聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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DISHARMONY 1
戦いの狼煙が上がった。これでまた数ケ月、彼奴と顔を合わせることも出来ないだろう。
彼は執務室の机に向かったまま、小さく溜め息を吐き出す。
今戦いの前線にいるのは、魔界随一の勢力を持つ情報局長官、軍事局総参謀長率いる軍…つまりはエースとルークの軍。その軍を溜め息と共に送り出した彼は、副大魔王閣下デーモンである。
最後にゆっくりと話をしたのは、いつだったろう。
デーモンはその記憶を辿ってみたが、既に両手でも足りないくらい前のこと。
溜め息と共に送り出したデーモンの心を、彼らは知っているのだろうか。
幾ら御互いを認めたとは言え、その距離はまだ然程縮まってはいなかった。
戦いの僅かな休息の時間…つまりは真夜中である。簡易に仕立てられた執務室に、二名の姿。
「…で?何できちんと、言って来なかった訳?」
「だから…それどころじゃなかったって、言ってるだろう?準備に色々と忙しかったし…」
「んでもさ、無理にでも時間を作るのが、恋悪魔ってモンでしょうが」
「……」
恋悪魔と言う響きに、彼…軍の主導権を握る情報局長官であるエースは、思わず閉口してその頬を赤くした。そんなエースを呆れた顔で見つめるのが、軍の作戦参謀兼彼の相棒として参加している軍事局総参謀長ルークだった。
溜め息を一つ吐き出したルーク。たった一言でこんなに赤面する長官が、何処にいるだろう。しかも、その行動まで珍しく奥手と見える。それが唯一の相手に対してのみだと言うのだから、溜め息しか出て来ない。
それにしても…と、ルークは呆れ顔でエースを見た。
「一向に進歩がないねぇ、あんたたちは…」
「…何がだよ…」
ややムッとした表情を浮かべて、エースはルークの言葉に答える。
「だからさぁ、恋悪魔ならもっと堂々としたら良いじゃないの。言葉だけで照れる歳でもなければ、若い頃はそれなりに場数踏んでるんだから、引っ込み思案になる必要もないでしょ?」
すると今度は、エースの方が呆れた表情を浮かべた。
「御前なぁ…彼奴とのことはそんな単純じゃなくてだな…」
「だから、俺が言いたいのはそう言うことじゃないんだってば。何もあんたが先頭切って準備の為に忙しく動き回る必要はなかったでしょ?って、言いたい訳よ。もっと部下を信用したら?」
「…迂闊に信用したら裏切られるぞっ」
そのうちに血管の二、三本でも切れてしまうのではないかと思うくらい、エースはムッとしている。勿論そうなることをわかっていながら、ルークは敢えてエースに発破をかけているだから、これはどう仕様もないのだが。
今のデーモンとエースの関係は、確かに端から見れば、もどかしいばかりで何の進展もない。尤もそれは、エースが生まれ変わる以前から、ある意味ずっと同じ繰り返しではあるが。
「ねぇ、エース?ホントに、それで良いと思ってる訳?」
何度目かの溜め息と共に、ルークはエースに尋ねる。
「どう言う意味だ。それは…」
訳がわからず、エースは問い返す。
「だから、ホントに今のままで良いのかって、聞いてるんじゃない。今の関係のまま、いつまでこんなぬるま湯状態でいるつもりなの?あんまり際限無く続くと、そのうちにデーさん、誰かに盗られちゃうよ?」
「御前みたいに…か?デーモンに一目惚れだったんだろう?」
「それは昔の話でしょうよ。俺の想いは純粋。あんたもわかってるでしょうがっ」
多少世間との歪みはあるものの、確かに凡その部分について、ルークの想いは純粋だった。デーモンもエースも、同じくらい大切だと思っている。だからこそ、心配で仕方がないのだ。
エースもデーモンも、御互いへの想いを確かめるべく口にする言葉にも、ルークはにっこりと笑ってみせる。
それが、ルークなのだ。
「少しは、デーさんのこと、大切にしてあげてよね」
にっこりと微笑んだルークはエースに軽く手を振り、己の宿舎へと戻って行った。
「…俺が、悪者かよ…まるで、大事にしてないみたいじゃないか…」
その背中を見送り、エースは溜め息を一つ。
ルークが思っている程、エースには簡単に事を運ぶことが出来ないのだ。
感覚としては…微妙な溝が、入り組みながら幾重にも取り巻いている。その先に、デーモンがいるような感じ。だから、真っ直ぐに歩いていても、先が見えないのだ。
幾度目かの溜め息を吐きながら、エースは空を振り仰いだ。
深い色の闇が降りる、蒼き月夜。
「馬鹿、だよな…ホントに」
泥沼の関係を作るつもりは毛頭ない。だが、たった一つでも不安がある以上…どうにも出来ない自分がいる。
「…仕方がないって…そう言うのか、御前も」
エースは、蒼き月に向け、言葉を放つ。
「そうかも…知れないけどな」
呆れたような溜め息を吐き、目を伏せる。
「ルークじゃないが…ちょっとばかり、無理してみるか」
大きく息を吐き出したエースは、空を振り仰いで目を閉じる。
身体の中から高まって来る魔力を最大限に引き出す為に、額の邪眼が開かれる。真夜中であるにも関わらず、執務室から溢れ出た膨大な魔力は、眠りに付いていた兵士たちをも起こす程の威圧感さえあった。
ざわめき始めた兵士たち。既に休息の時間ではないことを思い知らされた。
戦いは、これからなのだと。
朝一番に副大魔王の執務室に届いた知らせに、デーモンはただただ絶句するばかりだった。
「…数ケ月はかかると言っていた戦を、たった一晩で終結させたと言うのか?彼奴は…」
デーモンには、どうしてもこの首謀者の無謀な手段を理解することは出来なかった。それ故に、何故突然一晩で終わらせたのかもわからない訳で…
頭を抱えたデーモンは、深い溜め息を吐き出していた。
その日の夜遅く。デーモンは、まだ執務室にいた。書類の整理が終わらず、こんな夜遅くまで働かなければならないのは、一体誰の所為なのか。
「…ったく、彼奴は…」
数ヶ月はかかると思われていた戦が一晩で終わってしまった為、必要書類は、一気にデーモンの元へ押し寄せて来ていた。
「邪眼は使うなと、あれ程言ったじゃないか…」
たった一晩で戦を終結させるなど、エースの邪眼を使えば訳はないことだったのだ。だがその能力を使ってしまえば、エースのみに負担をかけるだけで終わってしまう。
折角ルークもいるのに…新米兵士たちにも修業の場を与えてやろうとしているのに…これでは意味がない。だからこそそれは極力控えるように伝えておいたはずなのだが…
呆れてモノも言えない。デーモンの表情は、それである。
溜め息を吐きつつ、デーモンは背後の窓から外を見つめた。
蒼き月は、緩やかな光を放っている。
刹那、遠慮がちな小さなノックの音と共に執務室のドアが開けられた。
「ただいま」
「…っ!?」
「何だよ。そんな、鳩が豆鉄砲喰らったような顔して」
声の主は、予想外の者だった。
「…御前、一体いつ帰って…」
「いつって…この格好見れば、わかるだろう?戦地から真っ直ここに来たんだから」
その言葉の通り、外套を羽織った姿はどう見ても戦地帰りそのものであった。
「しかし…何故、ここに…」
デーモンは、未だ納得が出来ないと言った表情を浮かべた。
「連絡、来てただろう?今朝方、終結したって」
相手は平然と、デーモンの問いかけに答える。
「一体、何の為に…?」
「…ま、それは後でゆっくりと話すとして…」
その言葉の直後、デーモンはきつく抱き締められた。
「御前に、逢いたかった。だから…無理矢理、終わらせた」
そのエースの声に、一瞬の間。そして、開かれた唇。
「…御前…馬鹿、か?」
「馬鹿とは何だっ」
呆れ果てたデーモンの声に、エースがムッとしてデーモンを引き離すと、デーモンの眼差しと行き合う。それはとても冷たくて。
「邪眼は使うなと言ったはずだ。兵士たちの休息を破ってまで、戦う必要はなかっただろうが。無理矢理戦に終止符を打った無謀さは、認められない」
その言葉を、エースはどんな風に受け取ったのだろう。
眉間に一筋の皺を寄せ、一歩デーモンから身を退く。
「…御前にとって…俺は、何だ…?」
「…は?」
突然問いかけられた意味が良くわからず、思わずそんな返事を返したデーモン。けれど、その返事は…エースの胸に、深く突き刺さった。
小さな溜め息を吐き出したエース。そして、僅かに目を伏せる。
「……それが、ホントの答えだよな。わかった。もう良い」
「…エース?」
エースは相変わらず目を伏せたまま、更に一歩引く。
「もう二度と、こんなことで邪眼は使わない。もう二度と…御前との為に、特別に…無理に時間を作ろうだなんて思わない。少しでも近づけると思った俺が…間違いだった」
エースはそう言い放つと、踵を返してデーモンの執務室から姿を消した。
「…ったく…」
また、エースと喧嘩を始めてしまったか。
そう言わんばかりの表情で溜め息を吐き、エースが出て行ったドアを見つめていた。
蒼き月は、相変わらずの緩やかな光を放っていた。
エースは己の屋敷に帰って来ると、そのまま自室に閉じ籠もる。
空には、蒼い月。その光だけが…変わらずに見つめてくれている。
「…御前も、馬鹿だって思ってるんだろう…どうせ」
まるで独り言のようにつぶやく声。勿論それは、蒼き月に語る言葉である。
「…俺にだって、わかってる。彼奴が…まだホントに俺を見てくれていないことぐらい。彼奴が好きなのは…愛してるのは、昔の俺だって言うことも。でも幾ら俺が頑張ったって、昔の俺には戻れないんだ」
例え想いを交わしたとしても、心の底から愛して貰っている訳じゃない。そう、思うようになって…それを実感してしまうようになってから、エースはデーモンに近付くことに躊躇いを感じていた。だからこそ、自然に足が遠退いていたのだろう。
折角、想いを決めて戦を早く切り上げても、デーモンにその気持ちがわかって貰えないのなら、意味がない。
最初から、やっぱり無理だったんだ。だから…もう、諦めよう。
エースの心に、そんな気持ちが生まれつつあった。
翌日任務の報告に訪れた皇太子の執務室で、エースは急を要する任務を受けた。そしてその数日後、デーモンへの想いを断ち切るかのように、エースは再び戦いに出発していた。
「え?デーさん、エースにそんなこと言ったの?」
エースが任務に出発した後、ルークはデーモンの執務室を訪れて、先日の話を聞いた。
「吾輩は、呆れてモノも言えんよ。全く…」
心底呆れたと言わんばかりの溜め息を吐き出したデーモン。その声と表情に、ルークは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。
「…どうした?」
問い返したデーモンの声に、今度はルークが呆れた溜め息を吐いた。
「俺が、エースを嗾けたの」
「…ルーク…」
思いがけない言葉に、デーモンは眉を潜める。その表情で、ルークはエースに対して申し訳ない気持ちで一杯になった。
デーモンは…何も、わかっていなかったのだと。
エースを嬉々として嗾けたものの、向かうべき相手に気持ちを受け止めて貰えなかったエースは…どれだけ、傷付いただろう。
先走ったのは…誰だったのか。
「…デーさんは…一体、誰が好きなの?」
「…ルーク?」
相変わらず眉を潜めるデーモンに対し、溜め息を一つ。
「あのねぇ、デーさん…あのエースが、どうして無理矢理何ケ月もかかるような任務を切り上げたと思ってんの?」
「…吾輩に逢いたかったからだと言っていたが…」
「そう。そうなんだよ?幾ら俺に嗾けられたって言ったって、無謀なことは百も承知だったはずだよ。それなのに…あのエースが無茶してまでもデーさんとの為に時間を作ったってのに、どうしてそれに気付いてあげない訳?どうして…逢いたかった、って…たった一言、言ってやらなかったの…?それとも、ホントに逢いたくなかったの?」
「………」
思わず口を閉ざしたデーモンを前に、ルークは僅かに目を伏せる。
「エースは、今までの関係に、区切りを付けようとしたんじゃない?言って置くけど、今のエースは昔のエースじゃないんだよ?デーさんだってそれはわかってると思ってたんだけどね、俺は」
「わかってる。昔の彼奴とは違うと言うことぐらい…」
そう、わかっているはずなのに…何処かにまだ昔のエースに捕われている自分がいる。
「…理屈の中だけでしょ?そう思ってるのは。本心は違う。本当は…まだ、昔のエースを見てる。だから、受け入れられないんでしょ?今のエースが。でもそれを比べて何になるの?それでホントに、前に進めると思ってるの…?」
いつにない強い口調のルークに、デーモンは返す言葉すらない。
言われていることは、全部図星。だからこそ…耳の痛い言葉だった。
「デーさんにその気がないなら、俺がエースを口説くよ?それでも、良いの…?」
「…ルーク…」
その言葉に、デーモンは思わず口を噤んだ。
かつてのエースの想いが鮮烈すぎて…今のエースの姿が、別魔のように思えてならない。だからこそ…ルークが本気になりさえすれば、エースは自分から離れて行ってしまう。
自分が…過去に捕われ、尻込みしていることが明確なだけに。
そんなことを考えているデーモンの思考は、直ぐにルークにも理解出来た。それにはルークも呆れを通り越して、苛立って来たようである。そして、極め付け。
「…黙ってるんだね。いつまでそうやって逃げたら気が済む訳?」
その沈黙に業を煮やしたルークの棘のある言葉にさえ、デーモンはただ口を噤むだけで。
「俺、今のデーさん嫌いだよ。俺が好きになったデーさんじゃないもん。昔みたいな気迫なんて全然ないじゃない。エースだって報われないよね。こんなデーさん相手じゃ」
哀しそうにさえ聞こえる、ルークの声。そしてそのまま踵を返したルークは、黙って執務室を出て行った。
言われていることの意味はわかっている。全部、自分がいけない。何もわかっていなかった自分が。
しかし今のデーモンには、どうすることも出来なかった。
数日後、エースが任務から帰還したとの連絡は、デーモンのいる枢密院とルークのいる軍事局に、ほぼ同時に届いた。それを受け、ルークは早速デーモンの執務室を訪れる。そして。
「対エースの恋敵(ライバル)として、宣戦布告。俺、今夜エースの部屋に行くから」
デーモンに向けた第一声はそれだった。
「エースには、さっきそう言ったよ。勿論、大事な話があるからとしか言ってないけどね。でも俺の目的はただ一つ。あんたよりも先に、エースを堕とすよ。精々、明日の朗報を待っててよ」
感情の断片も見せず、ルークはデーモンにそれだけ言って執務室を後にした。
その言葉に、デーモンは鼓動が早くなるのを感じた。
ルークは、本気だ。本気で、エースを堕とすつもりだ。
デーモンがこのまま黙っていれば、ルークは確実にエースと関係を作ってしまうだろう。デーモンにも踏み込めなかった関係にまで。
ならばこのまま沈黙を続けるよりは…多少格好が悪くても正直にエースにぶつかって行った方が、余程後味が良い。
デーモンも、遂に覚悟を決めた。
ルークよりも先にエースを訪ね、阻止せねば。
それが追い詰められたデーモンの、唯一の決断だった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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