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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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REGRET 3
こちらは、以前のHPで2003年05月17日にUPしたものです
 6話完結 act.3

拍手[2回]


◇◆◇

 ゼノンがエースの屋敷に戻って来ると、出迎えたティムは今にも泣き出しそうな表情をしていた。
「ゼノン様…」
「そんな顔しないで。出来る限りのことはするから。みすみす清水を…エースを、死なせる訳ないでしょう?」
 もしそれが不可能であるとしても、そう繕うしかないことは、ゼノンにも良くわかっていた。
 必ずしも、救えるとは限らない。でも、それを口にすることは出来ないのだから。
 それが、医師としてのプライドであり…仲魔としての、精一杯の強がり、だったから。
「清水の回りに、もう一つ治療結界を張るから。君たちは中に入ることは出来ないけど…デーモン、ルーク、ライデンがエースを見つけ出すまで、俺が支えるから心配いらないよ」
「…御意に」
 ゼノンの言葉に多少の安堵感を得たのか、ティムの表情も幾らか落ち着いて来ている。だが、ゼノンにしてみれば呑気に構えている場合ではないのだ。
 急いでエースの自室へ向かい、清水の姿を目にする。苦しそうに荒い呼吸を零し、きつく目を閉じる清水から感じる生気は、確かにか細い。もしかしたら、先程デーモンが無理矢理"GOD'S DOOR"の結界を破ろうとした影響が出ているのかも知れないと思いつつ、ゼノンは左耳に付いている魔力を制御するピアスを一つ外し、自身が張り直した結界に同調してもう一つの治療結界を張り巡らせる。
「…これで、少しでも持ってくれると良いんだけど…」
 結界自体は今現在を保持するだけ。治療結界とて、完全に回復する訳ではない。治癒能力を僅かに高めるだけ。だがそれも、人間である清水に効果があるかどうかと言えば微妙なところである。だが今は、それが唯一の処置であり…ぎりぎりの賭けでもあった。

◇◆◇

 デーモンとルークが雷神界へ辿り着くと、そこには既に事情を聞いていたライデンが出迎えていた。
「待ってたよ。さ、早く」
 ライデンに促され、デーモンたちは"GOD'S DOOR"と繋がっている扉へと向かった訳であったが…元々他悪魔目に付き易い場所にあるとも思ってはいなかったが、案内された予想外の場所に、デーモンもルークも、呆れたような溜め息を吐き出していた。
「…まぁ何もな、異空間と接点を繋げ易い宮殿の地下に、雑作もなく納まっているとは思ってはいなかったさ。だがな…何もこんな所になくても良いだろうよ…」
 溜め息と共に吐き出されたデーモンの言葉に、ルークも同意を示す。
「そぉだよなぁ、何もこんなトコにさぁ…」
「何言ってんだよ。こんなトコ、こんなトコって連呼しなくたって良いじゃんよぉ。別に、トイレや風呂ン中にある訳じゃあるまいし…」
「しかしなぁ…」
 頬を膨らますライデンに、それでもデーモンは納得出来ないと言うように溜め息を吐き出す。
 それもそのはず。宮殿の中庭の隅、どう見てもそれは宮殿を取り囲む壁の一部と化している、古びた扉。ここが雷神界での"GOD'S DOOR"との接点だと言うのだ。
「これでも一応、普段から使用禁止として封じてあるんだから。どうせ使わないんだから、壁の一部だって良いじゃんよぉ。何処にあっても変わんないって」
「そう言う問題じゃないだろうが。扉との位置関係を考えてみろ。このまま真っ直行ったら、雷帝の謁見の間じゃないか」
 デーモンが溜め息を吐き出す理由はそこにあった。
 ゼノンの言うことが何処まで正しいかはわからないが、今現在の状況で"GOD'S DOOR"の扉をこじ開ければ、雷神界とて少なからずの被害を受けるであろうと言うことは確証済なのだ。その扉が、よりによって雷帝の謁見の間の延長上にあるとすれば、真っ先に被害を受けるのは雷帝ではないか。
 だが、ライデンは最初からそれを承知だったようで、別に表情一つ崩す気配もない。
「大丈夫だって。親父だって馬鹿じゃあるまいし。俺よりデカイ図体してんだから、そう簡単に死にゃしないって」
「…そう言う問題じゃないだろうが…ったく…」
「とにかくほら、早くしないと時間ないんでしょ?」
 事の重大さを何処までわかっているのやら…常と変わらぬ態度のライデンに、デーモンもルークも多少困り顔であるが、ここはライデンに任せるしかないのだ。この脳天気が裏目に出なければ良いが…と祈るしかないのだった。
「じゃあ、これから結界を解いて扉を壊すからね。危ないから離れてて」
 そう言い放つ頃には、ライデンの顔も真剣な表情に引き締まっていた。
「油断するなよ」
「任せといて。こう見えても異空間の扱いは上手いんだから」
 確かに、雷神一族は数多くの空間を縦横無尽に行き来出来る数少ない種族であるのだから、デーモンやルークよりも扱いには慣れているはずである。気を抜きさえしなければ、心配する必要もないのだが。
 呼吸を整えたライデンは、扉に向け、すっと両手を差し出す。
 呪文の言葉がその口から綴られると、その両手は輝きを持ち始める。更に呪文は続き、いつの間にかそれを見つめていた二名に息を飲ませる程、ライデンの気が高まっている。
 そして、結界が解かれた瞬間、その掌から放たれた閃光は真っ直に扉を貫いた。刹那。
「…ぁっ!」
 凄まじい"気"が溢れ出し、デーモンもルークも腕で顔を覆う。離れた場所で様子を伺っていたこの二名がそれなのだから、直撃を受けるライデンの方とて、無事な訳はない。
 だが、ある程度は前以て予測していたのであろう。直撃を避ける為に防壁(シールド)が張られており、辛うじて直撃は免れたようだ。防壁のおかげで弾かれた"気"も雷帝の謁見の間へは流れず、分散する。
 しかし、防壁があるとは言え、それを受けるライデンにとっての"気"の圧力は変わらないのだ。僅かずつに身体は後方へと押され、やっとで防壁を支えているのが明らかであり、その表情も懸命である。
「手伝うよ」
 ルークがライデンの後ろに回り、その身体を支える。ライデンに触れてみて、初めて彼が酷く衰弱していることに気が付いた。天界の"気"は、彼等の予想以上にその魔力を奪っていたのだ。
「無理するな。駄目そうだったら、俺が代わるから」
 背後から心配そうに声をかけるルークに、ライデンは小さく笑ってみせる。
「大丈夫。これでも、だいぶ威力は弱まってるから。もう少しすれば、出尽くすんじゃない?」
 そう言うライデンの言葉通り、溢れ出る"気"の威力は確かに最初よりは幾分弱まっている。だが、そうかと言って放っておいては、恐らくライデンの魔力が尽きるのが先だろうが。
「馬鹿言え。これじゃ、あんたの方が先にくたばるっつーの」
 呆れたようにそう言うルーク。しかし、そうは言いながらも、しっかり手助けを忘れない。その甲斐あってか、暫しの後、"気"の放出は彼等にも影響が出ない範囲にまで弱まっていた。
「じゃ、そろそろ中に入ってみる?」
 防壁を解いたライデンが、肩や首を回しながらデーモンに問いかける。平然としてはいるものの、呼吸は乱れたままである。だがルークが手助けしていたお陰で、この程度で済んだ、と言うところだろう。
「少し休んだ方が良いんじゃないのか?」
 ライデンが苦しそうに息を吐くのに見兼ねたデーモンがそう口を開くと、当のライデンは首を横に振る。
「のんびりしてる時間はないんでしょ?俺なら大丈夫だから。ルークから魔力分けて貰ってたし。だから…」
「…わかった。ルークも大丈夫か?」
「勿論。俺が、天界の"気"でくたばる訳ないでしょ?」
 確かに、ライデンの護衛をしていたにしては、ルークの息は上がっておらず、いつもと変わりない。育った環境とは、恐ろしいモノである。
「では、行くぞ」
 デーモンの声に、ルークもライデンも表情を引き締め、エースが捕われていると言う"GOD'S DOOR"に足を踏み入れた。

◇◆◇

 時を同じくして、エースの屋敷。
 治療結界に触れ、直接魔力を注ぎ込んでいるゼノンにしてみれば、状況は悪くなる一方だと感じざるを得なかった。
 最初から治療結界ではなかったが故に、最初にゼノンが張り直した結界でさえも、魔界の"気"と混ざり初めたら最後、無意味同然となっていたのである。
 傍に来れば心配でうろうろするだけのティムに他の用件を言い渡し、その場から離れさせると、ゼノンはやっと小さな溜め息を吐き出す。
 状況は悪くなる一方なのに、眠っている清水の表情はとても穏やかである。それが、酷く気がかりで。
「…何を…考えてるの?」
 嫌な予感を感じるのは、果たして自分だけだろうか。
 思わず、手を伸ばして清水の額にそっと触れる。
 流れて来る映像はない。ただ、感じるのは、不思議な程掴み難い想い。それは、エースに対してなのか…それともデーモンに対してなのか。
「清水、君は……」
 まるで、エースの意識を見ている気分だった。本来完全に分離した身体から、エースの意識など読み取れるはずもないのに。

 もしも願いが、一つ叶うのなら。
 愛しいヒトの時間を、少し下さい…

◇◆◇

 まだ僅かに強い"気"の中で、エースを見つけるのは実に容易いことだった。見つけるだけは…の話であるが。
 細い糸が縦横無尽に絡み合った、まるで繭のようなモノの中から、消えそうなくらい僅かなエースの気を感じることが出来た。
「ちょっと…この中にエースがいるって訳?」
 眉間に皺を寄せながら、ルークはそっと繭に手を伸ばしてみる。触れた指先から感じるのは、確かにエースであるのだが…今にも消え入りそうなくらい、本当に弱い気なのである。
「エースの能力は、奪われる一方だと言っていた。このままでは、確実に死に至るだろう。何とかしないと…」
 そうは言うものの、どうしたら良いものか、まるでわからない。力任せに引き千切るには、耐えるべきエースの魔力が少な過ぎる。下手をすれば、助け出せないまま生命を落とし兼ねないのだから。
「このまま、エースの能力が奪われて行くのを、黙って見てろっての…?」
「そんなこと、させられる訳ないじゃんっ!」
「じゃあ、どうすんだよっ!」
 声を上げ、真向から戸惑いの眼差しを打つけるルークとライデンに、デーモンは溜め息を一つ吐き出す。
「喧嘩してる場合じゃないだろう。ゼノンがいれば、せめて方法ぐらい…」
 唇を噛み締め、そうつぶやいた時。
「教えてあげようか」
 第三者の声が、突然届いた。全くの不意を突かれ、息を飲んで振り返った三名は、同じように目を見開いた。
 そこには、荒れ狂う"気"で髪を乱しながらも、悠然と佇んでいるミカエルの姿があった。
「"GOD'S DOOR"に異常な反応があると思って来てみれば、何だ、君たちがいるじゃないか。それも、暴走した天界の"気"の中にね。おまけに、エース殿は捕われてると来た。いや、全く奇妙だね」
 くすっと皮肉げに笑ってみせるミカエルを前に、すっと表情が変わったのはルークだった。
「あんたの仕業?」
「まさか。わたしは、何もしてはいない。言ったはずだ。暴走だ、とね」
 冷静にそう返されてしまうと、他に言いようがない。諦めの溜め息を吐き出したルークを横目に、デーモンは冷静に相手を受け留めていたようだ。
「状況がわかっているから、来たのだろう?天界側は、この状況の原因を突き止めているのか?」
「突き止めていると言えばそうであるし、わからないと言えばそうでもある…つまり、仮定では、と答えるしか出来ないけれどね」
 そう答えたミカエルはそっと歩み寄り、彼等の横を擦り抜けて、エースの"繭"に手を伸ばす。
「この繭を見たのは、実を言えば初めてじゃない。だいぶ前になるが、同じような繭を見たことがある。やはり、今回と同じように、"GOD'S DOOR"の"気"が暴発した時にね。ただ、原因は…と言われると、未だ正確な結論には達していないと言うのが現状だ」
「天界ともあろう研究熱心な世界が、珍しいじゃない」
 皮肉を込めたルークの言葉も軽く受け流し、ミカエルは言葉を続けた。
「結論だけ述べるならば、"繭"は"GOD'S DOOR"内の"気"が暴発した時にのみ現れる。その理由として考えられるのは、"GOD'S DOOR"の"気"を正常に戻す為。その為に選ばれるのは、この世界の者…つまり、ここで生を受けた者、だ」
「それがエースだと?」
「今回はそう言うことだろうね」
「でも、エースは魔力が急激に衰えたから、その回復の為にここに戻って来たんじゃないの?」
 口を挟んだライデンの問いかけに、返って来たのは溜め息、だった。
「わからない点は、そこだ。それが、ホントに彼の波長の所為であったのか…それとも、魔力の衰えと言うこと自体が、"GOD'S DOOR"の異常を知らせる為のブレーカーの役割なのか…」
 つぶやきながら神経質そうに指先で唇を辿り、ふと思い出したように彼等を振り返った。
「あぁ、そうだ。エース殿を助けるんだったね」
「…ちょっと、あんたねぇ…」
 こんな時にミカエルに突っ込みを入れられるのは、ルークだけだった。
「ま、方法としては簡単なはずだ。君たちがエース殿の代わりにこの"繭"に気を送り込む。その間に糸を切ればいいだろう。ただ、"繭"自体が一つの爆弾のようなモノだから、慎重にしないと…糸さえ断ち切れば、後は大丈夫だろうけどね」
「ちょっと待って。あんたの言い方って、物凄く曖昧な感じがするんだけど…それで助かってる確証はある訳?」
 不安げな表情で問いかけるルークに、ミカエルは僅かに表情を曇らせる。
「…残念ながら、確実に助かると言う保証はない。ただ、それが唯一の方法だと言うのは確かなことだ。それは、我等が天界の調査の結果だ。何なら、今から魔界へ行って、魔界流の助け方をゼノン殿にでも聞いて来るか?」
「そんな時間もないってこと、わかってるクセに…」
「だったら、やってみるしかないだろう」
 そう決断したのは、他の誰でもないデーモンだった。
「…ちょっと…デーさん本気なの?確実じゃないんだよ!?エースの生命がかかってるってのに、そんなに簡単に…」
 反論の意を唱えかけたルークに、口を挟んだのはライデンだった。
「確実じゃなくたって、方法がそれしかないなら、仕方ないんじゃない?やってみるしかないじゃん」
 デーモンに同意を示したその声にも、ルークは首を縦には振らなかった。
「危険過ぎる!エースにもしものことがあったら、どうするつもり!?何かあってからじゃ、もう取り返しが付かないんだよっ!?」
「しかし、このまま時間が経てば、結果は同じだ。何もやらないまま、エースの生命を縮めるだけならば、僅かでも可能性のある手段を…」
「最悪の時はどうするのさっ!デーさんはエースを…清水をも失って、それでも平気なのっ!?俺は…そんなの…」
----絶対、嫌だ。
 頑なに拒むルークを目の前にし、デーモンもライデンも溜め息を吐き出していた。勿論、ミカエルでさえも。
 最悪の時を考えるなど、ルークらしくない。ただ、ある意味でそれは、幾度も最悪の事態を見て来たルークだからこそ、考えたのかも知れないが。
「…幾ら、デーさんの命令だって、これだけは従えない」
 真っ直ぐな黒曜石が見据える先、デーモンはその金色の眼差しを伏せることだけはしなかった。
 自分は、清水に誓ったのだ。必ず、エースを助けると。必ず…清水を助けると。だからこそ、ここでルークに同意することは出来ないのだ。
「それなら…御前は、もしミカエル総帥ではなく、ゼノンが同じ判断をしたとしても…同じように反論したのか?」
「…ゼノンは歴とした研究者だもの。ミカエルみたいに、容易く結論は出さない」
「そう言う言い方はミカエル総帥に失礼だろう」
「だって…」
 無粋の表情のまま頬を膨らませるルークの姿に、ミカエルはわかっているとばかりに、無言でデーモンに目配せしてみせる。それを受け、デーモンは小さく頷き返す。そして、言葉を続けた。
「ゼノンには悪いが、彼奴だって完璧じゃない。それは、御前だってわかってるはずだ。勿論、我々にとってみればミカエル総帥の言葉よりは信じられるかも知れない。だが結果としては同じだ。ゼノンが切れと言えば、御前はあの糸を断ち切れるだろう?」
 戸惑いの表情を浮かべるルークの気持ちは、良くわかっているつもりだった。
 ルークの頭を引き寄せ、そっと抱き締める。
「…今は、最悪を考えるな。吾輩たちは、エースを助けるんだ。清水を…助けるんだ。だから、今はミカエル総帥を信じるしかないんだ。わかるな、ルーク」
「デーさん…」
「精一杯のことをして、助からない時は仕方がない。だが助かる可能性があるのなら、賭けるしかないだろう?」
 優しく紡ぐ声が、頑ななルークの心を少しずつ溶かしていく。
「エースを…助けるんだよね?」
 そう問いかける声に、デーモンは小さく微笑んで頷き返す。
「あぁ、そうだ。だから、御前が糸を断ち切るんだ。吾輩は、"繭"に気を送る」
「デーさん、俺は?」
 問いかけるライデンの声に、デーモンは振り返る。
「御前は、万が一の時に備えて待機しててくれ。扉を壊したことで、相当疲れてるだろう。無理はするな」
「わかった」
 天界の"気"を逃すことで、己の体力も魔力もほとんど使い切ってしまっていたライデンにとって、それは足手纏いにならない為には納得出来る答えだったのだろう。素直に頷くと、すっと身体を引く。そして、"繭"に歩み寄るデーモンに視線を向けた。
「気を付けて」
「わかってる」
 短い答えと共に、デーモンはすっと手を伸ばすと、その"繭"に触れた。そして、エースの気に同調すると、ゆっくりとその"気"を流し始める。
「どれくらいの"気"が必要なの?」
 そっとミカエルに問いかけるライデンの声に、ミカエルはデーモンに視線を向けたまま、口を開いた。
「さぁな。だが"繭"が満たされるだけ、とは答えられるだろう。詳しいことはわからないが、きっと何かの反応が返って来るはずだ。ただ、"繭"の容量がわからないから何とも言えないが…」
 状況の一つも見逃すまいと視線を向けるミカエルの横顔を見つめていたのは、ライデンだけではない。ルークもまた、その表情をじっと見つめていた。
「…どうしてあんたは、それを俺たちに伝えに来たの?俺たちは…あんたの敵なのに…」
 ゼノンに言われた言葉が、未だ頭から離れないのだろうか。敵と言う形式が、その想いを複雑にしているのは間違いない。だから、そう問いかけてしまうのだ。
 小さく問いかけた声に、ミカエルはふっと我に返ったように息を吐いた。
「敵だから…か?だから御前は、わたしにそれを問うと言うのか?」
 そう尋ねられ、向けられた視線は、とても寂しそうだった。勿論、それを受け留めたルークの眼差しも然り、ではあるが。
「あくまでもそれは理屈の上で、だ。だが、世の中理屈だけじゃないだろう?」
「だって…あんたと顔を合わせる度に、嫌なことしか思い出せない。あんたを憎んでいた時間が長過ぎて…あんたの想いが、掴めなくて…」
「わたしは、もう割り切ったつもりだよ。御前を取り戻すことは出来ないとね。御前のことは、もう魔界に委ねたのだから。素直に、受け入れれば良いだろう。わたしは御前にとって、都合の良い天界の駒として…ね」
 そう言って小さく笑ったミカエルを、ルークはずっと複雑な表情で見つめていた。
 再び、ミカエルの視線はデーモンの方に向く。先程からずっと気を送り続けているにも関わらず、"繭"は未だ満たされる様子はない。それだけ、デーモンにかかる負担は大きくなっているはずなのに、愚痴の一つも零さない。
 ただ、一筋流れた汗が、その疲労を明らかにしてはいたが。
「…デーさん、大丈夫かな…」
 つぶやいたライデンの声に、ルークも視線を向ける。
「"繭"の容量って、一体…」
 どんだけのモンなんだよ。
 心配そうにつぶやいた声に、ミカエルも溜め息を吐き出す。
「デーモン殿の精神力が、後どれくらい持つものか…」
 そうつぶやいた時、やっと"繭"に反応が現れ始めた。
 淡く光を放ち、生命反応も強くなりつつある。
「ルーク、そろそろだ」
 時を得た、とばかりに呼びかけたデーモンの声に、ルークは大きく息を吐き出してその手に剣を呼び出す。そして"繭"に歩み寄ると、間合いを見計らい剣を振り上げる。
「今だ!」
 その声と共に振り下ろされた剣は、確実に"繭"の糸を断ち切っていた。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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