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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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TRADE 後編
こちらは、以前のHPで2000年04月06日にUPしたものです

拍手[3回]


◇◆◇

 奴に飯を喰わせ、人間界のモノは効き目が悪いと文句を言う奴に半ば無理矢理薬を飲ませ、やっと一息吐いた頃。
 降っていた雨はやんでいた。
「汗かいたんだから、身体拭いとけよなっ」
 洗面器に熱い湯を入れ、タオルと共に持って来た。そして。
「そうだ、そのうっとおしい髪も結べっ」
「ちょっ…乱暴にするなっ」
「えーい、うるさいっ!」
 暴れる奴を押さえ付け、数分。その余りの可笑しさに、俺は思わず笑い出した。
 うん、力作だっ。
「清水っ!何故おさげなんだっ!」
「可愛い、可愛い」
 けたけたと笑いながら、奴の頭をポンポンと叩く。何せおさげ、だもんな。今までのうっぷん晴らしだ。
「ほら、早く脱げよ」
 ムッとしている奴にそう言い、俺はタオルを絞る。
 刹那。ばさっと言う布擦れの音と共に、俺の視界は真っ暗…
「デーモンっ!」
「おさげのお返しだっ」
 頭から被されたスエットの上着を剥ぎ取り、睨み付けてみたものの、今一奴の格好には笑ってしまう。
「笑うなっ」
 意気込んで見せても、全然威嚇にならないんだよな、これが。何とか笑いを押し殺し、奴にタオルを投げた。
「ほら、冷めないうちに早く拭けよ」
「背中ぐらい、拭いてくれよな」
「ま、背中ぐらいはな」
 そう言う俺の前で、奴は膨れっ面のまま、身体を拭き始めた。それで。
「ほらっ」
 投げられたタオルを受け取り、もう一度絞り直す。
「寒いんだから、早くしろっ」
「うるさいなぁ」
 後ろを向いた奴の背中を拭きながら、こんなに小さなモノかと言うことを、改めて感じた気がした。確かに俺よりも小柄なんだ。しかし、今までもっと大柄だと思っていたのは、やはり奴の態度の所為だろうな。
 こんなにおさげも似合うし、一応言うことは聞くし。思ったより、素直じゃないか。
「…何をくすくすと笑っとるんだ」
「別に」
 くすくすと笑いながら、俺はふと、その言葉を口にした。
「どうして…エースを好きになったんだ?」
 不意に、尋ねたくなった。
 確かにエースは魅力的だ。媒体の俺が言うんだから、それは間違いない。まぁ、媒体だからこそはっきり言える欠点も少なからずはある訳だが…それはこの際置いておこう…。
 俺が出逢った時のエースは、奴との相性は最悪だったはず。それなのに、どうして御互いの気持ちが変わったんだろう。
 当然の如く、その問いかけには戸惑ったようだった。
「…何だ、突然…」
 一瞬の沈黙の後、返って来たのはその声だった。奴の伏せた眼差しの意味さえ、俺には想像も付かなかった。
「エースじゃなくても、良かったんじゃないのか?」
 そう零した俺の声に、奴は着替えのスエットに着替えながら、大きく溜め息を吐き出した。
「御前には…きっと、わからないさ」
「…何でだよ。俺は、エースの媒体だぞ?俺だって、エースのことは良くわかってる」
 そこまで言葉を紡いだ瞬間、不意に奴は眉を潜めた。
 何だよ…いきなり、機嫌が悪くなったぞ…そう思った時に聞こえた、瞳を伏せたまま小さくつぶやいた声。
「……じゃ、ない…」
「は?」
「御前は、エースじゃないだろう?」
 言葉の一つ一つをはっきりと言い直した奴は、そのまま俺を見つめた。
「当り前だろ。夕べから、何度そう言ったと思ってるんだよ」
 訳がわからず、俺はそう口走る。瞬間、奴の眼差しが揺らめいた。
「…そう言う事か…」
 漸く、奴の言いたいことを察した俺は、溜め息を一つ。
 奴が言いたいのは…俺がエースの媒体として誰よりもエースのことを良くわかっていたとしても、決してエースにはなれない。エースの本心はわからない、と言いうことか。
 大きく息を吐き出した俺は奴から視線を外し、洗面器とタオルを持ってキッチンへ向かった。
「悪かったな。どうせ俺は、エースにはなれないしな。御前に好かれようとも思ってないから」
 可笑しいな。あんなに、嫌ってたはずなのに。
 エースの気持ちが、良くわかる。本心から奴に嫌われたら…胸が、痛い。
「…馬鹿だな、俺は…」
 奴に聞こえないように、小さくつぶやいた。
 ホント、馬鹿だな。やっぱり俺ってエースの媒体だ。でも、どんなに気持ちが近付いたって、所詮は媒体。エースには、一生敵わない。当然と言ってしまえば、当然の結果か。
 たった、半日で。俺の知らない姿を見せつけられたぐらいで。たった、それだけのことで…気持ちが揺らぐとは。馬鹿としか言いようがない。
 大きな溜め息を吐き出したその時。背後からふわっと背中を抱き締められた。
「……御免」
「……は?」
 いきなり謝られて、思わず奇妙な声を上げてしまった…。まぁ普通、意味がわからないよな。
 奴は強引に俺を己の方に向けさせ、そして改めてその口を開いた。
「感謝してる。夕べからずっと世話焼かして悪かったな。挙句…馬鹿なことを言った。そのことで、謝ったんだ」
 眼差しが、揺らめく。甘く、俺を見つめている。
「…デーモン…」
 言葉が、続かない。でも…
 奴は小さく笑い、俺を抱き締めた。
「…風邪、うつすなよ…」
「わかってる」
 笑い声が耳元で聞こえた。わかってる…か。何をわかったんだか。
「有り難う」
 その言葉は、甘い響き。でも…それ以上は踏み込むなと言う、牽制にも聞こえた。
 思わず、込み上げて来た笑い。でも、それで良いんだ。
「…あぁ」
 軽く、その背を抱き締め返す。この奇妙な関係を、エースが見たら…何って言うか。なぁ。

◇◆◇

「おまった~」
 確かに夕方。丁度5時を回った頃だった。陽気な声と共に現れたのは、ルーク。で、奴の姿を見るなり、一瞬の沈黙。瞬間の、大爆笑。
「デーさん、どうしたのっ?やだ、すっげー似合うっっ!可愛いじゃん、そのおさげっ」
「うるさいっ!清水がやったんだ、清水がっ」
 奴は顔を真っ赤にして反論しているが…ホントに似合うんだ、これが。
 俺が笑いを押さえている様子に気が付いたのか、奴は俺に向き直って、キッと睨み付けた。
「清水っ!」
「あぁ、悪い」
 でも、笑いは治まらない。
「ま、まっ。デーさんも清水さんも、落ち着いて、落ち着いて」
 くすくすと笑いを零しながらも、ルークはそう言って俺たちを制した。
「思ったより、デーさん具合良さそうじゃん。もっと悪いかと思ったけど」
 やっと見慣れて来たのか、ルークは奴をその黒曜石の瞳を奴に向けていた。が、奴は…と言えばまだ顔も赤いし、目も潤んでるってのに…熱だって下がってないんだけどな…。
 でも奴はルークにそれを気付かせない程、妙にハイテンションを装っていた。
「吾輩をなめるなっ。熱如きで伏せってられるかっ」
 おいおい…夕べ、どれだけ大変だったと思ってるんだよ…。
「良いから、大人しく寝てろっ」
 半分呆れながら、俺は奴をベッドに押し込んだ。
「コーヒーでも淹れてやるよ。飲むだろ?」
 ルークを振り返り、そう尋ねる。
「サンキュー。そうだ、御土産持って来たんだ。ミルフィーユとジャンボプリン」
 キッチンに向かいかけた俺の背中を追って、ルークも着いて来る。コーヒーを淹れ始めた俺の隣で御茶受けの用意をしながら、小声で俺に言った。
「随分、楽しそうだったじゃないの。どうしたの?」
 一瞬、ドキッとしてしまったが…そんなに、楽しそうにしてたか?自覚症状はないんだけど。
「…別に?」
「そう?いつもの清水さんとは、随分違う表情だけど?」
 見透かしたように笑って、ルークはそう言う。そんな風に言われると…非常に気まずい…。
「ま、良いけどね。んでも、エースにヤキモチ焼かれない程度にね。彼奴、意外とヤキモチ焼きだから」
 くすくすと笑いながら、ルークは先に準備を終え、奴の方へ行ってしまった。
 彼奴がヤキモチ焼きだってことは、俺にだってわかってるしな。それに、彼奴にヤキモチ焼かせる程、仄々幸せな訳じゃない。まぁ、わかっているだろうが。
 また、こんな状況が訪れるかどうかはわからない。でもまぁ…良いんじゃないか?このままでも…な。

 コーヒーと奴のホットミルクを持って行くと、奴は不機嫌そうな顔をしていた。その手に持っていたのは、ルークの土産のジャンボプリン。
「どうした?」
 尋ねた俺の声に、奴は口を尖らせて俺に喰ってかかる。
「何で吾輩だけプリンなんだっ。しかも異様に甘いぞっ」
「何で俺にそれを言う?買って来たのはルークだろうが。それに、プリンが甘くなかったら、ただの具なしの茶碗蒸しじゃないか」
「幾ら何でも甘過ぎるんだっ。だから、御前のミルフィーユと交換しろっ」
「断る」
 奴にカップを手渡し、俺はルークの隣に座り込んだ。そんな俺たちのやりとりを、ルークは笑って見ていた。
「少しは甘いものでも取って、早く元気になんなきゃ。また、御仕事の季節だからね」
「そうだな。しっかり、糖分取っとけ」
「同意するなっ」
 奴の声に、思わず笑いを零してしまう。ホント、意外と元気じゃん。こんなに元気な姿を見せられると、かえって心配になってしまうけど…
 と、そんなことをぼんやりと考えていた時。キーンと耳の奥が鳴り、引っ張られる感覚。
「あ…」
「…清水?」
 つぶやきを漏らした俺の声に、奴は顔を上げた。
 俺は、どんな顔をしてたんだろう。
 帰って、来たんだ。俺のもう一つの魂が。
「まだ、完全に治ってないんだから、無茶すんなよ」
 そう言った俺に、奴は何かを言いたそうな顔をした。
「…じゃあ、な」
 俺は、小さく笑った。
「清…水…っ」
 何かを言い続けようとした奴の声は、もう聞こえない…

◇◆◇

「…って…え?何で俺、ここにいるんだ?」
「御帰り、エース」
 微笑んで迎えたのはルーク。ベッドから半身を乗り出して、何かを言いたそうな顔をしているのはデーモン。
「……どうした?」
「あっ…と…いや、別に…」
 僅かに頬を染め、いそいそとベッドの中に戻ったデーモンを横目に、エースはルークに向かった。
「何があったんだ?」
「いや、だからね。デーさんが熱出して、清水さんが夕べから看病してたってだけだよ。疚しいことは…してないんじゃない?俺は知らないけど」
 くすくすと笑みを零し、ルークは答える。
「そんなこと、する訳ないだろうがっ!あの清水にっ」
「何だよ、あのってのは…俺の媒体に文句でもあんのか?」
「だから、そうじゃなくてだな…」
 ムッとした表情のエース。明らかに、焦っているデーモン。ルークは、ニヤニヤと笑ってみているだけ。
「詳しいことは、清水に聞け」
「…意味わかんねぇ…」
 それ以上は語らなかったものの…エースの頭の中には、清水の笑い声が僅かに聞こえていた。

「清水と、何話してたんだ?」
 結局帰ってしまったルークの代わりに、今夜はエースがデーモンの面倒を見ることになった。
 食事をさせ、薬を飲ませて、エースはデーモンをベッドの中に押し込み、そう尋ねる。
「何って…別に」
 布団に潜り込み、平然と答えたデーモン。
「別にって…そうは思えないんだけどな。清水も笑ってたし、御前だって…楽しそうだったじゃないか?」
「吾輩は」
 エースの言葉を遮り、デーモンはその眼差しを向ける。
「吾輩には、御前だけだ。清水もそれはわかってる」
「…どうかな。彼奴意外と我儘だから。俺から御前を奪うかも知れないぞ?」
「…冗談はやめてくれ。吾輩はそんなつもりはないからな」
「俺も譲る気はないけどな」
 くすくすと笑いながら、エースはデーモンの上掛けを直してやる。
「もう、休んだ方が良い」
 話題を逸らすように、エースはつぶやく。
「御前は?」
 デーモンに問いかけられ、小さな笑いを零す。
「心配いらない。ちゃんといるから。夕べ清水が使った毛布もあるしな」
「そうか。悪いな。吾輩ばかりベッドを使ってしまって」
「謝る必要はないだろ?御前の部屋なんだし、何より病魔だろう?」
 そう言って、デーモンの前髪を掻き上げる。
「熱、今夜中に下げろよ。これ以上長引くと、仕事に影響するぞ」
「…無茶を言うな。昨日の今日だぞ?根性も限界があるんだ」
「無茶じゃない。夕べから、清水に看病してもらってたんだろ?だったら、もう下がってもよさそうなモンじゃないかっ」
「それとこれとは、話が違うだろうがっ」
「違わないっ」
「エース…っ」
 不意に触れられて、デーモンは声を上げる。額のエースの手が、とても心地好い。
「ゆっくり眠れば直ぐに下がる。大丈夫、傍にいてやるから」
 そうつぶやいたエースの眼差しは、とても優しい。ずっと求めていたモノは、この暖かさだったのだろうか。しかし、夕べから同じような眼差しは、幾度と見ていたはず。
----あぁ…同じだ。エースの瞳も…清水の瞳も…
 だからこそ…あそこまで、気を許せたんだろう。
「…御休み、エース」
 小さくつぶやき、そっと目を閉じる。
「あぁ、御休み」
 エースは、デーモンの両の瞼の上にそっと口付ける。途端に目を開いたデーモン。
「そう言うことしてると、清水にスケベ呼ばわれされるんだぞ」
「…彼奴に言われたかないね。俺がいないと、直ぐに何処かの誰かを連れ込むんだから」
「御前なぁ…」
 平然と言って退けるエースに、デーモン苦笑する。御互いに良くわかっているから言える言葉なんだろう。
「…一緒に、ベッドに入るか…?」
 つい…恐々と尋ねてしまう。
「何でだよ。そんなに俺に風邪うつしたいのか?」
「そうじゃない。幾らなんでも、肌寒いだろう?そっちは。それこそ…風邪ひくぞ。そうしたら、またルークにぶーぶー言われるぞ?」
 仕事が押し迫っているのに、これ以上病魔を増やす訳にもいかない。そんな思いで発した言葉に、エースは一つ間を置く。そして。
「…うつすなよ」
「さぁ。それはどうかな」
「御前なぁ…」
 そうは言いつつも、それ以上文句は言えず。エースはデーモンのベッドの端に潜り込んだ。くすくすと笑いを零しながら迎えたデーモンは、エースのその眼差しに気が付いた。
「何だ御前…照れてるのか?」
「…うるさい」
 デーモンの横で、誘惑に負けまいと物凄く不自然な姿勢を取っていたエースは、大きく息を吐き出した。そして、小さくつぶやいた言葉。
「…清水には負けないからな」
 その意味深な言葉に思わず絶句。
「御休み」
 絶句しているデーモンをよそに、エースは枕元のライトを消し、先に目を閉じる。
「…吾輩も、清水には負けないぞ?」
 エースの横顔に向け、デーモンは小さく言葉を発する。
「…御休み」
 小さくつぶやいた声は、闇に溶けた。
 明日の朝目覚めた頃には、多分デーモンの熱も下がっているだろう。そしたら、何か旨いモノでも作ってやろう。
 そんなことを考えながら、エースも眠りに付いた。

 そんな2名を、清水はエースの中でくすくすと笑っていた。
 相変わらず…変なところで純な悪魔たちだと。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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