帰って来るって言う訳でもない。保護しろ、って言われたから保護はしたが、あんたを護る気はさらさらない。それだけは覚えとけよ」
そう言ってくすっと笑いを零すと、テオは部屋から出て行った。
そこに残されたロイドは…ただ黙って、ベッドの上に座っているだけだった。
地下の部屋を出たテオは、そのまま自分の部署へと廊下を戻っていた。
その道すがら…ふと、すれ違った一名の悪魔。
大勢の悪魔が働いているのだから、取り立てて気にする必要はなかった。
ただ…ふと何かを感じて、思わず足を止めたテオ。そして、すれ違った相手を振り返る。
そこに見えたのは…濃茶色の短い髪と、マントを纏った灰色の軍服。それは、枢密院の軍服に他ならない。
「…誰、だ?彼奴…」
勿論、色々な局の悪魔が出入りしているのだから、枢密院の軍服を見ても不思議はない。ただ…奇妙な何かが、テオの意識に引っかかったのだ。
振り返ることもなく、その姿は廊下の角を曲がって消えた。
テオは暫くの間、その廊下の先を見つめたままだった。
その日の職務が終わると、デーモンは真っ直ぐに屋敷へと戻って来ていた。そして、先に戻って来ているであろうライデンの部屋のドアをノックする。
『……はい?』
「吾輩だが…良いか?」
『…どうぞ…』
返って来た返事に、デーモンはドアを開ける。部屋の中へと目を向けると、窓辺に寄せた椅子に反対向きに座り、そこに寄りかかって外を眺めているライデンがいた。
「御帰り」
デーモンに視線を向けぬまま、そう言葉を零したライデン。
「あぁ、ただいま。機嫌はどうだ?」
その背中に向け、そう言葉を投げかけたデーモン。どう見ても…まだ、燻っているのはわかっているのだが。
「…俺さ…良いのかな、このまま雷帝継いで…」
溜め息と共に吐き出した言葉に、デーモンはくすっと笑いながら、ベッドの端に腰を下ろした。
「決まったんだろう?継承式の日取り。だから、魔界に来たんじゃないのか?それこそ…最後のつもりで」
「…知ってたんだ…」
「ダミアン様から聞いたんだ。急に戻って来たから、何かあるんじゃないかと思ってな」
その言葉に帰って来たのは、大きな溜め息。
デーモンがダミアンから聞いたのは、ライデンの王位継承式の日取りが決まった、と言う話。勿論、直ぐに…と言う訳ではない。まだそこには数年はあるのだが…やることは山ほどあるのだから、日取りが決まってしまえばあっと言う間。のんびりと魔界へ来ることも、もう出来なくなるだろう。だからこそ、最後の休暇なのかも知れなかった。
勿論、ゼノンがいない状態なのだから、決して楽しい休暇ではない。けれど、何処か未練を断ち切ろうかとしているようなその姿は、デーモンも気にはなっていたのだ。
「御前が雷帝を継がずに、誰が継ぐって言うんだ?立派な雷帝になると、ゼノンと約束したんだろう?」
「……そうだけど…」
ライデンの口から零れるのは、溜め息ばかり。
「…今回のことでさ…思い知ったんだ。俺は…もう、魔界と関わっちゃいけないんだって…昔と同じ感覚じゃ駄目なんだ、って。だから、あんたもルークも、何も言わなかったんでしょ?」
その言葉を聞きながら、デーモンもこっそりと溜め息を一つ吐き出す。
自分一名だけ、除け者にされている。ライデンはそう思っているのだろう。そこにはフォローしてくれるゼノンはいない。全部一名で受け止めなければならないのだ。
そんな想いを察し、ちょっと考えてから、デーモンは口を開いた。
「…馬鹿だな、御前は。離れていたって…仲魔、だろう?」
「…デーさん…」
ライデンの視線が、デーモンへと向いた。不安げな…寂しそうな、気弱な眼差し。
だから敢えて、デーモンはにっこりと微笑んだ。
「今回の件は…まだ何もわからない。我々も、予測の段階でしかないんだ。エースとルークの間では何か少しは話は進んだみたいだが、吾輩だって、今日詳しい話を聞いたんだ。御前だけ除け者にしている訳じゃないし、御前のおかげで少し前に進んだようだ。ただ、御前にもしものことがあったら困るのは当たり前だろう?」
「…でも…」
未だ、その表情は暗い。
「ルークはな…ずっと、迷っていたみたいだ。ゼノンがいなくなった時にな…御前が絶望を味わうことを、回避させるべきなのか、どうなのかと。信じていた相手に裏切られた気持ちは、多分ルークが一番良くわかっているんだ。だから…迷っていたんだ。御前が、大事な仲魔だから」
デーモンはあくまでも、ダミアンから聞いただけだが…それでも、ルークの気持ちは痛いほどわかっていた。
「今回のことを、御前に何も伝えられなかったのは…御前がゼノンを想う気持ちがまだ強いだからだ。勿論、諦めろとか、忘れろとか、そう言う事を言っているんじゃないぞ?御前がゼノンのことを誰よりも想っているのに、その傷を穿り返すようなことを御前には伝えられないと思ったんだろう」
話を聞きながら、ライデンは唇を噛み締めていた。
そして…暫く黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「大丈夫。ルークの気持ちは…良くわかってる。彼奴、変に気ぃ使うからね…」
そう言って、一息付く。そして、再び言葉を続けた。
「…俺…今回の休暇で…けじめをね、付けようと思って来たんだ…」
「…けじめ?」
僅かに首を傾げたデーモン。その姿に、小さく頷きを返す。
「雷神界に戻ってから…ずっと、考えてた。ゼノンが…黙って出て行った理由をね。多分…俺に言えないことは、今までにも沢山あったんだと思う。それを全部自分で消化して来たけど…今回は、限界だったのかな、って…俺が何も知らなかっただけで、ゼノンはきっと…沢山苦労してたんだと思う。俺たちの関係をずっと迷ってたのが、その証拠でしょう?好きでいてくれる気持ちは凄くわかる。愛されているのも、物凄くわかる。でも…結局、俺が求める答えと、ゼノンが求める答えは違った訳でしょ?俺の為、俺の為、ってみんな言うけど…そんなこと言われたら、俺は何も出来ないじゃん。俺が、ゼノンを護りたいと思うのは駄目なの?周りがどんなに反対したって、俺が全力で護ってやるから、って…それは無謀なの?俺が、雷神界の皇太子だから?だから…みんな、俺には受身でいろって言うの…?護られることに甘んじろって言うの…?」
哀しそうに歪んだその顔に、デーモンは溜め息を一つ。
「そう言う事じゃない。だが…ゼノンはゼノンなりに、御前の立場を一番気にしていたんだ。雷神界を継いだ後、御前に不利な状態だけは絶対に駄目だと。雷神界で謀反魔を出さない為に。彼奴は根は不器用だから…その想いが、食い違ったんだろう。だが、だからけじめを付けるのか?御前が自ら…ゼノンとの関係を清算すると?」
「…そうだよ。そうするしか…ゼノンは帰って来ないでしょ…?」
「ライデン…」
「俺が…諦めれば良い話なんでしょ…?そうすれば何の問題もないんでしょ?だったら…もう、諦めるから…」
「…そんな、哀しいこと言ってくれるな…」
きつく唇を噛み締め、俯くライデンに、デーモンは深い溜め息を一つ。
「そう言う問題じゃないだろう?御前が諦めれば、ゼノンが帰って来るのか?今まで通り、局長に戻って、元の生活に戻るのか?違うだろう?」
「じゃあ、どうしろって言うのさっ!俺はゼノンの為に何もしてやれない…何をすることも許されないじゃないかっ!探しにもいけない、協力も出来ない…どれだけ想っていたって、帰っても来てくれない…っ!このまま待ってたって、一緒にもなれない!なのに…このまま耐えろって言うの…?黙って、大人しくしてろって言うの?俺の気持ちは…どうしたら良いのさ…たった独りで、それに耐えろって言うの…っ!?」
声を上げたライデンは、目に一杯の涙を溜めている。それでも、泣くまいと唇を噛んでそれを堪える。
そんな姿を前に…デーモンは、目を伏せた。
「吾輩は…待っていたぞ。エースが戻って来るのを…ただ黙って、じっと、待っていた」
「………」
昔を思い出すようにそう口にしたデーモン。
それは…デーモンがエースの魂を殺したあの時のことに他ならない。
あの時…デーモンは、確かにただ黙って、いつかエースが再び好きになってくれることを待っていた。自分から過去の記憶を口にすることも出来ず、嫌われる一方の中で…ただ、信じて待っていた。そして、その想いが報われたのだ。
ライデンも勿論、その時のデーモンの辛さはわかっていた。けれど…。
「でも…エースは、そこにいたじゃん…」
小さくつぶやいた、ライデンの声。
「ゼノンはいないんだ…嫌われたって、近くにいるなら、いつかまた好きになってくれるかも知れないって、希望も持てる。でも俺は…全部、否定されてんだよ!?傍にいることも、この先の未来も、全部っ!ずっと、一緒にいるって…約束したのに…ゼノンは俺を置いていなくなったんだよ…っ!?信じて待っていれば報われるって問題じゃないじゃん!」
そう吐き出したその顔は、とても苦しそうで。溢れた涙は、幾筋にもなっていた。それでも真っ直ぐにデーモンに向けた眼差し。
「心配してくれる仲魔に囲まれてたあんたとは違う!俺は…誰にも、縋ることなんて出来ない…どんなに苦しくても、辛くても…誰も、支えてなんかくれない…あんたたちが、魔界に関わるなって言うから…っ!誰も…助けてなんか、くれないじゃないか……」
ぽろぽろと涙を零し、悲鳴を上げるその心をさらけ出したライデンを、デーモンも悲痛の眼差しで見つめていた。
今まで、仲魔として共に過ごして来たはずなのに…いつの間にか、大きな壁がそこに出来ていた。否…元々属する世界が違うのだから、それは最初からあった壁のはず。けれど、それを壁だと思わなかったのは…仲魔でありたいと思う気持ちが、共にそこにあったから。
けれど今、ライデンの王位継承が決まり、魔界と関わるなと再び壁を作ったのは…他でもない、デーモンたち。自分たちも…ライデンを傷付けるだけ傷付けて、見捨てたのではなかろうか。
大きく息を吐き出したデーモン。その金色の瞳も、赤く潤んでいる。
自分たちまで…このまま、ライデンを放り出す訳には行かない。
大事な…仲魔、だから。
「それでも…吾輩たちは仲魔だろう…?御前は来ることが出来ないかも知れないが…辛かったら、吾輩が雷神界まで会いに行くから。ちゃんと、支えてやるから…だから、もう少し、信じてやってくれないか…?せめて、ゼノンが見つかるまで。彼奴の意思を、きちんと確認するまで」
「…デーさん…」
腕を伸ばし、ライデンを抱き締めたデーモン。
「一番長い付き合いだろう…?吾輩を信じろ。吾輩がいるから…諦めるな…」
ライデンはデーモンの肩口に顔を埋める。肩を濡らす涙と、押し殺したその嗚咽は…デーモンが吐き出した想いを…仲魔の絆を、思い出していた。
出会ったばかりの頃も…自分を心配して、わざわざ雷神界まで来てくれた。だから…デーモンの言葉は、決して嘘ではないのだと。
「…ホントに…来てくれる…?」
デーモンに身を委ねたまま小さくつぶやいた声に、頷きが返って来る。
「…あぁ…必ず行くから…何を差し置いたって、駆け付けるから。だから…御前は、独りじゃない」
「…デーさん…」
ライデンも、デーモンの身体に腕を回し、しっかりと抱き締める。その背を、デーモンはポンポンと軽く叩いた。
「遠慮するなよ」
「……うん…有難うね……御免ね…」
久し振りに感じた、暖かい温もり。最愛の恋悪魔の温もりではないけれど…仲魔の優しさと有り難味を感じ、それはライデンにとって、確かな勇気となった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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筋金入りのオジコンです…(^^;
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