聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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太陽の腕 月の瞳 4
再び軍事局の、マラフィアの執務室に戻って来た彼らは、無言のまま、ソファーに腰を降ろしていた。尤も、マラフィアは再びお茶を淹れていたが。
「どうぞ」
目の前に紅茶が置かれると、ライデンは我に返ったようにソファーから立ち上がった。
「…アディエラを連れていく許可を、下さい。アディエラの、昔の上司の貴殿から。俺は、その為に来たんです」
紅茶を置き終えると、マラフィアは窓辺へと移動し、そこから外を見つめていた。
「わたしよりも、大魔王陛下の許可が必要でしょう?」
「貴殿が許可を与えてくれさえすれば、後は俺が陛下に掛け合う。あんたたちが、魔界を護りたいと思うように…俺は、俺が生まれ育った雷神界を、護りたいんだ。侵されたくないんだ…っ!だから、頼む…っ!!」
「殿下…っ」
驚いたようなデーモンの声に、マラフィアは思わず振り返る。そしてそこに、床に額を擦り付けるかのように土下座をしている彼の姿を見つけた。
「こんなことしか…俺には出来ないよ。でも、護りたいんだ!親父が護って来たあの土地を…愛して来たあの土地を、誰にも渡したくないんだ!失いたくないんだ…っ!」
「御止め下さい、殿下!雷帝の子息たる貴公が、そのような真似を…」
彼の前に跪き、慌ててそう言ったマラフィアの声にも、彼は首を横に振った。
「俺は、雷帝の息子だってことを押しつけるつもりはない。ここでは俺は、何の身分も持たない。魔界では、俺は一名では何にも出来ないし…あんたたちの能力を借りなければ、アディエラを見つけることも出来なかった。俺は、無力だよ。だから、せめて……」
「殿下…」
マラフィアが、困ったように眉を寄せたとき。今まで無言を通して来たデーモンが、すっとその床に膝を付いた。
そして。
「吾輩からも…お願いしたい」
「デーモン殿…っ」
唐突に、彼の隣で、彼と同じように頭を下げたデーモンの行動に、マラフィアのみならず、彼もまた息を飲んでいた。
しかし、デーモンの表情は真剣そのもので、それが単なる形式上の行動ではないことを語っていた。
この二名の、思いがけない行動に、マラフィアは暫し茫然としつつ…やがて、諦めたような溜め息が一つ、零れた。
「殿下、デーモン殿、御顔を上げてください」
「マラフィア殿、それでは…」
そっと顔を上げ、期待の眼差しでマラフィアを見つめた彼に、思わず苦笑するマラフィア。
「貴公の行動や言葉には、驚きの連続です。それにまさか…デーモン殿まで、このようなことをなさるとは」
「……」
僅かに頬を染めたデーモン。
「わたしから、大魔王陛下にお話ししましょう。心配には及びません。必ず許可を得て来ます故」
にっこりと微笑むマラフィアに、彼もつられて満面の笑み。
「では、ここでお待ち下さい。直に戻って参ります」
「ありがとう」
気が抜けたようにべったりと床に座り込んだ彼に、そっと手を差し延べ、しっかりと握手をすると、マラフィアは踵を返して執務室を出ていった。
「デーモン殿、あんたもありがとうな」
立ち上がったデーモンの姿に、彼は微笑む。
「いえ…」
デーモンの顔は、まだ赤かった。
ライデンもやっとで立ち上がり、先程までマラフィアが見ていたのと同じ景色に目を向けた。
「あんたも…やっぱり納得出来ない?」
ふと、そう問いかけてみる。
「何を…ですか?」
問い返すデーモンの声に、ライデンは振り返る。
「禁忌を犯してまで、誰かを好きになること。俺が、初めてアディエラとユーリスに会った時はね、俺もまだ子供だったから、そんなに深い想いがあるなんて、全然わからなかった。でも…今なら少し、わかるような気がするんだ」
「想う相手でも…?」
問いかけられ、思わず苦笑する。
「ううん。雷神界には、そう言う感情を抱ける相手は、誰も傍に寄せてくれないし…必要ともしてなかったから。でもね、そんな風に誰かを好きになれたら、きっと倖せだろうな、と思って」
「…必ずしも、倖せとは限らないのでは?報われない想いとてあるはず。いつもいつも、想いが満たされるとは……」
そう言いかけて、デーモンははたと口を噤んだ。それが己の失言であったと気がつく頃には、ライデンもそれを察していたらしい。
「あんたも、好きな相手がいるんだ」
くすくすと笑うライデンに、デーモンは耳まで真赤、である。
「いや、あくまでも、一般論で…」
「一般論、ねぇ…そっか、報われないんだ、あんたの想いは」
「……」
初めてみた、デーモンの反応に、ライデンは急に親近感を覚えていた。
「ねぇ…一般論ってったらさぁ…俺からも言っていい?」
「…何をです?」
赤い顔を隠すように、デーモンは横を向いて尋ねる。
「俺に敬語なんて使わないでよ。ダミアン様なら、殿下ってのも似合うけどさぁ、俺が殿下って呼ばれると、なんかこそばゆい…」
「殿下…」
「だから、殿下はやめっつーのっ!あんたの方がちょこっと年上みたいだしさぁ。ライデンでいいよ」
にっこりと笑うライデンに、デーモンが戸惑いを覚えないはずがない。
だがしかし…デーモンも、妙な親近感を覚えていたので、ついその提案に従ってみた。
「ライデン…か?」
「そう。あんただって疲れるだろう?敬語ばっかり使うのは」
「いや、吾輩は、別に…」
「あ、そっか。あんたは元々の出身がいいからかぁ。やっぱ、育ちが違うんだな~」
彼はすっかり落ち着いたように、大きく伸びをする。その気さくな姿に、デーモンも諦めたように小さな笑いを零した。
「吾輩の出身はともかく…それなら交換条件でどうだ?」
「は…?」
「そう。吾輩のことも、デーモンと呼ぶこと。敬称はいらない」
すっかり割り切ったデーモンの姿に、暫し呆然としていたが、直ぐに笑顔が零れた。
「了解!でも、年上みたいだから、デーさんね」
「まぁ、いいだろう」
にんまりと笑って、お互いに握手。すっかり打ち解けてしまったようだ。
「ところで、あんたの想い悪魔って、どんな悪魔?」
「…まだ話せるような相手じゃない。片思いだから…」
うっかり言ってしまってから、デーモンは顔を真っ赤に染めた。
「そっか~。進展があったら教えてね」
くすくすと笑う声。
まるでその話題をそこで打ち切るかのように、デーモンは大きく咳払いをする。
「それはそうと、先程の話だが…吾輩は、誰かを好きになることを否定する訳じゃない。だが、禁忌を犯してまで誰かを好きになって、それが罪ではないとは言い切れないことがあるのも事実だろう?その時は倖せでも、その報いはいつかやって来るのもわかっていたはずだ」
真剣な話に戻り、ライデンも表情を引き締める。
「でもさぁ、好きになることは、いけないことじゃないでしょ?」
「まぁな。だが、それが黙認され続けたらどうなる?魔族の血は純潔さを欠き、この地を護る忠誠心さえ失われてしまうだろう。それは、天界でも同じことだ。他の種族を受け入れることが容易な雷神族にはわかり難いかも知れないけどな。我々にしてみれば、重大なことだ」
デーモンの言う通り、雷神族はどの種族でも受け入れることが出来る。それはある意味、必ず世継ぎとして血筋を残せると言う強い血を持っているからでもある。
雷神族に比べれば魔族は劣り、魔族に比べれば天界人が劣ると言うように、その血の強さには優劣があるのだから、如何とも言いがたいのだ。
「土地を護る想いの強さは、何処も同じはずだ。それならば、この地を護る為には、法(おきて)が必要だろう?全てが黙認される世の中では、全てが滅びる」
「そりゃ、そうだけど…」
「血筋が全てではないが…ここでは必要不可欠だ。ダミアン様も…吾輩も…そうやって残された種だったからな」
その表情が、不意に悲しそうに歪んだのは、どうしてだろう。
「デーさん…?」
急に不安に刈られた彼がそう声をかけると、ふとデーモンの表情が変わった。
「あぁ、悪かった。何でもない」
「でも…」
問いかけようとしたその時、突然ドアがノックされ、マラフィアが戻って来た。
「殿下。大魔王陛下の許可をいただいてきましたよ」
そう言ったマラフィアの表情は、にこやかだった。
「そう。じゃあ後は天界に行って、向こうの許可も貰えば全てよし、ってことか」
軽く微笑みを返すライデン。だが、その心の隅に、先程のデーモンの表情がひっかかっているのは言うまでもない。
「では、ライデン殿下、マラフィア殿、吾輩は職務が残っている故、これにて…」
軽く頭を下げ、デーモンは足早に執務室を後にしてしまった。
全く不意の出来事に、状況を把握出来ないマラフィアは、首を傾げていた。
「…どうかなさったのですか?デーモン殿は…」
「さぁ…俺にも良くは…」
その行動パターンを読むことが出来なかったライデンもまた、困ったように眉根を寄せていた。
数刻の後、彼はマラフィアと共に大魔王陛下を訪れ、そして正式にアディエラを連れていく許可を得たのだった。
しかしその条件として、天界の許可を得た後、最低限の日数で済むように、日時を決めることと言う条件が付け加えられたが、それは大した問題にもならなかった。
「意外と、物分かりがいいんだね。陛下は」
にんまりと笑みを零すライデンに、マラフィアも小さな笑みを零す。
「大魔王陛下とて、雷神界を気にかけていらっしゃるからでしょう。魔界にとっても、雷神界が中立区域であるに越したことはないのですから。戦うことが全てではありませんから」
「へぇ。俺はまた、戦いが全てかと思ってた」
予想外の答えに、ライデンが声を上げる。
「確かに、そう思っている者がいないとは言いません。むしろ、そう思う者は多いかも知れませんね。ですが、時には気晴らしも必要です」
「そうだね」
そうつぶやいた彼であるが…果たして彼は、己の行動の殆どが気晴らしであると言うことに気がついているのだろうか…?否、気づいていないと見た。
それは扠置き。
「そういや、デーモン…殿は、どうしたんだろう?急に、あんな…」
思い出したようにそう言ったライデンの声に、マラフィアは小さな溜め息を吐き出す。
「お忙しいのでしょう。ダミアン殿下の補佐役ですから、何かと…」
「そっか。何か悪いことしちゃったな…」
しゅんとしてうつむいてしまったライデンに、マラフィアは優しく声をかける。
「御心配はいりませんよ。デーモン殿は、そのようなことをいつまでも気になさる方ではありませんから」
「だといいんだけど」
どうも納得が行かないという表情を浮かべたままのライデン。
そして、不意に思いついたことを、マラフィアに問いかけた。
「ねぇ…デーモン殿の血筋って、ダミアン殿下も言ってたけど、そんなに立派なの?」
「デーモン殿の血筋…ですか?」
「うん。ちょっと聞いてみたいと思って」
唐突な展開に、一瞬呆然としたものの、マラフィアはちゃんとその問いかけに答えてくれた。
「魔界にかつてからある有力種の一つに、デーモン一族と言う種族があったんです。言魂師として有能な血筋で、魔界でも一、二を争う一族だったのですが…」
「ですが?」
「…デーモン殿が士官学校にいらっしゃる頃、突然消滅してしまったんです。原因もわからないままでしたが…その一族の名を受け継ぎ、唯一生き延びていたのが、現ダミアン殿下の補佐役であるデーモン殿です」
「…へぇ…一流の出だったんだ…通りで敬語が板に付いてると思った…」
敬語が身に付くか、付かないかは本魔次第であるはずなのだが、ライデンは全て血統のおかげだと思っているらしい。純粋に血統だけを考えるのなら、ライデンも王族の血筋なのだが。
それを察したマラフィアが小さな笑いを零していたのだが、ライデンはそれに気がつく訳もなく。
結局彼は、その後デーモンと会うことはなく、魔界を後にして天界へ向かうこととなった。
その際、ダミアンの所にも挨拶に行ったのだが…やはりここにも、デーモンは任務中で不在、とのことだった。
魔界を出た足で天界へと向かい、"月の瞳"を持つ者が、捕われの身となっているユーリスであるとの確認を得た上で、大天使長に話を付けた彼が、根生の地である雷神界へと戻って来たのは、既に真夜中と呼べる時間になってからだった。
「やっぱ、ここが一番落ち着く…っ」
既に誰もが寝静まっている神殿の自室で、彼は疲れた身体をベッドへと投げ出す。
彼の好みに合わせてあるスプリングが、小さな音を立てて軋んでいた。
日時は一週間後。
そう決まったものの、担当した大天使長にあまり良い顔をされなかったのは当然と言えば当然だった。
何せ、何処よりも雷神界を欲しているのは、天界なのだから。
「親父には、明日話せばいいよな~」
言葉と共に零れた欠伸。彼の意識は、直ぐに睡魔に包み込まれていた。
しかしこの時、彼の知らないところで、大変なことが起こっているなど…まるで気がつくはずもなかった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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