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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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太陽の腕 月の瞳 2
こちらは、以前のHPで2000年5月4日にUPしたものです
 7話完結 act. 2

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◇◆◇
 あの日から、どれくらいの月日が経っただろう。
 少年だった彼は、すっかり青年として成長していた。尤も、それは外見が主で、中身は…余り進歩がなかったが。

「"太陽の腕"と"月の瞳"…?」
 雷帝の命で広間に呼び出された彼は、その不可解な言葉を繰り返していた。
「そうだ。"太陽の腕"を持つものは魔族、"月の瞳"を持つものは天界人であると言うことはわかっている。その二名が揃った時、この国は護られる。ただし、その二名を見つけるのは、時期王位継承者である御前だけだ」
「……」
 現在、この雷神界がおかれている状況は、まさに最悪と言っても過言ではなかった。
 昔から平和を護って来たこの地が、今や天界と魔界の板挟みに遭っている状況なのだから。
 天界と魔界、その両方から協力を求められ、現況を護ることさえ危ういのである。
「"太陽の腕"と"月の瞳"を持つ両名さえ見つければ、戦いに巻き込まれずとも済むのですか?本当に、その二名の存在だけで…?」
 問いかけたライデンの声に、雷帝は答える。
「伝説には、そう言い残されておる」
「……」
 伝説ほど、都合良く解釈されるモノはないだろう。
 しかし、平和を死護したいと思う彼らには、それに縋るしかないことも確かなのだ。
「捜しますよ。捜し出せばいいんでしょう?で、その"太陽の腕"と"月の瞳"を持つものの手がかりは…?」
 諦めたようにそう言った彼の声に、雷帝は一つ間を置く。
「何でも、"太陽の腕"と"月の瞳"を持つ両名は、お互いに引かれ合う存在らしい」
「しかし、天界人、悪魔間ですよ?引かれ合うなんて、禁圧されているのに…」
 そうつぶやきながら、ライデンの胸の中に、何かが引っかかっているような気がした。
 だが、それを思い出すには、現状が悪い。今は、それどころではないのだから。
 思い出すことを諦めたライデンは、再び雷帝に問いかける。
「他には?」
「…ない」
「…は?」
「だから、他にはなにもない」
「………」
 暫しの沈黙。そして、沈黙を破った、ライデンの声。
「…ちょっとぉ…それで俺に捜せって言うの!?冗談きっついよぉ…」
 思わず本音を零した声に、雷帝は咳払いを一つ。
「…失礼しました…」
 ハッとして口を押さえた彼の姿に、雷帝は呆れた溜め息を一つ…
「…まだ少し、落ち着きが足りないようだな。あれ程、言葉遣いには気をつけよと釘を差して来たにも関わらず…」
「…以後、気をつけます…」
 そろそろ、社交会に出席する機会も出て来るだろうと、礼儀作法を叩き込まれて来たにも関わらず、この為体…雷帝が溜め息を吐き出すのも当然と言えば当然である。
「まぁ良い。とにかく、"太陽の腕"と"月の瞳"を持つ者を捜して来るのだぞ」
「…御意に」
 静かに、そして丁寧に頭を下げ、彼は広間から出て行った。
 その後ろを、雷帝が心配そうな表情で見送っていたのは言うまでもない…

◇◆◇
 "太陽の腕"を持つ者を捜しに、彼はまず魔界にやって来ていた。
 しかし、後先考えず、思いつきでやって来た為に、魔界での勝手がわからず…何から手を付けていいのかもまるで考えていなかった。
「…さて、どうしようかねぇ…」
 転移して来た場所は、王都からかなり離れた草原だった。
 遠くの方に情報局の高いアンテナが見えるが、余りにも遠すぎる為に、霞みがかかっている。
「大魔王陛下にも連絡してないしなぁ…"太陽の腕"を見つける手がかりも、なぁ~んにもない訳か…」
 大きな溜め息を一つ。しかし、ここでいつまでも時間を潰しているわけにもいかない訳で…仕方なく彼は、情報局のアンテナを目指して歩き始めた。

「ひょえ~…でっけぇ…」
 《地獄中央情報局》と書かれた看板を掲げた大きな鉄の門の前に立ち、彼はその巨大な建物を見上げていた。
 余りの大きさにただ茫然と見上げるだけの彼は、まるで田舎から出て来た青年が、都会のビルの高さに戸惑う姿と、まるで相違がなかった。
----そうだよなぁ…雷神界に、こんなにでっかい建物なんてないもんなぁ…お粗末ながら、ウチの神殿だって、こんなにでかくないし…
 ぼんやりとそんなことを考えていたライデンの耳に、不意に届いた声。
「…もしや、ライデン殿では…?」
「ん?」
 名前を呼ばれ、振り返ってみれば、そこに立っていたのは金の巻毛の青年。そして、その影に隠れるように佇む、魔族の青年だった。
----確か、魔界の…
「えっと…ダミアン殿下、だっけ?」
「いかにも」
 戸惑い気味の彼の声に、金の巻毛の青年…魔界の皇太子、ダミアンはにっこりと微笑んだ。
「どうなされた?このような所で」
 ダミアンの問いかけに、彼は一瞬の後、照れたような笑いを零した。
「いや、ちょっと…」
「もしお暇なら、少し寄っていかれたらどうです?魔界に用がおありなら、話を聞きますが?」
「いいんですか!?」
「構わんよな、デーモン。どうせ、散歩の途中だしな」
「…はぁ…」
 満面の笑みを浮かべるライデンをよそに、ダミアンの背後にいた青年…デーモンは、怪訝そうな表情を浮かべていた。
「それなら善は急げ。さぁ、参りましょう、殿下」
 にっこりと微笑むダミアンに促され、彼も歩みを進めた。
 約一名…デーモンだけは、重たい足取りであったが。

 魔界の中心、枢密院の一角にあるダミアンの執務室。その部屋のソファーに腰掛けたライデンは、自分の正面にいるダミアンよりも、御茶汲みをさせられているデーモンの方に興味があるらしい。
「…彼は?」
 問いかけると、ダミアンは軽く微笑んで、デーモンを己の傍に呼んだ。
「デーモンと言うんだ。わたしの補佐と言うことになってはいるが、今の所はまだ庶務一般が主な仕事だな。まぁ、出生も良いし、頭の回転も早いから、直ぐに役職に付けるだろう。将来は有望だぞ、デーモン」
「…はぁ…」
 にっこりと笑うダミアンは、デーモンの頭をくしゃっと一混ぜした。当然、デーモンは困り顔、である。
----容赦ないなぁ、この悪魔は…
 小さな溜め息を吐き出したライデン。デーモンが気の毒でならないのだ。
「デーモンにも紹介しておこう。こちらは、雷神界の御曹司、ライデン殿下だ。わたしもだいぶ前に一度会っただけだが…な」
「と言うと、中立区域の…」
「そう言うことだ」
 中立区域。雷神界が、そう呼ばれていることに、彼は僅かな抵抗を覚えていた。
 確かに、その言葉に偽りはないだろう。だが、そこは単なる中立国ではなく、雷神族と言う種族が支配する世界であると言うことを忘れて欲しくはないと言う、切実な思いがあるのだ。
 それに、ダミアンはともかく…デーモンには余り歓迎されていないらしい、と言うことも、彼にとっては気が重いところでもある。
----俺だって、好きで来た訳じゃないやい…
 そう思ってはみたものの、これから協力を得られるかも知れない相手である。それを、表情に出せる訳もなく。
 すっと、表情を引き締めたライデンの、ちょっとした心の成長でもある。
「で、今回魔界に降り立った訳と言うのは?御見かけしたところ、護者もおられないようだし…何か訳がおありだろう?」
「えっと…悪魔をね、捜しに来たんだけど…」
 にっこりと微笑んで尋ねられると、どうして素直に喋ってしまうのだろう。
 それが、ダミアンの技法の一つであるとは、この時の彼にはまだわからないことであったが。
「悪魔を?何の為に?」
 彼の答えに興味を示したダミアンは、再び問いかける。
 それは、皇太子としての表情。今までのダミアンと違うと言うことを、彼は何処まで悟ったのだろう…否、悟ってはいないかも知れない。
「俺たちの…国を、護る為」
 そう口にするのは、彼も些か抵抗があった。
 中立の立場にある雷神界。天界も魔界も、協力を得たいと思って、試行錯誤を繰り返している状況の中の、彼の発言である。相手に警戒されても仕方がない。
 だが、ダミアンはそれに対して、深く尋ねることはなかった。
「名前は?」
「…え?」
「その捜し主の名前、だ」
「…その…知らないんだ」
「知らない?」
「そう…」
 応答を繰り返す後、彼は、自分が何にも準備していないことが恥ずかしく思えてならなかった。
 しかし、それを察しているのかダミアンも当たり障りのない質問を繰り返す。
「何か…手がかりぐらいはあるのだろう?何もないのに、捜せる訳がない」
 そう問いかけられ、彼は、それを尋ねてみることを決めた。
「…"太陽の腕"を持つ者、って聞いたんだ」
「"太陽の腕"、ねぇ…デーモン、聞いたことあるか?」
「…いえ…?」
 ダミアンどころか、デーモンまで首を傾げている。
 本当は、彼も首を傾げたい思いで山々だが。
「して、その名も知らない"太陽の腕"を持つものが、何故雷神界を護る役に立つと?」
「俺も、詳しくはわからない。でも、親父…いや、父上が、そう言ってたんだ。"太陽の腕"を持つ魔族と、"月の瞳"を持つ天界人。その両名が揃えば、雷神界の平和は約束されるって、伝説があるって…」
「…魔族と天界人?」
「そう。お互いに、引かれ合う存在らしいけど…」
「と言うと、禁圧を犯した者…か。数は多くないはずだが…」
 思いを巡らせるように、口を噤んだダミアン。
 暫しの沈黙の中、彼は、雷帝と話していた時に思い出しかけた何かが、再び脳裏に過っていた。
『…天界人と悪魔と言うのは、敵対する同志故に、相対して引かれ合うものでもあると…』
「…天界人と…悪魔……」
 思わず零した声。その声に、ダミアンが視線を向けていた。
「ライデン殿…?」
 だが今は、その呼びかけの声も、耳に入らない。
----誰だっけ…そう言ってたのは……あの時の悪魔の名前は…天界人の名前は………
「…エディ…違うな……アディエ………そうだ、アディエラ!」
「アディエラ?聞いたことないな。御前は?」
 ダミアンは、デーモンに問いかける。
「調べます」
 そう答えると、デーモンは隣の部屋に向かった。どうやらそこにコンピューターがあるらしい。
「あれは、まだ俺が子供の時だったから…あの頃、あんたと同じ位だったと思ったから、まだそんなに歳はいってないはずだよ!」
 雷帝に躾られた礼儀作法は何処へやら…彼は興奮の余り、すっかり礼儀作法など忘れ去っていたのだが、ダミアンはそれを彼の本性と見て取り、くすくすと笑いを零していた。
「あ…済みません。興奮して…」
 笑い声にはたと気がつき、彼は頬を赤らめて俯く。
「いや、構わないよ。気取らない方が、わたしも好きだから」
 ダミアンはにっこりと微笑む。
「生憎、わたしはどうしても手放せない職務があってね。でも、デーモンに協力させよう。あぁ見えてやり手だよ。行動力もあるしね。まだ修業の身だから余り誉める訳にはいかないが、わたしが保障するよ」
「はぁ…」
 気は重かったが…この上もない協力者を得たことは、幸運と言うべきだっただろう。
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