聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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秘密の花園
魔界に於て、名のある一族は幾らでもある。そして、その一族のほとんどが血を残す為の手段を必要とする。
一般に用いられるのは、魂の融合と血の覚醒である。それはより良き血を残す為の有効的な手段として、多く用いられて来た。しかしそれは、ある意味では本当の血の繋がりとは言えない。一族の存続の為に、利用される生命に過ぎないのだから。
革命は、そんな理由から引き起こされることもある。
ワタシハ、アナタノコドモデハナイ。
イチゾクノソンゾクノタメニ、リヨウサレルノハ、ゴメンダ。
ここにまた、一つの革命が起こり始めていた。
魔界で誉高き歌声を持つ一族がある。それは、魔界でも名高き言魂師として有名なデーモン一族。その能力も魔界に於ては必要とされる程の実力を持っている。
その一族で最も濃い血を受け継ぐ者が、士官学校に入学したのは、数年前のことである。
「デーモン」
その名を呼ばれ、振り返る悪魔。名高きデーモン一族の跡取りであり、一族の名を受け継いだデーモンである。
さて、彼を呼んだ悪魔はと言うと、デーモンの同級生である觜輝(しき)と言う悪魔。
「デーモン」
もう一度、彼の名を呼ぶ。
「何だ?吾輩に何か用か?」
すると觜輝はにっこりと微笑む。
「御前のトコの長、今度の出陣の部隊長勤めるのな」
「…あぁ、そう。知らなかった」
「知らなかったって…御前の親父さんだろ?」
「吾輩は、親などいない」
むっとした表情でそう答えるデーモンに、觜輝が奇妙な表情を浮かべたのは言うまでもない。
「でも、一族の跡取りじゃないか。魂の融合と血の覚醒で生まれたって…」
「確かに。だが、それだけで血の繋がりだと考えるのは、いささか軽薄過ぎやしないか?」
「それはそうだけど…しかしねぇ…ちょっ…デーモン!?」
觜輝が何かを言おうとした時には、デーモンは既に踵を返していた。その後ろ姿の身の熟しはとても優雅で、彼の気位の高さが伺えた。しかし、彼にとってその身位は厄介でしかない。
何故なら彼は…一族の意に背いたのだから。
勿論、実際彼は一族の最も濃き血の後継者である。士官学校に入学させられたことも、それが当然の理由であったからであるが、彼には重荷でしかない。
後継者として彼が身に付けたものは、一族に反論を訴える為の話術と、頑ななまでの頑固さ。そして後継者の証とも言える、最も強き言魂師としての能力。それが正当な後継者の証であるだけに、デーモンはそれを行動に移すしかなかった。
己を、護る為に。
デーモン一族の長が軍隊長を勤めると噂されていた戦が始まった。本来勤めるべきではないその役を、敢えてこの長が選んだのには訳がある。
それは一族には暗黙の了解であり、他に漏らすことはない。しかしたった一名、その事実を見知っている者がいた。
頭から目深に被った外套で、顔は見えない。背も然程高くもない。どう見ても少年の背丈である。
彼には、他に名乗る名前はない。即ち、訳あり、なのである。
夜も更けようと言う時間。この夜の月は厚い雲の覆われていて、その姿を隠していた。
軍の寝所である場所に突如現れた彼の姿に、長は目を剥く。
「…御前は…」
長には心当たりがあったのだろうか。しかし大きく息を吐いて心を落ち着かせると、彼に向ける眼差しは柔らかになる。
「何故、ここへ来た?」
「…貴方の、考えを改めに…」
「何だと?」
彼の言葉に、長の表情は途端に険しくなる。
「貴方は、間違っている。今回の戦で軍隊長を勤め、それを利用して魔界に革命を起こそうとするなど…正気の沙汰ではない。狂気、だ」
彼の表情は、全く見えない。だが、彼が長に諭そうとしている言葉は、この一族を敵に回すことも恐れないと言った趣がある。
「それが、吾に向ける言葉か!?今まで御前を育てて来たこの吾に対する言葉かっ!?」
長がカッとなったのも無理はない。この一族は全て長の能力を分け与えられて生まれ出でた、言わば全てが長の分身なのである。
しかし、長が幾ら声を荒立てても、彼の口調は変わらない。冷めた眼差しも、その口調然り、である。
「わたしは、貴方の子供ではない。貴方が自慢する一族一有能で立派な息子は、今頃は士官学校の寮にいるはず…そうでしょう?わたしは、貴方の子供とは正反対の存在」
「黙れっ!」
「貴方に…指図される覚えはない。わたしは…貴方の子供では、ないのだから」
外套に隠れていた彼の右腕は、しっかりと剣を携えていて。その剣先が、真っ直に長に向けられている。
「貴方を、見逃す訳にはいかない。魔界に愛着を感じている訳ではないが…貴方に罪を犯させるよりは…わたしは魔界に染まることを選ぶ」
「デーモンっ!」
「言ったはず。わたしは貴方の息子、デーモンではない」
その言葉に、長は何を思ったのだろう。ふっと彼を見据える眼差しを和らげ、口元に僅かな笑みさえ浮かべた。
「…わかって、いるはずだ。吾を殺せば、御前も死ぬ。だが、吾に刃向かわなければ、御前の地位は保証される」
彼を宥めるかのように、長はすっと彼を己の傍へ引き寄せる。
「わたしは…」
一瞬、彼の表情が曇った。
「地位など、いらなかった。貴方が取ろうとしているこの魔界の権力に、何の意味があると?わたしは、ただ…」
貴方と、静かに暮らしていたかっただけなのに…
彼のその想いは、口から出ることはなかった。
「さよなら」
無情な声と共に、彼の右腕の剣は長の首を跳ねていた。
溢れる鮮血は、彼の外套をも染めた。
「デーモン一族は…貴方の死を以って終わりだ。残れさた貴方の息子も…再建は望まないだろう。それ程この一族は病んでいる。何もかも…全て」
流れたのは赤い涙。血の涙は、血族の絆を消滅させた。
「貴方が、狂わせた…何もかも……貴方が、革命を起こそうなどと言う愚かなことを考えなければ、貴方を…失わずに済んだのに。貴方の所為だ。何も、かも…」
つぶやいた言葉が消えぬ間に、彼も床に倒れる。
これで終わりだと…そう思っていたのは、誰だろう。
辺りが騒がしくて、落ち着かなくなった。そのうちに、誰かの声がする。
「…おい、御前」
「……」
それが己を呼んでいる声だと気付いた彼は、己が目を開ける。未だ頭から被った外套は彼の視界の半分を遮っていたが、自分を呼んでいる者の姿は辛うじて見て取れた。
白い顔に赤い紋様を戴いた悪魔。その顔を縁取るのは、やや襟足の長い黒髪。
「大丈夫か?」
そう声をかけられ、ふと吾に返る。まるで飛び起きるように身体を起こした彼は、何故自分がここにいるのかが理解らない。
「…生きて…いるのか?死んだのでは…」
つぶやいた彼の声に、赤き悪魔は眉を潜める。
「デーモン一族の者か?」
そう、尋ねられる。
「誰の姿も見当たらないんだが…御前は奴等の行方を知っているのか?」
瞬間、彼は赤き悪魔から逃れるかのように走り出した。
「あ…おいっ!」
自分を、追いかけて来る足音が聞こえる。
いつの間にか厚い雲は切れ、月の光が覗いている。
懸命に足を動かしているつもりでも、醒めたばかりの彼の足はほとんど動いてはいない。だから、当然の如くその腕に捕まってしまう。
「離せ…っ」
抵抗を見せる彼に、赤き悪魔は小さな溜め息を吐き出した。
「…何か、知っているんだろう?教えてくれ。デーモン一族は、何処に行ったんだ?」
抱き締められて、相手の鼓動が確実に伝わって来るのを感じ、彼は僅かにその頬を染めた。
「…知らない」
「嘘を付け。それなら、何故御前は長の部屋にいたんだ」
「…知らないと言ったら知らないっ!」
赤き悪魔の腕を撥ね除けた拍子に、その外套が僅かに彼の表情を覗かせた。強い光を見せた眼差しは、他を寄せつけない程の気迫を持っていて。
一瞬見せたその眼差しに、赤き悪魔は目を細める。
「…御前が、殺ったのか?」
「…知らない」
「殺ったんだろう?」
赤き悪魔の眼差しもまた、他を圧倒させるだけの威力を持っていた。
「…あの一族は…一つの魂で繋がっている。長さえ殺せば後は勝手に滅びる種族だ…」
諦めたように口を開いた彼の声に、赤き悪魔の吐息が答える。
「それで?理由は」
「……」
「御前みたいなガキが殺せる相手じゃなかったはずだ。幾らその能力のほとんどを自分の息子に託したと言っても、かなりの魔力があったはずだ。御前が刃を向けようと思っても、そう簡単に首を取れる相手じゃないだろう」
「…そんなこと、知るか。第一…長がその全盛力を注いだのは、跡取りに…ではない。魔界に革命を起こし、己が権力を握ることを企むことに…だ」
「御前…何故、そんなことを知ってるんだ?やはり御前も一族の者か?」
「一族だったら、とっくに死んでいる」
そう言葉を放ったものの、彼ですら己の存在が良く理解らなくなっていたのは事実だった。
「…まぁ、いい。御前がどんな理由で長を殺したのか…長が、何を企んでいたのか…そんなこと、俺には関係ないからな」
そうつぶやきを返した赤き悪魔は、彼に踵を向ける。
「俺の気が変わらないうちに、早く行きな」
「…捕えないのか?」
「捕えたところで、御前はプライドが高そうだしな。面倒なことになるのは御免だ。第一俺はまだ研修中だ。御前を捕えるだけの権力はない」
「……」
「早く、行けよ」
その一言が、彼を正気に戻したのかも知れない。
走り抜けた風が、彼が被っていた外套を押し退ける。
見えたのは、雲の隙間から覗いたばかりの月の光に映える、輝く黄金色の髪。そして、その白い顔に戴いた紋様は…
彼は、自分に背を向けている赤き悪魔の背を見つめたまま、小さなつぶやきを零した。
「…有り難う」
そして、踵を返して走り去る。
赤き悪魔の鼓動も、その胸に刻まれた姿も、色褪せることはなかった。
あくる日の朝、目覚めたデーモンは寮の自室のベッドに横たわったまま天井を見つめていた。その刹那。
「デーモンっ!開けるぞっ」
けたたましい音と共に開かれた扉から飛び込んで来たのは、觜輝だった。
「…どうした?」
そう問いかける間もなく、觜輝は上半身を起こしたデーモンを抱きしめる。
「觜輝?」
「…良かった。生きていて…」
その意味することは理解っていた。デーモンを抱き締めたまま、觜輝はその耳元で言葉を紡ぐ。
「…昨夜、御前の親父さんが殺されたって。それが原因で御前の一族は…デーモン一族は、御前を残して滅んだ」
「…そう」
デーモンを離しその目を覗き込んだ觜輝は、小さく息を吐く。
「御前は…生きているよな?」
「…あぁ、生きている。見ての通りだ」
「何故、御前だけ…?デーモン一族は、長が造り出した生命のはず。何故、御前だけ消えなかった…?」
その問いかけに、デーモンは小さく微笑む。
「吾輩は、奴の子供ではない。それが理由だ」
「デーモン…」
「…心配、してくれたのか?」
その微笑みの前に、觜輝は息を飲む。こんなにも柔らかな微笑みは、今まで見たことがない。
「有り難う、觜輝」
自ら腕を伸ばし、デーモンは觜輝を抱き寄せた。
「何か…あったのか?」
デーモンの変化に、觜輝は思わずそう問いかける。
「…赤い…紋様は、何処の生まれだったかな」
つぶやいた、デーモンの声。
「赤い紋様?そんなの幾らでもいる。炎を司る種族か、光を司る種族か…でも、それがどうかしたのか?」
デーモンから離れた觜輝は、その目を覗き込む。
「…いや、別に」
くすっと笑いを零したデーモン。己が生きている理由は一つしかない。
血族の絆を消滅させることが出来るのは、血の涙だけ。その想いの深さが、救いを求めていたのだ。
「魔界を裏切りさえしなければ…貴方を、愛し続けていられたのに…」
「…何か、言ったか?」
「いや」
小さなつぶやきは、觜輝には届かなかった。デーモンの微笑みは、一族の滅亡すら既にたいした問題ではないことを物語っていた。
幾度、季節が巡っても、消えない想いがあった。
秘められた想いの陰の、許せなかった存在。
マカイヲ、ウラギリサエシナケレバ…アナタヲ、アイシツヅケテイラレタノニ…
一族の滅亡は、伝説となった。その裏の出来事は、誰も知らない。
滅亡への引き金を引いた者は、赤き悪魔の鼓動を忘れることが出来ずにいた。
そして様々な想いを抱え、時は過ぎて行った。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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