聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Remember Frame ~覚醒 番外編~
「…ダミアン様」
思いがけず名前を呼ばれ、ふと顔を上げる。
「どうしたんですか?」
目の前には、任務遂行中で魔界にいるはずのない、前副大魔王閣下の姿。怪訝そうに首を傾げる彼の表情から、己が熱中していたことが伺えた。
「あぁ、デーモン。来ていたのか」
「来ていたのか、って…呼んだのはダミアン様でしょうが」
「…そうだったか?」
「そうだったか?じゃないですよ…」
半ば呆れた表情を見せた彼を、ダミアンは小さく笑った。
「いや、悪かったな。ちょっと昔を思い出したんだ」
そう言って、手に持っていた紙を彼に見せる。
「…これは…ダミアン様の、帰獄の詔勅(みことのり)…?」
「あぁ。書類の整理をしていたらね、書類棚の奥から出て来たんだ。こんなところに入れていたなんてね…」
くすくすと笑いながら、あの頃は若かった…などと、ちょっと思ってみたりする。
若かっただけに…受け留めることがとても辛かったことを、今になって改めて実感していた。
遡ること十数年前。
ここに、一つの小さな革命とも取れる出来事があった。
悪魔と名乗る数名によって、人間界の地でとある計画が実行へと移された。
それは、簡単に言ってしまえば地球征服と言うことになるだろうか。一応彼らは、それを"聖飢魔Ⅱ計画"と称していたのだが。
その計画の中心となっている者こそ、魔界の皇太子。サタン四十五世こと、ダミアンである。
だが。"聖飢魔Ⅱ計画"がまだ初期段階であったにも関わらず…ダミアンの元に、魔界からの帰獄要請の詔勅が届いたことから、それは始まった。
帰獄要請の詔勅が届いた翌日、一旦魔界へと戻って来たダミアンは、父親である大魔王陛下の面前で、いつもと同じ平生を保っていた。
「わたしは、まだ魔界へは戻りません。地球での任務は、まだ始ったばかりなのです。わたしが計画の為に地球へ向かわせた構成員も、まだ全員目覚めてはいません。わたしが彼等を放り出して、魔界へ戻る訳にはいきません」
「構成員が全員目覚めていないとは言え、地球にはデーモンがいるであろう」
こちらもいつものように、ダミアンに向けて放たれた言葉。
ダミアンの側近として任務に同行している副大魔王デーモン。けれど副大魔王とは言え、魔力も実力もダミアンを下回っていることは事実だった。
「デーモンはまだ未熟者です。二代目総帥を名乗るには、まだ時期が早過ぎます」
大魔王の言葉に、現総帥としてのプライドが傷付けられたのだろう。ダミアンは極力表情を変えないようにと勤めていたが、その眼差しはきつくなっている。
しかし、そこは父親でもある大魔王。顔色一つ変えずにいる。魔界で尤も権力を持つ者として、息子である皇太子に対しての多少の侮辱など、構うモノではなかった。
「お前なら完璧であると言う訳でもないはずだろう」
「…どう言う、意味ですか?」
完全に頭に来ているのだろう。ダミアンは大魔王に向ける眼差しを更にきつくする。けれど、大魔王の態度はまるで変わらない。
「今のままで、満足しているとでも?」
大魔王からの言葉。それは、一つの問いかけでもあった。
一応はまだ修行の身であるダミアンにとって、確かに今の現状に満足している訳ではなかった。何もかも、自分の思う通りには動かない。それが不服であると思っていること自体、今は当然のことだと思っていたのだ。
けれど、大魔王は、その場におらずとも全てを悟っていたようであった。
「お前が総帥のままでは、完璧に任務を遂行させることは難しいであろうな」
「…デーモンならば、それが可能だと?」
今の今まで、地球での任務の権限はダミアンにあった。デーモンはダミアンに指図されるままに動いていたに過ぎない。だからこそ、尚更、大魔王の言葉が気に入らない。
だがしかし。その言葉に、大魔王はうっすらと笑みさえ浮かべていた。
「お前の目が確かならばな」
ダミアンに向けられた、その一言。
「デーモンの能力は把握しています。けれど、まだ…」
「お前は、デーモンを過小評価し過ぎだ」
「……」
不服の表情を見せるダミアン。しかし、大魔王の言葉は続いた。
「お前の、悪魔材を見極める能力が確かなモノであることは、わしも認めよう。けれど、お前はその先まで見通してはおらぬな。確かに、現時点では、デーモンの能力はお前に劣るだろう。だがしかし、デーモンは今回の任務で実力を大きく伸ばせる。勿論、デーモンだけではない。お前が選んだ悪魔たち全てにおいて、その言葉は当て填まる。お前がおらずとも、任務は無事に遂行されるであろう」
「…だから、わたしに魔界へ戻れと?わたしがいることが、妨げになると…?」
まるで、自分では役不足だと言われている気がして。思わず問いかけたその言葉に、大魔王は大きな溜め息を一つ吐き出していた。
「…適材適所、と言うだろう。お前は、次期大魔王として学ばなければならないことがまだ山程あるのだぞ。それを蔑ろにせず、そちらに目を向けて貰いたい。お前にとって、地球任務は遊びの延長でしかない」
「……」
要は、大魔王はダミアンに余り地球任務に関わって貰いたくはない、と言いたかったのだろう。
その思いを受け、ダミアンは小さな溜め息を一つ。
今まで、父親でもある大魔王に逆らったことなど一度もなかった。けれど、だからと言って今回のことも、あっさり引いてしまうのは心残りが多過ぎるのだ。
「…確かに、わたしが皇太子と言う身である以上、魔界で帝王学に力を入れて貰いたいと言う言葉の意味は良くわかっています。けれど…今回のことは、今直ぐに任務を中断する訳にもいかないのです。聖飢魔Ⅱは、やっと軌道に乗り始めたところです。今わたしが魔界へ戻ってしまったら、どうなることか…」
「デーモンを信じられないと?」
「いえ…そう言う訳ではありません。確かに、これから先のことを考えれば、デーモンの能力は絶大だと思っています。ただ、今のデーモンに、覚醒を待っている者を導くことは出来ません」
ダミアン自ら、封印を施して送りこんだ仲魔たち。その覚醒は、ダミアンでなければ出来ないことは、大魔王も重々承知はしていただろう。だが、大魔王もそんなことで引くつもりはなかったようだ。
「ならば、覚醒を導く手立てを施してやれば良い。さすればデーモンとて、覚醒を促すことは出来るはずだ」
「…ですが…っ」
「とにかく、これはわしの命だ。お前は正式に地球任務を切り上げ、帰獄することを命ずる」
そう言い切ってしまった大魔王には、最早逆らえない。
ダミアンは小さな溜め息を吐き出しながら、謁見の間を後にした。
久し振りに戻って来た自分の執務室は、日頃の掃除が良く行き届いていた為、不快さを全く感じさせなかった。
けれど、ダミアン自身が酷く不機嫌であることは変わりがない。
自分が、魔界に必要な存在であることはわかっている。けれど、人間界での任務は、自分では役不足。しかも、自分の側近として連れて行った副大魔王が自分よりも相応しい後任であると断言され、折角軌道に乗り始めた任務を放棄しなければならない事実に平然としていられる程、流石のダミアンも図太くはなかった。
いつになく、溜め息が多い。それが、ダミアンの苦悩を語っていた。
幾度目かの溜め息を吐き出した時、執務室の扉が控えめにノックされる。
『ルークですが…』
「あぁ、どうぞ」
『失礼します』
扉を開けて入って来たのは、艶やかな漆黒の緩いウエーブが綺麗な、見知った悪魔。名をルークと言う。今回の地球任務の構成員としても選ばれているのだが、現在覚醒を待っている状態である。その間、躰は未だ魔界に留められているのだった。
「お帰りになられたと聞きましたので…」
何をどう聞いたのか、ダミアンはルークのその表情で凡その見当は付いていた。
案の定、ルークはそれをダミアンへと問いかける。
「地球任務を…中断されたと、聞きましたが…」
その問いかけに、思わず小さな笑いを零した。
「親父から聞いたのか?」
「…えぇ、まぁ…」
一瞬、気まずそうな表情を見せたルーク。そんなルークを、ダミアンは目を細めて見つめていた。
「別に、中断した訳ではない。親父の勝手な言い分だ。わたしは、まだ納得はしていないし、中止するつもりもない。親父が先走っているだけだ」
「…そうなんですか?」
「今のところはね」
僅かに、ルークの唇から零れた溜め息。その意味するところは、ルークにしかわからないのだろうが…。
「お前が心配することじゃない。お前は、わたしの言う通りに任務に参加していれば良いんだ。デーモンたちはもう活動を始めているし、お前の宿るべき肉体も、魂も、ほぼ完全に精神を高めている。後は、お前が覚醒すれば問題なし」
その言葉に、ルークは怪訝そうに眉を潜めた。
「…ダミアン様は…いらっしゃらないんですか…?」
大魔王から聞いた話が尾を引いているのだろう。
ダミアンは腕を伸ばし、ルークの髪に触れる。そして軽く一混ぜすると、にっこりと微笑んだ。
「一つ、言って置くよ。これは、挫折ではない。地球での任務は、順調に進んでいる。ただ…親父は、わたしを魔界へ連れ戻したいだけだ。地球にかかりきりになっているのが気に入らないから、理由をつけているに過ぎない。お前たちの活動に、全く問題はないよ。デーモンがきっと、上手くやってくれる」
せめて、これから出発するルークには、心配をかけないように。そんな心づもりでにっこりと微笑んだものの…何処かで悔いを残している自分がいる。ダミアンは、そんな思いを抱きながらも、ルークの前では微笑んで見せていた。
けれど、ルークも満更馬鹿ではない。ダミアンの真意ぐらい、わかっているつもりであった。
だから…笑うことが、出来なかった。
「…そんな顔をするんじゃないよ」
にっこりと微笑んだまま、再び髪を掻き混ぜるダミアン。けれど、ルークの表情は晴れない。
「デーモンに着いて行けば大丈夫だ。お前の大将だろう?」
「…それはそうですけど…」
躊躇いがちに、ルークは言葉を続けた。
「ダミアン様は…今回の任務のことを、どう思っていらっしゃったんですか…?」
その問いかけに、くすっと一つ、笑いが零れた。
「愚問だよ、ルーク」
「ダミアン様…」
心配そうな、ルークの表情。その、表情の問わんとするところはわかっていた。
だからこそ…ダミアンは、微笑むしかなかった。
「…お前は、惑星探査に行ったことがあるかい?」
ふと、問いかけてみる。
「…いいえ…ありません。惑星探査は、情報局の仕事ですから」
「そうだね。お前には縁がなかったか。では、エースからその話を聞いたことは?」
「惑星探査に行ったと言う話は聞いたことがあります。勿論、職務内容を詳しく聞くことは出来ませんから、多分辺り障りのないことだけでしょうが…でも、それが何か…?」
ルークの怪訝な表情は相変わらず。その表情を眺めながら、ダミアンはゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「…わたしもね、魔界から出て、惑星へ行くのは今回が初めてだった。だから尚更だったのかも知れないが…地球は、とても綺麗だと思ったよ。勿論、知的生物に汚されて、滅びかけてはいる。けれど、とても綺麗だった。だからこそ、あの惑星を何とかしてやりたいと思った。今回の計画は、その為のもの。わたしの、次期大魔王として学ぶべき帝王学とは、全く関係がない。親父はそれが気に入らないんだ。だが、そんなことで計画を中止する訳には行かない。お前を含め、地球には、わたしが送り込んだ有能な悪魔たちが覚醒を待っているんだ。彼等を切り捨てる訳にはいかない。だから…計画は、継続だ」
「…でも、ダミアン様は…」
「わたしのことは、お前には関係ない。お前は、自分に与えられた任務を熟せば良い。それが、お前に課せられた職務だろう?」
「…納得出来ません」
そう言い切ったルーク。その言葉は、ダミアンの胸を深く突いた。
一番納得していないのは…他の誰でもない。ダミアン自身、なのだから。
「…地球には、デーモンがいる。お前の主はわたしじゃない。デーモンだろう?お前はデーモンに従えば良い。"聖飢魔Ⅱ計画"は遂行だ」
「ダミアン様…っ!」
いつしか、ダミアンも微笑むことを忘れていた。悲痛な表情を浮かべるルークの前、ダミアンもまた…同じような表情をしていたのかも知れない。
「…わかってくれ、ルーク」
ポツリと呟いた言葉。そして…きつく、唇を噛み締める。
言葉にしてみて、自分が如何に悔しかったかを痛感した。そして…自分よりも適任だと言われたデーモンに、僅かながら嫉妬していたことも痛感した。
けれど…自分が何をするべきか。その答えは一つしかないのだ。
皇太子としてのダミアンに、選択肢はない。無条件に、魔界へ帰らざるを得ない。
ダミアンは大きく息を吐き出すと、ルークに向かい合う。
初めて会った時…彼はまだ、幼く見えた。けれど今、自分を見つめる姿は、あの時の彼ではない。
ダミアンは、再び小さな笑いを零す。
「…わたしの想いを…お前に託すからね。精一杯、頑張っておいで」
腕を伸ばし、ルークを抱き締める。その暖かい温もりが…酷く切なく思えたのは、どうしてだっただろう。
「…馬鹿だね、どうしてお前が泣くんだい?」
ぽろぽろと涙を零すルークに、ダミアンは微笑んだまま頭を撫でる。
「…だって…」
ルークにしてみれば、ダミアンと一緒に任務を遂行出来ると思っていたのだ。だから、こんな送られ方をするとは思ってもみなかった事。それが切なくて…苦しくて…。
「一生行けない地じゃない。向こうでの職務は出来ないだけであって、顔を見に行くことぐらいは出来るんだ。お前だって、いつでも戻って来られる。だから、泣くんじゃないよ」
「…はい…」
袖口で涙を拭ったルークは、懸命に笑顔を作ろうとしていた。
そのいじらしい姿に、ダミアンもにっこりと微笑んだ。
「有難う、ルーク」
それが、ダミアンの本心であった。
数日後、再び地球へと足を運んだダミアンは、待ち構えていたデーモンに向け、その言葉を放った。
「お前にね、話があるんだ」
父親たる大魔王に呼ばれ、魔界に戻ったダミアンである。当然、デーモンもその成り行きを心配していたのだろう。その表情は、真剣そのものであった。
「わたしは、魔界へ戻るから」
ダミアンから発せられたその言葉に、デーモンは息を飲む。その言葉は、余りに唐突過ぎたのだから。
「どう言う…」
問いただそうとするデーモンの前に、ダミアンは帰獄要請の詔勅を差し出す。
「ま、そう言うことだ」
「そう言うことって…だって、任務は…っ」
「あぁ、お前の言いたいことはわかっているよ」
「だったら…っ」
「まぁ、落ち着いて」
ぽんぽんとデーモンの肩を軽く叩き、ダミアンは詔勅をしまう。そして、大きく息を吐き出して気持ちを落ち着けると、改めてデーモンの金色の眼差しを見つめた。
「今回の任務は…遊びではないよ。それは、今も同じ気持ちでいる。けれど、大魔王陛下より、正式に詔勅が来たんだ。幾らわたしが皇太子であるとは言え…大魔王陛下に…逆らうことは出来ない」
「………」
同じ血を分けた親子であるからこそ…それ以上、逆らうことが出来ない。それは、デーモンにも良くわかっていた。けれど、頭ではわかっていても、感情まではそうすんなりと納得出来ないこともまだ事実なのだ。
唇を噛み締めるデーモンに、ダミアンは小さく微笑む。
「お前を総帥にして、任務は遂行する」
「…ダミアン様…」
困惑したような表情を浮かべたデーモン。けれど、それが事実だと言わんばかりに、ダミアンはデーモンの目の前にもう一枚の詔勅を差し出す。
「前副大魔王、デーモン閣下。汝を聖飢魔Ⅱ二代目総帥として正式に任命することをここに命ずる」
震える手で詔勅を受け取ったデーモン。その表情はとても喜んでいるようには思えない。両の瞳には、零れんばかりの涙を溜め、唇を噛み締めていた。
「お前を、信じているよ。長い付き合いだからね。だから…お前なら、わたしが果たせなかったこの任務を、実行出来ると信じているからね」
にっこりと微笑むダミアンの言葉に、溢れた涙は零れ落ちる。
「ほら、泣かない泣かない。どうせなら、嬉し涙にしておくれ」
デーモンの頭を軽く撫でるダミアン。
「…ですが…」
拭っても拭っても、涙は止まらない。
ダミアンが地球を離れることが、どれだけ辛いことだったかはわかっているつもりだった。それなのに、ダミアンはいつもと変わらないくらい優しい。それが、切なくて。
「大丈夫。お前には、強靭な仲魔が大勢いるだろう?お前が頑張ってくれれば、わたしは安心して帝王学を学べる。この地球上で…お前が抱いた夢と、同じ夢を抱いていける。だから…しっかりおし」
言いたいことはわかっている。そう言ったダミアンの言葉は、多分嘘ではない。
この惑星に対する想いは変わらない。
決して、遊びで始めた訳じゃない。真剣だったのだ。だからこそ…ダミアンは、微笑を浮かべたまま、この地を離れたかったのだと。
「頑張るんだよ」
そっとデーモンの頭を抱き寄せ、耳元で囁く。
「…御意に…」
任務半ばでこの地を離れなければならなくなったダミアンの為に。デーモンは、涙で潤んだ瞳を上げ、にっこりと微笑んで見せた。
哀しくても、切なくても。それを乗り越えてこそ、目的は果たせるのだから。
だから、お前はそれを信じて。
哀しくて…切なくて。どうしようもなくなったら、支えてあげるから。
この腕で。この微笑で。
だから…もう、泣くんじゃないよ。
季節は巡り、幾度目かの春は過ぎて行った。
「…あの頃は若かったね」
古びた帰獄要請の詔勅を手に、ダミアンはくすくすと笑いを零していた。
「これを見せた時のデーモンの顔ったら。思い出すと笑いが止まらないね」
「…もぉ、ダミ様ったら…っ」
「あぁ、御免御免」
そうは言ったものの、ダミアンの表情には侘びるような気配は微塵もない。
呆れた溜め息を吐き出したデーモンは、その視線を再びダミアンの持っている詔勅へと向けた。
「…それにしても、良く帰る気になりましたね?地球任務は、かなり熱を入れていた任務だと思っていたのですが…?」
ずっと聞きたかったことを問いかけたデーモン。けれど、ダミアンは笑っているままだった。
「それは、秘密だよ」
「秘密、って…」
にっこりと微笑み返され、デーモンは呆れた溜め息を吐き出した。
これが何より、ダミアンらしい。
そう思うと、デーモンからも自然に笑いが零れていた。
「昔のことばかり思い出すなんて、わたしも年を取った証拠だね」
くすくすと笑うダミアン。それにはデーモンもどう答えて良いのかわからず…結局、言葉を濁すしかなかった。
いつまでも、変わることのない記憶。
それは、余りにも鮮烈過ぎて。だからこそ、記憶の底に埋めてしまうのが勿体無いような気がして。
「…地球に残ったのがお前たちだから…諦めが付いたのかな」
他に誰もいなくなった執務室で、デーモンからの報告書を眺めながら呟いた声。
くすくすと笑いを零しながら、暮れ始めた景色に目を向ける。
外は、あの時と同じ赤い夕日。
任務途中で呼び戻されることに、悔いを感じたのも事実。
自分よりも優れていると言われた悪魔に嫉妬したことも事実。
けれど…微笑んで見せようと思ったのは…彼らが、大切な仲魔だったから。
彼らの才能を素直に認め、自分が身を引くことでそれが引き出されることが事実であるとわかったから。
だから、微笑を称え、身を引いた。
あの時の気持ちは、きっといつまでも忘れることはないだろう。
その想いは、ダミアンにとっても成長の証だった。
「…言えないよね。他の誰にも」
くすっと、小さく笑ったその声は、誰に届くこともなかった。
それは…ダミアンの、誰にも言えない秘密、だった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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