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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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ALLEGORY 前編
こちらは、以前のHPで2000年02月01日にUPしたものです

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◇◆◇

 そのバーに入ったのは、ホントに偶然だったはず。
 落ち着いた雰囲気の扉を開けると、店内も照明も、扉の雰囲気と同じように落ち着いていた。
「…お客さん、初めてですね?」
 カウンター席に腰を下ろした瞬間、マスターらしき男がそう、俺に声をかけた。
「…あぁ。会員制か?」
「いいえ。そんなことはありませんけどね。常連は多いですよ」
 その口元の含み笑いに徒ならぬ予感を感じながら、俺は店内をぐるっと見回してみた。
 通常ならば、もう少し客が入っているであろうと予測出来ていたはずだが、ここは…俺以外の姿は、このマスターだけだった。
「ここは、一風変わっているんですよ。お客さんのニーズにお応えするのをモットーにしているんですがね」
「…客のニーズ…?」
 バーにしては、奇妙な言葉だ。
「つまり、目的のない方に、ここは見えないと言うことですよ」
 くすくすと笑う声。だが、敵意を感じた訳じゃない。
「ごゆっくり」
 にんまりと笑うマスターの顔。照明の加減が変わったのか、その顔が次第に見にくくなり、俺の視野から完全に消えた途端、俺は階段の前に立っていた。
そして、その手のひらには、緑、黄色、白の3つの鍵。
「…填められたな…」
 大きな溜め息を一つ。
 マスターの言葉が、頭の中を過る。
『お客さんのニーズにお応えするのをモットーに…』
「つまり、現実逃避…って訳か」
 不況だの何だのと世知辛いこの世の中、人々の心の中には、自分の目の前の現実から逃れようと言う想いが、何処かにあると言うことだろう。
 そして俺も、無意識のうちにそんな意識を漂わせていたのかも知れない。
「…まぁ、見物して来るのも、また一興…か」
 敵意は感じないんだ。危険はないだろう。
 諦めの溜め息をもう一つ吐き出し、俺は目の前の階段を登った。
 程なくして、踊り場に出る。そこには、俺の手の中にある鍵と同じ色の、緑、黄色、白の扉が3つ、並んでいた。
 特に何処に魅かれたと言うことでもないが…向かって右側の緑色の扉に鍵を差し込んで開け、ノブに手を伸ばした。
 そして、その扉を開けた瞬間、俺は完全にその世界に引き込まれていた。

◇◆◇

 1.緑の扉・香餌

 気が付くと、そこは部屋の中だった。
 白い壁に白い天井。薄いグリーンの絨毯。そして、大きな窓。
 明るいその部屋の隅には、天蓋付きのベッドが一つ。
 そこに、眠っている姿があった。
 ゆっくりと傍に歩み寄り、その顔を覗く。
 白い肌を縁取る、柔らかそうな金色の髪。
 白のドレスを身に纏った『彼女』は、長い睫を伏せ、静かに眠っていた。
 暫し、その姿に見入ってしまう。
 眠っている為に正確には理解らないが、20歳を越えてはいないだろう。要は、俺の管轄外である訳だ。
 さぁ、この場をどうしようと想いを巡らせていると、俺の背後から小さな咳き込みが聞こえた。そして次の瞬間。
「眠っているんだよ。もうずっと前から」
 その声に振り返ると、いつの間にか俺の後ろには少年が立っていた。
 一見病弱そうな、青白い肌。亜麻色の髪と瞳。
 背丈は、俺よりも低い。年は…15~6歳と言うところだろうか。
「…御前は?」
 思わず問いかけた俺の声に、『彼』はくすっと小さな笑いを零した。
「…仁慧(にえ)」
 くすくすと笑いながら、『彼』…『仁慧』は、俺の隣を擦り抜け、『彼女』の元へと歩いて行く。
 時折、小さな咳き込みを繰り返しながら。
「彼女は…僕が物心着いた時から、ずっと眠ってた。年も取らない。ずっと、このままで」
「…10年以上も?」
「そうだよ。目覚めることもなければ、食事をしたこともない。眠っている間は必要ないみたいに」
 その亜麻色の瞳が、『彼女』を見つめていた。
「『眠り姫』って知ってる?」
 不意に、『仁慧』が尋ねた。
「あぁ…糸車の針に刺されて…ってヤツだろう?」
 記憶の糸を辿りながら、そんな話だっただろうと思い出す。
「そう。『彼女』もね、きっとそうだよ。だから、眠っている間は年を取らないんだ。いつから眠っているのか、僕も知らないけどね。気がついたら、僕がここにいたんだもの」
 そうだ。魔女の呪いによって、16歳の年に糸車の針に刺された『眠り姫』は、100年の間、眠り続けた。そして100年後に何処かの王子のキスを受けて、眠りから覚めたんだ。
 王子は、何の疑問も疑いも持たなかっただろうが…実際、『眠り姫』は自分よりも100歳も年上ってことなんだけどな。
 そんなことをぼんやりと考えていると、『仁慧』が口を開いた。
「…『彼女』の、王子様になってくれない…?」
「…俺が?」
 思いがけない言葉に、暫し目を見開く。
「そう。僕は王子様にはなれないから」
 そうつぶやき、『仁慧』は再び小さく咳き込む。
「どうして御前では、王子様にはなれないんだ?」
 問い返す声に、『仁慧』はくすりと小さく笑った。
「僕は病気だもの。長くは生きられない。『彼女』を倖せには出来ないもの。物語の最後はこうでしょ?『そして姫は、王子様といつまでも倖せに暮らしましたとさ…』」
「…成程な」
 確かに、物語の最後はそんな締めの言葉が多いな。
 それが、生命の短い者にとっては、この上もなく残酷な言葉に聞こえるんだろう。
「…どうして、俺を選んだ?」
 ふと、そう問いかけてみる。
 すると『仁慧』は、再び咳き込んでから、ゆっくりとその視線を俺へと向けた。
「だって…貴方なら、長生きしそうだから」
 確かに、通常の人間に比べたら、相当な長生きに当たるだろう。
「まぁ…長生きには自信があるが…でも俺には無理だな。俺には恋悪魔がいるし…それになりより……」
 俺は、悪魔だから。
 当然、通りすがりの『仁慧』にそれを言えるはずはない訳だ。曲がりなりにも、今は世仮でもあるしな。
 ふと言葉を止めた俺に視線を向けたまま、『仁慧』は小さく咳き込む。
「僕がもう少し…元気だったらね。『彼女』の為に生きられるのに…」
 大きく息を付きながら、そうつぶやいた『仁慧』の唇。
「そんなこと、気にすることじゃない。御前が『彼女』のことを思っているのなら、きっと俺といる以上に倖せになれるさ」
 慰め代わりにそう言葉を放つと、『仁慧』はきょとんとしたように、目を丸くして俺を見つめた。
「…倖せに…なれる…?」
「あぁ」
 頷き返すと、すっと『仁慧』の眼差しが伏せられた。
「駄目、だよ。僕では、『彼女』を倖せは出来ない」
「どうして断言できる?」
「だって、生命が…」
「そんなもの、気力で伸ばせはいいだろう?」
「……変わってるね、貴方は…」
「良く言われるさ」
 『仁慧』はくすくすと小さな笑いを零した。
 その瞳の色は、透き通る亜麻色。だが、その眼差しは、真っ直に俺を見つめていた。
 まるで、俺の正体を見透かしているかのように。
 この男になら、打ち明けてもいいかも知れない。
 そんな意識が、ふと過って行った。
 俺が、悪魔であると言うことを。そして…俺が、現実から束の間の逃避を図っていると言うことを。
 ここは、俺にとっては現実ではない。だからこそ、俺が『彼女』の為に何かをすることは出来ないんだ。
 俺は、『仁慧』の瞳を見つめ返した。
「俺は…悪魔、なんだ。偶然、ここへ迷い込んだだけだ。だから、ここは俺にとっては現実の世界じゃない。だからこそ…『彼女』を倖せに出来るのは、御前だけなんだ」
「…悪魔…?」
「そう」
 一瞬、目を丸くした『仁慧』であったが、やがてその口元には小さな笑みが浮かんでいた。
「そうじゃないかと思ったんだ。普通じゃないな、って。そう言うのを感じ取る感覚は鋭いんだ」
 見抜かれていたのか。
 『仁慧』は、再び小さく咳き込んだ。
 その咳き込みが収まると、亜麻色の瞳が真っ直に俺を見つめた。
「貴方が白状してくれたから、僕も白状するよ。僕が長く生きられないもう一つの理由…」
「もう一つ…?」
 怪訝そうに眉を潜めた俺に、『仁慧』はくすっと笑いを零した。
「『彼女』に…生気を奪われているから」
「…どういうことだ、『仁慧』…?」
 意味が、理解らない。
 問い返した俺の声に、『仁慧』はその眼差しを深く閉ざした。
 そして聞こえた声。
 その直後、俺は闇の世界へと引き摺り込まれていた。

----僕は彼女の贄(にえ)なんだ。『彼女』は…僕の生気を奪って生きる、『魔女』なんだよ。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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