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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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覚醒 ~side X~3
こちらは、本日UPの新作です
注)あくまでも創作ですので、辻褄が合わないことがあっても目を瞑ってください…(苦笑)
  5話完結 act.3

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◇◆◇

 俺が、"ゼノン"と仮契約をしてから数ヶ月。全く、何の進展もないと来た……。
 "ライデン"に関して、凡その見当は付いているはずなのに…何故か、何にも進まない。と言うか、俺は湯沢くんと会っていない。
 あの日…湯沢くんが練習中に倒れたあの日から、何度か電話では話したものの、急に忙しくなったとかで会えなくなった。
 "ライデン"の媒体が湯沢くんではないかとの仮説は出来上がっていたのに、会えなければその確認も出来ないし、"ゼノン"が覚醒するには至らない訳で…結局、何の進展もない、と言うことに。
 学校も違うし、家も知らないし、さてどうしようか…と思い悩んでいた頃。
 たまたま立ち寄った本屋で、その雑誌を見つけた。
 その雑誌によると、近々"悪魔"が、デビューするんだとか。
 そこに写っていた写真に、俺の視線は釘付けになる。
 "ライデン湯沢"。それは…俺が捜していた"悪魔"なんだろう。
 やっぱりな~と思いつつ、暫くその写真を眺める。他のメンバーの名前(苗字)も、見慣れた名前が並んでいた。明らかに、あのサークルに集まって来ていたメンバーが殆どで…と言うか、良く知っている奴らしかいないから…何だかちょっと複雑な気分、だった。
 それと同時に…疑問が一つ。
 いるはずの、あの人がいない。
 まぁ、何か理由はあるんだろうが…このメンバーで、誰が引っ張って行くんだろう…と思いながらも、俺は関係ないんだから…と小さく溜め息を吐き出し、その雑誌を持ってレジへ向かう。
 ぼんやりと歩いているうちに、家まで帰って来たのだが…そのドアの前に、誰かいる。
「……誰?」
 思わず声をかけると、その姿はすっと俺のほうを向いた。
「…浜田さん…?」
「あぁ、久し振り」
 にっこりと微笑む姿は、以前と全く変わらないように見えたのだけれど…ほんの少し、その表情が硬く見えた。
「…どうしたんですか?」
 今まで、家になど来たことがない訳だから、そりゃ当然の問いかけなんだけど…。浜田さんは笑ったまま、俺の問いに答える。
「うん、お前と話がしたくてね。時間が余りないものだから、直接来てしまって悪かったね」
「…はぁ…まぁ、良いですけど…散らかってますよ?」
 この人の潔癖は知っているから、予めそう断言してからドアを開けて中へ促す。
「心配しなくていいよ。話をしたら直ぐに帰るから」
 くすくすと笑いながら、俺の後について部屋に入ってくる。そして、適当な場所に座ると、徐に話しかけて来た。
「本当はね、もっと早く来るべきだったんだけど…ちょっと色々あってね」
「…はぁ…」
「…お前…"ゼノン"に会ったね?」
「………」
 急にそう言われても…どう返していいのかわからない。
 でも、浜田さんはそんなことは全く気にせず、言葉を続けた。
「本来なら…わたしが導いてやるのが筋なのだが…"ゼノン"の覚醒だけは例外だから、"ゼノン"が直接お前に会うことも許可した。"ゼノン"に会って、お前が納得出来たかどうかはわたしにはわからなかったんだが…」
 変な気配は感じない。とても、穏やかで…暖かい雰囲気。でもこの口調から察するに…見た目は浜田さんだけれども、中身はどうやら"悪魔"のようだ。確か、皇太子だったはず。
「…会いましたよ。もう随分前に。悪魔の媒体になる覚悟は出来ましたけど…"ライデン"だろうと目測をつけた相手とは、暫く会えていません。急に忙しくなったから、って」
 "ゼノン"は、出て来ない。理由はわからないけど…仕方ないから、俺がそう答える。
「…そう、か。そうだろうね…色々忙しくなった頃だったからね。勿論、引き合わせることは簡単なんだが…それでは意味がない。"ライデン"が、見つけなければ。厄介な約束を許可してしまったことは悪かったと思っているよ」
 浜田さんはそう言って、じっと俺を見つめていた視線を下げる。
「…わざわざそれを謝る為に、俺のウチに…?」
 何で、このタイミングでそれを言いに来たのかわからない。だから、俺は思わずそう問いかけていた。
 浜田さんは俺の問いかけを聞いた後、暫く口を噤んでいた。そして、ゆっくりと顔を上げると、その言葉を俺に告げた。
「魔界にね、帰らなければならなくなってね。浜田も、地元に戻ることが決まったから。お前の覚醒の手伝いが出来なくなってしまった。お前と"ゼノン"に申し訳ないと思ったから。顔を見て、ちゃんと伝えようと思ってね」
「………」
 それで、か。だから、メンバーの中にこの人の名前がなかったんだ。
 浜田さんは言葉を続けた。
「わたしが連れてきたにも関わらず、"ゼノン"には何の手助けもしてやれなかった。それが心残りなのだが…」
「…一人ひとりを、そこまで面倒見るつもりだったんですか?」
 思わず問いかけた言葉に、浜田さんは小さく笑う。
「当たり前だろう?わたしが連れて来たんだから。全員をきちんと覚醒させることがわたしの務めだったんだが…どうしても帰らなければならなくてね。こればっかりは…もうどうにも出来ないんだ」
「…そうですか…」
 俺自身は…そんなにダメージはないんだが…多分、"ゼノン"は何らかのダメージを受けているんだろう…だからこそ…出て来ないんだ。皇太子と"ゼノン"がどの程度の繋がりなのか、俺にはわからないけど…まぁ、"ゼノン"も魔界では有力者らしいし…浅くはない繋がりだから、皇太子も自ら来たのかも知れないし…"ゼノン"も最初から、何かを察していたんだろうな…。
「…ちょっと待って下さい。"ゼノン"出しますから」
 このままじゃいけない。また、"ゼノン"は後悔する。そう思ったから、浜田さんにそう声をかけ、最近何かと活用し始めた姿身を浜田さんの方に向けると、その鏡に触れ、"ゼノン"に呼びかける。
「…出て来いよ、"ゼノン"。皇太子殿下自ら来てるんだぞ。黙ってないで、あんたの言いたいこともちゃんと伝えるべきだ」
 暫く…鏡には、俺の姿が映ったままだった。けれど、やがてその姿は"ゼノン"へと変わる。
 真っ直ぐに俺を見つめる碧の眼差しは…いつもとは違う。うっすらと涙の浮かんだ瞳を俺から隠すように下を向くと、ゆっくりとその口を開いた。
《…"ダミアン様"自ら、来ていただいて…なのに俺は…まだ何も……》
 すると、浜田さんはくすっと笑って鏡の前に立つ。その鏡の中には…金色の髪の、顔の白くない悪魔がいた。
「そんな顔をするんじゃないよ。後のことは、"デーモン"に頼んである。お前も良くわかっているだろうが、彼奴に任せれば大丈夫だから。わたしのことなら、何も気にしなくて良い。こうして…お前の元気な顔が見ることが出来たのだから、それで十分。お前を覚醒に導けなかったことを、わたしの方が詫びねばならないのだから」
《"ダミアン様"…》
「お前は、もう少し素直にならなければいけないよ。いつも気丈でいるのは偉いけれど、それだけではお前にも…そして、石川にも、負担になってしまう。"ライデン"はもう直ぐ近くまで来ているから。もう少しの辛抱だよ。会えたらちゃんと、自分を解放するんだよ」
 そう言って、浜田さんは俺の顔を見て、その頭をぐりぐりとなでた。勿論、鏡の中の"ゼノン"も、皇太子にぐりぐりと頭をなでられている。
「石川、頼むよ。"ゼノン"はなかなか素直になれないから。まぁ、もうわかっているようだけれどね」
「…はい…」
 微笑む浜田さんの姿に、流石の俺も胸の奥がちょっと熱くなる。
 学校や年齢が違うから、そこまで深い付き合いではなかったけど…でも、この人は、上に立てる人だと思った。
 皇太子だなんて言うから…何人もの有力者を人間界に連れて来るような人だから、もっと傍若無人なところがあるのかと思ったら、そんなことは全くない。本当に、有力者たちに愛されて、尊敬されているんだと思う。
 だからこそ、自分たちの仕事を置いてまで…この人の任務に着いて来たんだと。
「…じゃあ、わたしはそろそろ行くよ。何かあれば、小暮に連絡を取ると良い」
 にっこりと微笑み、浜田さんはそう言って席を立った。
「また…会えますか?」
 靴を履き、ドアノブに手をかけた後姿にそう問いかけると、振り返り様にっこり微笑んだ。
「勿論。ほんの少し遠くへ行くだけで、いなくなる訳ではないから。用件があればわたしからも会いに来るしね。そっちも、何かあれば寄っておくれ。浜田も待っているから」
 ほんの少し、遠くへ行くだけ。今生の別れではない。それがわかっただけでも安心だった。
「じゃあ、ね」
 今までとなんら変わりのない挨拶をして、浜田さんは去って行った。
 こちらが焦っても仕方のないことだけれど…それでも、もう少し早く覚醒出来たなら、あの人ともう少し一緒にいられたのかな…と、今では叶わぬことを思ってみたり。
「…"ダミアン様"って、思ってたより良い人だね…」
 思わずつぶやいた言葉に、"ゼノン"は少し苦笑した。
《そりゃ…曲がりなりにも皇太子殿下だからね。信頼していなければ、俺たちだってこの任務に参加しようとは思わないよ。それだけに…こんなに早く帰獄するなんて、残念だけど…》
 そう答えた"ゼノン"だけど、もうその瞳に涙はなかった。
「…"ライデン"、近くまで来てるから、って言ってたけど…いつ頃会えるかな…」
《…さぁ…ね。そればっかりは、俺たちにはわからないから…》
「…もう一回、連絡取ってみようか?湯沢くんが捕まらなくても、小暮とか、清水さんとか…誰かしらと連絡が取れれば、繋がるかも知れないでしょ?浜田さんだって、何かあれば小暮に連絡を取れ、って言ってたし…」
 それで繋がるのなら、それに越したことはない。でも…ちょっと、もやもやしている俺がいる…。
 湯沢くんと会ったとして。何を、どう話そう?
 そのもやもやは…何に対してのモノか。
《…暫く…そっとしておこう。"ダミアン様"が俺のところに来たってことは、覚醒している他の奴等にはもう話はしているんだろうし…むこうも落ち着くまで待った方が…》
「…そうだね…」
 俺は小さな溜め息を一つ。
 少し時間を置けば…俺の気持ちの整理もつくんだろうか?
 確証はないけれど…今よりは、少し落ち着いていてくれたら…と思わずにいられない。
 まるで、他人事みたいだけど…他人事の方が、ずっと気が楽なのは当然のことだった。

◇◆◇

 俺が"ダミアン様"の帰獄の話を聞いてから、更に数ヵ月後。
 "彼ら"は、異色のバンドとして、一部で有名になっていた。
 勿論、俺の日常は今までとは何ら変わりなく…。相変わらず、湯沢くんとは、連絡が取れていない。
 "ゼノン"は未だ乗り気ではないけど…そろそろ俺も、何とかしようか…と思い始めていた時。
 偶然、清水さんと会った。

 その日、俺は大学時代の友達と飲みに行った。その二次会だか三次会だかで行ったバーに、彼はいた。
「…あれ?石川?」
 声をかけて来たのは、向こうから。
「…清水さん…」
 その顔は全然変わらない。小洒落たバーも良く似合う。好きなことを仕事に出来たのだから、多分充実しているんだろう。
「久し振りだな。元気だったか?」
 問いかけられ、小さく頷く。
「清水さんも元気そうで…」
「…体調だけはな」
 清水さんはそう言ってくすっと小さく笑う。
「お~、石川~。何、知り合い~?じゃ、俺たちこっちにいるから、そっちで呑んでれば~?」
 偶然勘の優れた俺の連れは、清水さんに絡むこともなく俺にそう言って来た。 
「お前の連れもそう言ってるし、良かったら、一緒に呑まないか?ちょっと話したいこともあるし…」
 そう誘われ、俺はすっかり酔っ払ってご機嫌な友達から離れ、清水さんの隣に座る。
「…忙しいんじゃないんですか?」
 そう問いかけると、清水さんは苦笑する。
「今はまだそうでもない…かな。まだそんなに有名じゃないし…それに、まだ……全員揃ってないしな」
「………」
 その言葉に、思わず口を噤んだ。
 その全員に…"ゼノン"は含まれているのか。それがちょっと心配だったんだけど…俺の表情を読んだのか、清水さんは俺の耳元に口を寄せる。
「なぁ?"ゼノン"?」
「…っ…」
 見抜かれていた、と…驚くべきか…それとも、関心するべきか…。酒も入っている所為もあり、思考がまとまらない…。
 すると清水さんは俺から離れ、再びグラスに口をつけた。
「浜田さんから話は聞いてる。"ゼノン"と"ライデン"のこと。俺たちが口も手も出せない状態だってことで…随分遠回りしてるみたいだな」
「…まぁ…」
 清水さんは…何処まで状況を知っているんだろうか…と、そんな野暮なことは聞かなくても、多分…全部知っているんだと思う。その眼差しが、そう言ってる。
 ならば…今がいいチャンスだと思う。
「…あの…」
 俺は意を決して口を開いた。
「…湯沢くんと、連絡を取りたいんですけど…ちょっと前から、全然繋がらなくて…」
「…ちょっと前って、どれくらい前から?」
「…えっと……前に、サークルで練習中に湯沢くんが倒れたの覚えてます?あの後からなんですけど…」
「…あぁ、覚えてる。でもあれって、もう随分前だろう?それから連絡取れないのか?」
「最初の頃は、電話だけは…でも、忙しくなるって言われて…それからは俺もあんまり連絡しなくて…今は全然繋がらない状態で…」
「…そう…か…」
 俺の話しに、清水さんは暫く何かを考えているようだった。
 そして。
「悪い、場所変えよう。お前の家に行っても良いか?」
「…は?まぁ…いいですけど…ちょっと待ってください?」
 何か、進展があるのなら。そう思って、俺は連れに先に帰ることを告げ、清水さんと一緒にバーを出る。
「…でも、どうして場所を…?」
 俺の家へ向かう途中、そう問いかけると、清水さんは一つ間をおいて、それから口を開いた。
「…"ゼノン"に会いに行くんだ。彼奴と直接話がしたい。どうせ、部屋からあんまり出ないだろう?」
「…良くご存知で…」
「古い付き合いだからな」
 くすっと笑ったのは…清水さんの姿をしていても、"エース"なんだろう。全てを見透かされているようで…思わず背筋がぞくっとした。
 その後は当たり障りのない世間話をしたり、俺の近況報告などをしたりしているうちに、俺の家に着いた。
「散らかってるけど…」
 そう言いながら、部屋のドアを開ける。
「あぁ、大丈夫大丈夫」
 清水さんは部屋に入ると、適当な場所に座る。そして俺が座ると、その口を開いた。
「"エース"を解放させて貰うぞ」
 そう言うなり、物凄い気が溢れだし、俺は思わず両腕で顔を覆った。
 時間にしてみれば、たいしたことはないんだろうけど…部屋の中を強風が吹き荒れているみたいな感覚は、尋常ではなかった。
 そして、それが治まって顔を上げると…俺の前には、白い顔に赤い紋様を頂いた悪魔がいた。
 初めて…目の前で、本物の悪魔を見た。
「初めまして、だな」
 赤き悪魔…"エース"は、俺を見て小さく笑う。その姿は、清水さんと良く似ていて。それは、元から似ている相手を選んでいるのか…はたまた、似ているように見せているのか。それは正直わからないけど…でも、わざわざ選んでくるくらいだから、根本的な何かは似ているんだろう。
 俺は…そんな自覚は全くないけど。
「さて、それじゃ"ゼノン"を呼ぼうか。石川、頼むな」
「…はぁ…」
 そう言われ、俺は仕方なく姿見を持って来る。そして、"エース"の方に向けて立てかけると、鏡にそっと触れる。
「…"ゼノン"。お客さん」
《……"エース"…》
 俺に呼ばれて出て来た"ゼノン"は、その姿を見て小さく溜め息をついた。
「何だよ。暫くぶりに会ったって言うのに、溜め息かよ」
 くすくすと笑いを零す"エース"に、"ゼノン"は再び溜め息を一つ。
《…俺を笑いに来た訳じゃないんでしょ?用件は何?》
 "エース"に扱いには慣れているようで、"ゼノン"は呆れ顔で話を促す。
「あぁ…そのことなんだけどな…石川、お前にも関係するからちゃんと聞いてろよ」
「…はい…」
 "エース"は笑いを納めると、"ゼノン"へと視線を向けた。
「"ライデン"がな、絶不調なんだ」
《……どう言う事?》
 突然そう切り出され、"ゼノン"も戸惑いの表情を浮かべていた。
「今…"ゾッド"と一緒に組んでいるんだが…どうも、微妙に音の波長が合わないらしい。俺たちには違和感はないんだが…彼奴だけはそれが気になって仕方がないらしいんだ。覚醒するまでは感じなかっただけに、それでストレスが積み重なって、心も身体も、不調を訴えてる」
《……俺にそう言われても…どうにもならないでしょ?》
「まぁな。でも、お前にも知っていて貰わないと困る。"ゾッド"には…帰獄の詔勅(みことのり)が下りてる。後任が見つかり次第、帰らなきゃいけない。その後任は…お前に決まっているのに、"ライデン"があの調子じゃ…お前の覚醒が遅くなるばかりだ。そうなれば必然的に、"ゾッド"といる時間が長くなって、進展がないどころか後退するばかりだ」
《…"ゾッド"は…"ライデン"の絶不調のこと、どう思っている訳?知らない訳じゃないんでしょ…?》
「あぁ。勿論わかってる。"ゾッド"だって、"ライデン"のことを心配しているんだ。勿論、"ライデン"のことだから、別に"ゾッド"を毛嫌いしている訳でもない。心配されていることをわかってもいるから、心配かけまいとあんまり口にしないし…他の奴等はアテにならないし…」
 "エース"も大きな溜め息を吐き出す。
《…他の奴って…どうしてるの?"デーモン"とか、"ジェイル"とか…》
 その問いかけに、"エース"は更に大きな溜め息を吐き出すと、頭をぼりぼりと掻き毟る。
「"ジェイル"は何かしでかしそうだ。はっきりとは言わないが…最近何か可笑しい。とても、相談なんか出来やしない。それに"デーモン"は…お前は石川の中にいる、ってわかってるモンだから、今は"ルーク"捜しに一生懸命だ。全く…総帥としての自覚があるのかどうか…」
《…そう…お前も大変だったんだね。俺から何かアクションを取ることが出来なくて御免ね…》
「…お前の所為じゃないだろうが…」
 "ゼノン"の声に、"エース"の表情が少し変わる。今までのイライラが…ほんの少し、緩和されたみたいな表情。
「……それから…石川、お前のことだが…」
 小さく吐息を吐き出して気持ちを落ち着けると、"エース"の視線は俺へと向いた。
「お前、湯沢のことどう思ってる?」
「…は…?」
 突然そう問いかけられ…その質問の意図を探る。
「えっと……湯沢くんのことは好きだけど…」
「それは、LOVE?LIKE?」
「……何でそんなこと…?」
「湯沢は、そこに引っかかってる」
「…は?」
 それはどう言う……?
 "エース"の言わんとすることが良くわからず、俺はちょっと眉を顰める。
「意味が良くわからないんですが…?」
 そう問いかけると、"エース"は小さな吐息を一つ。
「彼奴なりに、かなりのストレスと抱えているんだと思う。悪魔であることが、今まで通りお前に関わることが、お前に迷惑になるんじゃないかとな。だから、自分の想いを隠し、なかったことにしようとしてるのかも知れない。それが、大きなストレスの元だってことに気付かずにな。でも、それもそろそろ限界だと思う。だから、俺はお前に話をした。湯沢が、お前と接触する手立てを内緒で整えてやる。その代わり、今すぐにじゃなくていいから…湯沢への想いを、はっきりさせてやってくれ。駄目ならそれでいい。ただし、はっきり断ってやってくれ。気を持たすような言い方だけはするな。俺たちは…湯沢が傷付いていく姿を見たい訳じゃない。それはわかってくれ」
 切々とそう言葉を紡ぐ"エース"に、"ライデン"と湯沢くんは、大事にされているんだと思った。
 勿論、俺だって…湯沢くんを傷付けたい訳じゃないし、突き放したい訳でもない。
 即答出来なかったのは…やっぱり、世間体、だろうか…。悪魔になる、と言うこと自体、もう既に良くは思われないだろうけど。
「俺たちには…どうしてやることも出来ない。"ライデン"を助けられるのは"ゼノン"だけだ。そして、湯沢を助けられるのも石川だけだと思ってる。だから…頼むな」
 "エース"はそう言って、大きく溜め息を吐き出した。
《…御免ね、心配ばかりかけて…》
 "ゼノン"の声に、"エース"は小さく笑う。
「俺は大丈夫。このくらいじゃへこたれないから。だが、"ライデン"も"ゾッド"も気の毒でな…見ているのが辛いな」
 苦しんでいる人を見て…どうにも出来ないもどかしい気持ち。それは、どれだけ辛いことだろう。
 それでも"エース"は、仲魔を支えたいと思う。それは…多分、"エース"には当たり前のこと。だって、共に生きて来た仲魔だから。
 生命をかけて…共に闘って、生き抜いて来た仲魔だから。
 この悪魔たちの魔界での過去は…俺の理解の域を超えている。でも、仲魔を大切だと思う気持ちはわかる。
 共に…歩んで行きたいと、思う気持ちはわかる。
 だからこそ…俺も、踏み出さなければ。
 悪魔の媒体として…今のぬるま湯ではなく、ちゃんと、"ゼノン"と一緒に歩いて行かなければ。
 湯沢くんのことも…きちんと考えなければ。
 そんなことを思っていた俺の気持ちを察したのか、"エース"は小さく笑いを零すと、俺の肩にそっと触れた。
「大丈夫。お前なら、やっていける。だから選ばれたんだ」
「…だと良いけど…」
 正直、この先の未来が全く見えない。でも…俺は一人ではないのだから、きっと何とかなる。
 大きく息を吐き出すと、にっこりと笑ってみせる。
「…でも、"ゼノン"がいるから…きっと、何とかなるかな」
「…そうだな」
 "エース"もくすっと笑う。"ゼノン"へと視線を向けると、"ゼノン"も小さく笑っていた。
「…じゃあ、言う事言ったし、そろそろ帰るわ」
 "エース"はそう言うと立ち上がり、玄関へと向かう。そして、靴を履くと一瞬魔力を高める。風圧のようなものを感じてぎゅっと目を瞑ったが、直ぐにその魔力は落ち着き、目を開けるとそこには"エース"ではなく清水さんがいた。
「湯沢くんのこと、教えてくれてありがとう」
 そう言うと、清水さんもにっこりと微笑む。
「こっちこそ。久し振りに顔も見れたし、話も出来た。湯沢のことは、ちゃんと責任持ってお前と接触出来るようにするから」
「…うん。俺も、ちゃんと結論出すからね」
「あぁ、頼むな」
 じゃあ、な。
 清水さんはそう言って、帰って行った。
 その背中を見送った後、俺は部屋に戻って鏡に向き合う。
 そこにはまだ"ゼノン"が待っていた。
「…さて、これから忙しくなるかな」
《…そうだね。色々考えないとね》
 "ゼノン"の顔にも、今までのような漠然とした不安は見られなかった。
 気がかりだった"ライデン"のことがわかったのだから、少しは安心したんだろう。
 俺も…何処かすっきりとした気分だった。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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