聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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龍神
龍が空に舞うと、雨を呼ぶ。
そんな言い伝えがあるんだって。
でも俺は、そんなこと一言も聞いたことがなかった。
雷帝の息子ともあろう、この俺が。
「ねぇ、あれ何かしら…?」
「あれって?」
「ほら、あれよぉ。空の間に飛んでるあれ!」
「…何にも見えないじゃないのぉ」
「え~?そんなことないわよぉ…」
街中を歩いていて、ふと飛び込ん来た会話。
その声に、俺も思わず空を見上げた。
今にも雨が降りだしそうな、そんな空模様。親父が待ち構えているのかと思ったけど…どうやらそうでもないらしい。
すれ違った彼女は、まだ空を見上げて指を指している。
その指の先…雲の間を走るあれは……
「ちょっ……え?」
間違いなく、龍、だった。
俺が、見えてしまったそれに絶句したその瞬間、ぽつりと一雫。見上げていた俺の額に、雫が落ちてきた。
やがてその一滴は一丸となって、大地を潤す雨と化した。
「あぁ、それね。多分龍神だよ」
雨宿り代わりに訪れた仲魔の部屋の玄関先で、俺はそう説明を受けた。
「龍神…?」
「そう、龍神。役割は雷帝とほぼ同じだけど…知らない?『龍が空に舞うと、雨を呼ぶ』って…」
「…知らない」
「そう?あぁ、ちょっと待って。そのまま入らないでね」
すっかりずぶ濡れになった俺の頭にバスタオルを被せ、着替えとしてTシャツとハーフパンツを持ってきたのはゼノン。
「まぁ、これに着替えてよ。濡れたまんまうろうろされても困るしね」
言われるままに服を着替える俺を横目に、ゼノンはコーヒーを淹れ始めた。そして着替えが完了して、初めて入室を許された。
テーブルを挟んでゼノンと向かい合って座り、俺は再びその説明を聞いた。
「つまりね、龍神って言うのは、昔から土地を護る精霊なんだよ。風や水を司るね。元々精霊だから、雷帝とは少し違うんだけど、雨、風を呼んで大地を潤す役割は同じだよね。御前が見たのは、多分昔からこの辺りの守護神の龍だったんじゃないかな。大きかったでしょ?」
「うん。空一杯に広がって~って感じ。あんなの初めて見たよ」
「きっと成龍だったんだと思うよ。一般には見えないはずなんだけど、たまに見えちゃうヒトもいるよね」
「あぁ、霊能者とか?」
「…別に霊能者でなくてもいいんだけどね。守部だから、それなりの能力があれば、ある程度見えちゃうってこともあるんだよ。御前みたいにね」
「ふぅ~ん」
頭をごしごしと拭きながら、ゼノンが入れてくれたコーヒーに視線を落とす。
「龍神のこと、親父は教えてくれなかったよ?」
「……」
その言葉には、ゼノンも困ったように口を噤んだ。
「…んだよぉ…」
「いや、その…つまりね…雨だけじゃなくて、風も司る訳だから、下手に敵に回すと厄介なんだよ。だから雷帝も……」
ゼノンの表情は、いかにも言いにくそうだった。まぁ、そこまで言われりゃ、俺にだって察しはつくってモンだぁな。
「…ったくぅ…そう言うことかいっ。親父の考えそうなことだ」
ホント、子供扱いと言うか、玩具扱いと言うか…いつまで経っても一人前扱いじゃないんだからっ。失礼しちゃうよなっ!
でも、ゼノンはぷんと頬を膨らませた俺を見て、くすっと小さな笑いを零した。
「とにかく、深入りしないようがいいと思うよ。特に御前の場合はね」
もぉっ!そんなことまで言ってっ!しまいにゃ、雷落とすぞっ!
数日後のオフの日に、俺は久々に実家…つまり、雷帝たる親父がいる雷神界へと戻ってきていた。
「何、龍神を見ただと?」
「そう」
先日見かけた龍神のことを親父に話すと、ゼノンの言っていた通り、親父は嫌ぁ~な表情を浮かべていた。
そして極めつけ。
「良いか、ライデン。今後、龍神には近づくな」
「…何で?」
別にいいじゃんよぉ。
ちょっとムッとなった俺は、つい親父にそう問い返した。
すると、親父から返ってきた答えは。
「御前が関わると、ロクなことにならない。ワシに余計な苦労をかけさせんでくれ。ただでさえ、呑気な放蕩息子に手を焼いているのだからな」
「…悪かったね、呑気な放蕩息子でっ」
馬鹿言っちゃいけねぇよな。こちとら、任務で忙しいんだいっ。
それにしても、ゼノンも親父も、言うことは一緒だぁ。
そうなると、こっちにも意地ってモンを張りたくならぁな。
ま、親父には内緒で………
雷神界から抜け出した俺は、そのまま精霊界へと向かっていた。
ここには昔から龍の住む場所があるんだ。
そこは、精霊たちが好んで住む地区から、だいぶ離れた岩だらけの場所。ここに、ちょっとした知り合いだっているんだから。
俺が見た龍神も、精霊だって言ってたはず。だから、ここの龍に聞けば、龍神に逢えるかも知れないって推測だぁな。
で。
「リィ、起きてるかぁ?」
昔からの馴染みの白竜の名を呼んでみる……が、返事がない。
確か、ここにいたはずなんだけど…
「リィ~!リィ、リィ、リィ~~っ」
『こりゃっ!わしを犬か猫みたいに呼ぶでないっ!』
「いるんじゃんか。だったら何度も呼ばすなよぉ」
俺の声に、岩陰から出てきたのは、丁度仔犬くらいの大きさの白竜。自分の身体ぐらい大きな翼をはためかせ、俺の傍まで飛んできた。
「よぉ、久し振り」
『久し振りなら、もっとマシな呼び方は出来んのかっ!』
ぷりぷりとそう言いつつも、白竜…リィって言うんだけどね…とにかくそのリィは、俺の肩口へと着地点を決めたらしい。
『少なくともわしゃ、御主よりも軽~く3倍は生きとるのだぞ。少しは崇めいなっ』
「わかってるってばよぉ」
『何処までわかっておるのやら』
リィは小さな溜め息を吐き出していた。これがホントに白竜かねぇ。
『まぁ良いわ。それで、一体何の用じゃ?リャーデン?』
「…俺はライデンだってばよ。リャーデンじゃないのっ!ちゃんと覚えてよぉ」
まぁ、愚痴はともかく…俺は肩からリィを引き下ろし、両手で抱いて視線を合わせた。
「ねぇ、お願いがあるんだけど…聞いてくれる?」
『お願いじゃと?』
「そう」
リィは、大きく綺麗な赤い瞳をクリクリとさせて、俺を見つめ返した。
「龍神に逢えないかな?」
そう切り出した俺の声に、リィはカッと瞳を見開き、大声で叫ぶ。
『ばっ…馬鹿を申すでない…っ!龍神に逢いたいじゃとっ!?リャーデンにはまだ百万年早いわっ!!』
「…きったないなぁ、唾飛ばすなっつーのっ」
興奮任せに飛んできたおつゆを拭いながら、俺はもう一度リィを見つめた。
「ねぇ…駄目?」
『駄目じゃったら駄目じゃっ!』
リィはぷいっと横を向いて、翼をはためかせた。
『わしに用と言うのがそれなら、もう行くぞよ』
「ちょっと待ったぁ!!」
浮かび上がったリィの身体をあわてて捕まえ、空中から引き摺り降ろす。
「頼むよぉ~っ!リィに迷惑はかけないからぁ」
『駄目じゃっ!大体、御主は己の立場と言うモノを、きちんと弁えておるのかっ!?雷帝も雷帝じゃっ!リャーデンのような未熟者に、龍神の話をするなど…っ!』
「親父に聞いたんじゃないって!ちょっと、俺の話を聞いてよっ!」
興奮覚めやらぬリィを宥めつつ、俺はリィを抱えたまま、近くの岩場に座り込んだ。
「この前さ、人間界で見た訳よ。その龍神ってのをね。俺も初めて見たし、聞いたこともなかったんだけど、仲魔が教えてくれたんだ」
『全く、おしゃべりな悪魔がおったもんじゃ。龍神のことを容易にリャーデンに話すなど…』
「だから、リャーデンじゃないってばっ」
そう言いつつも、リィは意外としっかり俺の話を聞いてくれていた。
ゼノンから言われたこと、親父から言われたことを全てリィに話した。勿論、あの二名が、俺が龍神に逢うことを認めなかったって言うこともね。
するとリィは、大きな溜め息を吐き出した。
『やはり駄目じゃな。そんな安易な理由で、龍神に逢わす訳にはいかん』
「何で…っ!?どぉ~してっ!?」
リィの無情の一言に、俺が納得いかないのは言うまでもないよな。
でも、リィは俺の憤りなんてちっとも感じてないみたいに、当たり前のようにその口を開いていた。
『当たり前じゃろうが。雷神一族と龍神は、近寄らん方が良いのじゃ。あらぬ争いを避ける為じゃい。元来からの事決めじゃ、諦めい』
そんなこと言われたってさぁ…
「…嫌、だ」
『リャーデンっ!』
嫌に決まってるじゃんかっ。折角ここまで来たのに、それを無下にされてみぃよ。俺だって反抗したくならぁな。
「嫌だったら嫌だ。俺は絶対に龍神に逢うんだからっ!でなきゃ、親父にもゼノンにも、ずっと子供扱いのままじゃんかよぉ。俺だってもうとっくに一人前だってこと、ちゃんとわからせたいの…っ!それに、リィでなきゃ、頼めないじゃん、こんなこと…」
苦しい言い訳だよな。でも、それが俺の本心なんだから、しょうがない。
大きな溜め息を吐き出したリィは、心底呆れたように俺の顔を見た。
『こりゃ…未熟者を脱したいと言うのなら、その涙を何とかせいっ。馬鹿者がっ』
「…だってぇ…」
リィは赤い舌で、俺の頬を嘗めた。
「くすぐったいっ」
『文句を言う前に、一人前にならんかい』
「リィ~っ」
『泣くなと言うとろうがっ』
そんなことを言われても、もう零れちまったモンはしょうがないじゃないか…っ。リィの馬鹿ぁ~っ。
ぐしぐしとシャツの袖で目を擦る俺を見ながら、リィは小さく笑いを零す。
『御主は慰め役がおらんと泣きやまんのか?』
ぐっ……
「違う~っ!俺はゼノンがいなくたって…っ」
『そうか、ゼノンと言う者か。そう言えば、さっきも言っておったなぁ』
リィの笑いは更に続き、赤い瞳を細めて俺を眺めていた。
俺はと言うと…思わず口走った自責の念で、真赤になってる訳だ。これじゃまた、子供扱いだぁな…。
と、思っていたのも束の間。
『未熟者では、龍神に逢わす訳にはゆかんぞ。わかっておるな?ライデン』
「…リィ…」
何だよ。急に、ちゃんと名前呼んだりなんかして…
思わず瞳を丸くした俺を、リィは笑った。
『一人前のヤツを、きちんとした名前で呼ばんと、そりゃ失礼ってモンじゃないのか?』
「一人前って…ってことはさ、龍神に逢わせてくれんの!?」
思わぬ展開に、興奮した俺がおつゆを飛ばしたことは言うまでもない…
『こりゃ!唾を飛ばすでないっ!汚いじゃろうがっ』
そうは言いつつも、リィの顔は笑っている。
「ありがと~っ!大好きだよ、リィ~~っ!!」
『やめいっ!気色の悪い…っ』
ギュ~ッと抱き締めた俺を、リィは気色悪がったけどさ。本心から嬉しかったんだもん、しょうがないじゃん。
その日は、雨が降り出しそうな天気だった。
俺はリィを懐に抱え込んで、人間界に戻ってきた。そんでもって、ここは都内某所の高層ビルの屋上な訳だ。
「ホントに大丈夫な訳?」
余りの展開の速さに、俺が戸惑いの問いかけをしたのは、ある意味当然だよな。
でもリィは、そんなことはそ知らぬ顔。
『わしを信じてみぃな』
リィは俺の懐から顔を覗かせてそう言ったけど…そんな、信じろって言われて、はいなって頷ける?
でも、頼みの綱はリィだけだから、信じるしかないんだけどさぁ。ちょっとドキドキだよね。
『ほら、ライデン』
ちょっとぼんやりしてた俺の気を引き締めるように、リィの声が聞こえた。
「あ……」
促されるままに空を見上げてみれば、雲の隙間から、巨大な身体をしならせて龍が舞う姿が見えた。
綺麗。その言葉がとても良く似合うと思う。
その途端、ぽつりぽつりと空から雫が落ちてきた。
手で庇を作り、細かく降る雨にも構わず空を見上げて思わず見とれてしまっていると、懐から、リィの何語ともわからない言葉が流れ出した。
呼びかけてるのかな…?と、耳を傾けていたのも束の間。
「あぁ、やっぱりここにいたんだ」
「…んだよ、呼んだ覚えはないぞ」
背後から聞こえた、聞き慣れた声。振り返ってみれば、案の定。そこにはゼノンが立っていた。
ゼノンは俺の声を気にすることもなく、先程の俺と同じように、雨の中、空を見上げて龍が舞うのを見ていた。
「雷帝がね、御前が無茶しないように監視してろって。まぁ、こんなことじゃないかとは思ってたんだけどね」
「…今更止めようったって、そうはいかないんだからね。もうリィが呼びかけてるんだからっ」
絶対、止めさせないから…っ。
俺が決意を固めているのを横目に、ゼノンは小さな笑いを零した。
「止めるつもりなら、もっと早く来てるよ。いい機会だしね、俺も龍神を見せてもらおうかと思って。止めて欲しいなら、いつでも止めてあげるけど?」
「……ったく…」
意外と、いい加減…。でもまぁ、その顔が笑ってるから、許してやるか。
「認めてもらえるといいね。龍神に」
ぽそりとつぶやいたゼノンの声が、その時は妙に嬉しかった。
ずっと子供扱いだったのに…な。
と、その時。そんないい雰囲気に水を差したのはリィの声。
『ほら、降りて来るぞよ』
「あ…?」
その声に顔を上げると、今まで随分高いところを舞っていたはずの龍神が、すぐ傍まで降りて来ていた。
そして。
『龍神の。久しゅうなぁ』
これは、リィの声。
『これは老主殿。御久しゅうございますなぁ』
これは、龍神の声。地の底から響いて来るような、そんな感じの低い声。
これが龍神の声なんだ~。ちょっと感激っ。
『老主殿自ら足を運ばれるとは、何事のこと?』
リィに向かって尋ねた声に、俺の方が緊張しちまうよな。
リィはちょっと俺の方に視線を向けてから、再び龍神に向かい合った。
『いや、なに。雷帝の嫡子がのぉ、主に逢いたいと申してな…ほらライデン、ぼんやりしとらんで、龍神に挨拶でもせんかっ』
「あ…っと……あ、初めましてっ。俺、ライデンって言います。で、あの…こっちは仲魔の…」
と、思わずゼノンを振り返ると、ゼノンはいつの間にか、俺の隣にやって来ていた。
「地獄文化局、局長のゼノンです。どうぞよろしく」
しっかり自分のこと、宣伝してやがった…。
俺がこんなに、緊張してるって言うのに…っ。
『ライデンとわしゃ、ちょっとした話し相手でな。どうしても主に逢いたいと言い張るのでなぁ。未熟者故、主に対する礼儀も弁えてはおらぬが、わしの顔に免じて、許してやってくれの』
すかさずそう言ったリィの声。まぁ、しっかりフォローしてくれてるわ。
と言うことは、相変わらず子供扱い、ってことか…どうせ未熟者だよ。ふんっ。
「…ライっ」
不意に脇腹を小突かれ、ふと横を見ると、ゼノンが心配そうな顔で俺を見ていた。
大丈夫だって。
そんな思いを込めて、軽く微笑む。
こんなことでびびってたら、男が廃るってモンだ!
大きく深呼吸をした俺を、龍神はその赤い瞳で見つめていた。
『主、ライデンと申すか。何ゆえにわしに逢いたいとな?』
そう、問いかけられる。
「えっと……」
…答えを、用意してなかった。これは俺の失態。でも、一生懸命頭を働かせて、精一杯の気持ちを告げた。
「俺、正直言って、あんたのことは今まで知らなかったんだ。でも、この前偶然に、あんたが空を舞うのを見て、凄く綺麗だと思った。それで、もう一度逢いたくて、リィに無理矢理頼み込んだんだ。理由って聞かれると、どう答えていいのかわからないんだけど…でも、俺が思ってることは、聞いてくれる?」
俺の声を、龍神はじっと聞いていた。そして返って来た声。
『申してみよ』
なんだ、意外と話しがわかるじゃん。
少し気が楽になり、俺は夢中で言葉を綴っていた。
「俺はまだ、あんたや親父みたいに、立派な仕事は出来ない。それは、正直に認めるよ。でもね、将来、親父の後を継ぐことを前提にして…俺は、この惑星を救ってやりたいと思ってる。今を生きる者として…地球が発する悲鳴が、酷く心苦しい。生命のバランスが崩れたことによって、飢え、渇き始めてる大地が、あんたや親父が呼ぶ雨で、満たされていく。それが一時の安らぎだと考えると、辛いところもあるけど…でも、それで生命を繋いでいくんだよね。だから、俺は親父を尊敬してるよ。勿論、あんたのことも…。俺も、そうなりたいって…」
何を言ってるのか、俺自身にも、よくわかってないんだけど…気持ちは伝えたと思ってる。
不意に、龍神の低い笑い声が聞こえた。
『老主殿、なかなか面白い者と知り合いであるな』
笑いを含んだ声で、リィに語りかける龍神。
呆然とする俺の前で、リィもくすくすと笑っていた。
『そうじゃろう?此奴と話しておるとな、飽きんのじゃ』
リィってば…俺を何だと思ってるんだよ。
でも、龍神が俺を見る眼差しは優しかった。
わかってくれたかなぁ…?
『主のような輩が、次期雷帝とな?なかなか楽しみであるな』
龍神の声。
「…そう?」
『あぁ。待っておるぞ。主が雷帝になるのをな。無事就任を終えたなら、またゆっくりと言葉を交わす機会を得たいものだ』
認めてくれたのかな…?
そう思うと、嬉しかった。
「俺も、待ち遠しいっ」
にっこりと笑ってみせると、龍神も低い声で笑った。
『全く、たいした輩じゃわい』
龍神が去ってから、リィは俺にそう言った。
「俺ってば凄いじゃんっ。龍神とタメで会話しちゃうなんてっ」
『馬鹿者がっ!龍神は御主のことを敵ではないと認めただけじゃわいっ。いい気になっておると、痛い目に合うぞよっ』
…んもう、リィったら…おまけにこいつまで…っ。
「ゼノン、笑うな…っ」
くすくすと笑いを零すゼノン。失礼しちゃうよな、全くっ。
「でもまぁ、いいんじゃない?」
一仕切り笑ったゼノンは、目にうっすらと浮かんだ涙を指先で拭って、そう言葉を発した。
「ねぇ、リィさん。幾ら雷帝の嫡子だって言ったって、そう簡単に龍神に気に入られるってモンじゃないでしょ?」
『まぁな』
「だったら、やっぱりライデンだからじゃないのかな?龍神だって馬鹿じゃないもの。将来的に見て、ライデンにその素質がなければ、認めないんじゃない?だから…ね」
「ゼノ…」
にっこりと微笑むゼノン。その想いも、笑顔も、嬉しかった。
『じゃがな、ライデン。気を抜くでないぞよ。御主はすぐに調子に乗るのじゃなからなっ』
「わかってるってば」
俺は、リィをギュッと抱き締めた。そして、ゼノンに向けて、特上の笑みを零す。
「サンキュー」
「どう致しまして」
お互いに、くすくすと笑いを零しながら、俺は思っていた。
まじめに、龍神に認められるくらいの雷帝になろうって。それが、俺を信じて待っていてくれる、龍神やゼノン、リィへの期待に応えることだと思うからさ。
「よぉし、いっちょやってみっか」
俺はリィを懐に入れると、雨がやんだばかりの空に向かって両手を掲げた。
『こりゃっ!ライデン、何を…っ』
「あ…」
リィの言葉も、ゼノンのつぶやきも、そんなもんはすぐに聞こえなくなっちまった。
途端の、土砂降り。
『御主は加減ってモンを知らんのかっ!?』
そう、リィは怒ったけどさ。
「…ずぶ濡れになるもの、まぁいっか」
「だしょ?」
同意してくれたゼノンに微笑み、俺はにっこり。
遠くの空で、龍神の笑う声が、雷鳴となって響いていた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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