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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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DISHARMONY 3
こちらは、以前のHPで2002年10月05日にUPしたものです
 ※シリーズ小説はカップリング小説です。
(基本DxAですが、色々複雑です…スミマセン…/苦笑)
4話完結 act.3

拍手[3回]


◇◆◇

 それから十日後。ダミアンの執務室には、再びデーモンの姿がある。
「もぉ十日も経つんですよっ!長くても一週間の任務ではなかったんですかっ!?」
 執務室の机を両手で叩き、デーモンは声を荒立てる。しかしダミアンは神経質そうな両の指を組み、のんびりと言葉を発する。
「わたしに言われてもねぇ…エースからの連絡は、三日前に今から帰ると言うのを最後に、ぷっつりと途切れているし…まさか戦いに巻き込まれたなんてことはないだろうし…」
「しかし、現にまだ帰って来ないんですよっ!?」
「だったら、御前が迎えに行くかい?」
「……っ」
 一瞬、驚いたように息を飲む。
「わたしは、御前がそのつもりでここに来たんだと思ったんだけれど?」
 にっこりと微笑むダミアンは、デーモンの胸の内を見透かしていたのだろう。僅かに赤くなった表情を引き締め、デーモンは咳払いを一つ。
「休暇を…いただきます。宜しいですね?」
「どうぞ。くれぐれも気を付けて」
 にっこりと微笑んだまま、ダミアンはその手をひらひらと振ってデーモンを送り出す。
 溜め息を一つ吐き出しながら、デーモンはダミアンに見送られて執務室を後にした。

 デーモンが王都を出てから、既に半日ばかりが経っていた。
 もう直ぐ目的地だと言うのに、エースの姿は何処にもない。もしも仮に入れ違いになっているのだとすればダミアンから連絡が入るはずであるから、エースが既に王都に戻っていると言うこともない。
 溜め息を吐きつつ、デーモンは下草の生い茂る獣道を進んでいた、その刹那。
「…っ!?」
 突然、足下を掬われたと思った瞬間、デーモンの身体は空に投げ出され、下に叩き付けられた。
「…ったぁ…」
 運良く、大きな怪我はないようだったが、落ちた時にあちこちぶつけたようだ。痛みに顔を歪めたその視界に入ったのは、薄暗い穴の中の薄暗い土壁。
「何処だ?ここは…」
 見上げれば、縦に続いた穴の先に空が見える。回りを囲むのは、全て土の壁。広さは思っていたよりも広い。下に行くほど広くなった穴のようだった。
「…ったく…吾輩としたことが…」
 良く気を澄ませてみれば、どうやら穴には結界が張られているようである。呆れた溜め息を吐き出した瞬間、その穴にもう一つの気配があることに気付く。その気配の方に目を向けたデーモンは、そこで目を見張る。
「…エース…」
 壁に寄りかかって立ち、デーモンを冷静に見据えている。薄闇の中にその眼差しだけが強く光を放っていた。
「無事、だったのか」
 思わず傍に寄ったデーモンに、エースはその眼差しを伏せた。
「…何しに来たんだ?」
 そうつぶやいた、エースの声。その言葉で、未だ自分が拒否されていることはわかっていた。けれど、今はそんなことを言っている場合ではない。
「捜しに来たんじゃないか。御前が、いつになっても戻って来ないから…」
「冗談じゃない。御前に心配される筋合いではないだろう?」
「エース…っ」
「二度と、俺に近付くなと言ったはずだ」
 感情の破片もないエースの声に、デーモンは溜め息を一つ。
「そんなことを言っている場合ではないだろう?御前だって、こんな所に三日もいたんだろう?魔力だって、殆ど残ってないじゃないか。悠長なことを言っている場合ではないはずだ。第一、吾輩はこんな所でのたれ死ぬのは御免だ」
「この結界の中は魔力が利かない。そう簡単には抜け出せない」
「やってみなけりゃ、わからんだろうが」
 ここまで来たら、御互いに意地の張り合いになるのは目に見えていた。覚悟を決めて来たものの、こればかりはどうしようもない。
 取り敢えず…デーモンは、生き存えることを選んだ。それもエースと共に。
 結界の中、魔力が使えないとなれば、この目の前に聳える土壁を自力で登るしかない。
「吾輩が先に登って、助けてやるからな」
「…好きにしろ」
 エースが静かに見据える中、デーモンは羽織っていた外套を脱ぎ、ロッククライミングさながらのことを始めた。しかし鼠返しの如く反り返った土壁はデーモンの行く手を阻む一方で、何度登っても直ぐに地に叩き付けられる。それでもデーモンは、幾度となくそれに挑んだ。
 既に手や頬は擦りむけて血が滲み、息は上がって唇は渇き、苦しそうに荒く呼吸を零すのみだった。それに加えて結界はデーモンの魔力を微量ずつ奪い続けている。だが、体力も魔力も限界に近付いても、デーモンはその行動を止めようとはしない。
 そんなデーモンから、エースは一度も視線を逸らさなかった。
 そして、数十回目にデーモンが地に叩き付けられた時。不意にエースは顔を背けた。そこに浮かぶ表情は、悲痛を露にして。デーモンはそんなエースの表情の変化に未だ気付かず、必死で起き上がり再び土壁に手を伸ばした。
 その瞬間、デーモンの背後から聞こえたつぶやき。
「…もう、止めろ…」
「…エース…」
 その声が、酷く切なくて。エースを見つめたデーモンの眼差しと交わらないエースの眼差しが、深く閉ざされている。
「結界を張ったのは…この俺だ…」
「…御前…」
 思わず息を飲んだデーモン。その眼差しは背けないが、問いつめる眼差しではない。それを察したのか、エースは僅かに顔を上げた。
「御前は…何がしたいんだ?俺を、どうしたいんだ?追いかければ逃げる。逃げれば追いかけて来る。御前が何を求めるのか、俺にはわからない。俺に…どうしろと…?」
 吐き出すようにそう言葉を口にしたエースは、とても苦しそうで。
 その姿が、デーモンの胸を締め付ける。
 どうしたら良いのかわからないのは…エースだけではない。デーモンもまた、どうすべきなのか、答えが出ないのだ。
 大きく息を吐き出したデーモン。真っ直ぐにエースを見つめていた眼差しは伏せられ、答えに迷っているのは明確だった。
「…御前が…今の俺を、受け入れるつもりがないのなら…さっさと切り捨ててくれ。俺に…これ以上、余計な期待をさせないでくれ」
「…エース…」
 僅かに顔を上げたデーモン。けれど、真っ直ぐに自分を見つめる眼差しを、直視することが出来ない。
「…吾輩は…」
 言葉が、続かない。
 再び大きく息を吐き出すと、僅かに間を置く。そして、再び口を開いた。
「…以前…エースに、言われたことがあった。自分は…臆病だから、全てが満たされたら何かを失うような気がして怖い、と…。結局…吾輩は、エースを満たしてやることも出来ないまま、彼奴のココロを壊してしまった。それを、再び繰り返すんじゃないかと…」
 その言葉に、カチンと来たのだろう。大きく息を吐き出したエースは、まるで吐き捨てるかのように言葉を発した。
「だからって、生殺しかよ。俺は、御前の傀儡じゃない。俺は…そんなに、柔じゃない」
「……」
 言葉は違えど…放った言葉の意味は、夢の中のエースと変わりない。
 エースは不意に立ち上がると、徐ろに羽織っていた上着とアンダーシャツを脱ぎ捨てる。そして、上半身裸のまま、デーモンの前へと歩み寄った。
「…御前、何を…」
 唐突な展開に慌てたデーモンだったが、エースの眼差しは真っ直ぐデーモンを見据えたまま。
「…俺を…見ろよ」
 そう言うと、デーモンの手を取り、自分の胸へと押し当てる。
 そのデーモンの指先が触れたのは…微かに残る、傷跡。
「俺は、生きているんだ。御前の前で、こうして生きている。それなのに御前は、昔の俺の話ばかりする。彼奴が恋しいのなら、どうして俺を生き返らせた?どうして…俺を、殺さなかった…」
 胸と背中に残る、消えなかった傷跡。それは、あの時…デーモンが、エースの魂の一部を殺した時の傷に他ならない。その傷跡は…今でも、デーモンの心を締め付ける。
 けれど、掌に伝わる鼓動は…温もりは、確かに生きている証。それは紛れもなく…"エース"であると言う証。
「少しでも…俺に、希望を持たせたのはどうしてだ?御前が、そう望んだんじゃないのか!?御前が、俺を必要だと思ったんじゃないのか…っ!?それなのに、どうして俺を見ない!?どうして……っ!!」
 エースの声が、震えていた。
 誰よりも、必要としていたはずなのに…どうして、それを素直に受け入れられなかったのか。どうして…傷つけることしか、出来なかったのか。そう思うと…涙が込み上げて来る。
「答えろよ、デーモン!」
 エースはもう片方の手で、デーモンの胸ぐらを掴み上げる。その眼差しはさっきまでと違い、怒りと悲痛に溢れていて。
 ココロが…悲鳴を上げている。
 思わず、デーモンはきつく目を閉じた。けれど、閉じた目蓋の隙間から零れる涙は…もう、誤魔化しようがなかった。
 ココロが悲鳴を上げているのは、デーモンも同じ。苦しくて…胸の奥が、酷く痛む。
「俺を…俺の名を、ちゃんと呼べよ!俺を、しっかり見ろよ!!俺は、誰なんだよ…っ!!」
 エースの声は容赦ない。悲痛な叫びを訴えるのは…必死に、生きているから。
 デーモンは、涙の溢れる目蓋を開き、エースを見つめる。
 触れている掌に伝わる鼓動が、先程よりも早い。吐き出す呼吸も荒い。その琥珀色の眼差しは…必死に、涙を堪えていた。
「……エース…」
 小さく溢した言葉。その名を持つ悪魔は…世界に二名はいないのだ。
 いるのはたった一名。最愛の…悪魔だけ。
 その温もりも、鼓動も、呼吸さえも、何も変わらない。ただ一つ違うことは…求める欲望を、解き放つ強さがあった、と言うこと。
「…済まなかった…吾輩が、悪かった…」
 零れる涙も拭えず、ただ、そう言葉を溢すのが精一杯で。
 するとデーモンの胸ぐらを掴んでいたエースの力が不意に抜けた。
 思わず地面に尻餅を着いたデーモン。
 エースは、その姿をじっと見つめていた。
「…御前は、何に対して謝ったんだ…?」
 そうつぶやいたエースの表情は、デーモンの謝罪の意味がわからず、困惑しているようだった。
 デーモンは袖で頬の涙を拭うと、大きく息を吐き出して気持ちを落ち着かせる。
 そして、ゆっくりと口を開いた。
「…吾輩は…御前を、傷つけることしか出来なかった…御前だけじゃない、昔の"エース"も…。そうして…彼奴の心を満たしてやることも出来ずに…そのまま、壊してしまった…そして今また…御前を、傷つけている。どうして…同じ道しか、進めないんだ…吾輩が悪いのはわかっている。でも…どうにもならない…だから、謝ったんだ。今と、昔の"エース"に…」
「…デーモン…」
 大きく溜め息を吐き出したエース。
 苦しそうな表情は…どちらも変わりない。
「…だったら…抱えてる想いを、全部俺に吐き出せば良いじゃないか…」
 エースはそう言うと、デーモンの正面へと腰を落とす。そしてその手でデーモンの顎を持ち上げると、真っ直ぐに視線を合わせた。
「御前は…結局彼奴にも心を開ききれなかった。勿論、彼奴自身も、御前に全てを打ち明けられなかった。御互いに距離を縮めることを恐れて…結局、不毛な結末の道を歩いてしまった。彼奴の心を壊したのは御前であり…彼奴自身だ。でも、俺は違う。同じ道を歩く為に、もう一度御前に出逢ったんじゃない。俺は…言いたいことははっきり言う」
 エースはそこで一旦言葉を切り…そして、大きく息を吐き出すと、言葉を続けた。
「俺は…御前の全てが欲しい。身も心も、全て、俺のモノにしたい。だから…」
----御前を、俺にくれ。御前を…抱かせてくれ。
 囁くような、甘い声。その言葉に、デーモンは思わずゾクッとして目を固く閉じる。
 あの時…不安に押しつぶされそうだったエースに、求められたあの時…それに応えていれば、繋ぎ止められたのだろうか…?
 今更ながらに思う。
 言えなかったのは…応えられなかったのは…負い目があったから、だ。
 地球への想いを蒸し返され、御互いに伝えられない言葉が多過ぎた。そして、それを口にして、失うことが怖かったから。
「…俺を見ろ、デーモン」
 声をかけられ、ゆっくりと目を開ける。目の前にあるのは…あの時と変わらない、琥珀色の眼差し。けれど…そこには、生命がちゃんとある。真っ直ぐに向けられる想いを、二度と失う訳には行かない。
「はっきり言えよ。言いたい事を、全部吐き出せ。ちゃんと、御前の言葉で…俺に、言ってくれ」
 その言葉は、拒否することを許さないと言う色を乗せていた。
「…吾輩は…」
 紡ぐ言葉が震える。
 再び、涙が溢れる。
 デーモンはその両手をエースの背中へと回して抱き締める。
「…怖かったんだ…自分の弱さに、向き合うことが。踏み込んでしまうことで…御前を…壊してしまうことが怖い。御前を失うのが怖い。もう一度御前を失ったら…吾輩は……生きて行けない…」
 エースの背中に回された腕が、身体が、小さく震えている。
「…俺は、そんなに柔じゃないと言ったはずだ。だから…全部、吐き出してくれ」
 耳元で、そう囁かれる。ゾクッとするほど甘いその声は…その心に、小さな火をつけた。
 震える吐息を吐き出し、デーモンは大きく息を吸った。
「…御前を…吾輩にくれないか…?御前の全ても…これからの未来も…全部…」
「…デーモン…」
「吾輩だけを、見てくれ。ずっと、傍にいてくれ。吾輩を……」
----抱いてくれ。
 一気に言葉を吐き出し、エースの肩口に顔を埋める。
「…それが…言えなかったことか?御前が、ずっと溜め込んでたことか…?」
 その耳元で問いかけられ、デーモンは小さく頷く。
 失いたくないのなら、口にしなければならない。吐き出さなければならない。それが…もう一度、共に歩いて行く為に必要なこと。
 エースはそっとデーモンの身体を引き離すと、その顔を覗き込む。そして、涙に濡れた頬をそっと拭った。
「馬鹿だな、御前は。俺は…ずっと、御前のモノになる覚悟をしていたのに」
「エース…」
「御前がその気なら…もう遠慮はしないぞ?良いんだな?」
「…あぁ…」
 小さく答えたデーモンに、エースは深く口付ける。
「俺は、ここにいる。御前の傍に…ずっといる。だから……俺を置いて、何処にも行くなよ」
 耳元で紡がれた、甘い囁き。
「…何処にも…行かない…」
 譫言のようにつぶやく言葉は、甘く深い口付けに遮られた。
 何も、考えられない。
 抱き締められた身体が…重ねられた身体が、熱い。
 それが、ずっと求めていたモノであるのなら…もう、失ってはいけない。
 それは…エースを護る為に。自分の心を癒す為に。そして…必死で訴えてくれた、ルークの笑顔を護る為に。
 結界など、疾うの昔に消えていたが…二名の気が確認され、迎えが来たのは翌朝になってからだった。
 それまで、誰にも邪魔されない二名だけの満たされた時間。
 保護された時、二名は穏やかな顔で寄り添って眠っていた。
 固く、手を繋いだまま。
 それは、再び繋ぎ留められた絆、だった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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