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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Craving 1

第四部"for PARENTS" (略して第四部"P")

こちらは、本日UPの新作です。
第四部は徐々にオリキャラメインとなりますので、御注意ください。
興味のある方のみ、どうぞ。(^^;
3話完結 act.1

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◇◆◇

 雷神界の雷帝が世継ぎを産んだ、と連絡が入った頃。
 魔界でも、王妃が懐妊したとの話題で持ちきりだった。
 これで、魔界の将来は安泰。それは、誰もが祝福すべきこと。そして、愛しい恋悪魔が返って来る。
 けれど…どうして、胸の奥が軋むのか。
 その理由は、彼にはわからなかった。

◇◆◇

 その知らせは直ぐに王都へと届いた。
『さっき、ダミアン様から連絡があってな。御世継ぎが…皇太子殿下が、無事に御産まれになったそうだ』
 副大魔王たるデーモンから入った連絡に、彼…ルークは、小さな溜め息を一つ吐き出していた。
「……そう。良かった…」
『…嬉しくないのか?漸く、ダミアン様も自由になると言うのに』
 そう問いかける通信画面越しの表情は、実に複雑そのもの。
 大事な世継ぎは、住み慣れた実家で産みたい。その要望に大魔王が応え、数ヶ月前に実家のある郊外へと引き篭もった王妃。そして数日前。直に生まれそうだとの連絡を受け、様子を見に行っていた大魔王であったが、漸く生まれたとの連絡が副大魔王のデーモンへと入ったのだった。
 待望の世継ぎが生まれたのだから、これで大魔王の肩の荷が下りたはず。後は、約束通り恋悪魔たるルークの元へと戻って来るはずだった。
 本来なら、その状況を知り、漸く解放された恋悪魔が戻って来るとなれば嬉しそうな表情を浮かべるものではないのか?そんな表情を浮かべているデーモンに、ルークは再び溜め息が一つ。
「まぁ…嬉しいか嬉しくないってか、って言ったら嬉しいんだけど…何かか、胸の奥に引っかかってるみたいな感じがするんだよね。確かにダミ様は帰って来るんだけど…モヤモヤするって言うか…何と言うか…」
 自分の気持ちなのに、今一つ把握出来ない。そんなモヤモヤが胸の中に燻っている。だからこそ、すんなり喜べないのだろう。
 困惑気味のルークの表情に、デーモンも溜め息を一つ。
『まぁ…御前の気持ちはわからなくもない。今はまだ生まれたばかりだが、成長すればどうしたって目の届くところに出て来る訳だからな。奥方様も何れ王都に戻って来るだろうし…複雑な心境には違いないだろう。だが…覚悟は、していたんだろう?』
「…まぁ、ね…」
 デーモンの言葉に相槌を打つものの…それが本当に引っかかっていることか、と言えば…それも少し、違う気がする。
『…ダミアン様も、直に王都に戻って来るはずだから。そうしたら、ゆっくり話をしてみたらどうだ?御前が引っかかってることを、ちゃんと話し合った方が良いぞ』
「…うん…」
 悩むその姿は、多分デーモンではどうにもならない。根源たるダミアンが戻って来れば、また何か変わるだろう。
 デーモンもまた、複雑な溜め息を零すしかなかった。

◇◆◇

 デーモンの連絡から数日後。
 職務を終えたルークが屋敷に戻って来ると、使用魔の朱凛から声をかけられた。
「御客様が御待ちですよ」
「…客?」
 特に、誰が来るとは聞いていなかった。怪訝そうに首を傾げたルークに、朱凛はくすっと笑いを零した。
「先ほど、蒼羽が御茶を運んで行きました。ルーク様も、御茶が冷めませんうちに」
「…あぁ、うん…」
 いつになく、強引に客間へと促され…小さな溜め息を吐き出したルークだったが、そのドアを開けた途端息を飲んだ。
「御帰り、ルーク」
「…ダミ様…」
 ソファーに座り、にっこりと微笑む恋悪魔。久し振りに見たその笑顔に、胸の奥が熱くなる。
 ルークをソファーへと促し、そのテーブルの前に御茶のカップを置いた蒼羽は、にっこりと微笑むとそのまま客間を後にする。
 必然的に残されたのは…ルークと、恋悪魔…ダミアンのみ。
「…そうだ。御世継ぎが御産まれになったそうで…おめでとうございます…」
 会話に困り、思い出したようにそう口にしたルークに、苦笑が返って来る。
「取って付けたような言葉だね。まぁ、無理もないか」
「……済みません…」
 重い溜め息。そして、沈んだ表情。それはどう見ても…自分の帰還を、喜んでいるようには思えない。
「…謝るな」
 小さな溜め息を吐き出したダミアン。その表情もまた、神妙になる。
「デーモンからも、言われているよ。御前とは…色々、話さなければならないようだね。まぁ、時間もあることだし、今夜はじっくり話をしようか」
 そう言いながら、ダミアンはテーブルに置かれたカップを手に取り、喉を潤す。
「…さて。それでは、御前の話を聞く前にわたしの方から少し話をしようか」
 そう切り出したダミアンは、組んだ膝の上にカップを持ったままの手を乗せると、ソファーの背凭れに背を預けた。
「約束通り…世継ぎが産まれたからね、そのプレッシャーからは解放された。彼女も、わたしもね。子供も今は彼女の生家で育ててはいるが、曲がりなりにも皇太子だからね。帝王学を学ばなければならないから、何れあの子は王都へと来ることになるんだが…彼女は、そのまま生家に残りたいそうだ。わたしも、それを容認した」
「…それって…奥方様は、王都へは戻って来ないって…そう言うことですか?ダミ様と、バラバラに暮らすと…そう言うことなんですか…?」
 まさかの報告に、ルークは目を丸くする。
 上皇のように、伴侶を亡くしているのならまだしも…そうではない状況で別居のままでいると言うことが、大魔王として良いことなのだろうか。それが、大きな心配でもあった。
 仲魔たる雷神界の王も、別居していると言えばそうだが…それはまた別の話。伴侶たるゼノンは魔界に在籍しているとは言え、まめに雷神界へと顔を見に行っている。今でも仲が良いのは言うまでもない。一緒に暮らさないことは、仕事の事も含めて彼らなりに色々考えた結果。今回の件とは、根本的に違うのだ。
 けれどダミアンは小さな笑いを零す。
「別居ぐらい、珍しいことではないよ。流石に、わたしも彼女も立場があるからね。別れることはないが…御互いの気持ちを正直に話し合った結果だ。一方的な言い分で家出をした訳でもないのだから。別に、王妃が政権に大きな役割を担っている訳ではないしね。王都にいなくても問題はない。そんな状況をきちんと話し合って出した答えだから、御前が心配することじゃない」
「…でも…」
 幾らダミアンが心配いらないと言ったところで、そうですか、とあっさり納得出来るはずもない。当然、ルークは眉根を寄せ、不安そうな表情を浮かべている。
 けれどダミアンは、未だ小さく笑ったまま。
「彼女には…彼女の言い分がある。それは、わたしが十分納得出来た理由だ。そして、わたしもそれを受け入れた。我々の結婚は、こう言うカタチになった。そう言うことだ」
 ダミアンはそう言うものの…ルークにはまだ、その現状を素直に飲み込むことが出来ない。
 ずっと…胸の奥に燻っている何か。それをそのままにして、ダミアンと向かい合うことがどう言う結果になるか、それは良くわかっていた。
 そんな関係は…必ず、崩壊する。
 大きな溜め息を一つ吐き出したルーク。その表情に、ダミアンも溜め息を一つ吐き出した。
「御前が納得出来ないと言うのなら…それで良い。前にも言ったはずだね?御前が倖せだと思えないのなら、一緒にいても意味がないと」
「…そう言う事では…」
 納得出来ないのなら、このまま別れても良い。はっきりとそう言われたようで…ルークはその視線を上げ、ダミアンを見つめた。
 真っ直ぐに自分を見つめる、透明な蒼い瞳。その眼差しを前に、ルークは小さく言葉を放つ。
「俺の気持ちは…変わらないつもりです。ダミ様のことは愛してます。大切に、想っています。でも…今のままでは、俺が…変わってしまうような気がして。いつか、若様と顔を合わせた時に…嫉妬の眼差しを向けてしまうかも知れない。奥方様にも、嫉妬心を向けてしまうかも知れない。そう思うと…俺自身が、嫌なんです。だから……少しだけ、時間を下さい…」
 多分…それが、正直な気持ち。
 ダミアンの婚姻が決まってから、ずっと胸の奥に燻っている想い。それは、どう足掻いても自分が辿り着けない場所にいる"奥方"と"子供"に対しての…嫉妬心。
 多分、ダミアンからは誰よりも愛されている。昔からずっと、(周囲から過保護だと言われるくらい)大切にして貰っていた。今でも、こうして一番に会いに来てくれるぐらい、愛されているのはわかっている。
 だからこそ、些細な嫉妬心が嫌で堪らない。愛されているのに…それでも、自分が一生かかっても手に入れられないものを手にした相手に対して、不満を感じてしまう自分が、嫌で堪らないのだ。
 そんなルークの気持ちを察したのか、ダミアンは大きく息を吐き出すと、その眼差しを伏せた。
「そう、か。まぁ、それが御前の正直な気持ちなら、少し時間を置こうか。御前がちゃんと考えた末にどうしたいのか、また聞かせておくれ。わたしも…その結果をね、ちゃんと受け止めるから」
「…ダミ様…」
 小さく笑ったダミアン。けれどその表情は、何処か元気がない。
 一番大切なヒトに、そんな顔をさせてしまった。それが更に、ルークの心を抉る。
「…御免なさい…」
 今は、その言葉しか出て来ない。
「謝らなくても良いから」
 二度目のその言葉。そしてソファーから立ち上がったダミアンは、項垂れるルークの頭にそっと手を置いて軽く撫でると、そのままリビングから出て行った。
 その背中を見送ることも出来ず…ただ、俯いて唇を噛み締める。
 いつか…時間が、解決してくれることなのだろうか…?時間が経てば、少しは気持ちも落ち着くのだろうか…?
 今は、それすらもわからなかった。

 数日後。情報局のエースの執務室を訪れたルークは、その執務室で、同じように用事があって訪れていたゼノンとも顔を合わせた。
「暫く見ないうちに…また痩せた?」
 ルークがソファーへと腰を下ろして直ぐ。隣に座っていたゼノンが開口一番でそう言った言葉に、ルークは苦笑する。
「ちょっとだけね。でも、別に具合が悪い訳じゃないからそんなに心配しないで。ちょっと…疲れてるだけだから」
「…そう…」
 いつもと同じように振舞おうとしているルーク。勿論、長い付き合いなのだから、そんな言葉で誤魔化される訳ではないが…余り触れてくれるな、とでも言われているような気がして、流石のゼノンもそれ以上深追いが出来なかった。
 だが、そんな様子をじっと見ていたエースは、敢えて口を開く。
「ダミアン様と…ちゃんと、話をしたのか?」
「……したよ…」
 口が重い。それだけで、方向性は察した。
「エースから聞いたけど…奥方様は、王都に戻って来ないんだって?だったら…少しは、気が楽なんじゃないの…?」
 重い雰囲気の中、ゼノンは先ほどエースから聞いた話をルークへと向ける。恐らく、ルークの心に潜む影はそこだろうと踏んで。
 当然、ルークからは溜め息が返って来る。
「…気が楽とか…そう言う問題じゃないじゃない。ダミ様は、別居していても別れる訳じゃないって言ってる。若様だって何れ王都に来るんだし。そうしたら、今までの通例なら俺が教育係だし…ずっと顔を合わせることになるじゃないさ。幾ら覚悟してたって、現実を見たら…何と言うか……」
 思わずそう零したルーク。ある意味、その予想通りの展開に、エースとゼノンは顔を見合わせる。
「御免…愚痴を零すつもりはなかったんだけど…」
 大きな溜め息に、エースも思わず溜め息を一つ。
「じゃあ、別れれば良いじゃないか」
「ちょっと、エース…」
 悩むルークの気持ちを逆撫でするかのようなエースの言葉に、ゼノンの方が慌てて声を上げる。
「だってそうだろう?みんなで散々言った結果だぞ?順風満帆で倖せ、だなんて、誰も考えてなかったはずだ。現実が厳しいのも、奥方様や若様が目に入ることも、わかっていたはずだろう?それ見たことかと言われることも、ある意味わかっていただろう…?辛いなら、別れるしかないじゃないか」
 口を噤んだルークに、エースはそう言葉を投げる。
 そう。ダミアンとの関係を続けていくと決めた時、それは誰もがわかっていたことだったはず。
 けれど、大丈夫だからと…覚悟を決めたと、先へ進む結論を出したのはルーク。だからこそ、それ見たことかと溜め息を吐き出されても文句は言えないのだ。
 全て、自業自得。
「…そうだよね…そう言われても、何も言えないや…」
「ルーク…」
 エースとルークに挟まれ、ゼノン一名が慌てている。
 多分…今ここでゼノンが何か口を挟んだところで…愛しい伴侶との関係も問題なく、子供たちも順調に育っていると言う状況に置かれているゼノンの言葉は、火に油を注ぐだけではないか。それは、ゼノンもわかっていた。
 だからと言って…このまま黙っていて良いものだろうか…?との不安も当然ある訳で。
 困ったように眉を寄せ、溜め息を吐き出すゼノン。その姿に、ルークの方が苦笑した。
「…御免ね、ゼノン。あんたを困らせるつもりはなかったんだ。エースの言うことも尤もだし…何より、俺が決めた道なのにね」
 そう言いながら、小さく息を吐き出す。
「ダミ様のことは、好きだよ。だからこそ…俺がこうやって悩み始めて、寂しそうな顔をさせてしまったことが申し訳ないと思う。簡単に別れられるか、って言われれば…多分それも悩むと思う」
「じゃあ、どうするつもりだ?」
 問いかけるエースに、ルークはソファーへと深く背を凭れる。
「どうする、って言われてもさ…要は、嫉妬してるだけ。それはわかってるんだ。ただ、それをどう昇華出来るか…それがわからない。ダミ様と結婚出来る訳でもないし、子供を産める訳でもない。残念だけど、それはずっと現実として見て来たことだから、わかってる。だったら…俺に出来ることって何?俺が、ダミ様の為に出来ることって?今更、思考が振り出しに戻っちゃった訳よ。馬鹿だと思うよ、自分でも」
「聞いてみれば良いじゃないか、ダミアン様に」
「聞いたところで、返って来る答えなんかずっと同じだよ。『ただ、傍にいてくれれば良い』って…ダミ様はそれしか言わないもん。敢えて何をしろとか、言われたことないし」
 口を挟んだエースの言葉にも、ルークは淡々と答える。
 状況は全部わかっている。ただ、自分の嫉妬を、どうにも出来ないだけで。だからこそ…厄介なのだ、と。
「傍にいれば良いって言うなら、そうすれば良いじゃないか。御前が一番傍で、ダミアン様のことを一番理解ってやれる存在になれば良いんじゃないのか?奥方様と同じ場所に立つことが出来ないなら、御前も奥方様が立てない場所にいれば良いんだ。そうだろう?」
「それはそうだけど…」
 エースの言葉に、ルークは困惑した表情を浮かべた。
 ルークの気持ちも、わからなくもない。ただ、エースの言うことも正論。同じ場所に立つことが出来ないことは、最初からわかっていたことなのだから。
 二名のやり取りを聞いていたゼノンも、小さく息を吐き出して少し考えを巡らせる。
「…こう言ったら、奥方様には申し訳ないと思うけど…俺も、エースの考えは納得するよ。嫉妬を昇華出来るか、出来ないか、って言ったら、それは考え方一つで変わると思うし。ダミアン様の気持ちを汲むと言うのなら、傍にいれば良い。御前と奥方様の立場は、元々違うんだもの。同じ土俵で戦おうと言うこと自体が間違いなんだと思う。でも、御前がそれが不満だって言うのなら、一旦離れるしかない。それを納得するかしないかで、昇華出来るか、出来ないかが変わると思うよ」
 ゼノンにもそう言われ、ルークは大きな溜め息を吐き出す。
「同じ土俵、ね…確かにそれはそうなんだけど…」
 未だ、気持ちははっきりしない。そんな表情を見せるルークに、エースは溜め息を一つ。
「ま、良く考えろよ。結論を出すのは御前だし、ダミアン様ともう一度良く話し合ってみれば良い。御互いに納得しないと…前へは進めないだろう?」
「そう、ね…」
 大きな溜め息を吐き出したルーク。もうそれ以上、何も言うことが出来ない。
 溜め息を零しながらエースの執務室を出て行くその背中を、苦渋の表情で見送ったエースとゼノン。
「…どう思う?」
 思わずそう問いかけたゼノンに、エースは再び溜め息を吐き出す。
「どう思う、って…不毛な問いかけだぞ?俺たちが結論を出せる訳じゃない。あの二名のことは…あの二名に任せるしかない。まぁ、どっちに転んだところで…仲魔でなくなる、と言うことじゃないんだから」
「まぁ、確かにね…」
 エースの言う通り。彼らには最早御手上げ状態なのだ。
 溜め息しか出て来ない。今は、そんな心境であった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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