聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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TEARS IN THE RAINBOW
エースがいなくなったと言う報告を皇太子たるダミアンにしたのはルークであったが、その数日後、その件に関して呼び出されたのはデーモンだった。
「…お呼びですか…?」
そう問いかけたデーモンの声に、小さな吐息が返って来た。
デーモンの表情も声もその眼差しにも…心がまるで伴っていない。エースがいなくなってから…完全に生気を失い、抜け殻のような姿だった。
「…エースに関する報告は、ルークから聞いたが…わたしは御前と、話がしたいと思ってね。精神的に苦しいのはわかっているが、ちょっとだけ…時間を貰うよ」
「…はい」
言葉少なに返すデーモンの姿を見つめるダミアンの姿は、いつもと変わらない。けれど…その眼差しの奥にある光は…ほんの少しだけ、複雑な色が見えた。
「正直なところ、御前は…どう思っているんだい?ルークは、御前はエースを捜す意思はないと言っていた。それで合っているかな?」
口調はいつもと変わらないが…やはり、その言葉は重い。ダミアンもダミアンなりに…思うところはあるようだ。
「…はい。吾輩は…エースに、殺してくれと…頼まれました。でも、それは出来ませんでした…吾輩に、エースを殺すことは…どうしても無理でした。それを告げると…エースは…自分の意思で、出て行きました。あの精神状態では、自分はもう…長くは生きられないと。迷惑をかけるよりは、と…。そして…捜さないでくれ、と…」
目を伏せたまま、デーモンは言葉を紡ぐ。エースのことを報告するその言葉にも表情にも感情はなく…まるで、機械が発する言葉のように、無機質で。義務的に喋っているのは、明確だった。
「…そう。その時の状況はわかったよ。では…これからは、御前の話、だ」
「…吾輩の…ですか?」
ふと、デーモンの視線がダミアンへと向いた。
「そう。御前の、心の話、だ」
「………」
大きく息を吐き出し、口を噤んだデーモン。再び伏せられた眼差しは…何かを、覚悟しているようで。
「…ゼノンから、御前の診断も出ているね。今まで辛かったとは思うが…これからはもっと、辛い思いをする。それはわかっているね?」
ゆっくりと問いかける声に、デーモンは小さく頷く。
今までは、危うい状態だったとは言え…エースは、直ぐ近くにいた。けれどこれからは…生きているのか、死んでしまったのかすらわからない状況で…助けてやることも出来ず、過ごしていかなければならない。それ故に…デーモンの心には、常に癒えない傷が残ることになる。
自分で…選んだ道だから。それは、デーモンも覚悟の上、だった。
「ルークは…ずっと、エースを心配していたよ。ルシフェルと同じ道を辿ることだけは、阻止したかったと…ここに報告に来た時も、そう言っていた。だが、一度はルークも納得したことだからね、御前たちを咎めることはしないだろう。寧ろ…御前の顔を見る度に、止められなかった自分を責めるかも知れないけれどね」
「…ルークに、罪はありません。全部…吾輩の責任です。だから吾輩は…自分が幾ら傷を背負っても、誰を責める事もしません」
「御前らしい答えだね」
ダミアンは、小さく溜め息を吐き出す。そして、今までデーモンと向かい合って座っていた椅子をくるっと回し、デーモンに背中を向ける。
デーモンから隠されたその顔が、一瞬苦しそうに歪んだ。けれど、直ぐにいつもの冷静な表情をその顔に貼り付ける。そうすることで…自分の心を、隠すように。
「…御前は今でも…エースを、助けたいかい?」
ふと、ダミアンにそう問いかけられた。
「…もしも…それが、許されるのなら…。ですが…捜すつもりはありませんから、何処にいるのかもわかりませんし…手立ても、ありません」
僅かに考えた後、デーモンはそう答えを返す。
ゼノンですら…エースを助ける手立てを見つけることは出来なかった。だからこそ、今のこの状況なのだ。
しかし。
「…手立ては、あるよ。御前にそのつもりがあるのなら」
「…ダミアン様…?」
思いも寄らぬ言葉に、デーモンは思わず顔を上げる。
背中を向けるダミアンの表情は、デーモンにはわからない。そして、何を考えているのかも。
「どう言う…ことですか?」
問いかける声に、小さな笑い声が届く。
「手立てを教えてやっても良いと、言っているんだよ。ただし、御前にはそれなりの代償はあるけれどね。だから、聞いているんだ。御前が、エースを助けるつもりがあるか、とね」
「………」
ふと、デーモンの胸に甦って来たモノは…"感情"と言う波。
「…それは…今まで迷惑をかけたことへの制裁、と言うことですか…?」
問いかけた声が、微かに強張っていた。
勝手なことをして上層部を巻き込み、魔界にとっても重要な要であったエースを失ったのは、全てデーモンの責任であると。エースを助ける代わりに、その全てを背負い、制裁を受けろと言うのかと。
ダミアンだから、今まで目を瞑ってくれていたのだろう。けれど、もう面倒を見切れないと…突き放されたと言うことなのだろうか。ならば、副大魔王の身位のみならず…デーモンの生命も、奪われるかも知れない。
けれど…それで、エースが戻って来るのなら…。
そんな思いがデーモンの頭の中を巡る中。ダミアンは、くすくすと笑った。そして、再び椅子を回してデーモンと向き合う。
「御前のことだ、どうせ馬鹿なことを考えているんだろう?副大魔王の身位と、自分の生命がその代償か、とかね」
「…違うんですか…?」
考えを見透かされ、思わず問いかけると、ダミアンは再び笑いを零した。
「わたしが言ったのは"代償"であり、"制裁"じゃない。別にわたしは、御前をどうこうしようと言うつもりはないんだが?」
「なら…」
困惑するデーモンに、ダミアンは笑いを押さえ、表情を引き締める。
「これから言うことは…冗談ではない。どう言う結末になるかは…わたしにも、まだわからない。だが、エースが生きているのなら…きっと、肉体(うつわ)と生命を助けることは出来る」
「…肉体(うつわ)と生命…?そこに…心は…?」
「…そこが、一番の問題でね。だから、御前に問いかけている。今、答えを出せるかい?今すぐが無理であれば、時間を置くのは構わないが?」
「………」
ダミアンの言わんとしていることは、正直、まだ良くわからない。けれど…エースを、助けられるのなら。何が代償なのかはわからないが…そんなことは、悩む理由にはならなかった。
「…助けてください、エースを…吾輩は…どうなっても、構いませんから…」
思わず、口を突いて出た言葉。
今でも…消えるはずのない想い。消えかけた炎ではあるが…まだ、燃え尽きた訳ではない。
僅かに紅潮した頬。そして、生気の戻った眼差し。それは、デーモンに感情が戻った証、だった。
「…苦しいよ?」
ふと、ダミアンがそう零した。
「構いません。吾輩が、背負うだけの事ならば」
即答するデーモン。その姿を、ダミアンは目を細めて見つめた。
「…そう。なら…教えてやろう。エースを助ける手立てを、ね」
そしてダミアンは、目を伏せた。
まるで…その奥に隠した感情を、悟られないように。
「御前は知らないだろうが…『錬叛刀(れんまとう)』と言う剣が、魔界にはある。それを使えば…エースを助けることが出来る」
「…『錬叛刀』…?」
「そう。それは不思議な剣でね。勿論、普通の剣と同じように扱うことも出来るが…願えば、魂の一部分だけを殺すことが出来るんだよ」
「…魂の…一部分だけを…?」
「そう、魂の一部分だけを、ね。わたしの言いたいことがわかるかい?」
「…いえ…」
未だ、察することの出来ない展開に、デーモンは素直にそう答える。
するとダミアンは、ほんの少しだけ視線を上げ、デーモンを見つめた。
「御前がエースの精神(ココロ)を壊したのなら…今度は御前が、『錬叛刀』でその壊れた精神(ココロ)を殺せば良い。エースの…御前への想いを、御前の手で、殺すんだ。そうすれば多分、エースは助かる」
「………」
ダミアンの言葉に、デーモンは目を見開いて息を飲む。
「エースを助ける為に、御前への愛情を殺すんだ。つまり、エースの中に残る御前の記憶は…昔と同じ、御前への憎しみだけ、だ。御前は、憎まれこそすれど…愛されることはない。御前はそれに耐えられるかい…?」
その言葉に、デーモンは大きく息を吐き出す。
ダミアンの言う"代償"とは…エースの愛情を失う、と言うこと。そして…憎まれながら、生きていかなければならない、と言うこと。
「…それだけ…ですか?」
デーモンが紡ぎだした声は、微かに震えている。
「そうだよ。けれど、それは御前が想像しているよりも、ずっと辛いだろう。御前がずっと求めていたエースの笑顔は、もう御前には向けられないかも知れない。そして何より…魂の一部分とは言え…御前は、エースを殺した、と言う事実を背負うことになる」
ダミアンの答えに、デーモンは再び、息を吐き出す。
そして、真っ直ぐにダミアンを見つめた。
「構いません。吾輩は…大丈夫です。エースが、生命を繋ぐことが出来るのなら…憎まれても、覚えていて貰えるのなら…失うよりは、ずっと良い…」
「…本当に、御前は…わたしの想像通りの答えを返して来るね」
ダミアンはそう言って立ち上がると、デーモンの傍へと歩み寄る。
「…ただね、『錬叛刀』は…とても、危険な剣だ。使い方を間違えれば…エースの全てを、殺してしまうかも知れない。御前は…そんな危険な剣を、エースに向けられるか?御前が出来なかった、エースを殺す、と言うことを…実行出来るかい?」
幾度も問いかけられる度に…デーモンは一つずつ、自分が背負う苦しみを、再確認していく。そうして、その覚悟が本物かどうか…ダミアンも、確かめているのだ。
デーモンが…本当に、耐えられるかどうかを。この、大事な友を…失わずに、済むかどうかを。
デーモンは、エースを殺せなかったと言った。けれど、助ける為に殺すのだとしたら…。
大きく息を吐き出すデーモン。
「…エースを…助ける為なら…出来ます。必ず…成功させます…」
真っ直ぐにダミアンを見つめた、金色の眼差し。それは、デーモンの本来の姿に相違ない。
デーモンなら…きっと、大丈夫。
ダミアンは、小さく微笑んだ。そして、デーモンの背中をポンポンと叩いた。
「でも、先はまだ長いよ?今すぐにどうこう出来ることじゃない。まずは、他の奴の同意を得ること。そして、エースを見つけること。勿論、御前は無理に捜し出すつもりはないのだろうが…いつになるかはわからない。どんな精神状態であるかもわからない。けれど…エースは、必ず見つかる。最後には…必ず、自分を取り戻す。その時が…最良で、最後のチャンスだと思え。そして御前も…決して、躊躇わないこと」
「…わかって、います」
デーモンは、大きく息を吐き出しながら…頭の中で、今言われたことを整理する。
慌ててはいけない。落ち着いて…その時を、待たなければ。
「…ねぇ、デーモン。御前は…」
ダミアンは、そこまで話して、ふと口を噤んだ。
「…ダミアン様…?」
奇妙に途切れた言葉に、デーモンはダミアンを見つめる。
ダミアンは…真っ直ぐに、デーモンを見つめていた。その柔らかい眼差しに…デーモンの不安は募る。
「…いや、何でもない。御前には、御前を支えてくれる仲魔がついている。独りではないのだから…ちゃんと、頼るんだよ。何もかも…抱え込んではいけないよ」
「…貴殿も…そのうちの一名…ですよね?」
ふと、問いかける。
ダミアンは…何かを、隠している。多分…『錬叛刀』に関する、何かを。
今のデーモンに、それを詮索している余裕はない。けれど…その想いは…。
ダミアンは、にっこりと微笑む。
「そうだね。わたしも…御前の、仲魔だ。だから…御前を、護ってあげるよ。御前が…」
----迷子に、ならないように。
それは、いつでも見守っていてくれる、と言う安心感と…誰よりも傍にいてくれると言う、心強さと。
その想いに、デーモンは胸が一杯になる。
「…ダミアン様…」
その頬に零れた涙を、ダミアンはその指先でそっと拭う。
「まぁ…一杯、泣けば良いよ。そうすれば…また、歩き出せるからね」
エースがいなくなってから、今まで…枯れるほど、泣いたはずだったのに。
それでも…まだ、溢れる涙があった。そのことが、信じられないくらいで。
それから暫くの間、デーモンは涙を止められずにいた。そして、ダミアンはずっとデーモンの傍で、その背中をそっと撫でていた。
デーモンが去った後。ダミアンは、ぼんやりと窓の外に目を向けていた。
あの時…飲み込んだ言葉。それは…ずっと、問いかけることを躊躇っていた言葉。
「…御前は…いつまで、わたしを仲魔だと思ってくれるか…いつまで…わたしを、信用してくれるか…。ねぇ、デーモン。まぁ…今回は、御前に、見透かされたんだろうが…」
それは…いつまでも…とは言えない、不確かな未来。
でも、それでも…胸に秘めた想いは、いつまでも消えない。
背負った罪の意識は…いつか、癒されるのだろうか。
「…わたしも、まだまだ未熟だね…」
くすっと、自嘲の笑いが零れる。
癒されることなど、期待をしてはいけない。
それは…彼が、胸に刻んだ想い、だった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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