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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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月夜の記憶
こちらは、以前のHPで2000年4月28日にUPしたものです。

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◇◆◇

「エース」
 不意に名を呼ばれ、声のする方を振り向いたのは、やや襟足の長い黒髪に縁取られた、白い顔に赤い紋様を戴く悪魔。
 彼の纏う黒の軍服に、勲章はまだ一つもない。今期情報局に配属の決まり、卒業を待つ身なのだ。現在研修中の彼は、まだもう一段階の成長期が待っているのだが、それでも同じ年頃の青年に比べれば、かなり背が高い。
 彼の名を呼んだのは、彼の上司である、小部隊の隊長である。隊長の名は、クレインと言うのだが、内容には余り関係はない。
「向こうを見て来てくれ。危険魔物ではなさそうだが、どうも誰かがいるらしいんだ」
「…御意に」
 余り気乗りのしない表情と共に、彼…エースは言われるままに隣の居住区へと足を向ける。
 溜め息を一つ吐き出したエースは、それと同時に小さなつぶやきを零していた。
「…かったりぃ…」
 夜の帳の降りた空に、雲の隙間から姿を見せた満月が、やたらに眩しかった。

◇◆◇

 エースが所属する小部隊が訪れたのは、戦乱の真っ只中にあったはずの地区である。その戦の隊長以下を努めているのは、魔界に於て名を上げている、デーモン一族であった。
 だが、その一族が突然姿を消したとの連絡が入り、こうして足を運ばざるを得なくなった訳である。
 士官学校の時代から、他を圧倒する実力を見せつけて来たエースにとって、情報局への配属は己の希望に沿った結果であったのだが、こうして配属された部署に関しては、不満が耐えない。
「…出身地の血統では、俺の方が勝っているのに…」
 上司たるクレインに関して、エースはその姿のないところでは、いつも同じように愚痴を零していた。しかし、勲章のないエースに、到底上位が取れるはずもなく、今は大人しく彼に従っているのである。

 問題の居住区にやって来たエースは、今回の戦の隊長である、一族の長の部屋にいた、不審魔物の傍に跪いた。
 眠って、いるのだろうか。
 目深に被った外套の所為で顔は良く見えないが、どうやら紋様を戴く種族であることには間違いなかった。
「…おい、御前」
 声をかけてみると、反応を示した。
 目覚めたのは、まだ少年の体型を残している"彼"だった。
 意志の強い眼差しが印象的で。
 正体の理解らない"彼"を、エースは記憶の片隅にだけ留めていた。
 出逢いは、全くの偶然。御互いに、その素性すら知らなかった。

◇◆◇

「…生き残りがいる?あの、デーモン一族に?」
 それを知ったのは、数百年後。
「そう。最近、皇太子殿下の補佐として、枢密院に入ったんだって」
 知らなかった?
 そう尋ねられ、不機嫌そうに眉を顰るのは、当然と言えば当然の悪魔。今や、歴代のスピード出世の一名としても名のある、情報局長官補佐のエースである。
 そして、彼の前で呑気に御茶を口にしているのは、画伯に博士号、そして医師免許までも得ている、文化局副官、ゼノンである。
 かつて研修先で知り合った彼らは、今やこうして呑気に御茶を飲みあう仲である。
 それにしても…と、ゼノンは口を開く。
「現、情報局長官に勝るとも劣らない君に、知らないことがあったなんてね。俺にはその方が驚きだけど」
 くすくすと笑いを零すゼノンに、エースは更に不機嫌そうな表情を見せる。
 デーモン一族が滅んだ夜、エースはそこにいた。
 そして、あの夜出逢った、名も知らぬ悪魔は…もしかしたら、その生き残りだったのかも知れない。
 あの夜の満月は…今でもはっきりと覚えていた。
 あの日の出逢いが、これからのエースの生涯を変える存在であるなど、当のエースが気付いているはずもなく。
「…気に入らねぇな。一族再建の為の出世か?」
 ぼそりとつぶやいたエースの声に、ゼノンは不思議そうに首を傾げていた。
「一族の再建なんて、聞いたことないけど…ただ単に、皇太子殿下からの要請が強かっただけって、俺は聞いたよ。何でも、一族に伝わる"歌"が素晴らしいんだって」
「…へぇ」
 一度、聞いてみたいよね。
 にこやかにそう零すゼノンに対して、そんなことにまるで興味のないエースは、あの夜のことをぼんやりと思い出していた。
 あの時の"彼"の姿は、外套に包まれていて良く理解らなかった。だから本当に一族の生き残りなのかも理解らないのであるが、多分、間違いはないだろう。
 奇妙な出逢いは、エースの不機嫌さを募らせるだけに留まっていた。

◇◆◇

 どれくらいの年月が経ったのだろう。思い出すのも気怠いが、忘れることも出来ない。
 あの時の"彼"が、本当に今目の前にいる悪魔なのだろうか。
 エースは、自身の仲魔であり、同じ地球任務の構成員として魔界からやって来たデーモンを、ぼんやりと見つめていた。
 はぐらかしてはいるが、多分、間違いはないだろう。
 思い出の月夜は…エースと、"彼"の再会を思い出させていた。
 不思議な…そして、運命的な、あの満月は、今日も夜の帳の中に、眩しいくらいに輝いていた。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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