聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Prisoner
秋風が、とても心地良い。
ぼんやりと海を眺めながら、見覚えのある"島"を眺めていた。
つい先日、この地でライブをしたばかり。懐かしさと言うよりは、またやって来た、と言う感覚の方が近い。
オフのこの日、何となくここまでやって来たのは…何かに呼ばれている。ここへ、来なければならない。そんな気がして。
「…日差しはまだ暑いけど…空は秋だよな…」
暫し、その景色に目を向ける。と、吹いて来た風に何かを感じた。
「………」
何処か、懐かしい匂いを感じる。その正体を確認するかのように、僅かに息を詰め、感覚を研ぎ澄ます。
遠くで聞こえる、はしゃぐ声。いつの間にか、その声さえ耳に届かなくなる。
だが、暫くそうした後、ふと我に返る。
「…日が暮れるわ…っ」
思わず自分に突っ込みを入れてしまう…。が、直ぐに踵を返すと、即効で買い物に走っていた。
目的の物を入手すると、彼はその買い物袋を手に砂浜へと下りる。
既に、日差しは落ち始めている。海水浴は流石に無理がある時期である為、長居をする人も夏に比べれば随分少ない。
ほんの少しだけ、好奇心を出して水辺へと歩み寄るが…波が寄せて来ると思わず息を飲み、あっと言う間に踵を返す。
そんな姿に…その耳に、笑い声が届いた。
『何してんだよ』
「…うるせぇ」
思わず、素で返した言葉。見られていたと言う気恥ずかしさに、ほんの少し赤くなる。
水辺を離れ、乾いた砂の上を歩いて座れるところを捜す。そして漸く腰を落ち着けると、小さく息を吐き出す。すると、丁度一人分ほど離れたところに気配を感じた。
それを確認すると、徐ろに買い物袋の中から缶ビールを二本取り出すと、飲み口を開け、その一本をその気配の辺りの砂の上に立てる。そしてもう一本は自分の手に。
「まぁ…乾杯」
そう言って、軽く缶を合わせる。まぁ当然、傍から見れば彼一名しかいない訳で…それは些か奇妙な光景。けれど当然、そんなことは今更気にはしない。
缶ビールを呑みながら、ぼんやりと景色に目を向ける。波の音と、風の音。それは、とても心地良い。
そうやって暫し、ぼんやりとした時間を過ごす。すっかり日は落ち、夜空には月が浮かんでいた。
「……で、何しに来たの?」
砂浜に立てた缶が空になってることに気が付くと、二本目の缶ビールを開け、再び砂の上に立てながら小さくそう問いかける。
『…デーモンの顔、見に来たんだよ。そのついで』
「…あ、そう」
自分の分の缶ビールを開けながら、小さな溜め息を一つ。
まぁ、想像するに…"彼"がわざわざ足を運ぶ理由は、そんなところだろう。
このところ…漸く、素直に恋悪魔に会いに行けるようになったらしい。それをホッとする反面…ほんの少しだけ、胸の奥に残る想いがある。
今でも…"彼"にとって、自分は特別な存在であるのだろうか。
今更期待はしない。自分がいる所為で…こうして、自分の活動を優先する所為で、"彼"の想いを遮っていたのではないか。そうだとしたら…いつまでも特別だなんて、思っては貰えないかも知れない。
そんな想いが過ぎる中…小さく笑う声が届く。
『…何て顔してんだよ。嘘だよ。ホントは、御前に会いに来たんだ』
「…エース…」
そんなに顔に出ていたのかと…ちょっと恥ずかしく思いながらも、嘘かホントかはわからないが、恋悪魔ではなく自分に会いに来たのだと言う言葉に、どう返したら良いかわからなかった。
視線を向ければ、宵闇の中にうっすらとその姿が透けて見えていた。
その横顔は、以前見た時と変わらない。その姿はいつでも彼の憧れでもあり…愛おしい相棒。
『まぁ、何にせよ…たまには良いだろう?こんなのんびりした時間も…さ』
そう言って、くすっと笑う。その笑顔に、思わず彼も笑いを零した。
「確かに。御前と一緒に呑むことなんて殆どなかったからな」
このところ、以前よりはかなり頻繁に連絡を取れるようになった。けれどいつも声を聞くだけで、姿を見るのは十回に一回あるかどうか。当然、一緒に何かをする、と言うこともないのだから、一緒に呑むこともなかった。以前、仲魔の発生日に一緒に祝った時ぐらいだったか…と言う記憶しかない。
だから…と言う訳ではないが、冷静に考えると何だかちょっと気恥ずかしさも覚えるのだが…"彼"の方は、全くのポーカーフェイス。そんな表情も、昔から変わらない。
『…って言うかさ、つまみは?』
二本目もそろそろなくなるか…と言う時になって、ぽろっと"彼"から零れた言葉。
「あぁ……買い忘れた…」
言われて初めて、慌てて買い物をした弊害に気付く。だが、くすくすと笑う声に彼も笑いを零した。
『相変わらずだな、御前は』
「人間、そう簡単に中身は変わらないから」
『それを言ったら、悪魔も…な』
故意的に、変わろうと思っていた訳じゃない。だからこそ、変わらないと言われることが嬉しかったりもする。
自分も…そして、"彼"も。何も変わらない。それで良いんじゃないかと。
「もう一本あるけど呑む?」
『あぁ。貰おうかな』
その返事に、再び缶ビールを開ける。
「今日は、これで最後」
開けた缶ビールを砂の上に立てる。そして、自分の分も開けると、再び軽く缶を合わせて乾杯をする。
三本目の缶を空けるまで…会話らしい会話は、特になかった。
けれど、その缶が空になると、"彼"がゆっくりと言葉を放つ。
『…"現相棒"に……"本田"に、宜しくな』
その言葉に、思わず視線を向ける。けれどそこには、もう"彼"の姿は見えなかった。
ただ…ほんの少しだけ、その唇に何かが触れた感触だけは残っていて。
「……ばぁ~か」
相変わらず、押しが弱い。そのクセ、気障だったり…時に、思いがけず優しかったり。
何だか、弄ばれた感がなくもない…と思いながら、くすくすと笑いながら空になった缶を袋へと戻す。
多分、今でも…誰よりも大事にされている。そう思える間は、多分まだまだ自分の気持ちも変わらない。
そんな、ささやかな倖せを胸に抱きつつ、ゆっくりとした足取りで帰路に着いていた。
「……で?その蕩けた顔、何とかなんない…?」
苦虫を噛み潰したような表情で、そう言葉を投げて来た相棒に、彼はくすくすと笑いを零した。
「なんないな~。こればっかりは」
「…あ、そう」
些か機嫌が悪いように思えるのは…多分、彼が"彼"の話を零したから。
数日前の話なのに、今でも思い出すと顔が綻ぶ。果たして、それはいつまで続くのだろうか。
「ホントにもぉ…」
溜め息を吐き出す相棒だが…彼の、実に倖せそうな表情を前に、いつまでも拗ねている訳にもいかない。
「あんたホントに…悪魔のエースさん、好きだよね?」
思わず苦笑すると、彼は笑った。
「こればっかりはな。もう、どうしょうもない」
そう言い切られては、最早返す言葉もない。一瞬唖然としたものの、相棒も笑うしかなかった。
だがしかし。
「"エース"は、特別だからしょうがないが…人間で一番の相棒は御前だからな?」
「はいはい」
半分呆れたように笑う相棒に、彼もくすくすと笑いを零す。
実に、平和に、穏やかに、時が流れる。
いつまでも、御互いが特別な相手であるように。
ささやかな願いを胸の奥に秘め……と言うか、暫くの間は秘められていないが…それでも、今のこの平穏を守る為に。
「さて、仕事仕事」
「はいよ」
仕事は真面目に。それは当然。勿論、にやけ過ぎないように十分に気を引き締める。
そして暫し、仕事の事で頭を一杯にする。
けれど、その胸はほんのりとした温かさで溢れていた。
"大切な相棒"に、愛されている実感。それが何よりも倖せだった。
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※リクエスト内容は「江の島舞台でお願い致します。急にぽっかりオフの日ができたエースさん、きままに出かけたのが秋の江の島、砂浜でくつろいでいると、同じく急に休みができた長官と偶然バッタリ会う・・と。缶ビールで乾杯するも、ほとんど話もせず別れるのですが、お互いの心の中ではお互いへの思いを再確認して・・と。こんな感じのお話をできましたらお願い致します。秋の海とエースさんと長官・・お願い致します。」
と言うことでした。
江ノ島、と言うことで思わず現相棒(嫁…?/笑)を出してしまいましたが…何と言うか、前作(『月と水面と着流しと』)を引き摺ってる感満載…(苦笑)
毎度のことですが、申し訳ない。(^^;
個人的に。波打ち際から慌てて戻って来る姿が好きです…(笑)
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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