聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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かがやきのつぼみ~X~ 後編
第四部"for CHILDREN" (略して第四部"C")
こちらは、以前のHPで2004年11月07日にUPしたものです。第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
その日も、とても天気が良かった。
----このまま順調に進んでくれれば良いけれど…。
それは、父親であれば誰でも願うであろう、我が子の将来。
彼はその日、士官学校の入学を迎えた。
入学シーズンを過ぎていた為、その日士官学校に入って来たのは彼一名だけ。保護者たるゼノンは、門前までは送って来たものの、学内に入ることは許可されていない為、既に彼の傍にはいなかった。
「学長は只今長期出張の為不在です。学長代理が学内の説明をして下さいますので、暫くここで御待ち下さい」
彼を応接室へ案内してそう説明してくれたのは、恐らく事務員だろう。説明を終えると彼をその場に残し、その場を後にする。
初めて着た学生服もまだ身体に馴染んでいない。身体の小さい彼は、必然的に制服に着られている、と言うイメージを与えていた。
緊張の塊の彼は、大人しく応接室のソファーに座っている。勿論、表情は固まったまま。
そして、どのくらい待っただろう。応接室のドアが軽くノックされた。
「…はい…」
躊躇いがちに答えた声に、ドアはゆっくりと開く。そしてその隙間から…恐らく学長代理であろうと思っていたが…一名の悪魔が顔を出した。
「…あ…」
「いらっしゃい。待たせてしまって悪かったね」
にっこりと微笑む相手は、見覚えがあった。
「…えっと…」
見覚えのある悪魔は、戸惑う彼の姿を見てくすくすと笑った。
「"初めまして"。俺は学長代理のルーク。君の名前は?」
そう言った悪魔は、柔らかな笑顔を彼へと向けた。そして問いかけられた彼は、ハッとして息を飲んだ。そして、父親から教わった言葉を思い出しながら、ソファーから立ち上がって口を開いた。
「…"初めまして"…ゼフィー・ゼラルダです。この度は、入学を許可していただいて有難うございました。これから宜しく御願い致します」
そう言って、深く頭を下げる。
「はい、良く出来ました」
ルークはにっこりと微笑み、そう言ってゼフィーの頭を軽く撫でた。それは、大人が子供を褒める時と同じように。
「びっくりした?」
問いかけた声に、ゼフィーは小さく頷いた。
ルークはゼフィーをソファーに座らせ、自分も彼の前に腰を降ろす。
「学長が長期出張って言うのはホントのこと。俺の学長代理ってのは、一時的にだけどね。軍事局での任務と兼任だし、こっちは非常勤みたいなもんだから、いつでもいられる訳じゃない。それでも、知った顔がないよりは安心でしょう?だから、ダミ様が特別にって配慮してくれた訳。勿論、ここだけの話ね。みんなには内緒だよ」
くすっと笑って、片目を瞑るルーク。
「…とう…じゃなくて、ゼノン様は…知っているんですか?」
問いかける声に、ルークは苦笑する。
「知らないんじゃない?多分、ダミ様は言ってないよ。話しちゃったら、面白くないじゃない?」
「…面白く、って…」
「そう言う方なんだよ。魔界の大魔王陛下は」
唖然とするゼフィーを見て、ルークは更にくすくすと笑う。
「初めて来た場所だし、何にも知らない所だからね。最初は、全てが驚きかも知れないけれど、徐々に慣れていくよ。俺もそうだったからね。でもそれには、安心出来る"居場所"が必要。俺にとっては、それは"ダミ様"だった訳。勿論、それが"何か"って言うことは、ある程度周りが提供してくれることもあるけど、最終的には自分自身で見つけるべきことだと思う。それを、この士官学校と言う場で見つけられるかどうかは、君次第だからね。俺たちはその手助けはするけれど、見つけてやることは出来ないから」
「…ルーク様は…魔界生まれじゃないんですか…?士官学校にも通わなかったって、この間…」
ゼフィーは、ルークの言葉を聞いて、そう問いかけてみた。
そう言えば、ルークは士官学校に通っていなかったと先日聞いたはず。それをそのまま聞き流していたのをふと思い出したのだった。
「そう。俺は天界生まれの元堕天使なんだ。昔は如何にも天界人、って真白な羽根を背負ってたしね。今は色々あって蒼黒の翼になったけど…まぁ、その辺の話はまたいつかね」
ルークはそう言ってくすっと笑った。自分が堕天使であった、と言う事実さえ、既に笑って話せる域にまで達していることを凄いと思いながら、ゼフィーはルークの話をじっと聞いていた。
「魔界に降りたのはオトナになってからだったけど、向こうでも士官学校とか行ってなかったから、ホントにいきなり軍事局に入った訳。それこそ見ず知らずの気の強い軍魔ばかりでしょう?だからこそ、認められるまでは大変だったけどね。それでも、俺を支えてくれるヒトもいてくれた。それは、気分的にも凄く安心したよ。勿論、一番はゼノンの傍にいることなんだろうけど、今の状況では無理だからね。だからダミ様は、そう言う役割を"学長代理"として、俺に託したんじゃないかなってね」
穏やかに笑ってみせるルークの姿に、そんな大変な思いをして来た影はまるで見えない。それはルークの強さであり、支えていたヒトとの強い信頼関係があったからなのだろう。ゼフィーは朧げながらにも、そう感じ取っていた。
いつか…自分も、そうやって笑えるようになりたい、と。
「安全面を考慮した規律の関係でね、寮生は暫くは自由に外部に出ることは出来ないんだ。でも、そのうちに外部に出ることも出来るようになるよ。そうしたら、色んな所に行ってみるのも、魔界を知る為には良いと思う。でもその為には…」
----頑張らないとね。
それが、外界から魔界へ来た先輩でもあるルークの、精一杯の応援の言葉。
見守っていてくれることに、甘えてばかりではいけないのだろう。自分で、歩いて行かなければ。
大きく息を吐き出したゼフィーは、この場所へ来てそれを痛感した。
それが、魔界で生きて行くと言うことなのだと。
「…さて、そろそろ迎えが来るよ。学内と寮を案内してくれる識者(せんせい)が来るから」
そう言っている間に、ドアがノックされて廊下から声が聞こえた。
『績羅(せきら)です。失礼致します』
「はいどうぞ」
ルークが答えると、ドアを開けて中に入って来たのは、恐らくは今目の前にいるルークよりも年上であろう悪魔。薄い金色の短い髪に、青い紋様を戴いている。
「主任識者の績羅識者だよ。これから君の案内をしてくれる」
ルークの声は先程までとは違い、引き締められた表情もまた、身位のある悪魔そのものだった。
「…ゼフィー・ゼラルダです。宜しく御願い致します」
ゼフィーはソファーから立ち上がり、績羅に頭を下げる。
「主任の績羅です。宜しく」
軽く目を細める仕草は、恐らく微笑んでいるのだろう。見慣れない学長代理の前で(しかも軍事局のトップであるのだから尚更)、こちらも幾分緊張しているようにも見えた。
「では績羅主任、御願いします」
ルークに声をかけられ、績羅は軽く頭を下げ、ゼフィーを促した。
「…有難うございました」
ゼフィーはルークに頭を下げ、績羅に付いて応接室を出る。
績羅は、自分に与えられた職務を熟す為に、学部へと歩き始める。当然、身体の小さいゼフィーは付いて行くのが精一杯で。殆ど小走りのように、後を付いて行く。
それに気が付いた績羅は、僅かに歩みを止め、ゼフィーが追い付いて来るのを待った。
「あぁ、済まなかったね。つい、自分のペースで歩いてしまった」
「…いえ…済みません…有難うございます…」
やっと績羅に追い付いたゼフィーは、大きく息を吐き出して呼吸を整える。そして、改めてゆっくりと歩き出した績羅の後を付いて行く。
「…君は、雷神界から来たんだったね?文化局のゼノン博士が保護したとか」
ゼノンが士官学校に入学する為に提出した書類を見たのだろう。績羅はふと、そんなことを口にした。
「…はい」
「雷神界は、良い所だったかい?」
そう問いかけられて、どう答えて良いのか迷ってしまった。
雷神界と言っても、ゼフィーがいたのは王宮内の皇太子宮の中が殆どと言っても良い。だから、雷神界で生まれて育ったとは言え、雷神界のことは何も知らない。どんな所と聞かれても何も答えられない。
「あの…僕、雷神界のことは余り知らないので…」
控えめに、そう口にする。すると績羅はふと足を止めた。
「あぁ、記憶が余りないんだったね。ゼノン博士からそのような診断結果が出ていたよ。悪かったね」
「…はぁ…」
ゼノンの手回しは的確だったらしい。これで雷神界のことを根掘り葉掘り聞かれることもないだろう。そう思い、ゼフィーは小さな吐息を吐き出した。
績羅の案内を受けながら、学内を回って行く。授業中の為か、時折声は聞こえたものの、他の生徒に会うことはなかった。そして最後に寮へと辿り着いた。
「今日はもう直授業も終わるから、このまま寮に入って構わない。荷物は届いているはずだから、荷物の整理でもして、明日からに備えるように。部屋の番号は、寮長に聞いてごらん」
そう言って績羅は、寮の入り口までゼフィーを連れて行き、自分はまだ仕事があるからと学校の方へと戻って行った。
ゼフィーは、寮の入り口で待っていた寮長に案内され、割り当てられた部屋へとやって来た。
「ここは三悪魔部屋だからね。届いていた荷物は、一応部屋の中に入れてあるから、自分で整理するように」
「はい。有難うございます」
寮長が戻って行く後姿を見送り、ゼフィーはその部屋へ入ってみる。
中は、小さなリビングに面して個室があり、それぞれのネームプレートがかかっていた。一通り個室以外を見て回った後、自分の部屋のドアを開けてみる。
その個室には、ベッドとクローゼット、机と椅子のセットが一つずつ。後は、ゼノンが送ってくれた荷物が数個あるだけ。元々、雷神界からは衣類が少しと、気に入っていた本を数冊持って来ただけで、殆ど荷物らしい荷物もなかった。それにゼノンが用意してくれた身の回りのものを加えただけの、質素な荷物。それが、今のゼフィーの全てだった。
小さな溜め息を吐き出しつつ荷物の整理を始めるが、それも直ぐに終わってしまう。あとはぼんやりと時間を過ごすだけ。
三悪魔部屋だと言っていた通り、他の個室のドアにもネームプレートはかかっていた。つまり、あと二悪魔は身近に生活を共にする仲魔と言うことになる。その同居魔がどんな悪魔なのかは、当然知る由もない。それがゼフィーを不安にさせていた。
重い気分の中荷物を入れていた箱を片付けていると、見慣れない小さな箱を見つけた。
「…何だろう…?」
首を傾げながら、そっとその箱を開けてみると、中には見覚えのないコインほどの小さなアンティークなペンダントが一つと、蜜蝋で封をした一通の手紙。
「…手紙…?」
雷神界の王家の紋章の入った封を開け、その手紙を広げる。そこには見覚えのある父王の文字があった。
暫し、その手紙に視線を落とす。
中に書かれていたのは、子を想う親の気持ち。そして、その安全と成長を願う心。
遠い存在になってしまった父王が伝えたい、精一杯の、父の愛情。
「…父上…」
つぶやいた声に、返って来る答えはない。
自分は、もう一悪魔きりなのだ。それを改めて、思い知らされたような気がした。
「…泣かない…」
込み上げて来る"何か"を堪える為に、ゼフィーはそうつぶやいて唇を噛み締める。そして、小箱に入っていたペンダントを取り出すと、目の前に翳してみた。
飾り彫りの、繊細な模様。一目で古いものだとわかるが、きちんと手入れされていて、小さいがとても綺麗だった。
「…御爺様が…父上に託した御守り…」
それは、父王からの手紙にそう記されていた。
父王が魔界に修行で降り立った時、御守りとして"父親"から託されたもの。それが今、ゼフィーに託されたのだ。
"父親"の微笑みを浮かべる上皇を思い出しながら、ゼフィーはゆっくりとそれを首にかけた。そして、胸の前でぎゅっと握り締めると、大きく息を吐き出した。
何よりも、強い絆。それを受け継いだ思いで、胸が一杯になる。
負けてはいられない。
そんな思いを、改めて胸に刻み込んでいた。
片付けもすっかり終わった夕方。騒がしくなり始めた外の様子に、帰宅の時間だと認識した。
「あぁ…学校が終わる時間…」
ぼんやりとそんなことをつぶやいていたゼフィーであったが、自分のいる場所の直ぐ傍でドアが開く音がすると、ハッとして息を飲んだ。
そう。ここは、ゼフィー一名の居場所ではないのだ。
そう思っている間に、ばたばたとした足音共に、ドアの外から声が聞こえた。
『もう来てるんだろう?』
『そのはずだよ。寮長は案内したって言っていたから…』
その瞬間、ノックの音。
『お~い、いるのか~?』
「…あ…はい…」
慌てて声を上げると、ドアが開かれて二名の子供が顔を覗かせる。
「おぉ、いたいた。御前、ゼフィー・ゼラルダだろう?」
そう声をかけたのは、二名のうち、背の高い方。良く見ると、年齢的にも年上のようだ。
「…そうです…」
緊張した声でそう答えたゼフィーに、今声をかけた彼がにっこりと微笑む。
「俺は礫(れき)って言うんだ。こっちはアルフィード。同室だから、これから宜しくな」
礫と名乗った彼の隣から顔を覗かせていたもう一名は、興味深げにゼフィーを見つめていた。
「…ゼフィー・ゼラルダです…宜しく御願いします…」
そう言って頭を下げると、アルフィードと呼ばれた彼がくすくすと笑いを零した。
「そんなに緊張しなくても良いよ。一階級生でしょう?僕も同じだから。礫はもっと上だけどね」
「そう。この寮の決まりでね、最初は一室に必ず上級生を入れることになってるんだよ。ま、そう緊張しないで。部屋で緊張しても仕方ないだろう?」
人懐っこい笑みで笑う二名を前に、ゼフィーも少しは緊張が解れたようだった。
「…で、何て呼ぶ?」
そう零した礫の言葉に、アルフィードも僅かに首を傾げる。
「今まで、何て呼ばれてた?ゼフィーで良いの?」
「え…っと……ゼゼ、って呼ばれてた…」
「じゃあ、決定。ゼゼ、な。俺は礫って呼び捨てで良いよ」
「僕はアル。宜しくね、ゼゼ」
知り合ったばかりの相手にそう呼ばれて、少しくすぐったいような気がしたのは気の所為だろうか。
初めての仲魔。それは、とても不思議な感覚だった。
「…礫、アル…宜しく」
にっこりと微笑んだゼフィー。純粋で無垢な笑顔は、彼の父王と良く似ていた。そして、まるで癒しのような穏やかな雰囲気は、もう一名の父親と似ている。尤も、彼はまだそれに気付いてはいないが。
ふんわりとした、花のような笑顔。その微笑みを、彼の"仲魔たち"も笑顔で受け止めていた。
この日から、本格的にゼフィーの魔界での生活が始まったのだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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