聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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創世記 前編
魔界に、新たなる時代の兆しが見え始めていた。
この日初めて中枢部に足を踏み込むことを許された皇太子ことダミアンは、父親である大魔王の執務室へと呼ばれていた。
「ダミアン、おめでとう」
「有り難うございます」
目の前の大魔王ににっこりと微笑んだダミアン。輝く金色の髪の毛は、緩いウエーブを描き肩に落ちている。整った顔立ちは何処かまだ幼いものの、その身の熟しは皇太子の身分に十分であった。まさに、華である。
大魔王はそんなダミアンを瞳を細めて見つめ、軽く微笑んだ。
「御前が皇太子として正式に職務に付くに当たって、まず補佐が必要となる。そのことに関して、ルシフェル総参謀長が相談に乗ってくれよう」
「わかりました」
素直に頷いたダミアン。その態度に、大魔王も満足そうな笑みを浮かべていた。
ダミアンがまだ新しい己の執務室に戻って来るや否や、そのドアがノックされた。
「どうぞ」
声をかけると、やがて開いたドアから現れたのは黒を纏う背の高い一名の悪魔だった。
「いらっしゃい、ルシフェル」
にっこりと微笑むと、その悪魔…軍事局総参謀長のルシフェルも軽く微笑みを向けた。
「おめでとうございます。ダミアン様」
「有り難う」
見知った悪魔であるルシフェルは、その手に数枚の書類を持っていた。
「貴殿様の補佐の話は、大魔王陛下から聞いております。早速と思いまして、魔界貴族の中から選りすぐりの者の資料を御持ち致しました次第です」
「あぁ、御苦労様」
微笑みながら受け取った書類に目を通すダミアンに、ルシフェルは言葉を続けた。
「出来るだけ能力があって、貴殿様の年齢に近い者を選んでみました。御勧めと言う言い方は可笑しいかも知れませんが、わたしとしましてはこの者が宜しいかと…」
そう言ってルシフェルは、一枚の紙を選び出した。
「…デーモンと言うのか?」
その書類に視線を落としたダミアンは、いつになく真剣な表情に変わっていた。
「未だ士官学校に通う身ではありますが、わたしが選んだ魔界貴族の中でも、実力は一番です。何せ、彼のデーモン一族の名を戴く、唯一の生き残りですから」
「…デーモン一族…ねぇ」
ダミアンは、頭の中でその言葉を見つけだした。
「確か、数年前の戦で滅んだ一族だったね。生き残りがいたとは聞いていたけれど…まさかわたしに関わって来るとは思わなかったよ。デーモン一族と言えば、言魂師としての能力も然ることながら、誉れ高き歌声が有名だったね」
「えぇ、そうです。勿論、このデーモンにもその血は受け継がれております。きっと彼の歌声は、魔界随一ですよ」
「そう。それは楽しみだ。彼の卒業が待ち遠しいね」
にっこりと微笑むダミアンに、それが彼の答えであると察する。
「頼んだよ、ルシフェル」
「御意に」
軽く頭を下げたルシフェルは、そのままダミアンの執務室を出て行った。
「…楽しくなりそうだね」
ルシフェルが消えたドアに向かい、くすくすと笑いを零すダミアンであった。
それから数日後の、軍事局の参謀執務室。この執務室の主であるルシフェルの前に腰掛けるのは、情報局長官ジャン。そして、彼らの前に御茶を出している悪魔は、参謀補佐のマラフィアである。
「彼の悪魔は元気か?」
話題ついでに尋ねたルシフェルの声に、ジャンは小さく笑ってみせる。
「あぁ、エースのことか?元気も元気。モノ好きの変わり者との噂は相変わらずだけれどね」
この両名の間で話題になっている者こそ、まだ入局して間もない新魔、エースである。数少ない邪眼族の彼は、まだ上層部に入っていないにも関わらず、情報網の広さも然ることながら、戦地では実力以上の能力を発揮するとして、軍事局からの入局の申し入れも絶えなかったと噂の悪魔である。
「彼には是非、我が軍事局に来て貰いたかったのだけれどね」
くすくすと笑いながら言葉を零すルシフェル。
エースと言う若者は、士官学校に在籍していた当時から既に並外れた実力者であり、他を圧倒していた。おまけにその容姿は冷たい美しさを兼ね備えていると、評判であった。そんな希少価値のある若者を、何処の局でも欲しがるのは無理もないことであるが…その話題は扠置き。
控え目なノックの音が、両名の話題を一時制止させた。
「わたしが出ましょう」
「あぁ、頼むよ」
役目を買って出たマラフィアに頼み話題を戻そうとした時、開けられたドアの隙間から覗いた姿に考えを改める。
「…あぁ、わたしが代わろう。ジャン、ちょっと待っていてくれ」
そう声をかけ、ルシフェルは席を立った。そして、廊下に見える姿に声をかける。
「デーモン殿、入られたらどうだ?」
「…失礼します」
声に促されるままに入室して来たその姿に、マラフィアもジャンも思わず眼差しを向ける。
士官学校の制服を身に纏い、黄金の髪を後ろで束ねた彼は、その金色の眼差しを真っ直にルシフェルに向けていた。それはとても冷たく、きつい眼差しだった。
「どうなされた?」
突然の彼の訪問に、ルシフェルはそう問いかける。するとデーモンは、不機嫌そうな表情を浮かべて、ルシフェルの問いに対して口を開いた。
「皇太子殿下にわたしを売ったのは貴殿ですか?」
「…売ったなどと、悪魔聞きの悪いことを。ただ、紹介しただけだろう。君の為にも、良いことだとは思うが?」
問いかけた声に、デーモンは鋭い眼差しを送る。
「我が一族を、笑いものにしたいのですか」
「笑いもの?」
怪訝そうに眉を潜めたルシフェルに御構いなしに、デーモンは更に言葉を続けた。
「滅びかけた一族の者を、今更表舞台に引き出してどうなさるおつもりだ、と聞いているのです」
「ちょっと待て。わたしは別に、君を笑いものにしようだなどとは考えていない」
「ならば、どう言うおつもりで…っ」
「まぁ、落ち着いたらどうだ」
「わたしは十分、落ち着いていますっ」
デーモンの答えに、ルシフェルは溜め息を一つ。
「デーモン殿、まずは他悪魔の話に耳を傾けることを、君に願いたいものだね」
「……」
その言葉に、デーモンは口を噤む。それを見届け、ルシフェルは再び口を開いた。
「わたしは、君の一族を笑いものにしようと考えてダミアン様の補佐に選んだ訳ではない。君の実力を考慮しての結果だと言うことを、まずわかって貰いたい」
それは、確かに嘘ではない。ルシフェルが選んだ魔界貴族の中でも、デーモンの実力は確かに群を抜いていたのだから。
「君にはとても大きな可能性が眠っている。それをみすみす捨てるような真似をして欲しくはなかっただけのこと。第一、君の同期でも中枢を目指す者は多いだろう?」
「だからと言って、わたしがその一名であるとは限りません」
「それは確かにそうだ。君の性格から考えてもな」
そうつぶやき、溜め息を一つ。このプライドの塊の彼には、変に捻くれたところがある。当然、最初からダミアンの為に働けと言っても、素直に納得するはずはない。
「…わたしはね、殿下が幼い頃から見知っている。殿下には、今まで気を許せる友がいなかった。だからわたしは、君をあの方の補佐に選んだ。君は殿下と歳も近い。良き友になってくれればと思ってのこと」
「…良き、友…」
ふとデーモンの表情が和らいだのを、ルシフェルは見逃さなかった。軽く微笑んで更にデーモンの警戒心を解き、極め付け。
「君の社会勉強の為にも、それから一族再建の為にも…良いことだとは思わないか?」
「…はぁ…」
口が達者だと評判のこのデーモンを、ルシフェルは上手いこと言いくるめてしまった。
そして何より、ルシフェルの特権、他の警戒心を解いてしまう微笑みを向けられてしまっては、デーモンは素直に従うしか手段はなかった。
「では、君の卒業を楽しみにしているよ」
にっこりと微笑んだまま、ルシフェルはデーモンを送り出す。その始終を見ていたジャンは、デーモンが出て行くのを待っていたかのように、小さな笑いを零した。
「今のが、皇太子補佐の第一候補で話題のデーモンか」
「そう言うことだ」
一仕事終えたような顔で、再びジャンの前に腰を落としたルシフェルに、ジャンは興味深い顔で尋ねる。
「皇太子殿下はともかく、貴方がそこまで彼に執着する理由が知りたいものだね」
「理由?」
「そう。貴方の歳にもなって、特定の恋悪魔の話題もないのは可笑しいじゃないか?まさかとは思うが…」
「気の回し過ぎだ。それにわたしの恋悪魔なら、ほら、そこにいるだろう?」
くすくすと笑いを零す先には、参謀補佐のマラフィアがいる。
「彼は良き相棒と言っていたんじゃなかったか?」
「どちらも同じようなモノだろう?」
「…尤もだな」
溜め息混じりの笑い。
「で、真相は?」
改めて問いかけたジャンの声。ルシフェルは小さく笑ったかと思うと、直ぐにジャンに問い返す。
「彼の、配属希望の調査書を見たことがあるか?」
「いや?何処を希望しているんだ?」
「白紙、だ」
「白紙?」
「そう。何処も希望してはいないと言うことだ」
その答えに、ジャンが呆然としたのは言うまでもないだろう。士官学校でも優秀な成績だと噂のデーモンが、何処の局にも配属希望を出していないなどと、一体誰が信じるだろう。
「何かの、間違いじゃないのか?」
当然のように問い返す声に、溜め息を吐き出す。
「それが、彼の性格だ。一族の再建を願う反面、彼はそれを実行しようとはしない。それが謎だと、専らの噂になってはいるけれどね」
「しかし…それなら何故、士官学校に入学を?皆、出世が目的で入学するだろうに」
「恐らく、士官学校にいたのは不可抗力だ。そしてそれが彼にとっては不満だったのかも知れない。一種の、彼のトラウマだ。今のままでは、彼は己の中の能力に気付く前に他に潰されてしまう。それを阻止する為には、ダミアン様の傍にいることが最適だと思うのだよ。ダミアン様なら、彼の中の能力を引き出してくれよう」
それがルシフェルの考えであった。そして、デーモンの為にも最も良い手段であることには、間違いはなかった。
ジャンが情報局へ戻った後、椅子に腰掛けたまま窓の外に視線を向けているルシフェルに向けて、マラフィアは小さく問いかける。
「…本当は…まだ他に理由があったのでは?」
問いかけた声に、ルシフェルは小さく微笑む。
「無事に生きていれば…彼と然程歳も変わらないだろう」
まるで、独言のようにつぶやいた声。そのつぶやきに、マラフィアは溜め息を一つ。ルシフェルが浮かべた眼差しは、何かを思い詰めた小さな光がある。
「理由は一つ。彼の成長を見守る為に…だ。境遇は…わたしに良く似ている。そして、"彼(か)の君"にも…」
「…確か、御名前は…」
「"ルカ"…そう聞いた。それ以上、何も問わなかった。無事なのかすら、わからない。どうもわたしは利己主義(エゴイスト)であるようだ。結局、わたし自身の身勝手で"彼の君"を置き去りにしてしまった。そして今またデーモン殿を"彼の君"の代わりに…」
「それは、貴殿に限ったことではありません。誰しも、エゴはあるものです。デーモン殿ことは、あの方を思ってのこと。貴殿のエゴを満たす為だった訳ではないはずです。貴殿が、罪悪感を感じる必要はありません。デーモン殿のことも…"ルカ"様のことも」
「……それが、答えか」
「そうです」
「…わたしの負け、だ。御前には勝てない」
苦笑したルシフェルに、マラフィアは溜め息を一つ。
「勝ち負けではありません。わたしは、貴殿の補佐ですから」
「そうだな。全く、御前がわたしの恋悪魔でなかったのが残念だよ」
「…全くです」
マラフィアの言葉に、ルシフェルは再び苦笑を零していた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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