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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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本日UPの新作です

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◇◆◇

「…エース。どうした?」
 銜え煙草を燻らせ、ぼんやりと窓から夜の外を眺めているのは、彼が密かに想いを寄せる悪魔。
「いつまでもこんなところにいると、風邪ひくぞ」
 けれど、帰って来る返事はない。ただ、黙って彼を一瞥すると、そのまま踵を返して行ってしまった。
「…ったく…」
 溜め息しか、零れない。いつもそうだ。
「…いつまで…こんなかな…」
 彼は、苦渋の表情を浮かべる。
 本当は…もっと、沢山の表情を見たいのに…彼が見られるのは、無粋な表情だけ。
 それが、何か変われば…と思って踏み切ったのだが…道はまだまだ遠かった。

◇◆◇

「…共同生活?」
 ある日、総帥たるデーモンから切り出された言葉に、みんな怪訝そうに眉を潜めた。
「あぁ、ダミアン様からの話なんだがな。人間界での仕事も軌道に乗って来ただろう?まぁ、目立って来ると言うことは、敵から目をつけられることも増えるって言うことだ。ダミアン様が用意してくれた屋敷には結界も張ってあるし、魔界との接点も作ってあるらしいから、悪魔の姿をしていても負担はない。それに、みんな一緒にいた方が面倒もないだろう?と言うことらしい」
「らしい、って…もう、家も用意してあるってこと?」
 そう口を開いたのはルーク。
「あぁ。外見は普通の一軒家だ。ご近所さんは勿論一般人だがな。まぁ、結界を張ってあるから問題はないだろう」
 デーモンの言葉に、他の四名はお互いに顔を見合わせる。
「…じゃあ、今住んでる家は?」
「それはそのままで構わない。世仮の生活もあるしな。一軒家と言っても、要は合宿所みたいなもんだから各々の部屋はそんなにだだっ広い訳でもないし、どう考えても全員の荷物を全部持ち込むわけにも行かないしな。家財道具なんかは全部あるし、必要最低限のものがあれば生活は出来るらしいぞ」
「…どうする?」
 デーモンの説明に、再び顔を見合わせる。
「俺は…別にいいけど?」
 最初にそう口を開いたのはライデン。
「面白そうじゃん?だって、みんなで一緒にいられるんでしょ?ってことは、ゼノンのご飯も毎日食べられる、ってことじゃん?」
 ニコニコしながらそう続ける。
 確かに…恋悪魔たるゼノンと一緒にいられる、と言う点では、ライデンにとってプラスでしかない。しかも、すっかり餌付け(?)されている状態なのだから、文句は何もない訳で。
「俺も別に良いよ?そんなに困らないし」
 ライデンに続いて、ルークもそう口を開く。
「俺も別に良いけど……エースは?」
 ゼノンもそう言って、唯一怪訝そうな表情を浮かべたままのエースへと視線を向ける。
 構成員の誰もが知っている。このデーモンと、エースの不仲。それが前提にあるので、エースが諸手を挙げて賛成するとは到底思えない訳で…。
 当然、エースの答えは。
「…考えとく」
「……まぁ……良く考えておいてくれ」
 わかり切ってはいたものの…多分、エースは来ない。即行拒否ではなかったが、賛成ではないだろう。そんな想いが、デーモンの脳裏を過ぎっていた。

 翌日。
 先に音合わせに来ていたライデンが喫煙所にやって来ると、ふらっと現れたエース。
「あれ?今日は早いじゃん?」
「…たまにはな」
 一言そう零すと、煙草を銜えて火をつける。
「…ゼノン、煙嫌いだろう?お前良く平気で吸ってるよな…?」
 紫煙を吐き出すライデンを前に、エースは溜め息と共にそう零す。けれど、ライデンはにっこりと微笑んだ。
「ゼノンは煙が嫌いなだけで、別に離れてれば大丈夫よ?残り香ぐらいなら文句言われないし」
「…へぇ…キスする時は?」
「別に平気だけど?拒否られたことはないし。なぁに?俺らのこと気になる?」
「…聞いてみただけだよ」
 くすくすと笑うライデン。まぁ…煙草の匂いで別れる程の絆ではないことぐらい、とっくに知っていたが。
「…ねぇ、エース?」
 笑いを収めたライデンが、ふと口を開いた。
「ん?」
「みんなで一緒に住もうよ?」
「…その話かよ…」
 昨日、エースが乗り気ではない姿を目の当たりにし、誰もがどう聞いたら良いか…と思案する中、ズバリと本題に切り込んだライデン。
 勿論、ライデンも考えなしに切り込んだ訳ではなく…彼なりに、一晩考えた末の提案、だった。
「一緒に住めば、毎日ゼノンのご飯食べられるんだよ?洗濯はルークがしてくれるし…」
「お前の役割は?」
「俺?俺は………一緒に麻雀もゲームも出来るよ!」
「……別に、お前ほど好きじゃないけどな…」
「じゃあ、俺、コーヒー淹れてあげるよ?」
「はいはい」
 溜め息と共に、エースはそう言葉を零す。
 別に、最初からライデンに大きな役割を期待している訳でもない。それは勿論、ゼノンの食事も、ルークの洗濯も、同じなのだが。
「…誰かに…頼まれたのか?俺を説得しろ、って」
 熱心なその姿に、エースは思わずそう問いかける。
「いや?誰にもそんなことは頼まれてないよ?俺の一存、かな」
 きょとんとした顔で、ライデンはそう返す。
「だって、俺…ゼノンのことは大好きだけど、ゼノンだけじゃないよ。デーさんのことも、ルークのことも…勿論、あんたのことも、大好きだもん。一緒に生活出来たら楽しいだろうな~って思ったからさ?」
 何の躊躇いもなくそう言ったライデン。その、裏表のない素直な姿だからこそ、エースもすんなりと彼を受け入れられたのだろう。
「…ったく、お前は…」
 溜め息を吐き出しつつも、そこまで言われていつまでも拒否は出来ない。自分独り、和を乱す訳にもいかないだろう。
「…お前に免じて、今回は折れてやる。その代わり…彼奴と、部屋は離せよ…」
「OK!もぉ、エース大好きっ!」
 勢い余って、ライデンに抱き付かれたエース…。
「…こら。俺はゼノンじゃねぇぞ」
「わかってるよ~」
 くすくすと笑いながら、ライデンは身体を離す。
「じゃあ、話進めて良いってことだよね?デーさんに教えて来るね」
「…まだ時間早いだろ?そんなに慌てなくても…」
「デーさんならもうとっくに来てるよ?いつも、予定より早く来てるよ。今日は俺より早かったし」
「…そう、か…」
 知らなかった、と言う表情のエース。まぁ、それを知っていたからと言って、どうなる訳でもないのだが。
「じゃ、また後でね」
 ご機嫌で喫煙所を去っていくライデンの背中を見送り、エースは大きな溜め息を一つ。
 結局、流されてしまった。エースの心情は…まぁ、そんなところなのだろう。

 その日の音あわせは平穏に終わり、その帰り道。
「エース」
 そう、呼び止められる。振り返れば…一番会いたくない"奴"がいた。
「…何か用か?」
 溜め息と共に吐き出された言葉に、相手…デーモンは、ちょっと不思議そうな顔をしていた。
「あぁ…ライデンに聞いたんだが……共同生活の件…」
「…それがどうした?」
「いや、だから…良くOKしたな、と思ってな…てっきりお前は、嫌がると思っていたんだが…」
 歯切れが悪いのは…エースの表情の所為。いつだってデーモンに対しては、無粋な表情。そして、そっけない態度。返事がきちんと帰ってくれば良い方で、必要最低限の会話しか出来ない状態だった。
 勿論、デーモンにしてみれば、他の構成員と同じように話もしたいし、もっと近付きたいと思っているのだが…エースの方がそれを拒み続けている。
 それは、魔界で通常任務についていた頃から…と言うか、デーモンの副大魔王就任のその日から。そして、エースの反対を押し切った任務で、情報局の長官補佐を失ったその日から…酷く恨まれているから。
 デーモンは、エースの仇であり…決して、交じり合うことはない。
 それはわかっているのだが…デーモンも引く訳にはいかない訳で…。
 エースは大きな溜め息を一つ。
「…ゼノンの食事にルークの洗濯。それに、ライデンが…コーヒー淹れてくれる、って言うからな」
「……は?」
「あと、お前とは部屋を離す事。それが条件だ」
「あ…あぁ、それは構わんが…」
 それは、デーモンには意外な返事、だった。
 あのエースが…こうもあっさりと承諾するとは…。それも、たったそれだけの条件で。
「…じゃあ、ダミアン様にも話を通しておくからな。詳しいことはまたそのうちに」
「あぁ」
 エースはそう返事をして、踵を返した。
「あ、ちょっ…エース!」
 いつもより…ほんの少しだけ、柔らかく見えたエース。その姿に、デーモンは思わずもう一度呼び止めた。
「…何だよ。まだ何かあるのか?」
 振り返ったその顔は…いつもと変わらない。
「いや……ありがとう、な」
「…お前にお礼を言われる筋合いはないけどな」
 そう言い残し、エースは行ってしまった。
 それでも、会話は成立した。たったそれだけのことで…ちょっとだけ嬉しかったりする。    
 デーモンは、ほんの少しだけ…エースに近づけたような…そんな気がしていた。

◇◆◇

「…そう。エースが了承したの。意外だね~」
 デーモンの報告を聞き、そう言って笑ったのは、皇太子たるダミアン。
 魔界へ報告に来たデーモンだったが、ダミアンに言われなくてもデーモン自身、意外だと思っていた。
「…ライデンの説得が効いたようで…ゼノンの食事と、ルークの洗濯、ライデンがコーヒーを淹れる、と言うのが条件だそうです。後は…」
「後は?」
「……吾輩と、部屋を離す事…」
「そうかそうか。エースが言いそうなことだ」
 ダミアンはくすくすと笑いを零す。
「…笑い事ですか…」
 大きな溜め息を吐き出すデーモン。
 ダミアンとて、デーモンが置かれている状況は良くわかっているのだが…その真意をわかっているのだろうか。さして大事には捕らえていないようだ。
「仕方ないだろう?まぁ、同じ屋根の下で暮らしていけば、少しはエースの気持ちも和らぐかもね。気持ちなんて、きっかけさえあれば簡単に変わるものさ」
----頑張るんだよ。
 にっこりと微笑んでそう言葉を放つ。
「…はぁ…」
 完全に、面白がってる…。まぁ、デーモンの浮かべた表情はそんなところだろう。
「じゃあ、後は頼むよ。みんなが無事入居したら、わたしも顔を出しに行くからね」
「御意に」
 デーモンは、ダミアンに頭を下げ、執務室を出て行く。
 そして、ドアが閉まると大きな溜め息を一つ。
 ダミアンはあぁ言っていたものの…本当に、エースが変わるのだろうか?との不安がある。
 もう、何万年…エースのあの無粋な顔を見てきたことか。それが、同じ屋根の下で暮らせば、ますます気まずくなるような気もしなくはない。
 確かに、ほんの少しだけ会話は成立したものの…他の構成員と比べたらまだまだ遠い。
 大きな溜め息は、まだまだ絶えることがなかった。

 デーモンが魔界から帰って来た翌日。
 打ち合わせが終了した後、デーモンは5つの鍵をテーブルの上に置いた。
「これは、屋敷の鍵だ。それぞれ予定があるだろうから、みんなで一緒に、一度に引越しをしようとは言わない。それに、マンションも残しておくのだから、必要最低限の荷物があれば大丈夫だ。各々、引越し作業をしてくれて構わない。その為に、全員分の合鍵を用意したから」
「で、間取りはどうなってるの?」
「あぁ、それなんだが…」
 問いかけたルークの声に、デーモンは一枚の紙を出して来る。
「一階はリビングにダイニングキッチン、風呂、トイレ、洗面所などの水周り、個室が二部屋。二階は個室が三部屋と物置がある。吾輩は何処でもいいから、好きに決めてくれ」
 エースの条件を考えれば、自分に部屋割りの権限はない。そんな思いで、デーモンはそう口にすると、荷物を持って立ち上がった。
「悪いが、吾輩は用事があるから先に帰るな。その気になれば、今夜からでも住めるぞ」
 じゃあ、な。
 デーモンはそういい残すと、鍵を一つ手に取って帰って行った。
「…どうする?」
 デーモンの背中を見送った後、残された四名が顔を見合わせる。
「取り合えず、各々希望出す?公平を考えるなら、くじ引きとかアミダとか?」
 間取りの紙を見ながらそう言い始めたのだが、エースだけは乗り気ではないようだ。顔がそう言っている。
「…エースはどう?何処か、希望ある?」
 様子を伺うように、ライデンが問いかける。
「…いや。彼奴と離れてれば何処でも。好きに決めていいぞ」
 そう言うと、エースも荷物を手に立ち上がる。
「じゃ、お先。決まったら連絡くれな」
 そう言うと、鍵を一つ手に取り、帰ってしまった。
「……ったく…デーさんもエースも…じゃあ…俺らで勝手に決めちゃうよ?」
「決めちゃうよ?」
 にやりと笑ったルークとライデン。ゼノンはその横で…我関せず…。
 わいわいキャッキャと、楽しそうに部屋割り終了…。どうなったかは…他の構成員の引越しの日まで秘密、となった。

 それから数日後。デーモンとエースの元に、ルーク、ゼノン、ライデンの引越しが終わった、との連絡が入った。
 そして、浮かない表情のエースを捕まえたライデンは、にっこりと微笑む。
「エースも早くおいで。楽しいよ」
「…御前らで勝手に住んでれば良いのに…」
「駄目駄目。ちゃんと、みんなで住むんだよ。約束でしょ?」
「…わかったよ…」
 諦めたように溜め息を一つ、吐き出したエース。
「案内するから、今日一緒に行こう?」
「…ホント、強引だな…」
「あんたが動くの待ってたら、いつになるかわからないからね~。荷物は後から幾らでも取りに行けるから」
 そう言ってにっこり笑うライデン…。さて、その真意は如何に…。
 けれど、エースもライデンを放って置く訳にも行かず…まるで引きずられるように、新居へと連れて行かれたのだった。

 帰り道にスーパーへより、夕食の材料を購入して辿り着いたのは、閑静な住宅街の端にある一軒の家。
 裏手は林(小さな森?)になっており、静かであることこの上ない。
「…しっかしまぁ…良く探し出したよな、こんな物件…」
 家の前の道路から見上げ、溜め息を一つ。
「結構いいよ。まぁ、裏手があれだからね、庭なんかはちょっと虫多いけど」
 そう言って、ライデンは先に門をくぐる。それについて入ったエース。結界に入った瞬間、彼らの姿は悪魔へと戻っていた。
「ただいま~。エース連れて来たよ~」
 玄関のドアを開けてそう声をかけると、奥から仲魔の声が聞こえた。
「お帰り~。買い物して来てくれた?」
「うん。ちゃんと買って来たよ」
 そういいながら靴を脱ぎ、ずんずん中へ入っていく。置いていかれたエースは…ちょっと戸惑ったように、玄関に立ち尽くしていたりする…。
「…入ったら?」
 くすっと笑う声と共に、そう投げかけられた言葉に、ふと我に返る。するとそこには、にっこりと微笑むルークがいた。
「…あぁ…邪魔する……」
「じゃないでしょ?ただいま、でしょうがっ」
「……ただいま…」
「はい、良く出来ました」
 にっこりと微笑み、エースを手招きして廊下を進む。途中、キッチンに見えたのはゼノンとライデン。
「…また余計なもの買って…」
「いいじゃんよ。食べたかったんだもん」
「…もぉ…家計が破綻するよ?」
「……わかったよ…今度から気をつける…」
 そんなやり取りを横目に、ルークと共にリビングへとやって来た。
「ここ、リビングね」
「…見りゃわかる…」
「まぁ、ね」
 くすくすと笑いながら、エースをソファーへと促す。
「あんたの部屋は二階ね」
 その声に、ほんの少しだけ嫌な予感がする…。
「…で、お前らの部屋は?」
「俺とゼノンは一階ね。ゼノンが階段の横で、俺はその隣」
「…ライデンは?」
「二階の真ん中。階段上って直ぐのところがデーさん。で、一番奥があんた」
「…離せ、って言ったよな?」
「離れてるでしょ?間にライデンいるもん。それに、喫煙者並んでて良いでしょ?まぁ、デーさんには申し訳ないけど」
「……お前なぁ…」
 完全に、ヴォーカルがないがしろにされているのだが…そんなことよりも、並びに一番傍にいたくない相手がいると言うのがネックなのだが…丸投げにしてしまった上に、自分とその相手以外は引越しを終えてしまった以上、今更どうにもならない訳で。
 大きな溜め息が一つ。
 それを見たルークは、小さく息を吐き出す。
「…まぁ…さぁ。些か強引かとは思ったけど…でも、あんたもデーさんも、俺らに任せるって言ったんだからさ。しょうがないじゃん?これを機に、少~し歩み寄ってくれれば良いかな~とは思うけどさ。でも、隣同士にした訳でもないし。まぁ、慣れるしかないよ」
「……ったく…」
 まぁ…ルークの気持ちもわからなくもない。これから先、ギスギスしたままではいつか仕事にも支障が出るのではないか…とは思わなくもない。ビジネススマイルも、演奏中はそれどころではないから、厳しいところもある。だが……まだ、エースも気持ちの整理がつかない訳で…。
「…俺たちのいざこざにお前たちを巻き込むのは、悪いと思ってる。まぁ…部屋割りはこれで良い。その代わり…」
「…その代わり?」
「…俺たちのことに、口出しはしてくれるな」
「…エース…」
「この先のことは、俺にもわからない。だから…そっとしておいてくれ」
 それが、今エースが言える精一杯のこと。
 溜め息と共に吐き出された言葉と表情で、ルークもこれ以上踏み込んではいけないのだと溜め息を一つ。
「…わかった。でも…今以上、和を乱すようなことは駄目だよ。折角ダミアン様が準備してくれて、環境を整えてくれたんだから」
「あぁ、わかってる」
「じゃ、成立ね」
 空気を換えるかのように、ルークはにっこりと笑った。
 それにつられて…エースも、ほんの少し、表情を和らげる。
「…話、終わった?ご飯出来たけど…」
 不意にそう声がして二名が視線を向ければ、リビングの入り口で様子を伺うように覗いていたゼノンとライデン。
「あぁ、そうだ。条件の一つだったな。ゼノンの飯」
「…は?何、それ?」
「…聞いてないのか?ライデンに」
「…聞いてないね…」
 僅かに眉を寄せ、隣にいるライデンへと視線を向けるゼノン。
「…だって…エースが渋るからさ…ゼノンのご飯とルークの洗濯が待ってるよ、って…」
「後、お前のコーヒーな」
「…勝手にそんな約束して…」
「だって~~~」
 ぶーっと膨れっ面をするライデン。その頭をぐりぐりと撫でながら、ゼノンは溜め息を一つ。
「…ご飯も洗濯も当番制ね。コーヒーは…まぁ、ライデンの仕事ってことで」
「えぇ~~」
「…まぁ…当たり前だと思うぞ?」
「…エースまで~」
 エースも思わず賛同の意を唱える。その声にぶーぶーと文句を言うライデンを、ゼノンもルークも笑ってみている。まぁ、この程度で本気で怒るようでは、一緒になど暮らせない訳で。
 この先、どうなるかはわからないけれど…今はまぁ、それなりに生活出来そうだ。エースはこっそりそう思っていた。

◇◆◇

 エースが一緒に住み始めてから数日後。やっとデーモンも引越しを終えた。
 エースにあれだけ釘を刺されたのだから、デーモンとエースのことに誰も口は出さない。ただ、懸命に盛り上げようとするルークとライデン。その姿はほんの少し、気の毒にも思えていた。
 そして全員が引越しを終えた、と言うことで、デーモンに言った通り、ダミアンが引っ越し祝いに…と、極上の酒と食べ物を土産にやって来た。
 当然その後は酒盛り、である。
「住み心地はどうだい?」
 酒の入ったグラスを手に、そう問いかけた声。
「結構楽しいですよ。家事は交代制だけど、わいわいやるのも楽しいし。ね?」
 そう口を開いたのはルーク。
「…エースもかい?」
 くすっと笑うダミアンの前、エースは小さな吐息を一つ。
「…まぁまぁです。退屈はしない…と言うところですか」
「そうか。お前がそう言うのなら、楽しいんだね」
「…ノーコメント、ってことで…」
 表情を変えないエースの答えに、ダミアンはくすくすと笑う。
「まぁ、楽しくやってくれれば良いよ。これから仕事も起動に乗るだろうから、仲良くやるんだよ。ね、デーモン?」
「…はぁ…」
 自分のいないところで、実に平和な生活が始まっている。そこに自分が入れば、どうなるだろう…?
 その事実は、デーモンにとっては気が重い。噛み合わない歯車ほど、無能なものはないのだから。
 ただ、少しでも良い方向に動いてくれれば。
 それは、ダミアンの画策。勿論…デーモンは事情を知ってはいるが。
「さぁ、呑もう呑もう」
 ダミアンの上機嫌な声。
 その日は遅くまで盛り上がっていた。

 デーモンが引っ越してから数日。
 時折、エースと二人きりになることもある。
 声をかけても、返事が帰って来ないこともしばしば。
 それでも…少しずつでも、歩み寄れれば。
 そんな思いで、デーモンは今日も声をかける。
「…エース。どうした?いつまでもこんなところにいると、風邪ひくぞ」
 けれど、帰って来る返事はない。ただ、黙って彼を一瞥すると、そのまま踵を返して行ってしまった。
「…ったく…」
 溜め息しか、零れない。
「…いつまで…こんなかな…」
 彼は、苦渋の表情を浮かべる。
 けれど…その状況は、直に一変する。
 まだ…誰も知らないことであるが。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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