聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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開闢~かいびゃく~sideX
まだ、誰もが巡り逢う前のこと。
けれど、運命の歯車は既に動き出していた。
士官学校の資料室に居座っている、一つの姿。その姿を見つけ、にっこりと微笑むもうひとつの姿。
「ゼ~ノン」
名を呼ばれ、振り向いたのは、最初からそこに居座っていた姿。近頃は珍しくなって来た"鬼"の種族の一名。その頭には、5センチばかりの角が2本生えていた。それが、"鬼"の種族の目印でもある。
そして名を呼んだ方もまた、"鬼"の種族。こちらも同じように2本の角が目印であった。
彼らは同じ地区の出身であり、この場においても同期の仲魔、であった。
「研修希望先の書類、もう出しました~?」
のんびりとした口調の相手に、彼…ゼノンは小さく首を傾げる。
「うん、取り敢えずは出したけど…レイラは?」
「私も出しましたよ。情報局に~」
にっこりと微笑む相手。のんびりした口調とその姿だけ見ていれば、とても情報局に希望を出すようには思えないのだが…。
「やっぱり情報局な訳ね。気持ちは変わらないんだ」
小さな溜め息と共に、ゼノンはそう言葉を吐き出す。
「えぇ。ゼノンはやっぱり、文化局ですか~?」
くすっと笑いを零す相手…レイラ=クーヴェイは、目を細めてゼノンを見つめた。
「鬼の種族は、元来戦い好きと言われているんですけれどね~。例外中の例外ですね、ゼノンは~。戦いよりも、研究が好き、だなんて」
「…俺は、お前が戦う姿の方が、想像付かないけれどね…」
溜め息混じりに吐き出したゼノンの声。
医師を目指すゼノンは、鬼の種族にしては珍しく、戦いよりも研究を好んだ。そしてレイラ=ク-ヴェイは、見かけはのんびりしているが、元来の性質通り、戦いを好んでいた。
「…でも、どうして情報局なの?戦いが好きなら、軍事局の方が良かったんじゃないの?」
そう。ゼノンの疑問はそこにあったのだ。
本気で戦闘を楽しみたいのなら、明らかに軍事局の方が合っているはずなのだ。けれどレイラは、どう言う訳か情報局に執着しているようである。
「どうしてって…私からしてみれば、ゼノンもどうして…ですよ?」
くすくすと笑う姿は、明らかに何かを隠しているようであるが…まぁ、ゼノンにはそこまで追求するつもりはなかった。
「お互い、頑張りましょうね」
さらりと流すレイラ。その時は、ゼノンも自分の研修のことで頭が一杯だったこともあり、軽く受け流すことが当然だと思っていたのだった。
数週間が過ぎ、彼らは希望した局での研修が始まっていた。
研修が厳しいと評判の情報局や軍事局は、それでもかなりの希望者を集めていたが、一番人気は何と言っても文化局。武術の厳しい特訓も少なく、研究テーマが重視される局であるが故に、武術を苦手とする者は殆どと言って良い程、文化局を希望していたのだ。
そんな者たちを横目に、ゼノンは自分の決めた研究テーマに没頭していた。
そんなある日のこと。
ゼノンは、在籍している研究室のドアを叩く音に顔を上げて見れば、辺りには誰もいない。
居留守を使おうかとも思ったが、尚もドアを叩く音に渋々腰を上げてドアへと向う。
「はい?」
ドアを明けると、そこには見慣れない悪魔が立っている。
士官学校の制服。けれど、襟元の章がゼノンとは違う。つまり、ゼノンよりも上の階級の生徒と言うことになる。
「中央情報局第三調査部隊研修生、エースと申します。クレイン部隊長の遣いで、アンヴィ主任に面会の約束をしております。主任はこちらにおいでと伺いましたが、いらっしゃいますでしょうか」
そう名乗った相手は、恐らくゼノンも研修生だと言うことを知らなかったのだろう。姿勢を正し、真っ直ぐ前を向いて敬礼をしたまま身動ぎ一つしない。
当然、ゼノンがそんな話を聞いているはずもなく。部屋を見渡しても誰もいないのだから、自分が対応するしかない。
「…えっと…主任はただいま席を外しておりますが…」
困った末にそう口を開くと、相手の視線がふっとゼノンへと降りて来た。その視線は、本来文化局の制服の襟元に付いているはずの、身分を表す章を探していたのだろう。けれど、ゼノンの制服は士官学校の制服。当然、その襟元に付いている章も、士官学校の章。その途端、小さく溜め息を吐いて、敬礼していた手を下ろす。
「…お前も研修生か…」
「…はい…」
一気に脱力、とはこんな姿なんだろう…と、ぼんやりと考えていたゼノン。その視線は、相手の姿をまじまじと見つめてしまっていた。
赤い紋様を戴いた悪魔。色こそゼノンと同じものの、恐らく炎を司る種族なのだろう。その唇も同じように赤い。そして、その黒髪と琥珀色の瞳は、彼に良く似合っていた。
「…名前は?」
そう問いかけられ、ハッとして顔を上げる。
「…ゼノンと申します」
「アンヴィ主任はいつお帰りになられる?」
「…えっと……」
問いかけられても、いついなくなったのかもわからないのだ。いつ帰って来るのかも、わかるはずなどない。
「…申し訳ありません。わたしではちょっとわかり兼ねますが…」
申し訳なさそうに紡ぐ言葉に、相手は小さく溜め息を吐き出した。
「ならば…待たせて貰う。アンヴィ主任との面会が済むまで、俺も局へは帰れないんでな」
「…はぁ…」
相手がそう言うのなら、仕方がない。
ゼノンは彼を部屋の中へと促すと、彼は無言で部屋の中を見まわした。
生憎、ソファーはない。ならば、どうしよう…。そんなことを考えていたゼノンをよそに、彼は勝手に近くのイスに手を伸ばし、腰を降ろした。
「俺のことは気にしなくても良い。職務の途中だろう?続けて構わない」
「…はぁ…では、そうさせていただきます…」
初めて逢った上級生に、ゼノンは些か緊張していたりする。しかも相手は既に部隊長の遣いで、他局の主任と面会出来る立場にいるのだ。優等生に他ならない証拠。そんな相手と二名きりで部屋の中にいなければならないとなれば、当然必要以上に緊張もする。
相手に悟られないように小さな溜め息を吐き出すと、ゼノンは再び自分の机へと向う。
そして、暫しの後…。
「…初めての研修か?」
不意に、問いかけられた。
顔を上げたゼノンは、思わずその視線を彼へと向ける。しかし彼は真っ直ぐ視線を前へ向けたまま、ゼノンの方を見てはいない。
けれど、話しかける相手はゼノンしかいない訳で…答えない訳にもいかない。
「…はい。貴方は…上級生ですから、もう直ぐ卒業、ですか…?」
問い返した声に、相手は小さな吐息を吐き出す。
「…まぁ、な。今期卒業して、そのまま情報局へ入ることが決まっている」
「それは、おめでとうございます」
思わずそう答えると、彼の視線がゼノンへと向く。その眼差しは、明らかに不機嫌そうで。
「何がめでたいんだ?そこがスタート地点だろう?」
「…それはそうですけれど…」
相手の意図が良くわからず、ゼノンは困惑した答えを返す。
今の時点で、その後の進路が決まっている者はそう多くない。だからこそ、おめでとうの意を唱えたのだが、彼の意識はそんな簡単なことではなかったらしい。彼から、再び溜め息が返って来る。
「…お前のやりたいことは何だ?」
「…わたしの…やりたいこと、ですか…?」
再び、質問の意図がずれたような感じはしていたが、ゼノンは暫く考えを巡らせる。
そして。
「…わたしは…医師になりたいです」
そう、答えた。けれど、相手はその答えに満足しなかったようだ。
「他には?」
「…は?」
「他に、やりたいことはないのか?」
「…他には………研究をしたいです」
「他には?」
「………画家になりたいと思った時期もありましたけど……」
そこまで言って、ゼノンは意を決したように、相手へと問いかけた。
「けれど、それが何か…?」
すると彼は、再びその視線を、自分の正面へと向けた。
「士官学校を無事に卒業して、希望する局に入局すれば、それが全て出来ると思うか?」
「…いえ……出来ません。他に、やらなければならない職務は山程あると思いますから…」
「ならば、それをやる為にはどうしたら良いと思う?」
「…それは……」
暫し、考えを巡らせる。けれど、彼が意図するような答えは見つからなかった。
そのまま口を噤んでいると、業を煮やしたように彼が口を開く。
「上を目指せば、その機会は得られると思わないか?」
「…成程…」
確かに、彼の言う通りかも知れない。
職務を与えられる側にいるのでは、いつまで経っても自分のやりたいことは出来ないだろう。けれど、与える方の立場に変われば、思い通りのことが出来るかも知れない。
彼の答えに感心していると、彼は僅かにその眼差しを細める。
「俺は、上を目指す。だから、入局はスタート地点に過ぎない。俺のやりたいことが、誰にも邪魔されずに出来るようになるまで、嬉しくも何ともない」
遠くを見つめているような視線。きっと、ゼノンにはまだわからないくらいの遠い将来を見つめているのだろう。
それが、当たり前。目の前の現実は、まだまだ彼にとっては不満でしかないのだ。
彼は、そう言う男なのだと思った。
そしてゼノンは、そんな彼にほんの少し興味を抱いた。
「やりたいことがあるのなら、お前も上を目指せば良い。そうすれば、医師としての評価も上がるだろうし、研究だって思う存分出来る。画家になることだって、趣味の範囲に留めるか、更に上を目指すか、選択することだって出来るはずだ。それくらいの野望がなければ、直ぐに躓いてしまう。上司だって、興味を示さない。実力が興味を引くんだ」
「…そうかも…知れませんね」
研修に来たばかりの頃、気が付いたことがあった。それは、上司に見向きもされない研究者もいると言うこと。それはある意味、彼が言っていることに通じるのかも知れない。
興味を抱かせることも実力。十人並の研究をしていても、面白味も何も感じないのだ。それでは誰も興味を抱かない。だから、評価もされない。より良い評価を受ける為には、興味を引く研究課題を見つけ、当たり前ではない結果を見せなければならないのだ。
思考力の高さを見せつけられ、ゼノンは小さな溜め息を吐き出す。
彼は、きっと上に行ける。
それは、確かな答えだと思った。
そしてゼノンは、彼のやりたいことを聞いてみたいと思った。
「あの…」
ゼノンがそれを問いかけようとした時。
廊下を歩く足音が聞こえ、その足音が部屋の前で止まると、そのドアが開かれた。
現われたのは、彼の待ち悪魔。
「アンヴィ主任!」
彼が声を上げ、椅子から立ち上がった。
「あぁ、エースか。待たせて悪かったな。ゼノンが相手をしていてくれたのか?」
にこやかに問いかけるアンヴィ主任に、ゼノンは一瞬どう答えて良いのかわからなかったが、それに答えたのは彼、だった。
「彼は、丁度良い話し相手でした」
「そうか。それは良かった。では、話を聞こうか?」
彼はアンヴィ主任に促され、主任の執務室へと向う。
その背中越しに、彼は僅かにゼノンを振り返った。
そして。
「…またな」
その一言に、ゼノンは思わず息を飲んだ。
自分の未来も…決してつまらないものでは終わらない。そんな予感が、脳裏を過っていた。
季節は過ぎ、彼らが研修を始めてから数ヶ月が過ぎた頃、やっとその期間が終わろうとしていた。
その間、ゼノンは熱心に研究に打ちこみ、主任からも手厚く面倒を見て貰うことも出来た。
それも全て、あの悪魔と出会ったおかげ。
けれどそれから一度も、彼に会うことはなく、研修期間も終わったのだった。
「ゼ~ノン」
士官学校の資料室にいたゼノンの背後から聞こえた声に、ペンを持っていた手を止め、顔を上げて声の主を振り返る。
「…あぁ、レイラ。久し振りだね。元気だった?」
声の主…レイラは、相変わらずの微笑みでその問いかけに答える。
「勿論ですよぉ~。ゼノンも元気そうで良かったです~。文化局の研修って、最後の総まとめが大変で、体調を崩すことも多いって聞きましたけれど、ゼノンはそんなことなさそうですね~」
くすくすと笑う声に、ゼノンは思わず苦笑する。
「まぁ…体調を崩すまではいかないけれどね。大変は大変だよ。でもレイラは楽しそうだね」
「楽しかったですよ~。もっと続けていたかったくらいですからぁ~」
「…お前らしい」
厳しい情報局の研修を楽しかったと言って退けるレイラに、ゼノンは笑いを零すしかなかった。
無類の戦い好き。まさに、典型的な"鬼"として相応しい性質。だから、きつい研修も何のその。強くなることが何よりも楽しい。レイラ=クーヴェイとは、そう言う悪魔なのだ。
「どうせ、もう提出書類も全て出来上がっているんでしょう?」
問いかけた声に、レイラはにっこりと微笑む。
「勿論。研修中に終わりましたよ~」
「…流石だね…」
研修の後には、莫大な提出書類が待っているのだが…それを研修中に終わらせてしまうとは、尋常ではない。勿論、ゼノンにも出来ない所業である。だが、それもレイラの実力なのだ。
「相当楽しかったんだね」
苦笑しながら、ゼノンはそう返すしかなかった。
そして、ニコニコと笑うレイラを眺めていて、あることをふと思い出す。
それは、あの赤き悪魔。
「…そう言えば、レイラは"エース"って言う先輩の研修生、知ってる?確か、情報局の第三調査部隊とか言っていたけど…」
そう問いかけた瞬間、ゼノンは思わず言葉を紡ぐのを止めた。
それは…今まで笑っていたレイラが、もう笑ってはいなかったから。
「…彼を…知っているんですか…?」
レイラの口から、そう問いかけられる。
「え?…あぁ…研修の時にね、うちの研究室に主任を訪ねて来たんだ。丁度主任が不在だったから、その間少し話を……レイラ?」
レイラの表情は、ゼノンでも初めて見る表情だった。
頬を膨らませ、上目使いでゼノンを睨みつけている。
そして、一言。
「……狡い…」
「……は?」
明らかに、レイラは怒っている。それは、ゼノンにもわかった。けれど、どうして突然怒り出したのかがわからないのだ。
「…あの…」
問いかけようと口を開くが、レイラはぷいと横を向いてしまう。
自分は、何か拙いことでも言っただろうか…。そう思ったゼノンが、自分が言ったはずの言葉を遡っていた時、ふと思い出したこと。
それは、何故レイラが研修先に情報局を選んだのか、と言う疑問、だった。
「…まさか、レイラ…ずっと前からエース先輩のこと、知ってたの?だから、情報局を……?」
思わずそう問いかけた言葉に、ふとレイラの表情が変わる。その頬が、僅かに赤く染まるのを、ゼノンが見逃すはずもない。
「…いけませんか?」
ぽつりと零れた言葉。
「いや、いけなくはないと思うけど…」
レイラの様子を伺いながら、ゼノンは思考を巡らせる。
レイラの様子からして、多分まだ想う悪魔と何の進展もないはず。もしかしたら、まだ話もしたことがないのかも知れない。だからこそ、先に知り合ってしまったゼノンを狡いと言ったのだろう。だから、怒ったのだろう。
「御免ね。機嫌を損ねちゃったみたいで…」
フォローするつもりで、一応そう口にする。
別に、ゼノンもレイラより先に彼に出会おうと思っていた訳でもなく、全くの偶然だったのだから、謝る必要はなかったのだが…レイラの気持ちを察すると、念の為それは必要な処置だと思ったのだろう。
するとレイラも、今までの怒りの表情を緩め、首を横に振る。
「私こそ、御免なさい。ゼノンが悪い訳ではなかったのに…」
多分、レイラも怒るほどのことではないと言うことはわかっていたのだろう。ただ、感情を上手く制御出来なかっただけで。
小さな溜め息を吐き出したレイラ。そして、その口からゆっくりと零れた言葉。
「…自分でも、不器用だとは思っているんです。素直に話しかければ良いものを、どうしても上手く近付けなくて…だから…ゼノンに対して怒った訳ではなくて…自分自身が、馬鹿みたいだと思って…自分自身に、腹を立てて…」
レイラの言いたいことは、ゼノンにも理解出来ること。素直に自分を出せない気質は、もしかしたら"鬼の種族"ならではなのではないかと思い始めてもいた。
何故なら…彼らの種族は、血を好み、その肉を喰らうから。恋愛が成就することは、即ち何れその相手を喰らうことになるから。だからこそ、素直に自分の感情を曝け出すことを拒むのかも知れない。
「誰かを好きになることも、闘うことみたいに簡単だったら良いのにね」
小さくつぶやいたゼノンの言葉に、レイラは小さく笑った。
「ゼノンは、戦うことも簡単ではないでしょう~?」
「…まぁ、ね。考え過ぎるのかな、俺は」
「研究者気質、ですからね~」
くすくすと笑うレイラ。その表情に、先程までの憂いさは殆ど残っていない。
「相変わらず、立ち直りも早いこと…」
くすっと笑いを零すゼノンに、レイラはにっこりと微笑む。
「考え過ぎても、今は答えは出ませんから。わたしは、情報局を目指します。そうしたら、今度こそきちんと彼と出会います。その後はどうなるかはわかりませんが…わたしは、彼を見つめていたいんです」
それが、レイラなりの結論。勿論、考え過ぎるゼノンには、到底簡単には出せない結論。けれど、そこから始めるしかないことは事実なのだ。
「頑張ってね」
今は、そんな言葉しか出て来ない。ゼノンもまだまだ未熟なのだ。
「ゼノンもね」
微笑むレイラ。
未来のことまではわからない。ただ、今見えている道を、ただ進むだけ。
彼らには、それが唯一の目的だった。
歯車が一つ噛み合う。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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