聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Angel Smile 1
これを切り落とせば、愛して貰えるだろうか?
潰してしまえば、愛して貰えるだろうか…?
些細な願いから、少年は翼を切り落とした。瞳を、潰した。
痛みは、然程感じない。そのことに僅かに安堵感を感じたが、溢れ出る鮮血は、徐々に意識を薄れさせた。
だが…彼の想いは、報われることはなかった。
地球任務を半ばにしてエースの身に降りかかった事情により、彼が魔界に一時帰還してから一週間程経った頃のこと。
エースが連れて来た妖魔にも似た子供。名前はエナと言う。
その容姿は、褐色の肌に、対照的な色の薄い、白に限りなく近いシルバーの髪。そして、愛らしい大きな琥珀色の双眼と…額に開かれた邪眼。
その子供は、かつてエースが愛した惑星の自我。エレナの残した、一粒種、だった。
人間で言えば、五歳前後の、遊びたい盛りの子供が相手なのだ。惑星の自我は成長が早いとは言え、手がかからなくなるまでのたった一ヶ月程の辛抱とは言えど、エースとて一日気が気ではないのだ。
流石のエースも、子供の扱いに才長けている訳ではなさそうである。
そんなエナの相手をする羽目になったエースの元に皇太子から入った緊急を要する任務は、彼を子育てから解放する救いの手だったのだろう。
即決で任務を受けたエースは、翌日から、堂々とエナを屋敷に残して出発した。
そこは、魔界の僻地。もう少し足を運べば、聖地との境だった。
そんな場所に、エースはやって来た。
生命反応が、そこにあるとのことだった。それを確認することが、エースに与えられた任務である。
「…俺に回す任務だなんて…尋常ではないと言うことか…?」
小さな溜め息を吐き出しつつ、辺りを見回す。
暫く魔界を離れていたとは言え、曲がりなりにもエースは情報局の長官である。余程の事情がない限り、こんな単純な任務が回って来るはずもない。
軍服の内ポケットを探り、煙草を取り出すと火をつける。そして、紫煙を吐き出しながら、再び周囲に目を向けた。
感じる気配はない。
誤認かも知れないと思いつつ、少し歩いてみる。
すると、遠くの方に何かが見えた。
白い装束と、白い…いや、深紅の翼。
その、尋常ではないコントラストに、エースは煙草を揉み消すと、その場へと足を運んだ。そして、そこに辿り着くと、エースは思わず首を傾げる。
今、目の前にいるのは、果たして…天界人、なのだろうか?
その言葉の意味する通り、地に横たわる存在の正体がわからないのだ。
天界人の気は、全く感じない。かと言って、魔族と言う訳でもない。
着ている物は白い装束と思ったが、その大半は既に赤黒く染まっていた。
その元凶とも言えるのが…片方だけの翼。もう片方は、切り落とされている。その傷口から、未だ鮮血が流れ出て、装束と残った翼を染めていたのだ。
辺りを見回してみても、もう片方の翼は見つからない。
そして何より…その天界人は、まだ子供、だった。小さな身体から溢れ出る血は、恐らく致死量に近いだろう。
天界人ならば…このまま、放っておけば良い。
だが、エースはその答えを即決出来なかった。
子供の天界人は…エナとそう年も変わらないだろう。
多分、戦って傷ついたのではない。まだ、戦地に立てる年ではないことは、一目瞭然だったからだ。
僅かに躊躇った後、エースは手を伸ばし、その子供を抱き上げた。
抱き上げて、初めて気がつく。
抱き上げた身体が、とても軽い。エナと変わらないくらいの背丈だが、明らかにその重さが違う。
そして何より…子供の、閉ざされた片方の瞳は、固まった血で塞がれていた。
その状況を察するに…その瞳は、何らかの手段によって潰されたと見て間違いはなさそうだった。
無惨、と言う言葉が、一瞬エースの脳裏に過った。
まだ、息はある。
そして、そのまま己の屋敷へと、踵を返した。
遠くで、彼女の姿が揺れている。
そっと手を伸ばすが、届くはずもない。彼女に触れることは、生まれてから一度も許されたことはなかった。
愛されたい。
その想いは、報われることはなかった。
翼の色が、違うから。
瞳の色が、違うから。
母様。
そう口にすることも…許されなかった。
母様。
そう、呼びたかった。
伸ばした手は、空を掴んだだけだった。
熱い涙が流れ、その意識が蘇る。
頬に当たるのは、柔らかな感触。それは、とても暖かくて…仄かにいい香りがした。
僅かに目蓋を持ち上げると、辺りの様子が目に映る。
----ここは…何処…?
小さく、吐息を吐き出す。
白い、枕。白い、シーツ。白い、壁。
そこは、明らかに初めての場所、だった。
僅かに顔を上げると、別の存在があることに気がついた。
「…目覚めた、か。くたばるかと思ったけどな」
そう、声がした。
視界に映ったのは、白い顔に、赤い紋様を戴いた悪魔。
自分は何故、ここにいるのだろう?
その理由すら、わからなかった。
「大丈夫、か?」
そう、問いかけられる。
その声に思わず小さく頷きを返すと、小さな笑いが零れた。
「意外と丈夫なんだな、天界人ってのは」
甘い声、だった。
自分を見つめる眼差しも、暖かい。
どうしてそんなに柔らかい眼差しを向けられるのか。それすらもわからなかった。
自分は…嫌われるだけの、存在ではなかったのだろうか?
混濁する意識。
気怠さに再び目を閉じると、大きな手が頭を軽く撫でた。
「ゆっくり休むんだぞ。心配はしなくていいから」
その穏やかな声に、思わず頷いてしまった。
奇妙な、安堵感。その意識は、再び闇に落ちた。
どれくらい経っただろう。
ふと瞳を開けると、辺りは薄暗くなっていた。
まだ少しぼんやりとしてはいるが、幾らか意識もクリアになったようだった。
自身がいる場所は、先程と変わらないらしい。柔らかな感触と、仄かな芳香で、それはわかった。
少し力を入れてみれば、指先は動かすことが出来た。
腕を伸ばし、指先で触れてみて、初めてそれに気がついた。
包帯が…巻かれていたのだ。自身の片目を覆うように。そして、背中を包み込むように、厚く。
小さな、溜め息が零れた。
痛みを、感じた訳ではない。彼は、痛みと言う意識を久しく感じた覚えがなかった。
いつの頃からか…そうやって、自身を制御して来た。肉体的な痛みなど、感じている余裕は全くなかった。そうやって、神経を張り詰めていなければ…愛して貰えないと、思っていたから。
身体を動かそうと思ったが、それは出来なかった。
流石に、幼い身体にその傷は大きな負担となっていたのだ。
もう一度、小さく吐息を吐き出す。
その時、部屋のドアが開く音がして、一筋の明かりが差し込む。
思わずそちらに目を向けると、行き合った眼差し。
逆行になっていて表情までは読み取れなかったものの、その大きな双眼と額の第三の目は、真っ直ぐに自分を見つめている。
「…お腹、すいた?」
そう、問いかけられた。
空腹感はなかった。だから、首を横に振る。
相手はくるりと後ろを向き、声を上げる。
「お腹、すいてないって」
その声から暫くして、重たい足音が聞こえる。そして、更に大きくドアが開かれた。
入って来たのは、先程の男。
枕元のライトを灯し、顔を寄せて自分を見つめる眼差しは、優しかった。
そっと、額に押し当てられた掌が、とても冷たくて心地良かった。
「…少し、熱があるな。まぁ、この程度なら大丈夫だろう」
男は、その大きな手で、彼の身体をゆっくりと抱き起こした。そして自分も、ベッドの端に腰を降ろすと、彼の顔を覗き込んだ。
金色の髪。残された片目は碧色。それは、どう見ても天界人の容貌だった。
「御前…天界人、だよな?」
そう、問いかけられ、彼は小さく頷いた。
「名前は?」
----名前…?
思わず、眉を寄せる。そして、首を横に振る。
「言いたくないのか?」
----そうじゃなくて…
僅かに口を開いたが、訴える声が出ない。言葉を紡ぐと言うことを、忘れてしまったかのように、彼は言葉を発することが出来なかった。
「声が…出ないのか?」
彼の仕種にそれを察したのか、男はそう問い返す。
それには、素直に頷いた。
男は、小さく吐息を吐き出す。そして、諦めたように小さな笑みを浮かべた。
「まぁ、いい。俺はエース。さっきのはエナ。多分、御前と同じくらいだな。回復するまでは、ここでゆっくりしていればいい。時々、エナに様子を見に来させるから」
そう言って、男…エースは、大きな掌で、再び彼の頭を撫でた。そして、再び彼をベッドに寝かせると、部屋から出て行く。
何故、自分はここにいるのだろう。
彼は、それすらもわからなかったが…ここには、何かがあるような気がしてならなかった。
それは、彼がずっと求めていたモノだと気がつくには、そう時間はかからなかった。
翌日、エースは皇太子たるダミアンの執務室を訪れていた。
「どうだった?」
それが、ダミアンの第一声だった。
「それが…」
小さな溜め息を吐き出しつつ、エースは状況を説明する。
尋常ではない傷を負った、天界人の子供のことを。
「…成程ね」
執務室の机の上に肘を着き、組んだ手の上に顎を乗せる。その表情は、何かを考えているようだった。
「天界の気は、纏っていない。翼も片方で、片目も失っている…一体、何が起こったんだろうね」
「もう少し…様子を見たいと思います。喋れないのは、精神的なショックがあったからではないかと思うんです。喉に傷はありませんから」
「まぁ、御前の思うようにすればいい。詳しいことがわかったら、また報告しておくれ」
「御意に」
軽く頭を下げ、踵を返す。
その背中を見送るダミアンは、くすっと小さな笑いを零した。
----すっかり、お父さんの背中だね。
多分、それを口にすれば、エースの怒りを買うことは目に見えている。
だからこそ、口を噤んではいるが、ダミアンはそれを楽しんでいることが明確だった。
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HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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