聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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覚醒 ~side X~4
俺が清水さんと"エース"に会ってから、一週間程経ったその日。
夜、家に帰って来ると…玄関のドアに凭れるように膝を抱え、誰かが座っていた。
「…誰?」
様子を伺いながら声をかけると、ゆっくりと顔を上げたその姿に、俺は…息が、止まるかと思った。
「……石川くん…?」
「…湯沢くん…」
まだ、一週間しか経ってないのに…と驚いたのも束の間。
「…お腹痛い…」
「…え?ちょっ…待って、今鍵開けるから…っ」
蹲る湯沢くんを少し移動させ、慌てて鍵を開ける。
「大丈夫…トイレ行く…?」
下してるのかと思ってそう声をかけたけど、湯沢くんは小さく首を横に振った。
「…違う…胃が痛い…」
「…胃?じゃあ、病院行く?」
すると、再び首を横に振った。
「…薬…あるから……お水頂戴…」
「わかった」
取り敢えずベッドに寝かせ、コップに水を入れて持って来ると、湯沢くんに聞いて、荷物の中から薬を探し出す。それはちゃんと病院から処方された薬だったから、ちゃんと受診していたことに少しだけほっとした。
「はい、水持って来たよ。飲んで」
上体を起こして薬を飲ませると、再びベッドに寝かせる。
横になって少し落ち着いたのか、湯沢くんはもうウトウトしていた。
「…石川くん…」
夢現の中…名前を呼ばれる。そして、布団から少しだけ差し出された手は、何かを探すかのように動いていた。
俺はその手をそっと握り、耳元で小さく囁く。
「…大丈夫。ここにいるよ」
「…うん…」
俺の声に、安心したように小さく頷くと、そのまま眠ってしまった。
俺は、その姿を眺めながら…"エース"に言われた言葉を思い出す。
心も身体も絶不調。その言葉の通り…顔色も悪いし…元々細身だった身体は、更に細くなったような気がする。
清水さんが何をどうやって、湯沢くんがここに来るように仕向けたのかはわからないけど…思ったよりも早い展開に、その切迫感を感じた。
「…"ゼノン"、どう思う…?」
小さくつぶやいた声に、"ゼノン"の声が頭の中に届く。
《…湯沢は病院に行ったみたいだから、安静にしていれば多分良くなると思うけど…"ライデン"に関しては…ちょっとわからないな…でも、封じられてるってことは、出て来ると"ライデン"の負担になるってことだから…かなりしんどいんだと思う。どんな状態であれ、俺が覚醒さえ出来れば、癒す術はあるんだけど…》
「…そう…」
"ライデン"は悪魔だから、人間の医者にかかることが出来ない。頼みの綱は、医師でもある"ゼノン"に見て貰う事。でもそれは、"ゼノン"が覚醒出来ないと話にならない。そして、"ゼノン"が覚醒するには…"ライデン"に見つけて貰う事。でも、"ライデン"が封じられたままでは、それも儘ならない…。
《一先ず、湯沢の回復が第一かな。器が良くならないと話にならないしね。湯沢が落ち着いたら、多分"ライデン"も出て来られると思う》
「そう、か…じゃあ、少し時間かかるね…」
取り敢えず、寝かせてしまったけど…この後どうしようか…と言うのは、正直なところ。
このまま面倒を見ろ、と言われても、どのくらいで回復するのかわからないし…自宅に帰すのが良いのかも知れないけど、一人暮らしなら帰しても誰も看病してくれないから、今までと変わらないし。
「…誰かに連絡した方が良いかな?もし、仕事があれば困るだろうし…」
《そうだね。取り敢えず、"デーモン"と"エース"に連絡入れておいた方が良いだろうね。"デーモン"は総帥だから責任はある訳だし、"エース"はお世話してくれたからね。あと、なるべくお腹を暖めて、消化の良い物を食べさせてあげて。薬はあるから、後はゆっくり休むこと》
「わかった」
病人を前に、いつもより遥かに口の回る"ゼノン"…多分、医師としての自覚がそうさせるんだろう。エンジンがかかれば、なかなか饒舌だと言うこともわかったし。それはそれで心強い。
俺は、湯沢くんが握ったままの手をそっと離すと、電話をかけに離れる。
この時間(まだそんなに遅い時間じゃない…)だから、果たして何処にいるのやら…と思いつつ、一応電話をしてみる。
電話をかけたのは小暮に。数回のコールの後、繋がった。
『はい』
「あ、石川だけど…小暮?」
『石川?どうした?』
「…実はね…」
俺は湯沢くんの状態をざっと伝えた。
「それでね、ゆっくり休ませてあげたいんだけど…仕事の方はどうなのかな、と思って…」
『そうか。ちょっと待ってな』
そう返事があり、暫しの間。そして。
『あぁ…一週間ぐらいなら大丈夫そうだ。お前は大丈夫なのか?』
「うん、何とかする。あの状態で、一人で帰す訳にも行かないし…」
『そうか。悪いな…明日にでも、様子を見に行くから』
「わかった。御免ね。忙しいところ」
『仕事の方は大丈夫だから。心配しなくていいから。じゃあな』
「うん。じゃあね」
そう言って電話を切る。
さて、次は清水さんだけど…この時間に捕まるとは到底思えなかったんだけど…取り敢えずかけてみた。
数回のコールを聞きながら、そろそろ切ろうか…と思った瞬間、繋がった。
『はい』
「…あ、石川だけど…」
名前を名乗り、話を続けようと思った途端、次の言葉は清水さんの言葉に遮られた。
『湯沢、行ったか?』
「え?あぁ、来たよ。でも、具合が悪くて…今寝込んでる」
『そうか。かなり辛そうだったからな…でも、ちゃんとお前のところに行ったのならもう安心だ』
「…俺は医者じゃないんだけど…」
『お前は医者じゃなくても、"ゼノン"は医者だから。心配ない』
「…もぉ…」
清水さんの言葉に、小さく溜め息を吐き出す。
まぁ…このまま症状が落ち着いてくれればそれに越したことはないけど。
「…ところで、どうやって湯沢くんをここに…?俺の家は知らないと思ったけど…」
そう問いかけると、清水さんは言葉を続けた。
『その事なんだけどな…悪いと思ったんだが、お前の住所教えた。このままだと、湯沢の体調は悪くなる一方だし、石川のことが気になっているんだったら、言いたいことははっきり言って来い、ってな。お前の住所書いて押し付けた』
「…やり方が乱暴…」
『でも、それが一番の近道だろう?今まで散々遠回りして来たんだ。後は最短距離で行ったって、誰も文句は言わない。自分でも、踏ん切り着けたかったからお前の所に行くことを選んだんじゃないのか?』
「…だからってさぁ…だったら早目に一言言ってよ…何も知らないから、俺が帰るまで玄関の外で随分待たせちゃって…可哀想なことしたよ…」
『それは悪かったな。でも、それが今日の昼間の話だから。俺だって、いつお前の所に行くかなんてわからないだろう?行かないかも知れないじゃないか。そうしたら、お前もショック受けると思ってだな…』
「わかった、わかった。俺も言い過ぎたよ。ごめんね」
『まぁ…俺も些か強引だったかな、とは思ったんだけどな…あのままの湯沢を放って置けなかったんだ』
「うん、わかってる。ありがとうね」
何はともあれ、湯沢くんともう一度会えたんだから…良しとしなければ。
「それでね、さっき小暮にも電話したんだけど…そうしたら、一週間ぐらいは休めるらしいから、暫くここで診ようかと…」
『一週間?お前だって都合があるんじゃないのか?』
「まぁ…何とかなるよ。一週間丸まるいる訳じゃないと思うよ。ある程度回復するまでは、ここで…ってことで…」
『そうか。その間に、覚醒出来ると良いな』
「…そうだね」
こればっかりは…俺にはどうにも出来ないことだから。運を天に任せるしかない。
『…で、お前の結論は?』
「…大丈夫。答えは出てるから」
『…そうか。悪い答えでないことを期待してるよ』
「ご期待に添えるかどうか」
くすっと笑った俺に、清水さんも小さく笑った。
『その分なら、安心出来そうだ。じゃあ、報告待ってるぞ』
「わかった。そのうちにね」
良い報告を出来れば良いけれど。それは、俺の希望ではあるが。
『じゃあな』
「うん。ありがとうね」
電話を切った後、俺は大きく息を吐き出す。
取り敢えず…湯沢くんの回復が先決。覚醒はその後…無事に終わると良いけれど。
眩しくて…ゆっくりと目を開けた。
そこに見えたのは…見慣れない天井。そして、その身体は温かい。
「…ここは…何処だっけ…?」
小さくつぶやいた声は、酷く掠れている。そしてその声に、答えを返す声はない。
夕べ…何をしてたんだったか…。そう、想いを巡らせる。
「……そうだ…」
思い出した。夕べは…"友達"の家に……。
身体を起こそうと、上体を動かした途端、その身体が重いことに気づく。
「……?」
頭だけ動かしてみると、そこには…ベッドに突っ伏して寝ている"友達"がいる。
「…石川…くん…?」
自分では、ちゃんと喋っているつもりだったけど…実際の声は掠れているので、どこまでちゃんと届いてるか心配だったけれど…それでも…その声は、ちゃんと相手に届いていた。
「…石川…くん…?」
そう、名を呼ばれ、現実世界に引き戻される。
「…っ…」
慌てて顔を上げると、俺を見つめている眼差しとかち合う。
「…おはよう。気分はどう?」
そう声をかけると、相手…湯沢くんは、申し訳なさそうに小さく眉を潜めた。
「…ごめんね…心配、かけて…声、嗄れてる…けど……お腹は、だいぶ良い…」
「そう、良かった」
やっと、安堵の吐息が零れた。
途端に聞こえた、お腹が鳴る音…。
「…ごめん…こんな時に…」
思いがけずの音に、俺は思わず小さく笑う。が、湯沢くんは顔を真っ赤にして布団に潜ってしまった…。
「俺も、つい笑っちゃって御免ね。でも、お腹が空いたのなら、調子が良くなって来た証拠だから。今、おかゆ作るね」
俺は布団の上からポンポンと軽く叩くと、キッチンへと向かう。そして、おかゆを作りはじめる。
そして暫し。
「さ、出来たよ。これ食べて、薬飲んで。小暮に連絡したら、一週間ぐらい休めるって言ってたから。無理しないで、ちゃんと治すんだよ」
そう声をかけると、湯沢くんはゆっくりとベッドから身体を起こした。
「…デーさ……小暮先輩にも、連絡してくれてありがとうね…」
「一応ね。仕事のこととか、色々あるだろうし、と思って…」
おかゆの茶碗の乗ったトレーを起き上がった湯沢くんの膝の上に置き、薬と水を持って来る。
俺のその姿を…湯沢くんは、黙って見ていた。
「…どしたの?やっぱり、食べられない…?」
無理に食べさせようとは思っていないんだけど…一向に手を着けないので、そう問いかけてみる。
すると湯沢くんは、暫く黙っていたけれど…やがて俺に問いかけた。
「…小暮先輩か…清水先輩に……聞いた?俺の…こと……」
「…どうして?」
「…だって…何にも聞かないから…」
俯いて、唇を噛み締める姿。その表情は、さっきとは全く違う。とても…苦しそうで。
「…この前、清水さんに偶然会ってね。具合が悪い、って言うのは聞いたよ。ここまで…とは思わなかったけど…」
それは素直に伝えた。その原因まで…俺が言うべきかどうかは迷ったけど、それは口にしなかった。
すると、湯沢くんの方が先に口を開いた。
「…ストレス性のヤツ…だって。病院の先生に、そう言われた。暫く…仕事休んでみたらどうか、って。清水先輩には…怒れられた。溜め込んでないで、言いたいことはちゃんと口にしろって。仕事のことも…石川くんのことも…」
「………」
「…ごめん…おかゆ、食べる…折角作って貰ったのに…冷めると悪いから…」
そう言うと、湯沢くんは黙っておかゆを食べ始めた。
俺は…言葉が出なかった。
自分の気持ちの整理は着いたはずなのに…いざ、こう言う話になると、どうして良いのかわからない。
そうこうしている間に、湯沢くんはおかゆを食べ終えたようだった。
「…ご馳走様」
「…お粗末さまでした…」
薬を飲み、食器を片付けて、やっと一息…にはならないけれど。
俺がベッドの近くに座ると、湯沢くんはそれを待っていたかのように話を始めた。
「…俺ね…今、星島さんとやってるんだけど…何か違うんだよね……石川くんと組んでた頃は、ホントにただただ楽しくて…勿論、星島さんと仲が悪い訳じゃないよ。ホントは凄く良いヒトなんだけど…何かが違うんだ。その違和感が積み重なって…調子は悪くなるし、何だか…みんなギスギスしてるような気がして…もう一度、石川くんの音が聞きたかったんだけど…迷惑になるんじゃないかと思って……」
水分を取った所為か、湯沢くんの声は随分出るようになっていた。まぁ、そんなこと考えてる場合じゃないけど。
「…俺に迷惑って…どうして?」
清水さんから話は聞いていたけれど…それが真実かどうかはわからない訳で…それを、湯沢くんからちゃんと聞きたかった。
すると、湯沢くんはちょっと口を噤む。そして…ゆっくりと言葉を紡いだ。
「俺…"聖飢魔Ⅱ"にいるじゃん?あれね…嘘じゃ…ないんだ。ホントに…悪魔、なんだ……だから…」
「…迷惑だなんて…一つも思ってないよ?悪魔じゃ…いけないの?湯沢くんは、湯沢くんじゃないの?」
「…でも…」
「でも何さ?」
「……それだけじゃないよ。俺……石川くんのこと……」
----好きなんだもん。
とても小さな…囁くような声。それでも…その声は、ちゃんと聞こえた。
真っ赤になった顔を伏せたその姿に…俺は…どうしようかと一瞬考えた末……言ってしまえっ。
「…だったら、尚更…」
「…え?」
俺の言った意味がわからず、聞き返す為に顔を上げた湯沢くんを、真っ直ぐに見つめる。
俺は…にっこりと、微笑んだ。
「俺も、好きだよ」
「……え…っと……それは、どう言う意味で…?」
「え?」
ここに来て…それを問い返されるとは思わなかったけど…。
「だって…石川くん……男、好きじゃないでしょ?」
「…そうだけど…じゃあ、湯沢くんは…?」
「……俺も…違うけど……」
「それなら、問題ないじゃない?お互いに特別、ってことで」
「…そう…なのかな…?」
論点が完全にずれているんだけど…まぁ…話が話だからね…難しいところだ。
「…えっと…じゃあ…俺を好き、って言うのは…どう言う…」
完全に混乱の表情を見せた湯沢くんに、俺は…再びにっこりと微笑むと、その耳元に口を寄せた。
そして。
「…愛してる…ってことで」
「……っ」
耳まで真っ赤になる姿は…とても可愛い。
「…湯沢くんは?」
「……愛してるよ…」
囁くような、甘い言葉。
ふと…記憶が蘇る。
あの日聞いた…同じ言葉。あれは……きっと、"ライデン"から、"ゼノン"への言葉だったのではないかと。
そう思った瞬間、胸の奥がすっとした。
俺は…ずっと、あの言葉に嫉妬していたのだと…今わかったから。
そう。俺も…ずっと、好きだったんだ。
悩むことなんかなかった。お互いに、素直に伝えていれば…もっと早く、出会えていたんだ。
「…ありがとう…」
思わず、そっと抱き締める。その温もりが…とても愛おしい。
同性だから…と、笑うヤツには笑わせておけば良い。どうせ…偏見しか持たないヤツなんだから。
「…石川くん…ホントに…?俺が病気だから、慰めようとして…とかじゃない?」
俺の腕の中から、上目遣いでそう問いかけられ…変なスイッチが入った。
「じゃあ、試してみる?」
「…はい?」
俺の言葉に、湯沢くんはきょとんとする。そりゃそうだ。何を試せと……あぁ、思考と言ってることが微妙に可笑しい……もしかしたら、さっきの変なスイッチは……"ゼノン"の仕業か…?
「キス、してみる?」
「…………OK」
急に…湯沢くんもやる気になったのか…大きく息を吐き出すと、そっと俺に顔を寄せる。
そして…そっと触れた唇。それは、ほんの一瞬。
あぁ、可愛いな~…と思った瞬間。湯沢くんはふふっと笑った。
「…大人、だしね」
「……?」
一瞬、何を言ってるんだろう…と思った途端、再びキスされる。
さっきとは、全く違う…深く、深く唇を合わせる。吐息すら、逃さぬかのように。
それはまるで別人みたいで……と思った瞬間。
ゆっくりと唇を離した瞬間、湯沢くんはぽろぽろと涙を零した。
そして。
「…ごめんね…」
そう、零れた言葉。
「…ゆざ……」
「…遅くなって…ごめんね……"ゼノン"…」
「……っ」
その言葉の意味するところがわかった途端、俺の意識は…途切れた……。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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