聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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MASQUERADE 2
その日の終了時間も疾うに過ぎた夜半近く。
結局執務室に残って、アリスが持って来た"セルジュ=ノアン"の情報の分析をしていた俺の元へ、一つの通信が届いた。
「…あぁ、ジュリアン。どうしたの?こんな時間に…」
昼間見た時と同じ彼の顔にそう言うと、ジュリアンは小さな吐息を一つ吐き出した。
『…残っていらして良かった』
その意味深な言葉に、俺は当然言葉を返す。
「…何かあったの?ダミ様に、何か…?」
『いえ、殿下は御無事です。何も変わりはありません。実は、貴殿に話が………』
そう切り出された話は、こちらも一筋縄ではいかない内容だった。
「………で?」
溜め息を吐き出しつつ、そう問いかける声に、ジュリアンも珍しくその表情に当惑の色を浮かべていた。
『ですから、貴殿に御願いしたく……』
「まぁ…ついでだから良いけどさぁ…でも、そんなに心配なら、あんたが確認すれば良いじゃない?」
『そうもいきません。わたくしには、職務があります』
「そうだろうけどさぁ……あぁ、わかったから、そんな顔しないでよ」
普段、感情を表情に出すことのないジュリアンの心底困った表情を見せられちゃ、こっちが妥協するしかないじゃないか。ねぇ。
「わかった。状況によってどうなるかわかんないけど、取り敢えずその覚悟はしとく。もしかしたら、エースの手を借りるかも知れない。とにかく、俺から連絡があるまで、勇み足はナシだよ?良い?」
『…御意。では、御願い致します』
そう言って、通信は切れた訳だけど…あぁ、また自分から仕事増やしちゃった……エースに知れたら、また笑われるじゃない…っ。ま、仕方ないか。
そんな小さな溜め息を吐き出した時、不意に執務室のドアがノックされた。
「…誰?」
こんな時間に来訪者があるなんて、普通じゃない。そう思って投げかけた声に返って来たのは。
『俺だ、エース』
「あぁ…どうぞ」
何だ。
安堵の溜め息を吐き出していると、入って来たエースは当然それを目撃している訳で……俺の顔を見つつ、その一言。
「御前、老けたんじゃないか?」
「…失礼なこと言わないでよねっ!俺は、あんたよりずっと若いのっ!」
「まだ寂しい独り身、ってだけだろ?」
「良いの、俺はっ」
ったく、エースったら…自分が倖せだからって。俺だってその気になれば……あぁ、やめとこう、この話題は。また墓穴を掘り兼ねないからね。
「それより、何の用?こんな時間に。まさか、夜這いでもかけに来た訳じゃないでしょ?」
「馬鹿言うな。夜這いにはまだ早過ぎる」
「…そりゃ失礼を」
全く、何の話だか…
「御前の屋敷に連絡入れたら、まだ帰って来てないって言うんで、こっちに来たんだ。ちょっと気になることがあってな」
そう話題を切り出したエースは、勧められる前にもうソファーに腰を降ろしている。
「気になることって…"セルジュ=ノアン"のことで?」
話題が話題だけに表情を引き締めた俺の顔を見ながら、エースはその言葉の先を続けた。
「それもある。先にその話をするか」
そう言うとエースは軍服の内ポケットから一枚の畳んだメモを取り出し、俺に投げて寄越した。
「情報局の極秘ファイルを一通りチェックした結果だ」
言われるままにメモのデータを入力し、ファイルを呼び出してみれば、それは確かに普通ではそれなりの見返りなしでは絶対に手に入れることが出来ない、過去の犯罪者のデータだった。
そのデータに俺が目を通していた俺は、その内容に眉を潜めていた。
「…ねぇ…これって…流石に、ミスは…ないよね?」
その言葉を聞いたエースは、俺の後ろでぽつりとつぶやいた。
「勿論。データにミスはない。それが真実、だ」
「でも…さぁ…」
納得出来ない俺の声に、エースも大きく吐息を吐き出した。
エースが持って来たファイルには、該当者はいなかった。
「それを見てもわかる通り、過去に《angel》と言うコードネームのテロリスト存在しない。もしここ最近現れたのだとしたら、過去のデータだけでは追うに追えないのは現実だが…まぁ行動範囲が魔界ならば、の話だけどな。もっと手を伸ばして、天界、雷神界の情報が得られれば、また話が変わるのかも知れない。だが…実際、魔界には《angel》が踏み込んだ形跡は微塵もないんだ。それなのに、彼奴は何処からその資料を見つけて来たんだ?まず、それが最初の疑問だ」
「…で、二つ目の疑問は?」
画面から視線を外し、エースに向ける。
多分俺は、エースの二つ目の疑問の内容を知っている。
「彼奴は……何者だ?」
予想的中。
「…そう来ると思った。あんたの情報網が確かなら…ね」
小さな溜め息を一つ。
「あんたの想像している通り、かも知れないね。俺もまだ詳しく調べてないから何とも言えないけど…多分、全ては一本の道に通じてると思う」
「一本の道、ねぇ…」
「そ。だから、あんたも協力してよね」
ここまで足を踏み込んだからには、必然的に協力して貰わないと。
「さっき、ジュリアンが通信を入れて来てね………」
俺が紡ぐ言葉の続きを、エースは黙って聞いていた。そして俺の言葉が途切れた時、大きな溜め息を吐き出した。
「…全く、厄介事ばっかり背負いやがって…」
「俺の責任じゃないからね」
「御前が、悪魔が良過ぎるのがいけないんだ」
「だから、それは俺の所為じゃないってば…」
全く、しつこいんだから。そんなにしつこいと、嫌われちゃうんだからねっ!
「とにかく、ちょっと調べて。俺は俺で、様子を探りつつ調べてみるから」
「…仕方ないな…世話の焼ける」
そうは言うものの、エースの表情は満更でもないんだよね。こんな仕事が嫌いだったら、情報局になんか入ってないってば。ねぇ。
床を彷徨っていたエースの視線が、ふと止まる。
「…何?」
「いや、ちょっと落とし物をな…」
そうつぶやきながら、ソファーから立ち上がったエースが手を伸ばしたのは、床に落ちていた髪の毛。
「色から察するに、御前のじゃないな」
指先に摘み上げられているのは、赤茶色の緩い癖毛。
「…髪の毛?」
「そう。昼間、彼奴に剣を向けただろう?その時に数本落ちたはずだったからな。掃除が入ってなくて良かったよ」
エースは、最初からそれを目論んでいたんだろうか…それとも、ただの偶然なのか…俺にはわからないけどね。
「…何をしようっての?」
「目には目を、歯には歯を…じゃ、生温いか?」
「あんたには、目には目潰し、歯には牙、でしょ?基本、三倍返し以上じゃない…ま、それは扠置き。どうするの?その髪の毛」
「作戦に一役買って貰おうかと思ってさ」
そう言うと、その一本の髪の毛を大事そうにハンカチに包んでしまい込む。
「レイティスって、知ってるか?」
「…レイティス?誰?」
聞き慣れない名前に眉を潜めると、エースは小さく笑いを零す。
「魔界きっての変装の名魔…と言うより、仮面師だ。多分、その存在を知ってるヤツは、そういないと思う。今となっちゃ、レイティスの名前自体、知らないだろうからな。でも、御前も一度、騙されてるんだぞ?」
「それって、まさか……」
仮面師と言う言葉自体、聞いたことはなかったけど…俺が騙された変装の名魔には思い当たる節はある。ただ…彼がレイティスなんて名前であるとは知らなかった。
「何処から調べて来たの?そんな名前…」
「俺の情報網を甘く見ないこと」
そりゃ、エースの情報網は魔界全土の及ぶってことぐらいはわかってるけどさぁ…
「ま、名前のことは良い。とにかく、彼奴に協力して貰ってだな………」
エースの声が、途端に小さくなる。必然的に、俺はエースの声に耳を傾け、その話を聞いた。
そして、深夜の密談は即実行へと変わった訳だ。
翌朝。早速執務室へとやって来たアリスは、昨日と全く同じ表情で俺と顔を合わせた。
「御早うございます」
「御早う。御早い出勤で…」
言葉の途中で出て来た欠伸を噛み殺す俺を、当然アリスは怪訝そうな表情で見据えている。
結局昨夜は屋敷へは帰れず、局の仮眠室で僅かな仮眠を取っただけなもんだから、もう眠くて眠くて…まぁ、愚痴を零してる場合じゃないから、しっかりしなきゃ。
コーヒーを淹れに椅子を立つと、気を回したアリスが、すっとポットに近付いた。
「私が…」
「あぁ、有り難う」
カップにコーヒーを注ぎながら、その視線が僅かに俺に向いた。
「寝不足、ですか?」
「…まぁね。ちょっと、デートしてたから」
「デート…ですか」
「そ、デート」
内密な任務を受けておいて、何を呑気なことを…とでも思ってるのかね。僅かに潜めた眉が、そう語ってるよ。
明け方近くまでエースと相談してたから、まぁただ単にそれをデートと称しただけなんだけどね。その方が、変に疑われなくて良いしね。
アリスはコーヒーのカップを俺の前に置いた。
「あんたは?」
「いえ、私は結構です」
「あ、そう。じゃ、遠慮なく…」
一口啜ると、口の中まで良い香りが広がっていく。これで目の前に任務がなきゃ、文句ないんだけどね。
アリスの眼差しは、俺の行動を無言で見送っている。
「エース長官から、連絡は?」
そう問いかけられ、俺はもう一つ、大きな欠伸を零してから言葉を続けた。
「ん、あったよ。昨夜ね。見つかったって」
「…もう…ですか?」
「だって、あのエースだよ?彼奴を甘く見ちゃいけない」
「そうですが……」
「不満?」
様子を伺いつつ、俺は口元に小さな笑みを浮かべた。
「いえ…」
「じゃ、文句ないじゃない」
俺は机の引き出しから、昨夜エースから受け取ったばかりのファイルを取り出し、アリスの前に差し出した。
「一応ね、情報局の極秘ファイルだから、他へは持ち出し禁止。見るならここのコンピューターで見てって」
「…御借りします」
アリスは俺の言う通り、この部屋のコンピューターに向かうと、そのデータを入力した。
画面に写し出されたのは、確かに昨夜エースが持って来た犯罪者極秘ファイルのコピーだった。勿論、それが正規のファイルではないことは…秘密だけどね。
横目でアリスの様子を眺めつつ、俺はコーヒーを啜っていた。
問題の部分で、アリスが息を飲んだのがわかった。
「あった?」
問いかける俺の声に、アリスは大きく息を吐き出した。
「…参謀、この部分のコピー、取らせて貰っても良いですか?」
「どうぞ」
空のメモリファイルを渡すと、アリスは早速それをコピーしていた。その表情は酷く青ざめていて、どう見ても只事ではない、と言う感じなんだ。
コピーを取り終わると、徐ろに椅子から立ち上がった。
「…主任に…報告して来ます」
「はい、御苦労様」
入って来た時とは全く正反対の表情で背中を向けたアリスを、俺は敢えて何も言わずに見送った。そして、その背中が完全にドアの向こうに消えると、ふうっと大きく息を吐き出した。
正直、良い気持ちはしない。でも、"俺とエースが立てた作戦"であるのだから、仕方ない。
早速俺は、先程までアリスが座っていた椅子に腰を降ろすと、エースへと通信を送った。
『…そうか。で、ジュリアンには?』
画面に写るエースの表情は、冷静そのものだった。
「まだ。アリスが報告に行ってるだろうし、ダミ様の警護にも着いてるから。ま、俺から指示があるまで、何もするな、とは言っておいたんだけどね」
溜め息を吐き出す俺を、エースはその口元に僅かな笑みを覗かせて見ていた。
「…何だよぉ…」
まるで、馬鹿にされてるみたいで、気に入らないんだよね。こんな時のエースのその余裕ぶった顔が。
『まぁ、そんなに膨れるなって。御前がそんな顔してると直ぐにバレるぞ』
「…だったら、直ぐにバレるような計画立てないでよね」
『何言ってんだよ。作戦参謀の分際で』
「俺の計画じゃないもんっ」
『わかったから、そう膨れるなって…ダミアン様を護る為だろ?』
…そう言われると反論も出来ないって、わかってて言ってるんだから、エースの奴…
『…それはそうと、ダミアン様の方は大丈夫なのか?』
「ん…多分ね」
『多分って…何だ御前、確認してないのか?』
「だって、ジュリアンが着いてるって言うから…」
とは言うものの、俺だって気が気じゃないのは確かなんだけどね。幾らジュリアンが優秀だって言ったって、やっぱり相手がダミ様じゃ……
「…ちょっと、様子見て来ようかな…」
思わずつぶやいた声に、エースはにやりと笑みを零す。
『後悔しないうちに行って来た方が良いぞ』
「…余計な御世話っ」
ぷいと横を向くと、エースの笑い声が聞こえた。
『じゃあな』
そう言葉を残し、エースの通信が切れた。
残された俺は……当然、溜め息を吐き出すわな。
昼近くになった頃、俺は皇太子の執務室の前に立っていたりなんかする。
やっぱり、一度気になっちゃうとどう仕様もなかったんだよね。惚れた弱み、仕方ないじゃない。
ドアをノックすると、いつもの陽気な声が聞こえた。
「どうぞ」
「…失礼します」
その声にホッとしながら、ドアを開ける。にっこりと俺を迎えてくれたその顔も、いつもと同じだ。
「やぁ、ルーク。暫く見なかったが、元気そうじゃないか」
「ダミ様も、御元気そうで…」
「あぁ、わたしは元気だよ」
そうは言うものの、その表情に僅かな陰が走った。
「…それにしても、何かあったのか?最近、わたしの回りの空気が堅いんだよ。御前なら、何か知ってるだろう?」
ダミ様は、自分が生命を狙われてるかも知れないってことを、知らないようだった。それは、滅多にない珍しいことかも知れないんだけど…それを言うべきか、言わざるべきか……
ふと曇った俺の表情で、それを察したのだろう。ダミ様は、すっと目を細める。
「どうした?」
「…いえ…あの……」
やっぱり、黙っていることは出来ない。
そう思って、口を開こうとした時、ダミ様の言葉がそれを遮った。
「御前は、笑っている方が良いよ、ルーク」
「…ダミ様…」
にっこりと微笑むその顔に、思わず魅入ってしまう。
「何があったのかは知らないが…まぁ、御前に苦悩の表情は似合わないってことだね」
「……」
「さ、笑って、笑って」
自らにっこり笑い、俺の笑いを促す。零れるその微笑みが、俺の胸に染み込んで行くんだ。その度に思う。
幾度も、この微笑みに救われた。
報われなくたって良い。俺は…この微笑みの前に立てるだけで十分だと思ったから。
失う訳にはいかない。その為に俺は、ダミ様を護らなければならないと。
その日の夜遅く。屋敷に戻った俺が自室のベッドの上でぼんやりしていると、ノックの音が聞こえた。
「はい…?」
『俺だ、エース』
珍しい来客じゃない。
「どうぞ」
身体を起こし、入って来るドアを見つめる。
「使用魔はどうした、使用魔は…」
「御前に言われたかないね」
入って来たエースに対して皮肉ってみたつもりが、やっぱり墓穴を掘ったらしい…
「まぁ良いけどさ。で、何?どうしたの?」
椅子を勧めると、エースはそれを断って、俺の前にファイルを差し出した。
「最後の大仕事だ。大丈夫か?」
その表情は酷く真剣で。
「…大丈夫」
「なら、良いけどな。取り敢えず、レイティスに連絡は入れておいた。御前が行動を起こし始めたら、一緒に動いてくれるはずだ」
エースの表情は、俺を気遣ってくれてるみたい。その眼差しが、酷く優しい。
「…ねぇ、エース…」
受け取ったファイルを見つめながら、俺の口を突いて出た言葉。
「仮面の下の顔は…敵だと思う…?」
「ルーク…?」
怪訝そうな表情を見せるエースに、俺は溜め息を一つ。
「彼奴から、あからさまな敵意は感じない。でも…何かは感じるんだよね。何に対しての想いなのか、俺にはわからないんだ。ホントに、ダミ様を狙うつもりなのか…それとも…」
「別の目的があるのか、ってことか?」
「言ってしまえばね。単なる直感でしかないけど」
そう。あくまでも俺の直感。でも、ダミ様の顔を見て、そう思ったのは確かだった。
自分の生命が狙われているかも知れないと言うことを、あのダミ様が気付かない訳がないじゃない。
ダミ様は、真実を見抜いているはず。だからこそ、そう思ったんだ。
「…ま、なるようにしかならないんだ。あんまり思い詰めるな。御前の悪い癖だ」
そう言って、俺の髪を軽く掻き混ぜるエース。
「わかってるから。いざとなれば、意外と度胸据わってんだから。大丈夫」
今は、そう返すことしか出来なかった。
翌日、執務室にやって来たアリスに、俺は昨夜エースから受け取ったファイルを渡した。
「…これは…?」
「エースから。例の《angel》の行方、わかったって」
「……」
「どうした?見ないのか?」
アリスの動きが止まっている。目を見開き、何かと葛藤しているかのように。
「アリス=レイド」
呼びかけた声に、アリスはびくっと肩を震わせ、俺に視線を向けた。
酷く、息が詰まる。
そんな雰囲気の中、小さく息を吐き出すアリス。
「…確認、します」
そう言ってコンピューターに向かったアリスの背中を、俺は黙って見つめていた。
直に、レイティスと言う名の仮面師も、この作戦に加わって来る。そして、最後の締めがそこに待っている。
赤茶色の緩い癖毛が、僅かに揺れた。
「…これは…真実ですか?」
そう問いかける声に、俺は用意しておいた言葉を返す。
「当然。情報源はエースだからね」
「エース殿の名前は、一級のブランド品、ですか」
「ま、そう言うこと」
エースの名前に、嘘はない。それはある意味、情報局を利用しているヤツなら当然返って来る答えな訳だ。確かに名前さえ付けときゃどんなものでも売れるブランド品と同じ扱いか。エースが聞いたら、きっと眉を潜めるだろうけどね。でもそれだけ価値のある存在であることには間違いないんだ。
アリスの顔色は変わらない。ただ、その眼差しだけが、強固になったように感じた。
「さ、捕えに行こうか」
背後からそう声をかけると、アリスはすっと立ち上がった。
「直ぐに支度を…」
「OK。俺はいつでも出発可能だから、あんたの準備が出来たら出発だ」
約一時間後、俺たちは目的地へと出発した。
時同じ頃。場所は、文化局局長の執務室。
その場に久し振りに立つのは、局長ゼノンの屋敷の使用魔…そしてこの文化局の検査官としても籍を置いている、通称レプリカである。
主たるゼノンの前に立つレプリカの表情は、いつもの穏和さとはかけ離れていて。
「エースから話は聞いてるよ。御前が必要だって言うことだから、任務を許可する。くれぐれも、無茶しないようにね」
「御意に」
頭を下げ、背を向けたレプリカ。その背中に、ゼノンは言葉を一つ放つ。
「行ってらっしゃい、レイティス」
その名前に思わず歩みを留め、振り返った姿は、目を丸くしてゼノンを見つめている。
「任務の時ぐらい、ちゃんとした名前で呼ばないとね」
主の茶目っ気に、レプリカは小さく苦笑する。
「わたくしでさえ、忘れていた名前なのに」
「俺は覚えているもの。忘れる訳ないでしょ?少なくとも御前の上司であり、主なんだから」
僅かな笑みを浮かべるこの主にレプリカ…否、レイティスは、その目許に小さな笑みを浮かべると、直ぐにその表情を引き締めた。
「では、行って参ります」
「ん、気を付けて」
再び背中を向ける部下に、ゼノンはにっこりと微笑みを送った。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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筋金入りのオジコンです…(^^;
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