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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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サクラちってサクラ咲いて
こちらは、以前のHPで2000年04月01日にUPしたものです

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◇◆◇

 斯くも美しく咲き乱れる。
 その根元には、真の愛の結末が埋まっている。

◇◆◇

 それは、真夏のツアーの真っ最中のこと。

 その木の下で、ぼんやりとしている姿に、デーモンはふと声をかけた。
「…エース?」
 まるで気付く様子もなく、その手を幹に触れ、ただぼんやりと足下を見つめるエース。
 怪訝そうに眉を潜めながらも、デーモンは更にエースへと近付いた。
「…どうしたんだ?気分でも悪いのか?」
 そこまで問いかけ、やっとその視線がデーモンへと向かった。
 しかし、何処か虚ろげな色を浮かべるその眼差しは、デーモンを見つめながらも、その向こうを見ているようにも思える。
「…夢を…見たんだ」
「夢?」
 不意に紡がれた声に、デーモンは首を傾げる。
 鮮やかな緑色の葉を付けるその木を見上げ、懐かしそうに目を細めるエース。
「…まだ…この木の名前すら、知らなかった頃。何処の世界だったかも理解らない。ただ、この木と同じ花が咲いていたことだけは覚えてる。その木の下に、俺は、今と同じように立っていた。甘い…香りがして……」
「サクランボか?」
「………」
 一瞬、エースの冷めた眼差しがデーモンを見据えた。
 単なる冗談のつもりで言ったのだが、まずったようだ。
 そう言いたげな表情をデーモンが浮かべると、エースはさっさと踵を返した。
「もう良い」
「…エース?」
 まるで訳が理解らないまま、デーモンは歩き出したエースを追いかけていた。

「その…さっきは悪かったな。話の腰を折ってしまって」
 エースを追いかけ、控室までやって来たデーモンは、徐ろに口を開いた。
「冗談、だったんだ。別に、御前の話を邪魔するつもりだった訳じゃなくて……」
 そう繕うデーモンに、エースは怪訝そうな顔。
「…何のことだ?」
「いや、だから…桜の…」
「桜?」
 怪訝そうに、ふと視線を窓の外に向ける。控室の窓から、先程二名が立っていた木が見える。
「桜って…あの桜?」
 それが、どうしたんだ?
 問いかけるエースに、今度はデーモンが怪訝そうに眉を寄せる番だった。
「さっき、話してただろ?あの木の下で」
「誰が?」
「だから、御前と吾輩が…」
「……?」
「覚えて、いないのか?」
 その奇妙さに、デーモンはふと、窓の外の木に目を向けた。
 緑の生い茂る木。その下に、先程、確かに二名で立っていたはずだった。
「真夏の桜の木なんて、無粋だな。毛虫が付くだけじゃないか。ほら、あれだろ?アメリカシロヒトリとか言うヤツ。結構大量なんだよな。あんなのを見た日にゃ気分も萎えるよな」
 呆れたような溜め息の先には、常と変わらぬエースがいる。
 よくよく考えてみれば、先程のエースは何処か纏う雰囲気が違うような気がする。
 桜の木の幻覚に、一杯喰わされたか。
 してやられたとばかりに、デーモンは溜め息を吐き出していた。

◇◆◇

 誰が殺した? コマドリを
 私、と答えたのはスズメ
 私が人の目をかすめ
 弓矢で殺した コマドリを


 何処からか、歌が聞こえて来る。
「これ、何の歌だっけ?」
 聞いたことはあるんだけどな…
 思い出せないと言ったように頭を掻くライデンに、くすくすと笑いを零したのはゼノン。
「マザーグースでしょ?」
「マザー……あぁ、ガチョウおばさん」
「まぁ…間違いじゃないけどねぇ…わざわざ日本語で言わなくても…」
 呆れたように、溜め息を吐き出すゼノンに、ライデンは平然としている。
「で、何の歌?」
「確か……『誰が殺した、コマドリを』、じゃなかった…?」
「は?」
「違ったっけ…?」
 得ろ覚えなんだ。
 そう零したゼノンに、笑い声。
「『コマドリの死』、だろ?」
 笑いながら言うのは、デーモン。
「あぁ、そうか。デーさん、マザーグースの曲、歌ったことあるもんね」
 妙に納得したようなライデンの声に、デーモンも苦笑する。
 別に、それほど詳しかった訳でもないのに。
 その時、ふと気がついたように、口を開いたのはゼノン。
「…この声って……エース?」
「…?」
 聞き耳を立てているのは、先程から聞こえる歌声に対して。
「そう言えば、エースの声だね。何処で歌ってんだか。それよりも、良く知ってるじゃん」
 くすくすと笑うライデン。
 その妙に呑気な雰囲気の中、入って来たルーク。けれどその雰囲気に溶け込めないくらい、そわそわしているようだった。
「…どうした?」
 尋ねた声に、ルークは視線を合わせる。
「エース、知らない?そろそろ準備しなきゃいけないんだけど、姿が見えないんだ」
「エースねぇ…」
 確かに、ここにはいない。
「声は、聞こえるんだけど…」
 きょろきょろと辺りを見回していたライデンが零した声に、ふと視線が止まる。
「あ、いた。あそこ。ほら、木の下」
 その声に、デーモンも視線を向ける。
 エースは、桜の木の下に立っていた。この前と寸分違わぬ姿で。
「俺、呼んで来るよ」
 踵を返したルークを留めたのは、どうしてだろう。
「いや、吾輩が行く」
「…あぁ、そう?」
 じゃ、俺はちょっと一休み。
 そう言って椅子に腰を降ろしたルークと入れ違いに、デーモンはその場から立ち去る。そして、外へと向かった。


 誰が見た? 彼が死んだのを
 私、と答えたのはハエ
 それは私のこの目の前
 たしかに見た 彼が死んだのを

 誰が受けた? 彼の血を
 私、と答えたのはタラ
 捧げて持ったこのお皿
 私が受けた 彼の血を

 誰が作る? きょうかたびらを
 私、と答えたのはアリ
 私は持ってる糸と針
 私が作る きょうかたびらを


 デーモンがやって来た足音を聞きつけたのか、呼びかける前に、その視線は彼を見つめた。
「…あ…っと……そろそろ、準備の時間らしいんだが…」
 向いてはいるものの、何処か掴めないエースの眼差しに戸惑いを感じつつ、口を開く。
 また、桜の幻覚を見せられているんだろうか。
 一瞬過った意識。しかし、目の前にいるエースは、どう見ても彼の知っているエースなのだ。
 その意識が、正常ならば。
 数回、瞬きをしたエースは、触れていた幹から手を離し、ゆるりと動き出した。
「…昔…コマドリを、殺したんだ」
「…エース?」
「桜の木の下に、埋めた」
 瞬間、ギクッとしたのは、どうしてだろう。
 呼吸すら正常に出来ないくらい、胸がドキドキする。
 嫌な予感がする。
 そう思ったのも束の間、デーモンの目の前までやって来ていたエースは、何を思ったのか、突然その両手をデーモンの首に手をかけた。
「…っ!?」
 その強い力は、冗談などではない。
 呼吸が苦しくて、どうにかその手を剥ぎ取ろうともがく。遠くなる意識を辛うじて繋ぎ止め、無理矢理エースを引き離す。
 刹那。
「……ぁ?」
 目の前には、誰もいない。
 胸の鼓動は未だ、納まらない。荒い呼吸も、納まっていないのに…相手は、そこにいない。
 またしてもやられた。
 デーモンが吐き出したのは、当然の溜め息だった。


 誰が掘る? お墓の穴を
 私、と答えたのはフクロ
 持ってるシャベルと砂袋
 私が掘る お墓の穴を

 誰がなる? 牧師さんに
 私、と答えたのはオシドリ
 聖書手に捧げるおいのり
 私がなる 牧師さんに

 誰がなる? 牧師の助手に
 私、と答えたのはヒバリ
 まっ暗でなく少しの明かり
 私がなる 牧師の助手に


 奇妙な不安を抱えつつ、デーモンは控室へと向かう廊下を歩いていた。すると、目の前から見慣れた姿。
 一瞬、ドキッとして足を留めたものの、相手は常と同じ態度を取っていた。
「何だ、まだこんなところにいたのか?そろそろ始まるぞ」
「…あぁ…」
 良かった。いつもの彼奴だ。
 僅かに安堵の吐息を吐き出したデーモンを、彼は怪訝そうに見つめていた。
「…どうした?それ」
「ん?」
「ほら、ここ。赤くなってるぞ」
 その言葉の後、触れられたのは、先程と同じ首筋。
 思わず息を飲むデーモンには気にも留めず、その首筋を見つめている。
「…きつく、締められたみたいだ。誰かに襲われたのか?」
 心配そうに瞳を覗き込まれ、デーモンは咄嗟にそれを口にした。
「何でもない。狙われてる訳じゃないから、心配するな」
「…なら、良いが…」
 気を付けろよ。
 そうつぶやき、そっと抱き締められた。
 今は、奇妙な雰囲気も感じない。ならば、いつものエースなのだろう。
 ホッと一安心したデーモンは、エースの背中を軽く叩き、その抱擁から逃れる。
「さ、そろそろ行こう」
「あぁ」
 くすっと、小さな笑みが漏れた。

◇◆◇

 誰が持つ? 葬儀のあかり
 私、と答えたのはジュウシマツ
 運んでこようたいまつ
 私が持つ 葬儀のあかり

 誰がなる? 泣き女に
 私、と答えたのはカラス
 悲しんで目を泣きはらす
 私がなる 泣き女に

 誰がかつぐ? 棺おけを
 私、と答えたのはシジュウカラ
 もしも闇夜でなかったら
 私がかつぐ 棺おけを


 盛り上がっているミサが、佳境に入った頃。不意にデーモンを襲ったのは、奇妙な幻覚。
 耳元で聞こえるのは、エースが歌っていたはずのマザーグース…『コマドリの死』だった。
 思わず視線をエースに向けると、エースは常と変わらず、ギターを弾いている。
 そうだ、ミサ中じゃないか。
 気持ちを落ち着かせ、客席に目を向ける。そこで、思わず口を閉ざした。
 目の前にいたはずの信者たちが、誰一人としてその場にいないのだ。
「…何だ…」
 目を見張り、息を飲んだデーモンの耳に届いたたのは、今日の演目にはなかった曲。それも、出たばかりの大教典の曲。
「おい、ちょっと待て!」
 慌てて制止をかけたが、曲は止まらない。
「待てと言ってるだろう!?」
 声を荒立て、振り返ってみれば…そこにいたはずのライデンもゼノンもルークも…そして松崎様までも、姿を消している。勿論、スタッフもいなければ、ローディーの姿もない。
 ただ一名、残っているのはエース。
 いつの間にか、聞こえていたはずの音も聞こえない。
「…御前は、誰だ?」
 完全に填められたと感じたデーモンは、エースに向け、そう問いかける。
「誰って…エース清水、だろう?」
 忘れたのか?
 冗談を言う顔ではない。真っ直ぐに向けられた眼差しは、デーモンを捕え…そして、その向う側まで見透かしているようで。
「これは、どう言うことだ」
 そう問いかける声にさえ、エースは表情を崩さない。だが、それに返る答えは出なかった。
 エースはデーモンまで真っ直ぐ歩み寄り、そして不意に腕を伸ばすと、きつく抱き締めた。
「ちょっ…エース!?」
 抵抗する間も与えず、エースはその唇を深く重ねた。
「…っっっ!?」
 無理矢理引き離そうにも、そう簡単には引き離せない。そのうち呼吸も苦しくなり、その甘さ故に意識も微睡み始める。
 駄目だ。
 そう思った瞬間、ふと身体が軽くなり、身体が離れた。
「危ないっ!」
「…ぁっ」
 崩れかけた身体を辛うじて支えたのは、近くにいたスタッフ。
「大丈夫ですか?」
 そう問いかけられ、大きく息をしながら目を見開く。
 そこは、ステージ裏、だった。
「……あぁ…大丈夫だ」
 小さく言葉を返し、その手から離れる。
 今なら他の構成員の声、スタッフの声、ステージ向こうの信者の去る足音までもしっかり聞こえる。
 何だ、今のは。
 訳の理解らない意識を整理しようとした時、呼びかけられる。
「大丈夫か?」
 振り仰げば、エースが見ている。
「…あぁ、何とかな」
 そう返しながら、デーモンは大きく息を吐き出した。
「…吾輩は…最後までちゃんと唄ったのか…?」
 何より、それが心配で。
 だが、そんな心配をよそに、エースは小さな笑いを零した。
「あぁ、ちゃんと唄ったじゃないか。何だ、覚えてないのか?まぁ、仕方ないな。ルークもライデンも、危うく酸欠になる寸前だったからな。こんな小さいライブハウスじゃ、どうしょうもない」
 そう言うエースも、かなり汗だくである。
「疲れてるんだろう?早くホテルに帰って、休んだ方が良いぞ」
 常と変わらぬエースは、そうデーモンを気遣って声をかける。そして、着替える為に控室へと足を向けた。
 その背中を見つめながら、デーモンは複雑な表情を浮かべていた。

◇◆◇

 誰が持つ? ひつぎのおおい
 私、と答えたのはミソサザイ
 妻とその役をつとめたい
 私たちが持つ ひつぎのおおい

 誰が歌う? 賛美歌を
 私、と答えたのはツグミ
 しげみの中から涙ぐみ
 私が歌う 賛美歌を

 誰がならす? 重い鐘
 私、と答えたのはオウシ
 だって強いよ腕っぷし
 私がならす 重い鐘


 その夜。ホテルで休息を取っていたはずのデーモンは、薄闇の中で何かを聞いたような気がした。
 それは、あの『コマドリの死』…
 ふと映った視界には、闇の中に浮かび上がる桜の木。
 まるで、映画か何かを見ているような…そんなシチュエーション。そこにいたのは、スズメ。弓矢を構え、何かを狙っている。
 ギクッとして視線を送れば…やはり、その先にはコマドリがいる。
 弓矢が放たれた。鮮血を流し、コマドリは動かなくなる。
 それは、まるで『コマドリの死』の歌詞を、そのまま実演しているかのようで。
 血の匂いが、嫌に甘く感じる。
 息を飲むデーモンの耳に届いた声。
「スズメは、コマドリに恋をしていたんだ。愛していたからこそ…自分のモノにする為に、コマドリを殺した…」
「…エース…」
 振り返ると、やはりそこにはエースがいた。
「どうして、桜の下に死体を埋めると思う?」
 突然そう問いかけられても、直ぐに答えなど出て来ない。
 困惑の表情を浮かべたデーモンに、エースは軽く一笑する。
「桜は、魔性の木だ。根から吸収するのは、土の養分だけじゃない。埋められたモノの精気も吸い取る。だからこそ、あんなにも美しい花を咲かせるんだ」
「だから…御前は、コマドリを埋めたのか?」
 問いかける声が、掠れている。それは、ミサが続いた為じゃない。今のこの状況の異様さを察知しているからだ。
 その顔に、エースは笑みを浮かべる。とても美しく、冷たい微笑み。それは、エースを酷く冷酷に見せる、悪魔の微笑み。
「そう。だって…桜、好きだろう?」
「…コマドリが?」
「御前が」
「……」
 気がつけば、エースの手には弓矢が握られている。
「エース、御前…」
 異様な雰囲気を放っているのは、エース。
「スズメは、コマドリを殺したんだ。自分のモノにする為に…一生涯、愛する為に。スズメが俺ならば…コマドリは御前、だ」
 その眼差しは、既に狂気だった。
「エース…」
「愛してる。だから…ここに、埋めてやる」
 放たれた弓矢は、デーモンの額を打ち抜いていた。

◇◆◇

 鐘の音は空になりひびき
 鳥たちはみなそれをきき
 かわいそうなコマドリのため
 深いためいき 涙雨


 エースは、そこにいた。
 緑の生い茂る木の幹に手を触れ、足下をじっと見つめていた。
 そこには、コマドリが埋まっている。
 殺したのは、スズメ。コマドリが愛しくて…自分のモノにしていたくて。

「エース、そろそろ行くよ」
 声をかけられ、意識はふと元に戻る。
 細かく降る雨は、涙雨。
「…デーモンは?」
 足を向けながら、声の主に問いかける。
「もう寝ちゃってる。昨日の疲れ、まだ取れてないみたい」
 車での移動で良かったじゃない。
 くすくすと笑う声に、エースは目を細めた。
 あれは、幻覚だったのだろうか。
 ふと、桜の木を振り返る。
「…来年は、きっといつもよりも綺麗な花を咲かせるだろうな」
 小さくつぶやいた声に、待っていた悪魔は笑いを零す。

◇◆◇

 斯くも美しく咲き乱れる。
 その根元には、真の愛の結末が埋まっている。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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