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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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太陽の腕 月の瞳 1
こちらは、以前のHPで2000年5月1日にUPしたものです
 7話完結 act.1

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◇◆◇
 長閑と言う表現が、とても良く似合う場所がある。
 天界でも魔界でもなく、ある意味中立の立場を持つこの場所を治めているのは、他ならぬ雷神族である。と言うことは、当然ここは雷神界と言うことになる。
 広い野原が見渡せる小高い丘の上に、真白な神殿が一つ。神殿の裏手には大きな森があり、まさに戦いを好まない雷帝の趣味の領域である。
 さて、雷帝には一名の世継ぎがいた。
 まだ少年ではあるが、その能力は底知れず、一部の者からは、将来は雷帝を上回る程の権力を手にするだろうと噂されていた。
 あくまでも、噂…であるが。
 そして、当の本魔は……

「…様ぁ……若様ぁ~……」
 神殿の奥から、彼を呼ぶ声。しかしそれを敢えて無視して、彼は足音を忍ばせて神殿を抜け出た。
「…ったくぅ…毎日監視付きじゃ、こっちの身が持たないってばよ…」
 愚痴を零しながら、彼は裏手の森へと向かう。
 彼が纏っているのは、動き易さを重視した半袖シャツとハーフパンツ。そして最小限の正装としてのマント。何とも不釣合いな格好であるが、これには訳があるのだ。
 本来、マントなどと言う堅苦しいモノは苦手であるのだが…白い顔に赤と黒の紋様を頂いている為、うっかり身に付けずに出歩いた日には必ずと言っていい程、気の早い天使共に魔族の子供と間違えられて攻撃を仕掛けられるのである。
 仮にも、雷帝の一粒種が…との周囲の言葉により、彼は外出の際には、最小限の正装としてのマントだけでも、身に付けなければならなくなった訳である。
 確かに、彼の顔の紋様は、魔族と余り変わりない。ただ、右頬の稲妻の紋様が、彼が雷神族であることを証明していたのだが。
 彼はまだまだ遊びたい盛り。森の中や野原を駆け回るおかげで、折角の真白なマントも、毎日泥に汚れて、元の色は既に判別出来ないのだが…。
 それは扠置き。
 森の中に逃げ込んで来た彼は、お気に入りの古い大木へと登り始めた。そして、太い枝に腰を降ろすと、そこから見える景色に目を向ける。
 この大木に登ると、森のずっと向こうの市街地まで見渡せる。
 一見して平和そのもののこの雷神界。だが最近、この神殿近くにまで、徘徊する天界人や魔族が多く目立ってきていることが、雷帝の目下の悩みの種であることを彼も察していた。
 中立は、続かないかも知れない。
 彼には、詳しい状況を把握する情報網もなければ、それを知り得る認識力も理解力もまだ欠けているのだが、それでも異様な雰囲気は感じ取っていた。
 大きな溜め息が一つ。
 自分の無力さがわかるにつれ、その胸は重くなるのだった。

 夕方になって神殿に戻って来た彼は、自室に帰った早々に、父である雷帝に呼び出された。
「何か用ですか?」
 呼ばれたのは、謁見用の広間。その遠くに見える雷帝の影に向かって、彼は問いかける。
「用が無ければ、ここに呼んだりはしない」
 低い声が返ってきて、彼は尤もだと思った。
「それでは…何です?俺を呼んだ理由は」
 改めて尋ねると、その影はゆらりとその身を動かした。
「大事な話だ。冗談では済まされないことを、あらかじめ伝えておく」
 そこで一旦言葉を切り、大きく息を吐く。そして再び、言葉が届いた。
「御前に、はっきりと話をした事はなかったが…我が能力と王位を継ぐ者として、状況は知る必要があるだろう。この雷神界の、行く末のことだ」
「……」
 突然の重い内容に、彼は居住まいを正した。
「先日、天界から要請があった。話は簡単だ。我々に、天界に属せと言うことだった。我々が天界に属せば、必然と魔界を敵に回すことになる。そのことに関し、御前はどう思う?」
「……」
 質問されている内容はわかる。だが、その答えを上手く見つけることが出来ない。
「黙っていてはわからんだろう?どんなことでも良い。御前の考えを聞いておきたいのだ」
 再び答えを催促され、彼はとにかく、自分の気持ちは伝えようと思った。
「…反対だ、俺は」
「何故だ?」
「…戦いは、嫌いじゃない。でも、ここを荒らされるのは嫌だ。中立を護れるのなら、ここはそのまま平和な地であって欲しい。ただ…それだけ」
 そう。中立と言う立場故に戦った経験はまだないものの、身を護ると言う意味で、戦う術は知っている。その上で、戦うことを毛嫌いしている訳ではない。ただ、生まれ育ったこの平和な地を、戦地にしたくないだけなのだ。
 雷帝は僅かに声を零して笑い、座っていた王座からゆらりと立ち上がった。そして、彼の前までやって来る。
「そうか。御前が嫌なら、断ればいいだけのこと。心配しなくてもいい」
 そう言って彼の頭を一混ぜし、雷帝は自ら広間を出て行った。
----背中が、小さくなったみたい…
 その後ろ姿を見送りながら、彼はそんなことを考えていた。
 一族で一番の大柄。その巨大な姿と威厳を持つ雷帝が小さくなった訳ではないのだが、彼の目にはそう映っていたのだ。
 雷帝から直に、この地の情勢を聞かされたと言う事実。たったそれだけのことが、彼にとっては、もう自分が無邪気な子供ではいられないのだと思い知らされた出来事だった。

◇◆◇

 それから、数日後のこと。
 彼は、森の中を流れる小川の傍に座り込み、その流れをぼんやりと眺めていた。
 雷帝から聞いた話によると、彼と約束した通り、天界への協力は断ったとのことだった。
 しかし、それがホントに良いことだったのかと問われると、彼には何とも返す答えが見つからないのだ。
 彼が思案に暮れていた時、背後の草藪がガサッと動き、驚いた彼は背後を振り返った。
「誰だ…っ!?」
 その直後、視界に入った姿に、彼は目を見開く。
 倒れていたのだ。白い聖衣を纏った、天界人が。
「おい…ちょっと…大丈夫か?」
 抱き起こし、声をかけても反応はない。
 明らかに女性型であろう天界人は、固く目を閉じて、荒い呼吸を零している。
「ちょっと待ってよぉ…」
 悪魔よりは天界人の方が苦手…と言う彼にしてみれば、余り受け入れたくない状況である。だが、こうなってしまった以上…彼の立場上も放置しておく訳にもいかない。この天界人が、目覚めた時に何をするかわからないからだ。
 仕方がないと溜め息を吐き出し、彼は天界人の姿を見つめていた。

 どれくらいの時間が経ったことだろう。
 小川のせせらぎが耳に届き、彼女はうっすらと目を開けた。
 刹那。
「気がついた?」
「…っ!」
 ハッとして身体を起こした彼女は、傍の木に寄りかかって座っている姿に、身を固くした。
 その彼女の反応で、自分がどう思われているかを感じたのだろう。彼は軽く微笑んで、汚れてはいるが、正装であることを示すマントを見せた。
「心配いらないよ。別に俺は、あんたを取って食おうって訳じゃないんだから」
「……」
 しかし、彼女の表情は、以前として固いままである。
「んな顔するなって。俺は、魔族じゃないんだから」
「…魔族ではない?」
 初めて口を開いた彼女は、彼の素性に気がつかなかったらしい。
「一応、この辺りはウチの領土だぜ。ほら」
 彼は、自分の右頬の紋様を見せる。
「雷神族…そう」
 やっと安堵の表情を見せた彼女に、彼は目を細めた。
「あんた、名前は?」
「…ユーリス。貴公は?」
 落ち着いて見れば、雷神族であったことも、正装であることもわかり得た彼女は、改めて彼にそう問いかけた。
「ん?俺?俺はライデンってんだ」
 その名前には、心当たりがあったのだろう。ユーリスは居住まいを正した。
「失礼致しました。貴公がライデン殿下とは露知らず…不躾な振舞、お許し下さい」
「別にいいよ。親父はともかく、俺はそんなに偉くないんだから。それよりもさぁ、その恐縮しまくってる態度、何とかしてくんない?そう言うの、苦手で…」
 肩凝っちゃう。
 そう言って肩を回す姿に、ユーリスは小さな笑みを零した。
 やっと柔らかくなった表情を見て、彼…ライデンは、それを問いかけてみた。
「それよりも…あんたは何で、こんなとこにいたの?」
 常識では、余り遭遇しない出会い方だった訳で…当然、それが不思議だったのだ。
 するとユーリスは、すっとその表情を伏せた。
「その…魔族に、追われていて…」
「戦うつもりだったの?」
 そう問いかけた声が、警戒心を乗せていたのは、無意識に、だったのだろう。
「雷神界は中立だってこと、知らない訳じゃないだろう?ここで剣を抜くのは禁じられている。戦うつもりだったのなら、罰せられても文句は言えないぞ」
「いえ、戦うつもりでは…」
「じゃあ、何でだよ!?」
 必要以上に声を荒立てたその時。再び草藪から誰かの気配を感じた。
「誰だっ!?」
 敏感になっていたライデンが、声を荒げて振り返った時、そこには黒を纏った魔族がいた。
「…見つけたぞ、ユーリス!」
「アディエラ…」
 明らかに二名は顔見知りのようであった。
 アディエラと呼ばれた悪魔の手に握られている剣に、ライデンの視線が鋭くなる。
「剣をしまえ!ここを何処だと思ってるんだ!」
「何者だ、貴様」
 アディエラは、自分を睨み付ける、薄汚れたマントを纏った少年を怪訝そうに見つめた。
「ここはウチの領土だ!勝手な真似は許さない!」
「ウチ…?」
 相も変わらず、怪訝そうに眉を顰るアディエラに、見兼ねたユーリスが声をかける。
「こちらは、雷帝のご子息、ライデン殿下です」
 その言葉に、アディエラもハッとしたように剣をしまい、その場に跪く。
「ライデン殿下とは…申し訳ございません!」
「…ったく…何だよ、今日はぁ…」
 訳のわからない状況に、ライデンは大きな溜め息を吐き出す。そして、ユーリスとアディエラとを、交互に見た。
「戦うなら、他でやってくれ。ここで剣を抜くことは、俺が許さない」
「いや、戦うつもりでは…」
 先程のユーリスと同じように、アディエラもそう口走る。
「戦うつもりがないのなら、どうして剣を抜いた?」
「剣は、仲魔に敵と思わせる為の手段で…わたしは別に、ユーリスに対しては…その…」
「…?」
 首を傾げるライデンに、アディエラもユーリスも、困ったように顔を見合わせていた。
 通常、彼の年になれば、それぐらいの状況はわかりそうなものであるが…何せ、常日頃野原や森を駆け回っていたライデンである。身体だけ大きくなっても、頭の中は子供のまま、だったりする。
 その表情でそれを察したのか、溜め息を一つ吐き出したアディエラは、諦めて口を開いた。
「その…天界人と悪魔と言うのは、敵対する同志故に、相対して引かれ合うものでもあると…わかりますか?」
「わかんない」
「………」
 全く状況がわからないということが明白な彼の表情に、ユーリスが困り顔のアディエラを制し、代わりに口を開いた。
「殿下。要は、天界人、悪魔の関係を抜きにして、お互いの存在を必要としていると言うことです」
「つまり、ここで隠れて会ってた訳?」
「………」
 ずばりと確信を突かれ、アディエラもユーリスも、思わず頬を染めた。
「でも、何でユーリスは逃げる必要があった訳?しかも、禁圧されている剣を抜いて…まぁ、他の悪魔に見られたから、カモフラージュに、ってことならわかるけど…そんな危険を犯す必要が、何処にある訳?」
 全く以って、無邪気な質問である。
「魔界を追放されれば、それに越したことはない。わたしが悪魔である以上、"精神愛(プラトニック)"以上の愛は求められない。愛していても、キスをすることも、抱き締めることも許されないのです。わたしが悪魔であり、彼女が天界人である以上」
 アディエラの声のトーンで、それが非常に深刻な悩みであるのだと察することが出来た。
「"高尚な愛(プラトニック)"はいいクセに、それ以上は許されないなんて…訳わかんないじゃん。ややこしいよなぁ、天界人、悪魔間の恋愛は…」
「古より、敵対しているが故の決め事です。基本的には、"精神愛"も許されてはいないのですが…」
 そうつぶやく、ユーリスの声。
 その声に、ライデンは大きな溜め息を吐いた。
「ま、いいけどさ。戦うつもりがないのなら、俺は文句は言わない。ここで何をやろうと、俺には関係ないことだからな。天界人、悪魔のどちらに付く訳でもないし、密告をするつもりもない」
「殿下…」
 彼は、新たに付いた土埃を軽く払うと、にっこりと微笑んで二名を見た。
 この時期の天界と魔界との諍いは、長い歴史の中で一番落ち着いている時であったことを、彼はまだ知らずにいたのだ。
 そして、この二名が、後にこの雷神界の中立と言う立場を護る為に、深く関わって来ると言うことも。
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