聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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REGRET 5
薄闇が降り始めた頃、デーモンはエースの寝室を訪れていた。
軽くノックをすると、中から返事が返って来る。
「どうぞ」
その声に促され、扉を開ける。清水が眠っていたベッドには、今はエースが上体を起こして座っていた。
「どうだ、気分は」
ベッドの端に腰を降ろしながら、様子を伺う。
「まあまあ、って感じだな。でも…何だか、ぽっかりと穴が開いちまったみたいだ」
小さな吐息が吐き出される。何処か寂しげな表情を覗かせるエースに、デーモンは小さく溜め息を吐き出すと、ゆっくりと言葉を発した。
「御前が…清水を大事に思っていた気持ちは良くわかる。だからこそ…状況を、きちんと確認したいんだ。何が原因で御前が"GOD'S DOOR"に捕われたのかと言うことを。どうして…清水が、現れたのかと言うことを…」
エースの表情を考えれば、それは今問いかけることではないと言うことは、デーモンもわかってはいたのだ。
ただ、言葉を繋ぎたくて。黙っていれば、自分もどうかしてしまうような気がして。
「状況…ね。俺にも良くわからないんだが…多分、俺があの場所に呼び寄せられたのは、"GOD'S DOOR"の異変があったからだ」
「異変があったから、御前の魔力がブレーカーとなって、"GOD'S DOOR"に呼び寄せられたのか?そして、御前の魔力を利用して、"GOD'S DOOR"の異変を修復しようと…?」
「何だ。俺よりも、ずっと良くわかってるんじゃないか」
確かに、当魔よりも端から見ていた傍観者たちの方が、状況を分析するには良い立場であった。だからこそ、仮説を立てることが出来たのだ。
「…今の話は、ミカエル総帥の仮説が元だ。御前を助ける為に"GOD'S DOOR"に行ったら、ミカエル総帥も来ていたからな」
「成程ね。確かに、天界が立てそうな仮説だ」
納得しているのか馬鹿にしているのか…エースの表情では良くわからないと言うのが、正直なところであるが。
それ程迄に、エースは心ここにあらず、と言う感じだったのである。
これ以上問いかけたところでエースからの答えは的確には返って来ないと察したデーモンは、事件の話をそこで区切ることにした。改めてエースの顔を見つめ、小さな溜め息を一つ吐き出すと、ゆっくりと用意していた言葉を問いかけた。
「彼奴は…ホントのところ、御前と吾輩と…どっちを呼んだんだろうな」
その声に、エースは僅かな沈黙と共にその眼差しを伏せる。まるで、何かを隠すかのように。
「…そりゃ…御前だろう」
やがて開かれた唇は、デーモンにそう告げた。
「彼奴は俺の媒体だ。彼奴の気持ちは、俺が誰よりも良くわかってる。彼奴が呼んだのは…欲したのは、御前だ」
「エース…」
「俺が"GOD'S DOOR"に捕われている時…彼奴の意識が聞こえた。彼奴が望んだのは、一つ。愛しいヒトの時間が少し欲しかったんだ。だから、彼奴は御前を呼んだ。俺から、御前を奪う為に……たった少しでも、独占する為に。最後の我侭、だったんだろうな」
そう紡いだ声は、その言葉の意味とは裏腹に、とても優しく聞こえた。尤もそれは…偽りの言葉、だろうが。
エースが隠そうとしている事実は、既にデーモンも察していた。ゼノンから告げられた言葉が、それを裏付けていたのだから。
デーモンが呼び戻された時…既に清水はいなかったのだと。
「何を…隠してる?」
不意に問いかけたその声に、エースは静かに息を飲む。
「何のことだ?」
冷静に返したものの、デーモンと視線を合わせようとはしない。それを見切っているデーモンは、小さな吐息を吐き出す。
「彼奴が、ホントに独占したかったのは…彼奴が欲した愛しいヒトの時間は、御前の時間じゃなかったのか?」
「……」
「最終的に、彼奴が最も欲したのは御前自身だろう?だから御前は、誰よりも先に清水の所に戻って来た。御前の媒体だもんな。確かに、気持ちも意識も誰よりも良くわかっていたんだろう」
エースは目を伏せたまま、口を噤んでいた。
「隠すことはないだろう?」
そう問いかける声にも、口を開かない。その姿に、デーモンは溜め息を一つ吐き出す。
「多分…最期まで吾輩のことは良く思われてなかったんだろうな。少しは気持ちを開いてくれてはいたが、結局彼奴は吾輩から御前を独占したかったんだ。だから、吾輩たちを"GOD'S DOOR"に遠ざけている間に、御前を呼び戻した…違うか?」
"GOD'S DOOR"の"繭"に、確かにエースの生命反応は確認された。だが、その余りにもか細い波動に、デーモン自身奇妙な違和感があったのだ。
生きてはいる。だが、もしかしたら、ここにはいないのかも知れない。
ルークが"繭"の糸を断ち切ってから、それは確実な思いとなった。
エースは、ここにはいない。何処かで繋がってはいただろうが、最初から"繭"の中にはいなかった、と。
「…御前は…どうだったんだ?御前は、清水のこと…」
----どう、思ってたんだ?
ようやく口を開いたエースは、それでも目を伏せたままデーモンに問いかける。
「どうって…」
答えに詰まり、言葉を濁す。別に、嫌っていた訳じゃない。寧ろ、愛しいとさえ思った。だが、それを好きだと言う言葉で返すには、何処か語弊があるようにも思う。
「…吾輩は、清水を御前の媒体として見ていた。だから…」
「だが、清水は俺じゃない。彼奴は彼奴で、一つの人格を持ってたんだ。独りの存在として認めてから考えろ」
いつになく、エースの言葉の節々に棘があるように思えるのは、どうしてだろう。何処となく居心地も悪い。
諦めたような溜め息を吐き出し、デーモンは言葉を選びながらその口を開く。
「多分…好きと言う部類には入っていたんだろう。だが、御前に対しての想いとは違う。それだけははっきりしてるんだ。彼奴も…それはわかっていたはずだ」
「あぁ、わかっていただろうな。理屈の上では、な。だが全てが理屈の上に成り立つ訳じゃない。俺たちは悪魔であり、彼奴は人間だ。当然、生命の長さも違う。その生態系もな。だが、それがどうしたって言うんだ?彼奴は俺の媒体であり、もう一名の俺でもあった。ある意味、理屈では通らないんだ。その想いも…な」
「エース…」
エースが何を言いたいのか良くわからず、デーモンは怪訝そうに眉を潜めていた。
本当に伝えたかった気持ちは…どちらに向かっていたのだろう。
誰よりも良くそれを感じていたエースは、そっと目を伏せて言葉を紡ぎ出した。
「…彼奴は、御前に惚れてた。それは、事実だ」
「……」
「切ないよな。どんなに想っても、伝わらないなんて。それが理屈だけの上に成り立って、理屈だけが通る世の中であったら…どれだけ報われたか」
「…何を…言ってるんだ?エース」
ここに来て、エースの態度が普通でないことにやっと気が付いた。遅過ぎたと言えば、多分それまでだろうが。
ふぅ…と溜め息を一つ吐き出したエースは、デーモンからその顔を隠すかのようにそっとうつむく。
「…実は…"GOD'S DOOR"とここが、繋がっていたって言ったら…御前は信じる?」
「…エース?」
怪訝そうに問い返す声にも、エースは顔を上げない。そのままで、言葉を続ける。
「御前も知らないウチに、俺と清水が入れ代わっていたとしたら…」
そう言葉を紡ぐエースが、酷く切なげに見えたのは、気の所為だろうか。
「…最期に…ここにいたのは、御前だろう?」
予想は着いていた。だから、然して驚きもせず、デーモンはエースに言葉を返す。
「吾輩たちは…清水の最期に間に合わなかった。それに間に合ったのは、御前だけのはずだ。本体としての御前だけが、媒体である清水の最期に気が付いた。そうだろう?」
「…いつから、だと思う?」
「…ルークが、"繭"の糸を断ち切った直後…違うか?」
そう答えると、直後にエースから小さな笑いが零れた。
「ハズレ。入れ代わったのはもっと前、だ」
「…何だと?」
「御前が、"GOD'S DOOR"に行く前、だ。御前が清水だと思って話していたのは、実は俺だった…まぁ、正確に言えば、清水の躱に宿った俺の魂、だ」
「じゃあ、"GOD'S DOOR"にいたのは…」
「エースの躱に宿った、清水の魂。気は肉体に縛り付けられていたから、御前は俺と清水の区別がつかなかった。ただ、清水が消えてしまってからは話が違う。彼奴の気も消えてしまったから、俺だと気が付いたんだろうな」
既に理解の域を越えてしまったエースの言葉に、デーモンが戸惑わないはずがない。
ずっと、清水だと思っていたのに…それが、実はエースだったなんて。
「確かに、清水が消えたのは、ルークが"繭"の糸を断ち切った直後だった。だが、その前に俺たちは入れ代わっていた。理由はただ一つ。清水が、そう望んだからだ」
「どう言うことだ?吾輩にもわかるように、きちんと説明してくれ」
未だ顔を伏せたままのエース。だが、その言葉だけはきちんと紡がれている。
「あの"GOD'S DOOR"の結界の中に"逃げ込んだ"のは…清水だった。俺への想いがあることはわかってた。だが、それと同時に、御前への想いもまた、事実だった。どちらを選ぶことも出来ず…どちらを切り捨てることも出来ず、苦しかったんだろうな。そこへ丁度良く、俺が御前の前から姿を消した。"GOD'S DOOR"の異変に巻き込まれてな。彼奴はそれを利用したんだ。ここから…自分の現実から、逃げ出す為に」
「逃げ出す…?」
「そうだ。俺の中に閉じ込められているだけの運命に嫌気が差したのかも知れない。だから、この時とばかりに逃げ出そうとした。だが、彼奴は己の肉体をも連れて行くことは出来なかった。だから魂だけが入れ代わってしまったんだ。それが、彼奴の生命を縮める結果になると、わかっていたにも関わらずに」
一つ、エースの唇から溜め息が零れる。
「御前は…どうしてそれを見過ごしたんだ?助けられたはずだ。御前ならな」
デーモンの問いかけ。それは、エースも見越していたのだろう。先程零れた溜め息は、多分それを感じてのモノであったに違いない。
「…そう。俺には、助けることが出来た。その気になれば幾らでも。でも、それをしなかったのは…」
----俺が、彼奴に嫉妬していたから。
ぽつりと零した言葉に、デーモンは思わず息を飲む。
「…嫉妬?御前が…清水に、か?」
当然のように問い返された言葉に、エースの小さな笑いが返って来る。
「別に、可笑しいことじゃない。誰だって、嫉妬ぐらいするだろう?」
「だって、御前の媒体じゃないか。彼奴の気持ちは、御前が一番良く…」
「あぁ、一番良くわかっていた。だからこそ、嫉妬したんだ。彼奴は、俺の知らない御前を知っている。俺ではなく、清水と接する御前の顔を知っている。俺の知らない御前だ。許せると思うか?俺と同じヤツを好きになって、俺の知らない御前を知ってるんだ。許せるはずがない」
「だからって、普通嫉妬に値するか!?彼奴は、御前のことをずっと好きだったんだぞ?吾輩はただの恋敵で…彼奴は吾輩に一言だって好きだなんて言った事はない。ずっと一線を引いて…」
「一線を引かなきゃ、理性を保てなかった。ただそれだけの話だ」
「…エース…」
大きく息を吐き出したエース。
「俺も彼奴も…御互いが御互いに嫉妬してたんだ。ずっと…長い間、な。だから、俺は……」
流石に、その先の言葉はエースの口から出ることはなかった。けれど、その意味は察することは出来た。
嫉妬したからこそ…見限ったのだ、と。清水の想いを知っても尚、それを遂げさせようとはしなかったのだと。
確かに、あの時の清水は嫉妬の塊だと言っていた。エースが愛したデーモンに対して。そして…デーモンを手に入れた、エースに対しても。それが、こんな事態になるとは…思ってもみないことだった。
「…やめろ…今更そんなこと…」
つぶやくようなデーモンの声。そんなデーモンを、エースは何処か冷めたような眼差しで見つめていた。
デーモンの唇から零れ落ちた溜め息が、その胸の重さを語っていた。
「…どちらにしても…清水はもう永くなかった。俺の中にいたって、いつかは限界が来る。それが、今だったってだけで。だったら、彼奴の好きにさせてやったって良いじゃないか。それが、報われるかどうかなんて…知ったこっちゃない」
心持ち低い声は…伏せたその眼差しは、エースの心に残った重さ。
口でなら、幾らでも言えるのだ。それを訂正する清水はもう、いないのだから。
「だからって…」
複雑な想いに捕われ、デーモンも返す言葉が見つからない。
好きにさせてやることが、ホントに清水の為だったのかはわからない。直に限界が来て、この世から全てが消えてしまうことがわかっていたなら当然。
もしデーモンがエースの立場にいれば…もう少し留まらせてやることを、救いの道として取っただろうか。
デーモンの想いを察しているエースは、やっとでその顔を上げる。何処かいつもと違うその眼差しは、ある種の複雑な想いが絡み合っているのだろう。
「…なら…御前ならどうした?彼奴の好きにさせて、彼奴の想いに応えて、それで満足か!?それが御前の考えか!?」
「彼奴の想いに応えるだなんて、一言も言ってないじゃないか!何をそんなに……」
そう言いかけ、エースの眼差しが酷く不安定に揺れていることに気が付いた。
「…俺が…清水が尋ねたことを、忘れたのか…?」
「……」
その声に、デーモンはドキッとして息を飲む。
"GOD'S DOOR"に向かう前…清水は確かにその口で言ったはず。『あんたを頂戴』と。その意味は、追求しなくても察しは付く。しかし、デーモンは清水のキスを拒まなかった。それを全ての答えとして、エースは受け取ったのだ。
エースから差し伸べられた手が、デーモンの手首をきつく掴む。
「御前は…清水の為に、何をしようとした?彼奴を生かす為に、何をしようとした!?彼奴に抱かれて、それで想いを遂げさせてやろうとしたんだろう!?」
「エース…っ」
力では到底適うはずもなく、抵抗する間もなくデーモンはベッドの上に組み敷かれた。
目の前にあるのは…苦しそうな、エースの表情。
「…俺の前で…彼奴に抱かれるなんて…許さない。誰にも渡すまいと護って来たのに…よりによって、俺の媒体に盗られるなんて…」
「…だが、問うたのは御前だろう。躱は清水であっても、その魂は御前だったのなら…」
「だが御前はそれを知らなかったんだ。御前は、清水のつもりで…彼奴にキスした。彼奴にその心をを許そうと思った。全て彼奴の為に。彼奴を生かす為に」
「…違う。御前を、生かす為、だ。エース」
「…デーモン…」
腕の力を緩め、思わずデーモンの顔を凝視する。先程までの揺れる眼差しは、戸惑いに変わっていた。それをしっかりと見つめ、デーモンはゆっくりと言葉を紡ぐ。
「…確かに、清水を助けたかった。だがそれよりも…御前を助けたいと言う思いの方が強かった。彼奴に抱かれようと思った訳じゃない。彼奴が消えてしまえば、御前が助からないと思った。だから、魔力を分け与えるつもりでキスしたんだ。きっと…清水の躱に、清水の魂が宿っていたのなら…吾輩の想いは、わかっていたはずだ」
「……」
「ホントは…御前も迷っていたんだろう?どちらを選ぶことが出来ずに…切り捨てることが出来ずに。現実から逃げ出したかったのは、御前も同じだろう…?だから、吾輩に問いかけたんじゃないのか?」
「違う、俺は…」
「それならどうして御前は、吾輩を"GOD'S DOOR"へ向かわせたんだ?吾輩に助けさせようとしたのは…御前の躱か?それとも…清水の魂か…?」
「…俺は…」
「清水は…きっとわかってたんだ。御前が迷っていることを。だから…ある意味、自分から切り捨てようと思ったんじゃないのか…?彼奴なら、やり兼ねない。御前の、為ならば。御前を…助ける為ならば」
媒体だからこそ…見て見ぬ振りをしようとしたその想いに、気付いていたのだろう。
自分自身も…後悔を、しない為に。
そっと腕を伸ばし、エースの首に回す。そして、軽く引き寄せる。
「…御前…吾輩に言ったな。どうしてはっきり言わないんだと。その通りだな。だが、それは吾輩だけじゃない。御前自身にも問いかけた言葉だったんじゃないのか?」
後数センチで触れてしまいそうな程近くにあるエースの顔は、当然戸惑っている。そんなエースを前に、デーモンは更に言葉を続けた。
「清水が御前の中から消えて、一番戸惑っているのは…哀しく想っているのは、他の誰でもない。御前だ。だから、本当ならば今言う言葉ではないかも知れない。でも、これが良い機会だと思う。だから、敢えて言うんだ。良く聞いてろ」
そうつぶやき、一つ呼吸を置く。そして、ゆっくりと口を開く。
「吾輩が欲しいのは、他の誰でもない。御前だ、エース。それは、昔からずっと変わらない吾輩の想い、だ」
「…デーモン…」
戸惑いに揺れる眼差しは、相変わらずだった。だが、それが冗談ではないと言う雰囲気を掴み取り、その揺らぐ眼差しは徐々に確かな色を見せ始めていた。
「躊躇うことはないだろう?初めてじゃないんだ……とは言うものの、このところ暫くご無沙汰だったな。それが御前の内にいた清水の所為であったのなら…彼奴に嫉妬しただなんて、嘘だな」
地球任務に関係していた構成員を全員巻き込んでの革命の傷跡を癒やすかのように、デーモンを抱いたあの時が最後だった。その後は求めることは疎か、抱き締めることも、キスすることも極端に少なくなった。ここ最近に至っては、触れると言う行為自体が見られなくなっていたのは確かだった。
それが、清水の魂がもう永く生きられないと言うことを知ってのエースの自制であったのなら、確かに嫉妬の感情など必要ないのだ。
恋敵(ライバル)は、直にいなくなるとわかっていたのだから。
「良いんだぞ、エース。無理しなくても」
小さくつぶやき、更にエースを引き寄せると、デーモン自ら唇を重ねる。己の存在を伝えるかのように、抱き締める腕に力を込める。
そこまでして、やっとエースから反応が返って来た。
「…彼奴は…俺を許してくれるだろうか…彼奴ではなくて…御前を選んだ、俺を…」
デーモンの肩口で微かにそうつぶやいた声に応えるかのように、デーモンは軽く微笑む。
「全部、見て来たんだ。御前と吾輩のことはな。今更、許しを請うことじゃない。寧ろ全部わかっていたからこそ…御前や吾輩に想いを寄せていたんじゃないのか?もしかしたら、一番辛い想いをさせたかも知れないが…彼奴はずっと、そんな御前が好きだったんだ。媒体の中では、一番長く…愛しいヒトの傍にいられた。だからきっと…」
----大往生、してくれただろう。
確かに、真っ当に生きるよりはずっと永く存在していたのだ。それこそ、満足して最後を迎えることが出来ていたなら、大往生の言葉が相応しいと言えるだろう。
「吾輩を、見てくれ。置いていかないでくれ。ずっと、御前の傍にいたのに…忘れないでくれ。吾輩は、御前に忘れられることが一番恐いんだ。清水と同じように、とは言わない。だが…もう少し、吾輩の存在を見てくれ。今は一番…御前の傍に、いるのだから」
「デーモン…」
まるで自分の存在を訴えるかのようなその言葉に、エースは忘れていた何かを思い出したのかも知れない。
ここにいるのが、誰なのかと言うことを。
そして、その口を突いて出た言葉。
「…有り難う」
それが、誰に対しての言葉だったのかと言うことは、改めて問う必要はなかっただろう。
「…デーモン」
名を呼びながら、深く唇を合わせる。重ね合った身体の熱さが、目の前の現実として確立していた。
生きて行くことの、意味を忘れず。
僅かな時に、この身を任せよう。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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