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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Disaster 3
こちらは、以前のHPで2004年01月11日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(勿論DxAですが、ダミアンxルークもあります。
でもこのシリーズのメインはRXです…多分/^^;
7話完結 act.3

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◇◆◇

 時同じ頃の雷神界。
 眠っているライデンの傍に付いているのは、フィード。その表情はとても思い詰めていて、彼もまた、胸を痛めていることは見て取れた。
 もしも自分が、もっと早くあの悪魔の…"リーファ"の正体を察していたら。そうすれば、自分が犠牲になってでも、"彼の悪魔"の身を護ることも出来たかも知れない。そうすれば、大事な主の心を更に傷つけることもなかったはず。そう思うと、苦しさで胸が張り裂けそうだった。
 唯一の望みは、同じ雷神界に、主の仲魔…エースがいたこと。きっと、"彼の悪魔"を救ってくれる。きっと…主の心の傷を癒してくれる。
 それは、フィードの切なる思いだった。
 そんな思いを胸に抱いていた時、ふとドアがノックされた。
「はい…」
 そのドアを開けると、そこにはエースが立っていた。
「…ライデンは?」
「まだ…眠っております…」
「…そう、か…」
 エースはフィードの促されるままに、部屋の中へと足を踏み入れる。
 眠っているその顔は、未だ穏やかではない。
 手を伸ばし、涙が流れたその跡に指先を触れる。
「…悪かったな。俺がいながら…護ってやれなくて…」
 それは…多分、ライデンだけに言った言葉ではなかった。ずっと苦しそうな表情をしているフィードに対しても、放った言葉だった。
 そして何よりも…ゼノンを一名にしてしまった自分自身への、後悔の言葉。
「……あんたの所為じゃない…」
「…ライデン…」
 ゆっくりと、ライデンが目を開けた。そして、エースを見つめた。
「…御免ね…俺は…大丈夫、だから…」
 そう言って、ライデンは身体を起こした。
「…ゼノンは…どうなったの…?」
 しっかりとした意志を持った眼差しは、その答えが最悪であったとしても、ある程度覚悟しているようにも思えた。
 ライデンは、全てを思い出したのだ。
 エースはベッドの端へと腰を下ろすと、小さく息を吐き出した。
「…あぁ、生命は何とか助かった。だが…魂が、行方不明だ」
「…行方不明って…どう言う事?」
 そう問いかける表情が、僅かに歪んだ。
「言葉の通りだ。肉体は、まだ生きている。でも、魂が見つからない。恐らく…ゼノンを貫いたあの剣によるものだろうが…覚えているだろう?"錬叛刀"のこと…」
 ゆっくりと言葉を紡ぐエースの口元をじっと見つめていたライデンは、僅かに顔を上げた。
「…あの剣は…"錬叛刀"なの…?」
「いや。"錬叛刀"は魔界にちゃんとあった。それは、確認済みだ。だから、良く似ている別物、だ。だが…良く似ていると言うことは、同じような能力を持っているのかも知れない。それを確認する為に、デーモンとルークが魔界で動いてくれている。"錬叛刀"を持ってこちらに向かうそうだ。俺もこちらで、色々と推察はしてみたが…まだまだ謎だらけだ」
 状況を全て消化するには、何より時間の流れが早過ぎる。魂を失ったゼノンに残された時間は、刻々と迫って来ているのだから。
 エースの表情でその辺りの現況を察したのだろう。大きく息を吐き出したライデンは、ゆっくりとその口を開いた。
「…必ず…ゼノンを、助けるから…」
「ライデン…」
「正直ね…ずっと、迷ってたんだ。デーさんには、けじめを付けたら婚約するって言ったんだけど…ホントにそれで良いのかどうか。ゼノンが俺を必要としていないのなら、俺が縛り付ける訳にはいかない。そう思って、別れたんだ。雷神界に立ち入りを禁じて、もう二度と会わないつもりだった。でも…方法は強引だけど、ゼノンは来てくれたじゃん。もう一度逢いに来てくれた。俺を、護ってくれたんだもん。だったら俺だって、ちゃんと…自分に素直にならなきゃいけないと思った…もう一度ちゃんと…ゼノンと、話さなきゃいけない。その為には、助けないと。だから、エース…協力して。御願い……ゼノンを…助けたいんだ…」
 上掛けを握り締め、目に溜めた涙を零さないように唇を噛み締め、エースを見つめるその姿に…エースは小さく微笑んだ。
「あぁ。そんな顔しなくたって、幾らでも協力するから。俺だけじゃない。デーモンも、ルークも、ダミアン様も。みんな、御前たちのことを心配していたんだ。だから、必ず助けよう」
「…有難う」
 袖口で目元を拭い、ホッとしたように笑ったライデンの顔は、以前の穏やかな微笑みに戻っていた。
「でね……俺、天界に行って来ようと思うんだ」
「天界へ?どうして?」
 突然の申し出に、エースが首を傾げるのもわからないではない。
「…呼ばれているような気がするんだ。誰かが、俺を呼んでいる、って…」
 僅かに視線を伏せ、そう答えが返って来る。
「…今回のことに関して、と言うことか?」
「多分、ね。妙な胸騒ぎがするんだ。だから…」
「まぁ…御前がそう言うのなら、反対はしないけどな」
 そう答えたエース。
「こちら側の現状は、デーモンとルークが来るまでは何も変わらない。さっきデーモンから、ルークと共に"錬叛刀"を持ってこちらへ来ると連絡が入ったとは言え、いつになるかは俺にもわからないしな」
「だったら、こっちはあんたに任せる。俺は…待ってる時間が勿体無い」
 真っ直にエースに向けられた眼差しは、まさに雷帝に相応しい。けれどそれよりも、今は…恋悪魔を取り戻す為に、己を奮起させているようにも思える。その健気さに、エースは小さな笑いを零した。
「わかった。俺はここで待機しているから。何かあったら、直ぐに連絡を入れろ。出来る限り協力するから」
 彼なら、大丈夫。
 そんな思いを込め、エースはライデンの頭をくしゃっと掻き混ぜた。それに答えるかのように、ライデンは小さく微笑んだ。
 そして、支度をする為にベッドから降り、着替えようと部屋着を脱いだ時。その視線が、ふと自分の胸元に向いたその瞬間。
「…ない…ゼノンのペンダント…っ!」
「どうした?」
 慌てて、自分の首元を弄る。その、徒ならぬ雰囲気に、エースも思わず問いかける。するとライデンは、急に泣き出しそうな顔で声を上げた。
「ゼノンのペンダントがないっ!!」
「ゼノンのペンダント…?」
 怪訝そうに眉を寄せたエースに、フィードが言葉を続ける。
「ずっと、ライデン様がつけていらした水晶の付いたペンダントです。ゼノン様がいなくなられた時に、置いていかれたものだと…」
「あぁ…」
 エースの記憶にも、そのペンダントは残っていた。
「確かにつけていたんだな?」
 パニックになりそうなライデンを宥めるように、エースが問いかける。
「外す訳ないじゃん…っ!!ゼノンが帰って来てくれるように願掛けして……っ」
 声を上げたライデンが、ふと口を噤んだ。
 大事なペンダントを失くしてしまったら…ゼノンは、助からないかも知れない。
 その脳裏を過ぎった言葉を振り払うように、ライデンは大きく首を横に振る。その拍子に、溢れていた涙が一筋、零れ落ちた。
「…ゼノンは…助かるよね……?ねぇ、エース…っ!ゼノンは助かるよねっ!?」
 エースの服を掴み上げ、声を上げたライデン。その悲痛な表情は、見ている方も胸が締め付けられる。
「…大丈夫だ。だから、落ち着け」
 小さく溜め息を吐き出し、ライデンの両腕をそっと掴んだ。
「いつまで、つけていた記憶がある?」
 そう問いかけられ、ライデンも大きく息を吐き出す。そして、記憶を辿る。
「…ゼノンが…ここに来る前まで。俺、ここで見てた…」
 その記憶を裏付けるように、フィードも口を開く。
「わたくしも覚えております。若様は、ベッドの上で、御自分の胸元からペンダントを出されて見ておられました…」
「じゃあ、その後、か…」
 エースは小さく溜め息を吐き出す。
「もしかしたら…雪の中で倒れた時に、鎖が切れたのかも知れません。そうでなければ…若様が自ら外すことはないですから…」
 フィードはそうつぶやくと、ライデンへと視線を向ける。
 不安そうに潤んだその眼差しの前、これ以上じっとはしていられなかった。
「…若様。わたくしが必ず、見つけて参ります。ですから、若様は…天界へ…一刻も早く、ゼノン様を…」
「フィード…」
「本来なら…若様を護るべきだったのは、わたくしでした。わたくしが気が付かなかったばかりに…ゼノン様がこんなことに…ですからせめて…わたくしが、ペンダントを探します。他に…わたくしが、若様の為に出来ることは……」
 そう言って、フィードはきつく唇を噛み締める。
 何よりも大切な主。自分の不手際の所為で、主の大事な恋悪魔が、生命の危機にあるのだ。だから…ずっと、責任を感じていた。
 他に、何も出来ないのなら…せめて、主の宝物を捜し出さなければ。
「ライデン。ペンダントはフィードに任せろ。俺も、デーモンとルークを待っている間に手伝って捜すから。だから御前は、天界へ行って来い」
「エース…」
 不安そうな眼差しを向けるライデンに、エースは小さく笑った。
「大丈夫。ペンダントは、必ず見つけてやるから」
「…わかった…」
 大きく息を吐き出し、ライデンはフィードへと視線を向ける。
「…頼むよ、フィード」
「…はい。必ず…見つけます」
 再び大きく息を吐き出すと、ライデンは服を着替えた。
「行って来る」
「気をつけて」
  ライデンは小さく頷くと、エースとフィードが見守る中、天界へと向かって出発したのだった。

◇◆◇

 天界へとやって来たライデンは、その空気が何かいつもと違うような気がしてならなかった。
 何かに呼ばれたような気がしてやって来たものの、それが誰なのかもわからない。ただ想いに任せて来界してしまったが、これから何処へ行けば良いのかもわからず、誰を訪ねたら良いのかもわからない。身分柄、そうそううろうろする訳にも行かず…困った挙げ句に訪れたのは、ラファエルの執務室、だった。

「ライデン陛下…一名でいらしたのですか?一体、どうなされたのです…?」
 突然訪れて来た雷帝に、執務室の主であるラファエルは目を丸くした。当然と言えば当然の姿であるが。
「うん、ちょっと…ね」
 思い詰めた表情のライデンに、その何かを感じたのだろう。まるでライデンを落ち着かせるように小さく微笑んだ。
「…とにかく、御座りになってください。御話は伺いますよ」
「あぁ…有り難う」
 小さな吐息を吐き出しつつ、ライデンは勧められたソファーへと腰を下ろした。そして徐ろに口を開く。
「あのさぁ…魂を吸い取る剣の事、知ってる?」
「…は?」
 訳がわからないと言った表情を浮かべるラファエルに、ライデンは状況を詳しく説明し始めた。
 ラファエルなら、協力してくれると思ったから。だから、全てを吐き出した。
 それを黙って聞いていたラファエルは、ライデンの話が終わると大きく溜め息を吐き出した。
「…詳しいことは良くわかりませんが…確か昔、不思議な剣があったという話は聞いたことがあります。それが、貴君が追い求めている剣かどうかはわかりませんが…」
「その剣のこと、詳しく知っているヒトはいないの?」
 縋るような想いで問いかけた言葉。だが、それに答えたのは、目の前にいるラファエルではなかった。
「私が知っています」
「…ガブリエル…」
 僅かに開いた執務室のドアの向こうに見えた姿。それは、通常ならこの執務室には近寄るはずもないガブリエル。彼女は、ゆっくりとライデンへと近づくと、もう一度その口を開いた。
「私が、貴殿を呼びました」
「…あんた…何で…?」
 困惑した表情で問いかけたライデン。
 今までのガブリエルとの関係では、到底進んで協力などしてくれるはずはない。自分たちは…彼女が尤も忌み嫌う、悪魔なのだから。
 だが、今目の前にいるガブリエルの表情は、ライデンが知っている勝ち気なガブリエルの表情ではなかった。そこにあるのは、彼と同じように、何かを堪えているかのような、切ない表情。
「…御願い、ラファエル。席を外してくれます?彼と…ライデン陛下と、一対一で話がしたいので」
 そう口にしたガブリエル。その視線は真っ直にライデンを見つめたまま、逸らせることがない。その異様さを察したのか、ラファエルも素直に頷き、踵を返して執務室を出て行った。
 そのドアが閉ざされ、ライデンとガブリエルのみになると、ライデンの方から徐ろに口を開いた。
「何で、あんたが俺を呼んだんだ…?あんたは、俺たち悪魔を嫌っていたはずだろう?なのに、どうして…?」
 疑問符を投げかけるライデン。その表情は、こちらも真剣そのもので。
 しかしその言葉のあと、ふとガブリエルの表情が変わった。
「そうですね。私が悪魔を憎む気持ちは、今も変わりありません。ミカエルやラファエルのように、貴殿たちと馴れ合うつもりもありません。けれど、今回は事情が違います」
「…違うって…じゃあ…」
「剣を、返してください。貴殿たちが持っている、私の剣…"制覇の剣(せいはのつるぎ)"を。その為に、貴殿を呼びました」
「…っ!?」
 まるで、心臓を掴み上げられたかのような衝撃を受けたライデンは、次の瞬間にガブリエルの胸元を掴み上げていた。
「あんたがやったのかよ…っ!!あんたが、ゼノンを…っ!」
 けれどガブリエルは表情一つ変えずに、自身の胸倉を掴み上げているライデンの手を上からそっと包み込んだ。
「雷帝陛下にとって、早合点は命取りにも成りかねます。他人の話は、まず最後まで聞くべきだと思いませんか?」
「…どう言う意味だよ!?この後に及んで、言い訳でもするつもりかよっ!」
「落ち着きなさい、ライデン陛下。ゼノン殿がどうなっても良いと…?」
 窘めるように…その反面、一喝するような雰囲気も含め、再びそう言葉を発したガブリエルに、ライデンは思わず口を噤んだ。
 ライデンを見つめるガブリエルの金色の眼差しが、彼女が偽りを口にしているのではないことを物語っていた。
 気持ちを落ち着かせるかのように大きく息を吐き出したライデンは、ガブリエルの胸倉を掴み上げていた手を下ろすと、姿勢を正して再び向き合った。
「…話は聞こう。どう言うことだ?」
 どんな状況が語られようとも、己を自制しなければならない。
 自分にそう言い聞かせながら問いかけた声に、ガブリエルは小さな吐息を吐き出した。そして、ゆっくりとその口を開いた。
「あの剣が何をしたのかは知っています。けれど…信じて頂けないとは思いますけれど…今回の事件に私は関与していない。あの剣は…盗難にあったんです。いつの間にか…保管場所から、あの剣が消えていました。誰にも説明したことはないけれど…あの剣のことを知っていた誰かがいたのでしょうね」
「な…んだって…!?」
 思わず息を飲んだライデン。
「不審者は確認されています。でも、捕らえる事が出来なかった。勿論、私の監督不行だったことを棚に上げるつもりはありません。なるべく早く犯人を追求を試みることと、出来る限りの償いはさせて貰うつもりでもいます。貴殿たちに対して…と言うよりも、悪魔全般に対して、憎しみはあるものの直接恨みがある訳ではありませんから」
 淡々と語るガブリエルに、一定以上の感情は見られない。それが何の為なのか、ライデンにはまだわからないところでもあったが。
「盗まれたことを知っていて、今まで野放しにしていたって訳か!?」
 先程のように手は出さないものの、ライデンが放つ殺気にも似た気迫に、その怒りは的確に感じることは出来ていた。けれども、ガブリエルの表情は相変わらずである。
「野放しにしていた訳ではありません。勿論、追求もしていた。けれど、どう言う訳か…消えてしまった。ただ剣を奪うことだけが目的だったようで、その後は何の動きもありません。それが、ほんの数日前のことです」
「…数日前…」
 そう言われ、ライデンはドキッとして息を飲んだ。そして、すっと興奮が冷める。
 頭が冷静になれば、その異様さはわかった。
 ライデンか、ゼノンか。どちらかを狙う為だけに…盗まれた可能性があるのだと。
 一気に殺気の消えたライデンに、ガブリエルの方が怪訝そうな表情を浮かべた。
「…何か…心当たりでも?」
 問いかけた声に、大きな溜め息が返って来た。
「…心当たり、と言うほどの大きなモノじゃない。でも…」
「…でも?」
「…ゼノンは…数日前まで、行方不明だった。日にちは微妙に違っているかも知れないけど…帰って来た途端にこの騒ぎじゃ…ゼノンが帰って来るのを待っていたのかも、って…」
「…どう言う事です?」
 神妙な表情で、視線を落としたライデン。その姿は、とても不安そうに見えて…ガブリエルも、つい問いかけてしまった。
「……"魔界防衛軍"、って…知ってる…?」
 ふと、口にした言葉。
 ゼノンが失踪中に起こった、局長の解任の話。ライデンはその話を、全てが落ち着いてから漸くデーモンから聞いた。ただ、それが自分を潰す為だと言うことは、流石にデーモンからは伝わっていない。なので、ライデンが得ている情報もまだ不完全ではあった。
 しかし。その時の話と、ウイルスの盗難、蔓延。そして、魔界防衛軍による革命。その全てが繋がっているのなら…もしかしたら、今回のことも…。そう思わざるを得ない状況に、不安が押し寄せて来たのだ。
「…ミカエルから、聞いたことはあります。ですが…もう随分前の話、ですよね?」
 怪訝そうに問いかけるガブリエルに、ライデンは小さく首を横に振った。
「…そうとも言えないのかも知れない。ただ、俺は…今の魔界の状況は良くわからないんだ。だから、今回のことももしかしたら…としか言い様がない…」
 溜め息と共に吐き出された言葉に、ガブリエルも溜め息を一つ。
「…どうやら…複雑なことになっているようですね。まぁ、状況は後で整理するとして…とにかく今は、ゼノン殿を助けることが先決なようですね」
「…方法は…あるの?」
 すっと、ライデンの眼差しに光が戻った。そして、その眼差しの前に、小さな頷きが返って来る。
「…方法はあります。ただ…上手く行くかどうかはわかりませんけれど」
 その一言に、ライデンも息を飲んだ。
「…どう言う事…?」
「その手段は禁忌であり、本来触れてはいけない領域なのです。故に、今まで誰もそれを試みた者はいない、と言うことです」
 その言葉が意味することは、助かる確証はないと言うこと。けれども、今のライデンには、その手段が禁忌であるとしても、挑むしかないのだ。
 最愛の悪魔を、取り戻す為に。
「…だとしても、やるしかないよな。で、方法は?」
 ゆっくりと息を吐き出して気持ちを落ち着けると、ライデンはそう問いかける。
「まずは、凶器となった"制覇の剣"が必要です。そしてもう一つ…魔界に存在しているはずの、"練磨の剣(れんまのつるぎ)"。その二本が揃わなければ、助ける方法はありません」
「…"練磨の剣"…?」
「そう。聞いたことはないのですか?貴方がここへ来た時にそう問いかけて来たと言うことは、同じ仕組みの剣を知っていると言うことなのでは?"制覇の剣"と良く似ていると聞いたことがありますが…」
 心当たりは一つしかない。けれど…微妙に名前が違うのが気になる。
「…天界では、"練磨の剣"、って言うのか?」
 改めて問い返す声に、ガブリエルは首を傾げた。
「魔界では呼び名が違うようですね…?」
「あぁ。魔界では、"錬叛刀"と呼ばれている。何で、呼び名が変わったんだろう…?」
 "錬叛刀"に関して、詳しいことを知らないライデンは、ふともう一つの疑問に突き当たった。
「…そう言えば、何であんたは、その剣が魔界にあることや、剣の名前まで知ってるんだ?」
「…貴殿は何も御存知ないようですね…」
 小さな溜め息が一つ。それには、ライデンも僅かに眉を顰た。けれど、そこで反発したら、協力を拒まれるかも知れない。そう思うと、憤慨も押し殺すしかない。
「少し…御話しましょうか。"練磨の剣"のこと」
 そう切り出したガブリエルから語られた、"錬叛刀"の謎。"錬叛刀"が天界と関わっていた部分の全てと、禁忌でありながら唯一と言われている手段の方法を、ライデンは息を飲んで聞いていた。そして改めて、当初の疑問にぶつかる。
「…じゃあ、何で名前が変わったんだろう…変える必要なんかないはずなのに…」
 嫌な予感を感じ、そう口にしたライデン。その言葉は、向かい合うガブリエルにも、表情を変えさせていた。
「…余り、期待しない方が良いかも知れませんね。もしかしたら…私の知っている手段では……」
----助けられないかも知れない。
 ガブリエルがその言葉を飲み込んだのは、どうしてだっただろう。
 彼等に対して、特別な感情を抱いたことはない。そして、当然ながら哀れみすら覚えたことはない。けれど…今、彼女の胸に何かが過ったのは言うまでもない。
 正体のわからない感情に、ガブリエルは口を噤むしかなかった。
「…とにかく、試してみるしかありません。魔界の剣が貴殿の手元に届き次第、剣とゼノン殿の躰と共にカオスにいらしてください」
「…わかった」
 今は、そう答えるしかなかった。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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